誤解を恐れずに言うと、舞台俳優になることはさほど難しいことではありません。必要な資格もないですし、ノルマを達成することで出演料が支払われるような小劇団などは、形式だけの審査で入団できることもあります。ただし、舞台俳優として生計を立てるためには実力をつけて規模の大きな劇団に入るか、舞台オーディションを受けて役を掴むかしなければなりません。本記事では、舞台俳優の仕事内容から、収入事情、食べていける舞台俳優になるための方法を解説します。舞台俳優になる一歩を踏み出したいと考えている方は、関連書籍も紹介していますので、こちらもぜひ参考にしてみてください。
舞台俳優で食べていくには戦略と実力の両方が必要です。本章では俳優として舞台やドラマ、映画で活躍するための入り口についてガイドします。
もちろんここで紹介するやり方以外にも、舞台俳優として大成できるメソッドはたくさんあります。方法が異なるだけでいずれにしても戦略と実力は重要なファクター。どの道を辿るにしても惰性でやっていけるほどあまい世界ではありません。
舞台俳優になるのはそう簡単ではありません。この章では一般的な2つの方法をご紹介します。
影響力や力関係というのは、どの業界にもあります。芸能の世界ももちろん例外ではありません。そのため大きな劇団や芸能事務所に入ることは、成功を勝ち取るための有効な手段です。多方面に影響力のある劇団や事務所であれば、それだけ大きな仕事のチャンスも得られる可能性も高まります。
ただし、入団・入所には厳しいテストやオーディションがあり、大手であるほど新人の数も多いため、内部での競争も激しいということは知っておいたほうがいいでしょう。
俳優の養成所やスクールで演技スキルを身につけながら、オーディションを受けていくのもひとつの方法です。養成所によっては大手の劇団や芸能事務所とのつながりがあり、演技の練習や発声練習、ダンス練習など、役者に必要な技能を磨きながら、チャンスを広げていくことができます。
ただ、養成所やスクールに通うにはレッスン費用などがかかります。経済的な面も考え、養成所やスクールを選ぶ必要があるでしょう。ちなみに相場は、入所金が10〜50万円 ほど、レッスン費が年間20~40万円数ほどとされています。
舞台俳優の仕事は役を演じることですが、舞台に立つにまでには日々の特訓は欠かせませんし、周囲のスタッフとの良好な関係も築く必要があります。本章では、舞台俳優の仕事内容についてご紹介していきます。
舞台俳優は舞台の上で役を演じている時間より、稽古に費やす時間のほうが圧倒的に長いのが特徴です。稽古にあてる時間は劇団によって異なりますが、1カ月前くらいから舞台に向けてスタートします。
稽古では、監督や演出家の指示に従いながら台本のセリフや動きを表現していき、時間をかけて仕上げていきます。出演者が集まっておこなう訓練のほか、個人の演技や発声トレーニングなども稽古の一環です。
小さな劇団であれば舞台セットの制作をおこなったり、チケットを手売りしたりといった演技以外の仕事もあります。演技だけに集中したい場合は、集客力のある大手の劇団に所属するのがよいでしょう。
舞台俳優の給料は、1ステージあたり出演料として支払われます。出演料は、俳優の知名度や舞台の規模、観客動員数などによって変動します。
テレビドラマやバジェットの大きな映画に出るような俳優は別ですが、一般的な舞台俳優では俳優業1本で食べていけないのが現状です。多くの舞台俳優が、アルバイトをしながら生活費を稼いでいます。
実力が認められた知名度の高い俳優であれば、1公演あたりの出演料は30万円~50万円程度。食べていける部隊俳優になるためには、演技の実力を磨き、舞台の世界で有名になることが必須です。
実際、舞台出身で有名な俳優となった方は複数います。彼・彼女たちの演技を研究することで、舞台俳優ならびにドラマや映画で活躍する俳優に必要な要素がわかるかもしれません。
活躍期間はそれぞれ俳優によって異なりますが、多くの方は数年間〜10年単位で舞台の世界で活動し、その後ドラマや映画などへ活躍の幅を広げています。
ドラマや映画出身の俳優との違いは、演技力の高さと役への没入具合。舞台では同じ演技を1日に数回おこない、それを数カ月単位で継続されていきます。その分、役柄への理解も深まりますし、演技力も磨かれていくのです。
そのため舞台出身の俳優たちは演技力が高いと言われることが多いようです。
舞台俳優として成功する人はほんの一握りです。厳しい世界で活躍するためには、モチベーションの維持が大切です。オーディションを受けても通らなければ自信を失いますし、演技が評価されなければヘコむこともあるでしょう。
そのため、所属先選びから練習内容にいたるまでを戦略的に考える必要があります。各劇団や芸能事務所の強みを知り、自分の舞台活動にどう活かすべきなのか。評価される表現や、自分の武器にできる表現・演技をどうすれば身につけられるのか。常に考えながら熱意を持って取り組むことが重要です。
そして何より、演じることが好きであり、舞台が好きであることが大切です。
最後に、舞台俳優としてのやりがいや魅力についてご紹介します。ドラマや映画とは違ったやりがい・魅力があるのが舞台の仕事です。
観客に作品を通して何かを伝えることを目的としている表現者である以上、演じた役や作品が観客に評価されることは大きな喜びです。演技が評価され、次の仕事につながっていけばさらにモチベーションは高まります。
俳優陣をはじめ、照明や音響の操作をおこなうスタッフ、演出家や脚本家などとひとつの作品を一丸となってつくり上げていくのは、演劇の大きな魅力です。関係者全員で試行錯誤して完成度を高めていく過程に、充実感を味わうことができます。
- 著者
- 杉山 純じ
- 出版日
これから演劇部に入って演劇をはじめる方や、いま演劇部で頑張っている方にもおすすめできる1冊。
稽古から本番まで具体的なポイントにフォーカスし、パフォーマンスの質を高めるアドバイスをしてくれます。また期間に応じた稽古プランや、 音響・照明・舞台美術・大道具・小道具・衣装などによる演出の仕方も細かく紹介しているため、演劇の基礎を総合的に学べます。
舞台を作り上げるには、俳優だけでなくさまざまな担当が必要になります。関係者全員で協力することでやっと作品が完成することを、舞台俳優志望の方も覚えておきましょう。
- 著者
- 三谷 一夫
- 出版日
俳優は「センスでなく技術である」と明言する映画プロデューサーが書いた演技の教科書。
「ものづくりの感覚」「脚本の読解力」「映画の見方」「オーディションでの戦略」など、俳優仕事を依頼され続けるために必要な技術の身につけ方を全方位的に解説してくれます。「長く現場で活躍し、仕事が途絶えない俳優になるためにはどう行動するべきか?」のヒントが詰まった1冊です。
俳優の鈴木亮平や映画監督の中野量太(『湯を沸かすほどの熱い愛』)などの豪華インタビューも必読です。
- 著者
- 鴻上 尚史
- 出版日
本書は、劇作家で演出家でありながら雑誌で人生相談のコーナーなども持つ著者が、演劇のノウハウを教えてくれるレッスン本です。
表現力を高めるためのレッスンは次の通り。
それから19.物語を創ることを楽しむ、20.声の表現を楽しむと続きます。
著者の高い洞察力を活かした的確なアドバイスにより、納得感を得ながら表現力レベルアップができます。ぜひ参考にしてみてください。
俳優業だけで食べていける人はほんの一握り。舞台俳優を仕事として選ぶには覚悟が必要です。そのため、どうしたら仕事がもらえるのかを考え行動することが重要です。
入り口となる劇団や芸能事務所、養成所やスクール選びから、表現力を身につける稽古やトレーニングに至るまで、常に戦略を持ちましょう。助けとなる書籍も紹介しているので、こちらもぜひ目を通してみてくださいね。