日本社会の中には、さまざまな事情により親と一緒に暮らすことが難しい子どもたちがいます。心や身体に障害を抱える子どもも少なくありません。そんな子どもたちや親の手助けとなる存在が「児童指導員」です。事情を抱えた子どもたちの受け入れ場所となる各施設で、生活の手助けをしたり、時には友達や兄弟のように子どもたちとコミュニケーションを取ることも仕事の一環です。今の日本には、まだまだ児童指導員の手助けを必要としている方が大勢います。今回は、児童指導員の仕事内容や平均年収、資格取得ルートなどについて解説します。記事の最後には関連書籍も紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
児童指導員は、0〜18歳の子どもを対象に生活の補助や、様々な相談にのる仕事です。障害の有無に関係なく、子どもたちの心と身体をケアします。
さまざまな事情により、親と生活をすることが困難な子どもたちの受け入れ場所で働くのが、児童指導員の役割です。そういった子どもたちの「親代わり」的な存在として、彼らが教育を受けられたり、生活が守られるよう努めることが求められます。
心身に障害のある児童も例外ではなく、療育のスキルが必要となる場面もあります。社会における療育機能・子供の居場所機能の役割を果たす重要なポジションといえるでしょう。将来、子どもたちが社会に出たり、家庭に戻ったあとも生活に適応できるよう指導することも業務の一環です。
とくに医療型障害児入所施設は、重症心身障害のある子どもを対象としているため、大変なこと・気をつけるべき事項がたくさんあり、職員の負担も大きくなります。また施設の数自体がまだまだ少ないという課題も抱えています。
ここでは、対象別のおもな仕事内容をご紹介します。
子どもの健全な成長を助けるため、子ども本人と関わり合いながら、社会や保護者とも関わって仕事をおこなうのが児童指導員の役割です。
各施設への入社から数年は、月給は18万円〜24万円ほどが一般的です。勤続年数による昇給は見込めますが、管理職ポジションに関してはそもそもの枠数が少ないため、職務におけるステップアップは難しくなっています。
また、勤務先(公立か私立かなど)によって、給与・各種手当・ボーナスの額も異なります。給与のベースは、国家公務員の給料を参考に金額が決定されます。
任用資格とは、資格取得のために試験を受ける必要がありません。その代わり、資格の効力が発揮されるのは実際に仕事に就いてから、という特性があります。
児童指導員は、厚生労働省が定める任用資格であり、特定の条件を満たすことで得ることができます。以下に、その条件を掲載しました。
任用資格は、以下の条件のうちいずれかを満たすことで取得できる。
(ⅰ)4年制大学や通信制大学で社会福祉学、心理学、教育学、社会学を専修する学部、学科を卒業すること
(ⅱ)社会福祉士、精神保健福祉士のいずれかの資格を取得していること
(ⅲ)高校若しくは中等教育学校を卒業し、2年以上児童福祉事業に従事すること
(ⅳ)3年以上児童福祉事業に従事し、厚生労働大臣または都道府県知事から認定されること
(ⅴ)小中学校、高等学校の教員免許を所有しており、厚生労働大臣または都道府県知事から認定されること、等のいずれかのまたは条件を満たしていれば取得できる。 子どもの生活と安全を預かる仕事であるため、優しさや包容力、公平さなどが求められる。
参照:自動指導員
資格があれば必ず働けるという訳ではなく、公的機関で働く場合は公務員試験を、私立機関で働く場合は採用試験を受ける必要があります。通常の就職活動と同じ過程が必要であると考えると分かりやすいですね。
おすすめは、福祉系大学などの4年制大学でしょう。社会福祉学・心理学・教育学・社会学といった内容を学ぶことができれば、将来的に役立つことも増えます。
ただし、児童指導員になるためには大学卒業が必須項目ではありません。自分の好きな分野を学んでから、挑戦しようという方法でも大丈夫です。また、高卒以上の場合も「2年以上児童福祉事業に従事する」という条件を満たせば、任用資格の条件を満たすことができます。
児童指導員は、社会人になってからの転職も可能な職業です。先ほどご紹介した「任用資格要件」を満たせれば問題はないため、転職のハードルはそこまで高くありません。
業界の現状としては、辞める方も多くいれば、入ってくる方も多いという状況。元保育士や幼稚園教諭からの転職もよくあるケースです。たとえば、民間企業での社会人生活に疲れてしまった方が、社会の役に立ちたい、子どもたちの未来を守りたい、といった志を持って転職してくる姿も目立ちます。
児童指導員の仕事は、激務と言われれることも少なくない世界です。働き方の見直しや給与の底上げをおこなわなければ、この先の人材不足が深刻化してしまう可能性があります。
またそのような状況なだけでなく、通常業務プラスαの仕事が多いという現状も。勤務時間外に子どもたちの相談に乗ったり、雑務をおこなったりとそれらの時間外労働が、職員の負担になっていることも否めません。
管理職などへのキャリアアップもほとんどない業界のため、モチベーションの維持や体力的な理由で辞めていく方も多いようです。
逆に児童指導員に向いていないのは、高収入を得たい考えるタイプの人。時間外労働など、割に合わないと感じてしまう方は、この仕事自体を続けることが難しいでしょう。
子供たちに必要とされているということを糧に仕事ができる人にとっては、天職といえます。子どもたちだけでなく、その保護者の助けになることもできる仕事であるため、児童指導員は多くの人々の役に立つことができる、社会的重要性の高い職業です。
- 著者
- ["宮口 幸治", "作画 佐々木 昭后"]
- 出版日
50万部超の大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』の著者が解説する内容を、漫画で分かりやすく掲載した本です。
皆さんのなかには「境界知能」という言葉を聞いたことがある人は、どれくらいいるでしょうか?
境界知能とは、昔は知的障害と定義されていたIQ70〜84を指す言葉。今では逆に、知的障害や発達障害と認定されないからこそ、生きづらさを感じている子どもたちが存在します。
障害者として該当しない場合でも、個性に合わせた支援を必要とするレベルの子どもたちは大勢おり、本書ではそういった子どもたちと接する際の具体的な対応策を知ることができます。
- 著者
- 滝川一廣
- 出版日
- 2017-03-27
「そもそも発達の遅れってどういうこと?」と思ったことがある方には、ぜひ一度手にとっていただきたい1冊です。
世間では、発達障害やADHDといった言葉が多く使われ認識されるようになってきました。それ自体はとてもよい傾向ですが、実はまだまだ、目に見えない障害もたくさんあるのです。
本書は、児童精神科医として活躍する著者が、わかりやすく作ってくれた発達の遅れに関する教科書的な存在。実際に医者として働く方から、子どものいる保護者まで、幅広い人々の役に立つ1冊となっています。
- 著者
- 渡部 伸
- 出版日
自分の身近に障害を持つ子どもがいなくても、何かの機会に見たり接したりしたことがある方もいるでしょう。そのなかには、自分に何かできることはないか? と考えたことがある方も多いのではないでしょうか。
障害のある子どもに対して、どんな方法やサービスがあり、社会が手助けできるのことはどんな内容なのか。それらを学びたい向けの1冊がこちらです。公的な支援策・経済的なサポート制度を、年齢やシーン別に紹介しています。
心や身体に障害を持った子どもたちと接する仕事は、なかなか打ち解けることが難しかったり、時にはわがままを言ってきたりと、思うようにいかない場面も多いかもしれません。しかし、忍耐強さがあったり、子どもたちの幸せを心から願える方であれば、それを苦労と思わずに仕事に向き合えるはずです。
賃金問題・退職率・人材不足などの問題が完全に解決されるのは、まだ先にはなりますが、社会的にも重要な役割を担っている尊い職業です。興味のある方は、資格取得の条件にも、もう一度目を通してみてください。