住宅やビルの窓、自動車などに使われているガラス板。これらを製造・供給しているのが、ガラス業界、ガラスメーカーです。日本のガラスは世界シェアが高く、日本を代表する産業であるといえるでしょう。ガラスと私たちの生活は密接な関係にあります。だからこそ、より性能の高いもの・安全性の高いものが求められているのです。今後も日本企業がガラス業界を引っ張っていく存在であり続けるために、取り組むべき課題はなんでしょうか。 今回は業界の動向から、ガラス業界に就職を考えている方向けの情報をご紹介します。ぜひ、参考書籍と合わせてチェックしてみてください!
ガラス業界が製造・供給する「ガラス」そのものが、何からできているかご存知でしょうか。ガラスは、珪砂・ソーダ灰・石灰石など、天然の原料を加工することで製造されており、板ガラスは以前、日本のガラス業界の中心事業でした。
板ガラスとは、その名の通り平たい板のようなガラスのことで、鏡や窓が主な用途です。しかし、時代の変化とともに住宅市場の伸び悩みなどの事情から、取り扱う分野の拡大を続けてきました。
今は、スマートフォン・PC・ゲーム機・カーナビの画面など、世界的なディズプレイの用途の広がりとともに、各メーカーはガラス基板のシェアを伸ばそうと発展を続けています。
製造されたガラスの販売先として、自動車業界・建築業界・電子業界などがあげられます。車や住宅以外の身近なところで言うと、スマートフォンの液晶ガラスもガラス業界から供給されたものがほとんどです。
この記事を読んでくださっている方のなかには、以下の企業をCMで見たり聞いたりしたことがある方も多いかもしれません。
日本シェアの約40%を占めている企業です。なんとAGCは、自動車ガラス・フロート板ガラス・ステッパレンズ用石英素材・ETFE樹脂(フッ素樹脂)において、世界NO.1のシェアを誇る企業でもあるのです。
日本シェアの約20%を占めている企業です。AGCと同様に、フロート板ガラスの分野でも代表的な企業としてあげられます。その他、PC・スマートフォン用の液晶ガラスにも強みを持っているのが特徴です。
日本シェアの約15%を占めている企業です。上位2つの企業とは異なり、ガラスを磨いて加工する「光学技術」を強みとする企業です。メガネやコンタクトレンズ・手術後の眼内レンズの事業も展開しているのが特徴です。
液晶ガラスにおいては、世界1位のコーニング社(アメリカ)に続き、AGCと日本板硝子の3社で世界シェアの9割を占めています。日本の企業が2社も含まれていることには驚きですよね。
ガラス業界、ガラスメーカーに就職する場合、当たり前ですが年収は企業規模により異なります。本章では人気企業ごとの年収を見ていきましょう。
全国に580社ほどあるガラスメーカーのなかで最も平均年収が高いのがHOYAです。平均年収は約840万円。2番目のAGCと比べて40万円近く収入が高い結果となりました。もちろん年齢による月給の違いはあるため、20代〜30代だけで見た場合の平均年収は300万円〜500万円と平均年収より少し低い数となります。
ガラス業界において国内シェアNo.1であるAGCの平均年収は800万円前後。以前は縮小傾向にあったガラス業界は最近、少しずつ回復してきているためAGCの年収も800円前後と高水準をキープしています。
ガラスメーカーの平均年収では第3位にランクインする日本版硝子。平均年収は約780万円ほどとAGCを比較すると約20万円の収入差があります。ガラス業界では年収が800万を超えるかどうかが1つのボーダーラインになっているといえそうです。
日本の大手ガラスメーカーは、世界的に大きなシェアを持っているため、グローバルに活躍したい学生や研究分野を活かしたい理系学生から安定した人気を誇っています。就職活動をおこなう際は、ライバルは多いと考えておきましょう。
ガラス業界といっても、その働き方や関わり方はさまざまです。ここでは、各部門の特徴を解説します。
日本国内だけでなく、海外のメーカーにも営業をかけて販売をします。語学力や留学経験がある人は、力を発揮できる可能性が大きいでしょう。コミュニケーション能力も求められるため、語学に苦手意識がある・人見知りの傾向がある方には難しい部署かもしれません。
技術面だけでなく、コストや効率面も考慮する必要がある部署です。実際に、ガラスを近くに感じながら働きたい方におすすめの部署といえるでしょう。
いまは海外製品も進化を遂げ、日本国内でのシェアを伸ばしつつあります。日本のガラスが生き残るため、研究・開発部門には、付加価値のある製品・新しいガラス製品の開発が期待されています。ガラスに関する専門知識をもつ学生は、活躍できる可能性が大きいでしょう。
スマートフォンやタブレットの普及も追い風となり、ガラス業界全体の業績は一時期に比べて回復傾向にあります。現在も需要は拡大傾向にありますが、中国企業の低価格化が進んでおり、それが日本のガラス業界において厳しい価格競争を強いられる一端となっています。
その他にも、今あるガラスの使い方の他に新しいガラスを使った新商品の開発を進めたり、「より質のよいガラス」「より高性能なもの」「エコである」といった付加価値をつけたガラスの製造をしていく努力が必要となっていくでしょう。
- 著者
- ["加藤雅則", "チャールズ・A・オライリー", "ウリケ・シェーデ"]
- 出版日
ガラス就職するなら大手企業へと考える方も多いでしょう。
こちらの書籍では、2章でもご紹介したAGCに実際に起こった「組織変化」の内容について知ることができます。面接や企業研究としても使用可能です。
- 著者
- ["奥 修", "奥 修"]
- 出版日
アートの世界でも活躍している「ガラス」。世界に数万種いるといわれ、ガラスでできた殻をもつ藻である珪藻を使用したアート作品が存在します。
著者の奥修さんは、自然の中から採集した珪藻をならべて、美術作品を作り出しているをつくっている「珪藻アート」作家。ステンドグラスやガラス細工など、美術的な観点からガラスに興味を持ったという方であれば、とても楽しく眺められるはずです。
ガラス業界で働く予定のない方でも、ボーッと眺めているだけで不思議と癒されてしまいます。
- 著者
- ["安房 直子", "なな, 降矢"]
- 出版日
ガラスを重要なテーマの一つとして取り上げている絵本は、結構多いもの。最近では癒しを求めて、子ども向けの絵本を集める大人も増えていますね。
読書や仕事の箸休めとして、絵本を1冊手に入れてみるのもおすすめです。ちょっと切なく、暖かなお話の絵本。ぜひ、手に取ってみてください。
ガラス業界に関わりたいという方は、技術職だけでなく総合職での活躍も可能です。とくに営業職は、語学力やコミュニケーション能力など幅広い能力を必要とします。学生であれば、今のうちに勉強や留学・旅行など、できることはたくさん経験しておくことが、後々役に立つはずです。
海外との取引や販売など、グローバルに活躍したいという学生が多く、就職するにはライバルも多い業界。ガラス業界が気になっている方は、ぜひ参考書籍の絵本も読んでみてください。
はるか昔から、人の手で一つひとつ作られてきたガラスの温かみを知ることができますよ。