普段何気なく口にしているハチミツ。実は国産のものは、わずか7%とも言われており、ほとんどが外国産です。ハチミツを集めるのはミツバチの仕事。そのミツバチたちの健康管理や環境の整備をおこない、花の蜜をハチたちが集めて来られるように頑張っているのが養蜂家の方々です。 養蜂家とミツバチの頑張りが、ほかの農作物の収穫量などにも影響を与えるということを、知らない方も多いはず。現にミツバチは世界的に数が減少し、問題となっています。 今回は、そんな養蜂家の仕事内容や年収、就職事情に加え、養蜂家が直面している問題、この職業に向いている人の特徴など、幅広く解説していきます。
そもそも養蜂とは、ミツバチを飼育し、ハチミツ・ローヤルゼリー・プロポリス・蜜蝋(みつろう)などを採取することをいいます。そのミツバチを飼育し、花の蜜を集め、採取する専門家が養蜂家です。
養蜂は畜産のひとつで、他の畜産同様に重労働です。養蜂家がどれだけ手間をかけるかでハチミツの質が変わってくるため、とてもやりがいのある仕事です。
養蜂家は、ミツバチの飼育・群れの繁殖を促す作業や、ミツバチが集めた花の蜜の採取・その採取した蜜から製品を作るのが仕事です。なかには、飼育のみに特化した養蜂家もおり、養蜂のためのミツバチを増やして別の農家に販売する仕事をメインにしている方もいます。
養蜂にオフシーズンはありません。これは生き物を扱う仕事では、割と当たり前のことかもしれませんね。
ハチミツはお菓子作りや料理に使われ、飲食店でも一般の家庭でも欠かせない食材です。同じく養蜂で採取できるローヤルゼリー・プロポリスは、健康食品として広く認知されています。
食を楽しむためにも、健康や美容のためにも養蜂家の役割はとても重要なものなのです。
養蜂のやり方には、「定置養蜂」と「移動養蜂」という2種類の方法があります。
1カ所の養蜂農園にとどまり、そこで咲くさまざまな種類の花の蜜を集めて運営するやり方。
季節の花々を求めて、各地を移動しながら養蜂するやり方。春から夏のシーズンにはレンゲやナタネ……というように、特定の花が開花する時期に合わせて、ミツバチたちが過ごしやすい土地に巣箱を移していく。
どちらの方法でも、メインとなる仕事内容は、蜜蜂用の巣箱の設置・衛生面や温度の管理・蜜蜂の健康管理・蜜の採取などです。その他の業務として、増えすぎたハチの販売・ほかの農家の作物に必要な、受粉用ミツバチのレンタルするといったこともおこないます。
養蜂の方法は2種類なのに、養蜂家によってハチミツの風味が違うことを不思議に感じる方は多いでしょう。
それはその通りで、養蜂家次第でハチミツの味は変化していきます。コクを出すためにはどんな方法が最適か、より純粋なハチミツを採取するために蜂に何を与えればよいかなど、ミツバチの飼育方針により味が差別化されます。
養蜂を突き詰めれば突き詰めるほど、美味しいハチミツを生み出せるというのは、とてもやりがいがありますよね。
参考:なぜ自家製はちみつは美味しいのか ー 養蜂家だけが知っている本当の理由とは?
厚生労働省発表の「賃金構造基本統計調査」などを参考にしても、養蜂家の具体的な平均年収を知ることは難しいのが現状です。推定にはなりますが、年収はおおよそ300〜400万円といわれています。
特定の養蜂家の「弟子」になった場合は、高収入を得ることは難しく、その間は師匠から技術を教わったりノウハウを学ぶ期間でもあるため、月収10万以下の場合もあります。
なかには独立して1000万円以上稼ぐ方もいるため、初学の頃から経営についても学んでおいてもよいかもしれません。
養蜂家という職業を志した時に気になるのが就職先ですよね。養蜂は畜産のひとつですので、就職先の種類はあまり多くありません。
養蜂家を目指す場合の主な就職先は、大きく分けて以下の2つです。
大手の養蜂園であっても、いきなり飼育に関われる仕事内容の求人は、きわめて少ないのが現状です。実際に、「養蜂園」というキーワードで求人を検索した場合も、製品の販売職であったり、営業職であることも多いのです。
大手企業の「杉養蜂園」には、部門別の採用情報が載っています。興味のある方はチェックしてみてくださいね。
少しでも早く、確実にミツバチの飼育に関わりたいという方は、実際に養蜂家として活躍する人に弟子入りするのが一番の近道かもしれません。
参考:杉養蜂園
中学や高校など、早いうちから養蜂家を目指している方は、大学で以下の分野を学んでおくとよいかもしれません。養蜂や畜産に関わるなかで必要な基礎知識を身につけることができるでしょう。
養蜂家になるために、学んでおくとよい分野をご紹介します。
大学への進学を検討している方は、これらを学ぶと養蜂家になってからも役に立つ勉強ができます。
残念ながら日本には養蜂の専門学校がないため、現役の養蜂家は独学の方が多いようです。記事の後半では、自宅で始められる養蜂についての書籍もご紹介しますので、そちらもあわせてチェックしてみてくださいね。
玉川大学の研究所には「ミツバチ科学研究センター」があります。日本で唯一のミツバチに関する総合研究機関です。研究は1950年から始まり、3つの研究部門を設置して活動を展開しています。
毎年冬には約300名が集う「ミツバチ科学研究会」も実施しており、活発に活動がおこなわれています。日本最先端でミツバチに関するより深い知識を学びたい方は、玉川大学農学部への進学がおすすめかもしれません。
実は、2000年代半ば頃〜ミツバチ不足が問題になっています。日本だけでなく、世界中でミツバチの減少がみられ、とくにドイツ・スイス・スウェーデン・オーストリアは、減少が顕著に現れています。
日本には、セイヨウミツバチとニホンミツバチがおり、養蜂には採蜜量の多いセイヨウミツバチが使われることが一般的です。
ミツバチの減少については、ネオニコチノイド系農薬によるミツバチの大量死・ミツバチに寄生するダニの蔓延・海外からの女王蜂輸入禁止の影響が原因ではないかという説が濃厚です。
もしも、ミツバチが受粉を促してくれなくなってしまったら。その影響は、私たちにとっても大きいものになることが予測されています。
たとえば、イチゴ・リンゴ・アーモンド・キュウリといった、身近で健康にも有効な作物が食べられなくなる可能性も。食べられたとしても、現在の価格と比べて非常に高価な農作物になってしまう可能性も考えられるのです。
多くの農作物はミツバチによる受粉に依存しているのが現場です。農作物だけでなく衣服を作るのに必要な綿の生産にも影響を及ぼすと言われているのです。
養蜂家の仕事は、ミツバチに対して強い興味がなければ務まらない難しい仕事です。日常的に研究が必要であったり、ミツバチの生態などが変わる可能性も考えられます。
そうした状況に陥った際に、原因を突き詰める行動力や探究心が必要となってきます。
試行錯誤することが嫌いじゃないという方は、養蜂家に向いているかもしれません。たとえば、PDCAで仕事を回すことが得意な人などがあげられます。
少し特殊な素質ではありますが、ミツバチに刺されても平気であることは意外と重要です。養蜂家をしていれば、ハチに刺されるのは当たり前のこと。刺されるのが怖いという人には残念ながら向いていないでしょう。
また、ミツバチに対して過剰な愛情を抱いてしまうことも、時には業務の妨げになってしまう可能性があります。ミツバチとビジネスライクな関係を築けることも、この職業にとって大切な要素です。
- 著者
- ["東雲輝之", "トウヨウミツバチ協会代表理事 銀座ミツバチプロジェクト最高顧問 高安和夫"]
- 出版日
実は都会でも養蜂をおこなうことが可能です。2006年に開始した「銀座ミツバチプロジェクト」では、都市養蜂で年合計約1トンものハチミツを収穫しています。
まずは自宅で養蜂をしてみたい方におすすめできるのがこちらの書籍です。
養蜂をおこなううえで、必要な手続きや道具などを教えてくれています。カラー写真やイラストも多いので、初心者にもやさしい内容なのが嬉しいですね。
養蜂関連の申請書類や法律についても巻末に記載されています。養蜂の入門書として充実した内容の1冊です。
- 著者
- 文男, 松本
- 出版日
「田舎暮らしに憧れる」という方は、将来自分で養蜂を始めてみるのもいいかもしれません。田舎で農業などをやってみたいと思ったことがある方は、ぜひ手にとってみてください。
日本でも取り扱いの多い、セイヨウミツバチの養蜂技術が紹介されています。日本国内で養蜂家になろうと考える方のための、バイブル的1冊です。
写真が多く読みやすいので、養蜂技術やミツバチに関する知識が浅い方におすすめできます。
- 著者
- 吉川 浩
- 出版日
養蜂に関する書籍のなかでも、社会派な内容が書かれています。
ミツバチと自然環境保護の関係や、なぜ養蜂家という職業が重要なのかという一歩踏み込んだ養蜂家の世界を知りたい方に読んでいただきたい1冊です。
ミツバチに対する誤解や、西洋ミツバチと日本ミツバチの違いについても言及されています。日本の本来の豊かな自然を取り戻すために、日本ミツバチの存在は欠かせないことがわかってきます。
環境について関心がある方が読んでも面白いと感じられる内容であることは間違いありません。
養蜂家は、就職先を探すとなると、なかなか難しい職業ではあります。しかし、自分で試行錯誤することが好きな方には向いている職業といえるでしょう。
養蜂家として働く上では、ミツバチに刺されたり、天敵であるスズメバチなどの危険な生き物と対峙しなければいけない場面もあります。生き物を相手にする仕事すべてに当てはまることではありますが、長期休暇を取ったりすることも難しい職業です。
養蜂を生活の一部として楽しんでいきたいという覚悟のある方に、ぜひ挑戦してみてほしい職業です。参考書籍には、田舎・都会どちらの養蜂についても紹介していますので、ぜひ自分にあった方法を探してみてくださいね。