いざ恋愛小説を読もうと思っても、恋愛小説はたくさんある、ジャンルもいっぱいで困ってしまう!と迷ったことはないでしょうか。今回は、中でも20代の方におすすめの恋愛小説を紹介したいと思います。
様々な文学賞で受賞最少年齢を更新している綿矢りさによる作品です。主人公は26歳のOL良香。「私には彼氏が二人いて」という衝撃的な書き出しから始まるので、二股をかける小悪魔のお話かと思いきや少し違います。
良香はその二人のことを「イチ」と「ニ」と呼んでいるのですが、「イチ」は良香が小学生の頃から片思いをしている相手、「ニ」は良香を好いてくれている同僚のこと。そんな二人の男性を彼氏と呼ぶのは支離滅裂な思考回路ですが、良香のこじらせっぷりは物語の進行と共にますます加速していきます。自分が好きな人と自分のことを好きな人。良香が最終的に選ぶのは、どちらになるのでしょう?
- 著者
- 綿矢 りさ
- 出版日
- 2012-08-03
好きな人を見つめる視線の熱の入り方も、自分を好きだと言ってくれる人に感じてしまう嫌悪感も、とってもリアル。好きになった人と結ばれるのが幸せか、好かれた人と一緒になるのが幸せか。女性にとって永遠のテーマとも言える命題に立ち向かっていくこじらせOLのヒロイン。
彼女は、思い込みが強い、腹黒い、嘘つき、と決して応援したくなるような素敵なヒロインではありません。だけど、どこか憎めない。それは読み手の私たちが誰しもそんな経験があり、心の琴線に触れるような描き方がされているから。リアルでちょっとダーティなヒロイン・良香なりの結論の出し方を、ぜひ見守ってみてください。
スターツ出版が運営するケータイ小説サイト野いちごの投稿作品の一つで、絶大な支持を得て書籍化されました。沖田円の書籍化第一作目です。
複雑な家庭環境に悩む女子高生・セイと、記憶が一日しか持たない男子高校生・ハナの物語。二人はそれぞれが抱える悩みを分かち合っていきます。何度も初めましてを繰り返しながら距離を縮めていく二人ですが、抗えない過酷な運命が待ち受けていました。
- 著者
- 沖田 円
- 出版日
- 2015-12-28
高校生同士のピュアなラブストーリー。展開は王道と言えば王道ですが、特にハナのキャラクターがとても魅力的です。柔らかく不思議な雰囲気を持つ彼は、両親が不仲で家に居づらいというセイに居場所を与えてくれます。
前半はそうしてセイがハナに救われていくのですが、後半は立場が逆転。自分を救ってくれたハナのため、悲しい思いをしながらもセイは彼が抱える不安に対し共に立ち向かっていきます。僕は何度でも、きみに初めての恋をする。読み終わってから改めてタイトルの意味を考えると、切なさで胸がいっぱいになります。
江國香織の代表作の一つで、紫式部文学賞を受賞しています。アルコール依存症で情緒不安定になりがちな妻と、医師で同性愛者の夫との結婚生活を描いた長編作品です。
妻の笑子と夫の睦月はお見合いで出会い、その席でお互いの秘密を明かし、合意の上で結婚を決めます。睦月には男子大学生の恋人もいますが、三角関係というわけではなく、笑子とは奇妙な友人のような関係に。お互いに充足した生活を送っていた笑子と睦月でしたが、周囲からの子供を望む声が増すにつれて苦悩していくことになります。
- 著者
- 江國 香織
- 出版日
- 1994-05-30
アルコール依存症の妻と、同性愛者の夫という奇妙な設定。周囲からの声や一般常識を排除すれば二人の生活は至って穏やかで問題なく営まれており、作中でもそんな優しさが流れています。そんな飄々と生きる彼女の姿には「恋愛」の定義や「結婚」の意義を考えさせられます。
笑子の「どうしてこのままじゃいけないのかしら。このままでこんなに自然なのに」という台詞がまさにそんな「普通」へのその問いかけになっているのかもしれません。センシティブな点をついた題材のように思えますが、繊細な人物描写や生活の描き方の魅力が先行し、はらはらせずに読み進めることができます。長年に渡って愛されている名作恋愛小説です。
歌人として活躍していた加藤千恵による、初の恋愛小説集。短編が9つ収録されています。タイトルが表しているものは、恋の甘さとほろ苦さ。甘さも苦さも同時に味わうことができる一冊です。
- 著者
- 加藤 千恵
- 出版日
- 2009-10-20
一編目、「友だちの彼」は、友だちに黙って友だちの彼氏と肉体関係のある女の子の話。彼氏は登場することなく友だちとのやり取りだけで物語が進行していくので、まるで自分が浮気相手になってしまったかのような、疑似的な緊張感を持ちながら読み進めていくことになります。知らん顔して友だちと話していた主人公ですが、些細なミスをおかしてしまって……。
短歌の作り手らしく、物語のその先を読者に委ねるような余韻のある終わり方をするものが多いことが印象的です。それぞれのお話ではタルトやジャム、羊羹などのスイーツが登場するのですが、そのモチーフ選びも秀逸。今時の女の子と今時の男の子の甘かったり苦ったりする恋愛が、若い作者の瑞々しい感性で描かれた短編集です。
宮崎あおい、向井理主演で映画化もされた、西加奈子のゆったりとした夫婦物の恋愛小説。無辜歩(むこあゆむ)、妻利愛子(つまりあいこ)という名前からお互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う、ちょっとユーモラスな二人のお話です。
この若夫婦は、東京から九州の田舎にやってきて、田舎暮らしを始めます。小説を書いているムコさんと、感受性が強すぎて周囲の生き物の声が聞こえてしまうツマ。夏から冬にかけての、二人のゆっくりと流れる穏やかな時間が流れていきます。
- 著者
- 西 加奈子
- 出版日
- 2008-03-06
しかしある日、ムコさんが一通の手紙を受け取ります。そこにはムコさんの過去と彼の背中の大きな鳥のタトゥーに関わるあることが書かれていました。そしてツマを残し、ムコさんは東京へ向かってしまいます。
初めは出会うべくして出会ったような二人の仲睦まじい生活が描かれ、田舎暮らしの若夫婦の物語といったほのぼのとした様相。しかし、後半ではちょっとした出来事から二人の間はギクシャクしてしまうことに。
どんなに仲が良い夫婦でも、本当に些細なことでヒビが入ってしまうことがあるのだなあと感じさせられます。一旦は離れ離れになってしまう二人ですが、最後にはこの夫婦らしい優しいラストが待っています。登場人物が優しい人ばかりで、心穏やかな気持ちになれるハートフルな恋愛小説です。
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社会人3年目の向坂伸行は、昔読んだライトノベルの書評を探すうちに、「レインツリーの国」というブログにたどり着きます。管理人である「ひとみ」の考え方や言葉遣いに興味を持ち、メールを送ってみることに。
駄目で元々と思い送ったメールが、予想外にも2人をつなぎました。何度かのやりとりを経て、伸行はひとみに直接会おうと提案します。「会いたいけど、それと同じくらい怖い気持ちが強い。」と言うひとみ。ひとみの真意はわからぬまま、2人は待ち合わせ……。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2015-09-24
インターネットを介して出会った男女が恋仲になる。ありふれた始まりと思いきや、2人のやりとりには実に多くのメッセージが込められています。気を遣っているようで実は自分本位な態度であったり、未熟な自分に腹を立てて心をかき乱したり。大人としては覆い隠したくなるような一面も、2人は不器用ながらにさらけ出し合っていきます。
物語は伸行の視点を中心に進行しますが、実際に話の要となるのはひとみの心情の動き。事故で聴覚障害者となったひとみは、障害を通して度々不遇な体験をしてきました。その事がトラウマとなり、自ら壁を作ってしまっています。
そんな事は露知らず、伸行は自分の想いを真っすぐにぶつけていきます。対して口数の少ないひとみは非常に慎重。相手の言葉をじっくりと咀嚼し、発信する単語も丁寧に選ぶ様子からは、ふさぎ込みがちな性格がうかがえます。
すれ違うわけでもないのにどこか噛み合わない2人のやりとりには、静かに見守ってあげたくなる繊細さが垣間見えます。障害をテーマにした物語ではありませんが、トラウマを盾に自分を守るひとみの姿には、彼女が痛感せざるを得なかった「世間の悪意」という影が見てとれます。「ハンデがある=人より劣る、というわけではない。」とはっきりと言葉にする伸行の行為は、冷酷な一面を持つ世間を揶揄しているのかもしれません。
ぶつかり合うたびに胸を痛め、さらに相手を想う不器用な2人を見ていると、「恋愛にプロなどいない。」と感じずにはいられません。相手の胸に飛び込む勇気を教えてくれる恋愛小説です。
主人公の花音が22歳の誕生日に出会った男性、海晴。直感的に惹かれるも、彼はアメリカへと旅立つことに。花音は彼への気持ちを抑えきれずに出発前の空港へ向かい、そこから2人の恋が始まります。
出会った瞬間からお互いに運命を感じ、電話やメールのやりとりで愛情を深めていく2人。しかし距離と時差に阻まれた恋愛は、会えない不安や心配を募らせ、些細なすれ違いが大きな亀裂へ発展。ほんの少しのタイミングのずれが2人を引き裂いてしまうのです。
12年後の再会は、果たして遅すぎたのか、それとも……。
- 著者
- 小手鞠 るい
- 出版日
- 2010-02-26
物語は海晴からのメールと花音の近況で進んでいくため、非常に読みやすくなっています。海晴の状況がわからない分、いろいろなことを想像したりメールに一喜一憂したりと、花音と自分がシンクロしているような感覚に陥ります。
女性は年齢を重ねると、恋愛だけではいられなくなり、いろんな壁にぶち当たるでしょう。家族や仕事など、周囲の喧騒に心が少し疲れたときに、柔らかい気持ちを思い出せる作品です。
遠距離恋愛を経験したことがある人なら強く共感できるでしょう。
海の近くの市立図書館で働く20代、30代の4人の男女が織りなす恋愛小説。「マメルリハ」「ハナビ」「金魚すくい」「肉食うさぎ」の4作で構成された連作集で、各章で主人公が変わります。
代わり映えのしない日々を送っていた図書館員、本田、日野、松田の3人の前に現れたのは春香という台風のような女性。彼女のとる突飛な行動に翻弄されながら、変化していく4人の心情が描かれています。
- 著者
- 畑野 智美
- 出版日
- 2015-09-15
海の見える街の図書館、という素敵なシチュエーションで読者は一気に引き込まれいくでしょう。
物語は派手な事件が起きるわけではなく、ありのままの若者の生活を描き出しています。自転車での通勤や、飼っているインコなどのエピソードが積み重なり、自然と共感をよびます。
1章のタイトルになっている「マメルリハ」という単語は聞きなれないですが、この章の主人公、本田が飼っているインコの種類の名前。彼は物語の途中で溺愛していたマメルリハを逃してしまいます。
このマメルリハはどうなってしまうのか、本田と春香の関係と共に注目です。
電子掲示板、通称2ちゃんねるへの書き込みから始まる恋愛ストーリーです。よくあるベタなラブストーリーではなく、2ちゃんねるが元となる時代の流れを汲んだ作品です。アキバ系オタクの電車男が2ちゃんねるの力を借りて恋愛を成就させるという、現代らしい要素が詰まった話なので、特に若い方にはおすすめです。
- 著者
- 中野 独人
- 出版日
主人公、通称電車男は恋愛経験ゼロの恋愛については全くのダメ男。彼は自分の恋愛についての相談を2ちゃんねるに書き込み、それを読んだ様々な人からアドバイスや励ましの言葉をもらいます。
電車男を応援する他の利用者(スレ住人)と同じように、読んでいる誰もが彼の恋愛を応援したくなるような作品です。
20代の方におすすめする恋愛小説を紹介しました。主人公が20代のものばかりではなく、高校生や、夫婦が出てくるものも紹介しています。恋する気持ち、相手を大切に思う気持ちに触れたくなった時は、気になるものを探してみてください。