よく耳にする仕事のひとつである政治家という職業。国政に関わり、国民の健康的で豊かな暮らしを実現するため、法律の策定や各所との調整をおこなう「国民の代表」です。政治家になるには学歴や資格は不要で、唯一の方法は選挙に当選することだけ。過去にはさまざまな有名人が政治家へ転身しているのも、多くの人が目にしているでしょう。 本記事では、政治家になるにはどうしたらいいか、また政治家の給料(歳費)の額、ビジネスパーソンからの転職で大切なことなどをご紹介しています。記事の最後にはおすすめの書籍もご紹介しているので、こちらもぜひ目を通してみてくださいね。
日頃、頻繁に耳にする職業のひとつに政治家があります。政治家とは、国会や地方議会の議員、地方自治体の首長、内閣総理大臣をはじめとする国政をおこなう大臣のことさしています。
政治家は、人々の暮らしに必要な法律や、豊かな社会を目指すために必要な政策と実行に必要な予算などの取り決めをおこないます。社会がよりよい方向へ向かうための調整役、国民からの代表という立場です。
しかし2019年11月、言論NPOの「日本の政治・民主主義に関する世論の調査」によると、その立場は疑問であると言わざるを得ません。政治家を自分たちの代表だと思うかという質問に対し、「思わない」「どちらかといえば思わない」の回答が計45%という結果になっているのです。
政治家の目に見える活動が国民の幸せに繋がっていないことから、このような結果になったのでしょう。これから政治家を目指す方は、政治家は国民の代表であるとはどんな意味を持つのか、十分に考える必要がありそうです。
参考:「政治家は国民の代表と思わず」45% 課題解決「期待できない」は70% 言論NPO調査
政治家は重大な局面で判断を迫られます。そのため学歴や経験が必要と思うかもしれません。実際に政治家として活躍している方々の経歴は華々しいものです。
実は、政治家になるための条件は多くありません。被選挙権のみです。なお、被選挙権とは、国会議員・都道府県知事・地方議会議員・市区村長に立候補できる年齢です。
高卒・大卒という学歴は関係ありません。過去には、田中角栄のように中卒で総理大臣になった事例もあります。必要なのは学歴ではなく、計画力や実行力、政策の内容です。
よりよい国にするため、日々政策の策定をし実行に移す。政治家の活動にカレンダーは関係ないため、365日24時間仕事で休みはないと言われることも。そんな政治家の給料事情はどうなっているのでしょうか。
まず国会議員の給料(以下:歳費)について説明します。歳費は「国会議員の歳費、旅費および手当等に関する法律」で定められており、衆議院、参議院ともに同額です。
しかし、2020年5月から1年間は新型コロナウイルスの影響で2割削減され、約103万円が歳費となっています。
活動費は別途支給で、文書通信交通滞在費は月100万円です。第2の財布と呼ばれ、新幹線のグリーン車代や往復航空券などが支給されます。他にも立法事務費と呼ばれる国から支給される経費があり、こちらは月65万円が支給されます。どちらも報告義務が不要、税金も非課税です。
すべてを合計すると、年収は約3000万円ほど。膨大な金額を受け取っているのが分かりますよね。
国会議員が首相・閣僚・副大臣・政務官になると国会議員の歳費に加えて次の給料が支払われます。
首相の年間給与額は約4000万円ほどで、アメリカ大統領と変わりない額だと言われています。
都道府県知事・市区村長・地方議会議員の歳費(給料)については、予算案が議会で審議され可決されれば支払われます。たとえば2020年に総務省が発表した「平成31年4月1日地方公務員給与実態調査結果」では、地方自治体の首長の平均月額給与は以下の通りです。
1位と10位の間だけでも約30万円ほどの違いがみられます。しかし実は大阪府知事は減額措置を取っているため、実際に支給されているのは約100万円です。そのため最も多い月額給与は神奈川県横浜市長となります。
月額給与額に加え、活動費も議会で可決された予算に則って支給されます。年収は地方自治体によって差がみられるでしょう。
一方で、国会議員の経費が気になります。
たとえば、秘書については国費が支払われる公設秘書がつきます。追加して秘書を雇う場合は国費で支払われないため、私費である歳費の中から支払います。私費で雇った秘書のことを私設秘書といいます。
他に、選挙の時期になると運動員や選挙カーの手配が必要になります。事務所を借りていれば、家賃も支払わなければなりません。さまざまな経費がかかりますが、これらの経費については歳費から支払われます。
政治家は給料を多くもらっているので批判されがちですが、費用が歳費から支払われることや意外に多くの経費がかかることを考えると多くもらっているとは言えないのかもしれません。
政治家として活躍している多くの人は多様な経歴を持っています。エリートコースを歩んできた人もいれば、異色の経歴を持つ人も。先述したように、政治家になるのに必要な学歴も資格も明確には定められていません。
たとえば、第94代内閣総理大臣を務めた菅直人さんは、幼少期から科学者に憧れ、東京工業大学理工学部に進学しています。卒業後は弁理士の資格を取得し、特許事務局に就職をしています。
4年間働いて独立した後、初めて参院選全国区に参加。そこから政治家としてのキャリアをスタートさせています。
もともと政治活動に興味があったことや、市民運動へも参加していたことから自然と政治家への道を歩んでいったようです。政治家として必要なのが学歴ではなく志や行動力だということが分かるよい例ですよね。
参照:Vol.012 [国会議員] 菅 直人 衆議院議員 「僕は小さい頃も大学時代も政治家にはまったく憧れていなかったんです」
- 著者
- ["良成, 国分", "絵梨, 浜崎"]
- 出版日
イギリスで出版され、日本を始め世界14カ国で翻訳され読まれている1冊です。高校生までの生徒を読者対象としていますが、子どもから大人まで幅広い年代の方々が楽しめる内容が詰まっています。
欧米では政治は身近なものであり、当たり前のように話題にあがり、一人ひとりが意見を持っています。一方で、日本では自分とは関係がないとかつまらないといったネガティブな印象で、欧米とは異なります。
この本では、政治社会の仕組みを面白いエピソードを織り交ぜて解説しています。豊富なイラストがあり、トリビアもあるので初学者にとって読みやすいでしょう。
第1章「政府のかたち」では、古代ギリシャの民主制・ローマ帝国・絶対王政から間接民主制に至までの政治制度、第2章いろいろな政治システムでは三権分立を解説しています。高校の授業で世界史を選択したけれど流れが掴めない・分からないと感じた人にも読んで欲しい本です。
読後には、ニュースを見る時に自分の意見を考えたり、学校の授業で積極的にディベートをするなど、実践にも力を入れてみてください。
- 著者
- 安倍 晋三
- 出版日
「古い日本を新しく、新しい日本を強くする」これは、安倍晋三内閣総理大臣(当時)が2012年に第2次政権として政権復帰した時の印象的なメッセージです。
ワシントンでの日本復活宣言・アジア諸国に対する新外交5原則・積極的平和主義への決意・オリンピック招致演説など安倍総理が就任以来の主要外交スピーチを一挙公開しました。
テレビの報道では一部しか伝えられないため、演説のすべてを知りたい読者のニーズに応えられる本です。
この本の冒頭には、安倍第2次政権以降に訪問した外国が載っています。世界地図を見ると、彼がいかに世界中を飛び回って仕事をしていたかがよく分かります。
高校生以下の年代には、安倍晋三第2次政権以降しか知らない人も多いでしょう。これからの社会を知るため、考えるため、安倍政権はどのような実績を上げてきたのか学びたい若年層にすすめたい1冊です。
- 著者
- ["吉村 洋文", "松井 一郎", "上山 信一"]
- 出版日
橋下徹大阪府知事以前の大阪は、停滞と衰退の象徴でした。
橋下徹氏が大阪府知事になってから大阪がどのようにして蘇ったのか。大阪府はどのようにして幼稚園から高校までの教育無償化・地下鉄民営化などの改革を実現できたのか。これまでの大阪府・大阪市の改革を総括した本です。
この本のはじめには、大阪府と大阪市の再建が取り上げられています。大阪府議会議員を削減したことによる高校無償化の実現。現在、高校無償化は当たり前のように感じている読者がいると思いますが、この本を読んで大阪府の橋下徹知事(当時)が最初に実現させたことが分かります。
大阪市の改革の事例として、地下鉄があげられているのも興味深いでしょう。今の大阪メトロのトイレはきれいになって使いやすくなっていますが、大阪市営地下鉄のトイレは汚い・臭いと言われ評判が悪かったのです。
また序章では、大阪府と大阪市が一体となって2020年から流行している新型コロナウイルスに取り組んだことが書かれています。
新型コロナウイルスへの対応だけでなく、さまざまな行政サービスの面で、なぜ大阪都構想が必要なのか。知る機会の少ない大阪都構想について全容を知りたい読者におすすめしたい本です。
今回は政治家について紹介しました。
政治家といえば、歴史に残るような実績を残せる、やりがいのある仕事です。やりがいの一方で、多額の給料問題や、経費などの金銭問題でやり玉に上げられることが多く、決してやりがいの一面からでは判断しきれない部分があります。
政治家になるには学歴や経歴などは関係なく、方法は選挙で当選することのみです。そのため多くの人に機会がひらかれている職業であることは間違いありません。最低年齢は設けられていますが、上限はないため多くの方がビジネスパーソンから政治家へと転身しています。
政治家の給料については国会議員・地方議員ともにホームページで公開されています。地方議員については各地方公共団体のホームページで公開されていますので、参照してください。
いきなり選挙に出るのは難しいので、まずは小さな第1歩から始めましょう。政治について問題意識を持ち始め、政治家を目指したいと思ったなら、政治家が主宰している塾と事務所の手伝いをすることから始めてみてはいかがでしょうか。