5分でわかる給食業界!市場規模と構造。栄養士資格の有無と人手不足問題について

更新:2021.12.2

小学校から中学校まで、誰もがお世話になる学校給食。給食費を払い、毎日食べられる給食だけでなく、高校や大学にある学食も実は給食に含まれます。誰もが学校給食によって育った側面があるにも関わらず、実は仕組みをよく知らない給食業界の特徴です。 本記事では、学校給食の2つの種類から市場規模など給食業界の概要について解説します。業界に充実する方々がどのようにして仕事をしていて、働いているのかを見ていきましょう。記事の最後には、学校給食が生まれた背景から、家庭でも実践できる学校給食のレシピ、管理栄養士になるための教本なども紹介しています。給食業界に関心のある方は、書籍もぜひ参考にしてみてくださいね。

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給食業界とは

給食業界は何となくイメージできるようでいて、どういう仕事があるのかあまり想像がつかないかもしれません。まずは給食業界がどのような「給食」を作って提供しているのかを見ていきましょう。

営業給食と集団給食

学校給食の印象が強いですが、業界内では「営業給食」と「集団給食」のふたつに分かれます。営業給食とはいわゆる外食産業のことで、不特定多数のお客さんに向けて食事を提供します。集団給食とはその反対で、特定のお客さんに向けて食事を提供します。

一般的な「給食」は集団給食

つまり、一般的な「給食」が指す学校給食は集団給食です。また、メニューを自分で選べる学食も、同様に特定のお客さんに向けて食事を提供しているので集団給食に含まれます。会社の食堂、いわゆる社食や病院の入院食も含まれます。

給食業界の概要は。集団給食の現状

営業給食と集団給食について解説しました。営業給食は実質的に外食業界なので、続いては集団給食について詳しく見ていきましょう。

市場規模は大きい

公立の学校や保育所をはじめ、病院、企業など、さまざまなところで給食が利用されています。特に近年では福祉施設での著しい需要増加が見られます。このため給食業界全体の市場規模は大きいといえます。

一部の学校では給食の代わりに弁当持参、長期休暇中の学童での食事問題などもありますが、総合的に見ると日本では必要なところに給食が行き届いています。このため給食業界はいわゆる「成熟産業」であり、これ以上産業としての成長は見込めない段階にあります。

各企業ごとのシェアが少ない

給食業界は、シェアを大きく持つ大規模な企業も少なく、参入数が多く各企業ごとのシェアが少ないというバランスです。多くの企業で全体の5%ほどのシェアを獲得しているという調査もあります。

また、学校の給食・食堂は原価や栄養バランスなどの条件が厳密に定められており、売り方の自由度が低い業態です。公立校であれば競争入札によって受注する企業が決まることもあり、場合によっては過当競争が発生してしまいます。

競争入札とは、自治体などの官公庁が企業と契約を結ぶ際におこなわれるものです。発注側が提示する条件を満たしながら、「うちはこの金額でその仕事を受注できます」と企業側が提案します。複数の企業から提案を受け、もっとも条件のよいものを発注側が選びます。ほとんどの場合、もっとも条件のよいものとは「もっとも安いもの」のことを指します。

これらのことから、給食業界は「手堅く需要があるが、収益性が低い」という構造があることが分かります。数年前から学食を運営する企業の倒産ニュースが聞かれるようになり、給食の難しさが議論されています。特に、低価格でたくさんの給食を請け負っているような企業は予想外の事態に影響を受けやすいといえます。

また、2020年は一斉休校・対面授業の中止によって多くの給食・学食が休業を余儀なくされました。なかにはやむを得ず撤退した企業もあり、情勢が元に戻ったあと給食が滞りなくおこなえるのか不明のままという学校も珍しくありません。

一方で集団給食以外の食品産業もおこない、バランスの取れた経営をおこなっている企業もあります。具体的な就職活動をする際、特に、ひとつの会社で安定してキャリアを積みたい場合は、業界という大きなくくりだけでなく各企業の経営戦略も丁寧に確認しておくとよいでしょう。

参考:食堂運営企業の倒産で「分かったときには、もう今日の昼食が作れない」 学食が営業できなくなる大学も - ねとらぼ給食(コントラクトフード)業界の最新M&A動向 | 山田コンサルティンググループ 

福祉関連サービスでの給食需要が増えている

一方、今後の需要増として注目されているのが福祉関連サービスでの給食です。入居型の施設だけでなくデイサービスやショートステイなどの短期利用でも食事が発生するため、高齢化にともない、利用者数が増えていくことが予測されています。

福祉の現場は基本的に介護保険で賄われているため、公立校と同様に予算が潤沢にあるわけではありません。しかし差別化を図るための追加メニュー、自宅に持ち帰る用の弁当作成など、周辺の需要も押さえた展開がおこなわれています。

中食産業への進出も

毎日作りたての弁当、もしくはまとめて冷凍弁当を届ける取り組みも広がっています。外食でも自炊でもないため「中食産業」と呼ばれます。塩分やカロリーをコントロールしなければならない人向けに作られているものはもちろん、それ以外の需要も獲得しています。

自分で食事を用意することが難しい、買い物になかなか行けないというのは世代や地域を越えた課題です。給食のノウハウでそれらを改善する取り組みもなされています。

このように、給食は作るだけでなくどのように売るのかを考えていかなくてはならない業界です。献立を作る栄養士や実際に調理をする調理担当者だけでなく、営業部門や場合によってはマーケティング部門の働きが業績を左右します。

給食のレシピ本

著者
奨, 松丸
出版日

原価に栄養バランス、美味しさなどを考えて構成しなければならない学校給食の献立。家庭でも参考にしたいところはたくさんあります。「全国学校給食甲子園」優勝経験もある著者は小学校の栄養士として働いています。経験を踏まえて書いた3工程で作れるレシピが人気です。

学校の給食は、子供の1日の栄養バランスを家庭環境に左右されずに摂ることができるよう献立を考えられています。それだけでなく、食事の時間の楽しさを学ぶためにもあります。

これから自炊を始める大学生からひとり暮らしのビジネスパーソン、共働きの家庭などで役立つ100のレシピが掲載されています。

学校給食はなぜ生まれたのか

著者
藤原 辰史
出版日

あらためて考えてみると、どうして学校には給食があるのでしょうか。

「学校にいる時間が長いから食事が必要」というのがまず思い付く回答ですが、それ以外にも「食事について教育をおこなうため」ひいては「1日のうち、ちゃんとした食事が摂れるのは給食のみという子どももいるから」といった理由も実はあるのです。

『給食の歴史』では日本の学校給食に焦点を置き、どのように生まれて変化してきたのかを時代を追って丁寧に見ていきます。アメリカとの関係など政治史からの視点もあり、学校給食にまつわる力学について学べる1冊です。

管理栄養士になるために

給食業界に関心がある人の中には、栄養士資格を取ろうと考えている方もいるのではないでしょうか。栄養士は大学や専門学校などで養成課程を卒業すれば取得できる資格です。

学校や企業の食堂などでメニューを作ったり、栄養指導をおこなったりできます。加えて管理栄養士資格を取ると、病院や福祉施設などでも働くことができます。

著者
医療情報科学研究所
出版日

管理栄養士は国家試験合格が必須の条件です。栄養士として働きながら受験勉強をするか、最初から管理栄養士を養成できる学校に入学して卒業のタイミングでの資格取得を目指すかに分かれます。

資格の種類は栄養士としてのキャリアに大きく影響しますので、まずはしっかり将来について考えてみましょう。働きながら資格を取得するためにはたくさんの参考書が販売されています。


身近ではあるものの、仕事としてはよく知らないことの多い給食業界。どのようなものを給食と呼ぶのかから、業界の仕組みや仕事の仕方について解説しました。

人が集まって長時間を過ごすことで必要になる給食は、これからの時代、あり方が少しずつ変わっていくかもしれません。後悔しない進路選びができるようにぜひじっくり考えてみてください。

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