設備工事業界と聞いて、思い浮かぶ仕事はなんでしょうか。設備講師業界はあまり有名ではないかもしれませんが、ゼネコンの下請けとして工事の施工・管理をおこなう企業が数多くあります。専門的な知識を駆使しつつ、ある程度安定した職場で働きたい。文系だけどやったことのないことに挑戦したい。そういう希望を持つ方は、設備業界への就職を考えてみてはいかがでしょうか。業界全体の課題を解決していくために、次世代の参入が必須の状態となっているのです。本記事では、そもそも設備工事業界とはという部分から、仕事の種類、業界の課題についてわかりやすく解説します。
設備工事にどのようなものがあるのかを具体的に並べてみましょう。電気工事・水まわり・空調などが当てはまります。こうして見ると「職人仕事」という印象が強いかもしれません。実際に職人として働くほかにはどのような仕事があるのでしょうか。
設備工事業界は「サブコン」と呼ばれることもあります。「サブコントラクター」の略称です。いわゆるゼネコン(ゼネラルコントラクター)の下請けという意味合いが強い名称です。
設備工事という名称は業務の専門性を指すので、下請けであるかどうかはあまり関係がありません。ただし、建設業界の慣習的に、専門性のある工事は下請けに回ることが多いという意味で、設備工事をサブコンと呼ぶことが一般的になっています。
前述したように、サブコンは細分化されて企業ごとに専門性を持っています。この点がゼネラル(総合的)に工事を取り扱うゼネコンとの大きな違いです。たとえば、サブコンのなかで大手と呼ばれる高砂熱学工業株式会社は空調設備専門の企業です。
このような特徴があるため、サブコンを志望するのであれば、自分はそのなかでもどのような専門性に興味があるのかについて考えておいたほうがよいでしょう。
とくにこだわりがないのであれば、企業規模や待遇で会社を絞り込むことができますが、「どうしても空調がやりたい」「電気がよい」というこだわりがあるのであれば、違ったアプローチが必要になります。
続いてはサブコン・設備工事業界の最近のニュースを見ていきましょう。業界全体の課題が明らかになってきています。
ゼネコンの下請的立ち位置にある設備工事ですが、仕事の内容は設計や管理がメインです。実際の施工はさらに下請けに発注します。現場に入る職人はしばしば「一人親方」と呼ばれる自営業者ですが、この一人親方の減少と技術継承が問題になってきています。
一人親方は名前から分かるように、個人で開業している自営業者です。会社員と違って労災や失業保険、健康保険にいたるまで自分で何とかしなければならない立場です。
しかし、実際の仕事は元請け企業次第なので、実質的に雇用されているのと変わらないのではないかという問題が長らく取り沙汰されています。いわゆる偽装請負です。これは政府も問題を把握しており、現状改善のために検討が行われています。
また、一人親方の高齢化も問題になっています。年齢による引退が相次ぐと、後継者がいない親方の技術が継承されずに断絶してしまいます。専門的な工事は「誰でもできる」というものではないため、職人の数を確保できないと工事そのものが成り立たなくなってしまいます。
参考:建設産業・不動産業:建設業の一人親方問題に関する検討会 - 国土交通省/高齢「一人親方」大量引退で、建設現場が壊れる:日経ビジネス電子版
建設業界は発注者(物件の持ち主) → 元請け → 下請け → さらなる下請けという図式でお金が流れていく構造にあります。「どこに発注するか」で毎回価格競争が起こるため、下請けになればなるほど厳しい条件の仕事をこなさなければならなくなります。
公共事業も同様で、受注のためには実質的に価格競争となっている入札に勝ち抜かなければなりません。
業界全体で買い叩きの傾向が強まった結果、地域によっては建設業者が激減してしまっているところもあります。建設の需要はあるのにそれをこなせる業者がいないという事態を防ぐための方策が求められています。
参考:内田俊一理事長 「業界に必要な専門家集団へ」 | 日本工業経済新聞社 人材不足と外国人労働者問題
これまで見てきたような業界構造の問題は労働環境にも大きな影響を及ぼします。きつくて見返りの少ない、魅力のない仕事と見られがちだということです。
現在の施工現場は恒常的な人手不足にあり、外国人労働者によって何とか賄われている現状があります。2020年は仕事の減少と違法な解雇により行き場を失った外国人労働者の問題がニュースになりました。このように、安定しない使い捨ての雇用と人材不足が相互に負の影響を及ぼし合っている現状があります。
また、施工現場はこれまで圧倒的に男性社会だったため、女性が進出したくてもできないという問題があります。単に数が少ないだけでなく、トイレが準備されていないなど環境的に不可能なことも多いのです。これらの問題は各企業がこれから真剣に取り組んでいかなければならないでしょう。
- 著者
- ["電気通信工事担任者の会", "(株)リックテレコム"]
- 出版日
電気設備の工事にはさまざまな種類がありますが、現代ではインターネットに使う回線工事の需要が非常に大きくなっています。これらの配線工事・現場監督がおこなえるのが「電気通信設備工事担任者」という国家資格です。
2021年度から名称が変更になる「総合通信工事担任者(現在はAI・DD総合種)」なら法律で規定されている工事のすべてがおこなえます。現場監督の仕事に関心がある方なら取得しておくと就職や転職に有利となるでしょう。
- 著者
- ["山田 信亮", "菊地 至", "打矢 瀅二", "中村 守保"]
- 出版日
これまで専門的に勉強してきたわけではないので設備工事に対する知識がまったくない方もいるかもしれません。もちろん仕事をしながら学ぶことは可能ですが、最初に大枠だけでも知識を付けておくと選択肢が広がることもあります。
『イラストでわかる建築設備』は一般的な設備について図解で学ぶことができるので、初心者におすすめです。
- 著者
- ["高崎 和之", "高崎 和之"]
- 出版日
技術職なら必須の知識は、文系総合職として就職するとしてもあって困ることはありません。職種の幅が広がったり、場合によっては転職で有利に働くこともあります。とはいえ、まったく知らないことを独学するのも難しいものです。
『カラー徹底図解 基本からわかる電気回路』のような本を参考書として持っておくと、必要なときにさっと調べることができて便利です。本書は10代の学生が学ぶ高専の教員が執筆しており、専門的なことをかみ砕いて説明してくれます。
そこまで知名度が高いわけではない設備工事業界。大手であればある程度安定した環境に身を置けるので、勉強しながらも将来設計をしっかりとしたい方にはちょうどよい業界かもしれません。
企業によって特徴や抱えている課題が異なりますので、業界単位だけでなく個別の企業についてもじっくり調べてみてください。