テレビや雑誌で食について取り上げられる機会が増えたことによって、仕事が多様化されているフードスタイリスト。ですが、フードスタイリストの具体的な仕事内容や職業のなり方については知らない方も多いようです。フードスタイリストの仕事幅はとても広く、雑誌やドラマ、映画、SNSなどさまざまな場所で活躍しています。 本記事では、フードスタイリストとはどんな仕事なのか、資格取得の有無、収入面といくつかの疑問を解説していきます。さらに、フードスタイリストを目指す方にぜひ読んでいただきたい書籍もご紹介しますので、そちらもぜひ参考にしてみてください。
まずは、フードスタイリストがどのような職業なのか、似ている名前の職業はあるけれど何が違うのかを解説します。
フードスタイリストとは、食品撮影の現場において、料理や食材を美味しそうに演出するスタイリング技術や、食全般の知識と洗練された感性を持つ、食品撮影専門のスペシャリストのことをいいます。
具体的には、イメージに合う食器類やクロスなどの小物、花などを準備してテーブルをセッティングして料理を引き立たせるようにします。
料理の素材そのものを撮影した時によく見えるようにビールの泡をしっかりと作ったり、料理の湯気を作りだしたりして、料理の温度感などが伝わるように工夫をしていきます。
仕事の内容としては雑誌の撮影や、CMの撮影、カタログ撮影やお店のメニューの撮影、ドラマなどで料理が出てくるシーンの撮影などです。
近年では、料理レシピサイトの運営者や料理研究家などがSNSやYouTubeに料理をのせるときに、フードスタイリストにスタイリングをお願いするということも増えてきています。
また、屋外などのイベントで実際に料理をみてもらうためにスタイリングをすることもあります。
料理の栄養面に考慮してメニューを考えたり、実際に調理に携わるのではなく、料理の見た目に携わっていくのがフードスタイリストなのです。
フードスタイリストとして働く現場は多彩です。
主に撮影関係の業務を担当している方が多い傾向にあり、講師職として働いて収入を得ている方は少ない傾向にあります。ある程度実力をつけた方は出版業にも携わり、本の出版などもおこなっています。
たとえば、レシピ動画アプリ「DELISH KITCHEN」では、活躍するフードスタイリストを紹介しているページがあります。これは珍しい例ですが、このような場所でも活躍することができるというよい例ですよね。
参照:フードスタイリスト一覧
フードスタイリストの給料事情についてご紹介します。フードスタイリストに関する公式なデータは公開されていないため、求人情報から相場感を解説します。
フードスタイリストの求人情報を見ると分かりますが、年収は大体300万円~500万円が相場となるようです。
特に、大手の料理動画サイトの会社など規模の大きい会社に就職することができれば給料水準はこれよりも高くなり、安定していきます。
フードスタイリストは、正社員としてひとつの企業に従事されている方よりも、契約社員やフリーランスで働き、多方面で活躍する方が多い世界です。
ですので、自分の働き方やフードスタイリストとしての技量によって給料事情は異なってくるということを念頭においておくとよいでしょう。
次にどうすればフードスタイリストになることができるのかについて解説していきます。
フードスタイリストとして働くために、資格は必須ではありません。
ですので、資格を取得しなくてもフードスタイリストとしての仕事をすればフードスタイリストと名乗ることができます。
近年では著名なフードスタイリストに弟子入りして、近くで働きながら技術を身に着けて独立していくという方法や、料理の撮影アシスタントから始め、撮影などで出会った方々からフードスタイリストとしての仕事をもらって転身していくという事例もあります。
ですがそのようなツテがない、料理撮影関係の仕事をしたことがないという場合には、自分のフードスタイリストとしての素質の証明することを目的に、フードスタイリストの資格を取るという方法があります。
フードスタイリストの資格として現場で活用できるのは、日本フードライセンス国際協会が交付する「フードスタイリスト®」の資格です。
日本初であり、日本で唯一のフードスタイリストの技量を証明する資格となります。
階級は3級、2級、1級、インストラクターまで資格が細分化されていますが、ビジネスの現場で技量をアピールできるのは2級以降です。
3級は筆記試験のみですが、2級からは実技試験も加わり、1級以降は試験を受ける前に講座を受講することも必要です。
通信教育で学ぶことができるので、学生のうちなど早い段階から資格を取得することもできます。
これはどんな職業にもいえることですが、資格を取得すれば確実に仕事ができるということではありません。資格取得後に仕事につなげることができず、趣味のレベルで止まってしまう方も多いのです。
そうした事態を避けるためには、資格取得後にSNSを活用したり、契約社員などで大手企業で働くなどしてまずは実績を作ってアピールをしていくことが必要です。
それによって大きな仕事につながることもありますので、どうしたらフードスタイリストとして羽ばたけるのか? と考えることを忘れないようにしましょう。
フードスタイリストと似ている資格のひとつに、フードコーディネーターという資格があります。
これらの資格はどのような違いがあるのかわからないという方もいらっしゃいます。
実は、フードスタイリストとフードコーディネーターには、明確な線引きはありません。仕事内容はほとんど同じですので、どちらの職種を名乗っても特に問題はありません。
ただ、養成校などではフードコーディネーター科というようにフードコーディネーターの名前を前面に出しているところが多くあります。そのため、養成校の卒業者ではフードコーディネーターを名乗る方が多い傾向にあるようです。
フードスタイリストの仕事は、ひとりだけで成立する職業ではありません。
料理を作ってくれる料理研究家や調理師、自分がスタイリングした料理を撮影するカメラマンなど多方面な方たちとチームを組んで仕事をしていきます。
ですので、コミュニケーション能力が高い人や相手の意見を取り入れて柔軟に対応できる人は向いているといえるでしょう。
料理のスタイリングはセンスが問われるため、センスがあるということも非常に重要です。そのため、料理と無関係のファッション界やインテリア関係から自身のセンスを生かして転身する人もいます。
他業界からの転身ですが、スタイリング業をしてきた方は元々のセンスを生かして仕事を獲得していく方も多い傾向にあります。
仕事を獲得するための競争率の高い職業ですので、そのなかで自分が活躍できる、伸ばしていける得意な部分は何かを考えることが大切です。
最後に、実際にフードコーディネーターとして活躍している有名人をご紹介します。どのような活動をしているのか知ることで、自分が実際に働き始める時のイメージもしやすいでしょう。
Twitterを頻繁に使っている場合、見かけたことがある方がいるかもしれません。Twitterのフォロワー101万人と、フードコーディネーターのなかでも特に多く、レンジだけで作れる簡単料理を紹介してくれています。
書籍も複数出版しており、総売り上げは累計で670万部を超えるベストセラーとなっています。フードコーディネートだけでなく、レシピ開発もできることで活躍の幅が広がるということは覚えておきたいですよね。
参照:山本ゆりTwitter
エンターテイメントを添えたロケ弁で知られる細川芙美さん。フードコーディネーターだけでなく、自身のお店のプロデュースから、雑誌『hanako』での連載も担当。他にもメディア出演や専門学校での特別講師を務めるなど、マルチに活躍しています。
ただ美しいフードコーディネートを作り上げる技術だけでなく、食を楽しむ方法を新たな角度から提案する力も、今後活躍するフードコーディネーターには必要なのでしょう。
映画好きで知っている方も多い、飯島奈美さん。彼女は、映画『かもめ食堂』や『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン』『南極料理人』、連続テレビ小説『ごちそうさん』などでフードスタイリングを担当しています。
私たちが日常的に作るご飯と、映画やドラマなどで見られる美味しそうなご飯では、どんな見せ方の違いがあるのでしょうか。素朴だけれど間違いなく美味しいと分かる家庭料理について考えたい方は、飯島さんの働き方や、料理を考える時のポイントなどが参考になるはずです。
参考:【BRAND NOTE】前編:飯島奈美さんの、家庭料理が生まれるアトリエを訪ねました。
- 著者
- 日本フードライセンス国際協会
- 出版日
フードスタイリストの業界で唯一認められている、日本フードライセンス国際協会が出版している検定試験を受ける方のための教本です。フードスタイリストになるために必要な知識が凝縮されています。
この資格を取得せずに、現場で経験を積んでフードスタイリストになろうと考えている方でも、知識を得るための教科書として活用できるのではないでしょうか。
フードスタイリストとして働くために必要な知識や技術についての解説だけでなく、独立をするためにはどうすればいいのか。フードスタイリストとして働く上で知っておきたい内容も掲載されています。
フードスタイリストとして活躍したいという方は、一読することをおすすめします。
- 著者
- 飯島奈美
- 出版日
『かもめ食堂』や『めがね』など、数々の有名な映画でフードスタイリストとして活躍された方が、映画のワンシーンに出てくるご飯を完全再現した1冊です。
普通の料理本と大きく異なるのは、ページのなかで映画の世界を完全に再現しているという点です。
レシピも掲載されているため、自分で作って同じようにスタイリングをして撮影をしてみたり、料理ごとのスタイリングの方法を学んでみたりと、1冊でフードスタイリングについての勉強ができるのではないでしょうか。
映画の撮影の裏側についてや仕事密着ルポなども掲載されているため、フードスタイリストが現場でどのような働きをしているのかを知ることができます。
どんな働き方をしているのか、いまいちイメージがわかないという方に特におすすめです。フードスタイリストという仕事のイメージの一端を掴めるでしょう。
- 著者
- 板井 典夫
- 出版日
この本はフードスタイリストとして初めて独立した、つまりフードスタイリストとしての職業の道を切り開いた第一人者が書いた本です。
定食スタイルを貫いており、本書には定食スタイルのメニューが30種類ほど載っています。定食でのフードスタイリングについて勉強ができる1冊です。
本来ならば定食スタイルで出てこないような食事も定食スタイルでまとめられています。
メニュー作成の参考にはもちろんですが、フードスタイリストの第一人者のスタイリングや撮影などを見てみたいという方に目を通していただきたいです。
資格を取らなくても仕事をすることはできるため、何歳からでも、どんな職業からでもチャレンジしやすいお仕事ではあります。
ですが、スタイリング業務の担当ということもあり、最も重要視されるのはセンスです。食に関する知識だけでなく、センスを磨くための勉強も必要となってきます。今回ご紹介した本を読み、まずはスタイリングの技を真似るところから始めてみるのがよいでしょう。
フードスタイリストという仕事に興味がある方は、ぜひチャレンジの一歩目を踏み出してはいかがでしょうか。