煮る、焼く、炒める、揚げる、蒸すという5つの調理法からなる日本料理。繊細な味に加え、派手さはないものの日本独自の感性に基づいた美しさが日本料理の特徴です。中華料理、フランス料理にならび、今や世界でも人気の三大料理のひとつです。日本料理人を目指す多くの方は調理専門学校を卒業し、飲食店での経験を積み、調理師免許を取得しています。料理人としての腕を磨きたい方は、免許の取得は必須でしょう。 本記事では、日本料理人の仕事内容や年収、働き方などを詳しく解説しています。記事の最後には、日本料理人を目指すうえで参考になる本を3冊紹介しているので合わせてご覧ください。
日本で採れた自然の食材を使い、素材を活かして調理しているのが日本料理です。一口に日本料理と言ってもさまざまな形式や種類があり、料理人は全体の基礎を学びながらも、専門的に腕を磨いていきます。
日本料理の種類もご紹介しておきましょう。
日本料理は中華料理、フランス料理と並び、三大料理のひとつと言われています。中華料理、フランス料理との違いは、前述したように日本料理は素材の味を最大限に引き出した料理ということです。
一方、中華料理、フランス料理は素材以外の旨味も添加して料理を完成させていきます。
明確な違いは定義されていません。
一般的に、家庭食を中心とした日本の食文化を和食と呼びます。一方で、割烹や料亭など、日本料理のお店で提供される料理を日本料理と呼ぶことが多いようです。
次に、日本料理で利用される5つの料理法をご紹介します。誰もが日常的に利用する調理法です。
「煮る」とは、食材と煮汁を一緒に加熱することをいいます。この調理法では食材にダシの味をしみ込ませたり、長時間煮込むことで食材をやわらかくしたりする効果があります。煮る料理の例として、筑前煮やひじき煮などがあります。
「焼く」とは、熱によって食材を加熱することをいいます。この調理法は肉や魚の調理に適していて、ものによって焼き加減を調整することができるため、さまざまな食感や味が楽しめます。焼く料理の例として、焼き鳥などがあげられます。
「炒める」とは、主にフライパンなどで食材を熱することをいいます。煮物とは違い、短時間で調理することが可能です。また、炒める際には油をひきます。炒める料理の例として、野菜炒めなどがあります。
「揚げる」とは、高温の油のなかに食材を入れ熱することをいいます。油が跳ねることもあるので、底の深い鍋を使用することが一般的です。揚げる料理の例として、唐揚げや、天ぷらなどがあります。
「蒸す」とは、水蒸気の熱で食材を熱する方法をいいます。蒸すためには専用の蒸し器をつかいます。この方法は、食材が崩れにくく、茶碗蒸しなどの料理に向いています。他の調理法と組み合わせて使うことも珍しくありません。
日本料理を専門とする料理人を、日本料理人と呼びます。調理の専門学校で知識と技術を学び、飲食店で勤務するのが一般的です。では実際にはどのような業務を担当しているのでしょうか。仕事内容をご紹介しましょう。
日本料理人の主な仕事は調理です。日本料理は大変繊細で味だけでなく見た目も美しくすることを大切としているため、一人前になるには長い時間を要します。また、一人前になってもそこでゴールではなく、日々精進していく必要があります。見習い期間中は皿洗いなど調理以外の仕事でサポートすることが多いです。
お客様に対して気持ちのよい接客をするのも、日本料理人の仕事です。高級店から気軽に入れる日本料理店など、お店によって価格帯や客層はさまざまなため、それらに対応できるマナーや礼儀を知っておく必要があります。
店内や備品をきれいに保つことも大切な仕事のひとつです。店内やキッチンが清潔ではないと害虫が出たり、食品に菌がついてしまうこともあるため、徹底した清掃が必須です。
料理に使うたれやダシを作ったり、味付けをして寝かせておいたりすることもあります。また、お客様に質の高い食材を提供するため、市場などで新鮮な食材を購入することも日本料理人の大切な仕事です。
日本料理人の年収は、職場や役職によって大きく差があります。年齢によっても異なり、30歳で300万円、40歳で400万円ほど。ただ一流の料理店に勤務している場合は年収1000万円台になることもあります。しかし年収1000万円以上を稼ぐ日本料理人は、すでにかなりの著名人である可能性が高いです。
大手ホテルやレストランで役職がある場合は500万円程度だと考えておくとよいかもしれません。
見習い期間中は出来ることも少ないため、月給10万円前後と他業界と比べても安めといえるでしょう。しかし、職場によって住み込みで働ける場所もあるため生活に困るという可能性は少ないと考えられます。
日本料理人の休日は週1~2日で、お店の定休日が休みになることが多いです。定休日がないお店の場合は、比較的忙しくない曜日に休むことが多いでしょう。
また、ゴールデンウイークや年末年始など多くの会社勤めの方が休みの時は店を営業することが多いため、他の職種の方とは休む時期がずれてしまうこともあります。観光地が空いている時に旅行へ行きたい方にとっては嬉しいですね。
1日に働く時間は基本シフト制です。仕込みの時間も必要なので、早朝から24時前後まで1日8時間前後の勤務時間となります。しかし、バレンタインやクリスマス、年末年始などイベント時は繁忙期となり、どうしても残業が多くなってしまうようですね。
実は、日本料理人になるために必ず調理師の資格を取得しなければならないわけではありません。ふぐの調理など、特別な調理をしない限り飲食店でも働くことは可能です。
しかし「調理師免許」を持っていると調理の基礎的知識が付きますし、就職の幅も広がります。日本料理人として料理の腕を磨き、より洗練され、食べた人を幸せにするような料理を提供したい方は、調理師免許を取得するのがおすすめです。
いずれ独立し、自分のお店を持ちたいと考えている方にとって調理師免許はメリットがあります。
飲食店をオープンするには、「保健所の承認」と「食品衛生責任者の資格」が必要です。調理師免許を持っている場合、食品衛生責任者の資格の申請のみで2つの承認を得ることができるのです。
調理師免許は、調理師養成課程のある専門学校や短大、大学を修了するか独学で取得するという方法があります。独学で取得する場合は、調理業で2年間の経験を積み、調理師試験に合格し、免許を申請することで取得することが可能です。
調理師免許試験の合格率は60%と高いので、独学の場合は合格の確率をあげるために通信教材を使うのがおすすめですよ。
専門学校に通って調理師免許を取得したい方におすすめの学校をご紹介します。
「東京山手調理師専門学校」では、調理総合本科(2年制)、トータルフードマスタークラス、調理師科(1年制)と目的に沿って学ぶことが可能です。他の専門学校と比べ、実習の量が多いのが特長です。最新の設備が充実しているため、非常に専門的な学びを得ることができます。
日本料理人を目指したい人は調理総合本科のすし和食マスターコースがより日本料理の知識や実践を積めるのでおすすめです。
参考:東京山手調理師専門学校
「辻調理師専門学校」には、幅広い学科があります。
今まで料理界に輩出してきた卒業生が14万人もいるため、就職に対するサポートも充実しているのが特長です。また、日本料理に特化した学科や経営について詳しく勉強する学科もあるため自分のやりたいことに沿って学科を選ぶとよいでしょう。
参考:辻調理師専門学校
最後に、日本料理人に向いている人の特徴をご紹介します。
日本料理は美味しさはもちろんのこと、見た目の美しさもとても大切にしています。繊細な味の料理も多いため、時間や手順をしっかりと守る必要があります。そのため、そのような細かい作業が好きな方には向いている仕事といえるでしょう。
専門学校卒業後、就職したらまずは見習いとして、職場の先輩から作り方や心得を学びます。そのため、学びたいという意識が強く、人からのアドバイスを素直に受け入れ実践することができる方は、日本料理人に向いているといえるでしょう。
日本料理人、は店のスタッフだけでなく仕入れ先の方やお客様など、幅広く多くの人と関わる機会があります。そして、難しい日本料理を作るにはチームとしての協力や役割分担が必要です。協調性があり、コミュニケーションをとることが得意な方は楽しく働くことができるでしょう。
前述したように、日本料理には役割分担があるため、協調性やチームワークが必要です。
美味しい日本料理を作るには高い技術や日本料理に対する知識が必要ですが、さらに、仕事を全体のなかで捉えられる視点も大切でしょう。しかし、新人の頃は全体を把握することが難しく自分はどの役割を担えばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめしたい本がこちらです。
- 著者
- 野崎 洋光
- 出版日
野崎洋光氏著作の『完全理解 日本料理の基礎技術』という本です。こちらの本では新人から板長までそれぞれに必要な仕事の技術や日本料理を作るまでの全体の流れ、また他部署との連携についても詳しく解説しているため、日本料理人の仕事を理解するうえでおすすめできる1冊です。
全体がカラーで図も多く、分かりやすいのが特長です。皿への盛り付け方や心構えなど新人には嬉しい情報がたくさん記載されているのでぜひご覧ください。
皆さんは「六雁」という日本料理屋をご存じでしょうか。高級かつ高クオリティな日本料理店が立ち並ぶ銀座で、連日大盛況のお店です。
この店の魅力は味や見た目だけではありません。師匠と弟子の連携や高級店にふさわしい最上級のおもてなしの心など日本料理店を運営していくうえで必要な「人づくり」が特長のお店です。そんな一流店の人づくりについて学べる1冊がこちら。
- 著者
- 榎園 豊治
- 出版日
榎園豊治氏著作の『一流の職人に学ぶ人づくりの流儀 銀座「六雁」の見えないものを教える技術』という本です。著者はさまざまな料理店で修業を積んだあと六雁を立ち上げ、初代料理長を務めました。現在では同店のディレクターとして活躍されている日本料理店のプロかつ経営にも大変長けている方です。
そんな榎園氏が、今まで師匠から弟子へと受け継がれてきたカン(勘・感)やおもてなしの心など、「目に見えないもの」をどう若い世代に伝えていくかを解説しています。後輩の育成をしている方や経営したい方にはぜひ手に取ってもらいたい1冊です。
今や世界中で愛されている日本料理。しかし、実際に作ってみたいけれど作り方がわからない、難しそうで手が出せないという方も多いのではないでしょうか。今日は和食が食べたい気分という方におすすめの本がこちら。
- 著者
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- 出版日
『永久保存レシピ 一流料理長の 和食宝典 ―私たちへ300レシピの贈り物』という本です。この本では定番の日本料理から実際に有名料理店で出されている人気料理まで300のレシピが掲載されています。どれも写真付きでコツなども分かりやすく解説されているため、初心者でも分かりやすい内容になっています。
この本だけで、日本料理の5つの調理法をマスターできます。日本料理人を目指している方、作れるようになりたい方におすすめの1冊です。
今回は、日本料理人の仕事内容や年収、働き方について詳しく解説しました。最後に紹介した3冊は、日本料理人を目指すうえで必ず役に立つ知識や経験が書かれています。本記事を読んで日本料理人という職業が気になった方は、書籍も合わせてご覧ください。