人々が安全に自動車に乗れるように点検や修理をおこなう自動車整備士。ひとつでも不備があれば大事故を起こしかねないため、強い責任感と確かな技術力が必須の仕事です。自動車整備士として活躍するには、国土交通省が実施している自動車整備士の資格を取得しなくてはなりません。最も低い階級であれば必要な年数の実務経験があれば受験が可能です。上級資格も取得資格と経験年数に応じて取得が可能になっていきます。 本記事では、自動車整備士の仕事内容や年収、資格試験の概要、養成施設について詳しく解説しています。記事の最後にはおすすめの書籍を3冊紹介しているので、こちらも合わせてご覧ください。
自動車整備士は、お客様の大切な車を安全に使っていただけるように整備する仕事です。もし不備があった場合、大事故につながりかねないため、責任感を持って仕事をすることが求められます。この章では、自動車整備士の具体的な仕事内容について解説します。
自動車は、大切に乗っていても年数とともに部品や機能が劣化していきます。劣化によって自動車の破損、またそれによる事故も起こりかねないので、事故を未然に防ぐためには自動車の点検が大変重要です。
点検にも大きく分けて「日常点検」「車検」「法定点検」の3種類があります。どれもハンドルやブレーキの効き具合、オイルの状況について点検し必要があれば修理や部品交換をします。
特に車検は見る箇所も多いため難しく、車検に通る=走行するうえで問題がないことの証明になるため、自動車整備士としての高い技術が求められます。
板金とはキズやへこみなどの変形部分をなおすこと、塗装は自動車についたキズなどをカラー剤で塗装して元の見た目のように修復することをいいます。事故を起こしてしまった時や壁に擦ってしまった時などに利用します。
小さいキズならばホームセンターの用品などで自分でなおすことも可能ですが、色が不自然になってしまったり、うまくへこみがとれなかったりすることもあるので自動車整備工場でおこなうのがおすすめです。
パーツを自動車から外してばらし、修理をすることを分解整備いいます。主に、交通事故で大きな損傷を受けた際や外さないといけないような不備が見つかった場合、または自動車の改造をする際におこないます。
この分解整備業務は作業の難易度が高いため、二級自動車整備士以上の資格を持つ人が担当します。また、分解整備がおこなえる場所も認証工場や指定工場のみで、国から認可を受けている工場に限られています。
接客のみで働いている人を雇っていない会社の場合、お客様の接客や部品の発注、補充などを自動車整備士もおこなうことがあります。また、お客様のなかには自動車のことについてあまり知らない方もいるため、タイヤやオイルの説明などきちんとできるようにしておく必要があります。
自動車整備士は主に、カーディーラーや自動車整備工場で働くことが多いです。またはオートバックスやイエローハットのようなカー用具店、車検場のあるガソリンスタンドなどで働く人もいます。
カーディーラーで働く場合は、そのメーカーの商品のみを扱うため好きな車種がある方には向いていますし、給与も高めです。一方、中古車販売をしている店やガソリンスタンドだとさまざまな車種を点検できるため速いスピードで成長することができます。
どちらもメリット・デメリットはあるので、どの自動車に携わりたいかで決めるとよいでしょう。
自動車整備士の年収は働く場所や持っている資格によって多少の差はあるものの、目立って大きな金額差はありません。
大手自動車メーカー、大手整備工場、中小整備工場での平均年収は、大体450万円前後です。町工場に比べれば、これらの職場では高い給料が期待できるでしょう。また、持っている資格によって資格手当が出る会社もありますので、よく確認するのをおすすめします。
自動車整備士になるには、専門学校・短大・大学で勉強し、その上で「自動車整備士技能検定」に合格しなければなりません。どの階級も、中学、高校、大学と学歴問わず必要な経験年数があれば取得が可能です。
ですが、学校に通うと自動車に関する基礎知識が身に付くだけでなく、資格取得のサポートも充実しているというメリットがあります。働きながらでも就職することは可能ですが、必要な勤務年数があるなど、独学で取得するには難しいため、専門学校で学ぶことをおすすめします。
また、大学で学ぶ場合は自動車系の学科や工学部などで自動車整備士を目指すことができます。自動車整備士以外にも幅広い分野から就職先を決めたい方は大学で学ぶことをおすすめします。
専門的に学ぶならどの学校がよいのか、進学先としておすすめの学校を2つご紹介します。
関東工業自動車大学校では、一級自動車整備科、二級自動車整備科、車体整備科の3学部で自動車整備士を目指すことができます。主な特徴は、実習場の大きさが関東最大級であることと設備が充実しており、1年間の授業の8割が実習であることです。わからないことがあればその場で先生や仲間に質問ができるので資格取得も安心です。
参照:関東工業自動車大学校
中日本自動車短期大学では、自動車工学科、モータースポーツエンジニアリング学科の2学科で自動車整備士を目指すことができます。主な特徴は、全22メーカーの車種を学校で保持しているため、どのメーカーでも対応できる力が付くことです。また、イタリアフェラーリ工業専門学校の提携校で就職率が高いのも魅力です。
参照:中日本自動車短期大学
自動車整備士として活躍することを考えるなら、国土交通省がおこなっている「自動車整備士技能検定」で資格を取得することをおすすめします。試験の階級は三級自動車整備士から一級自動車整備士、特級自動車整備士などがあり、前の階級の資格取得から何年か実務経験を積むことで受験資格が得られます。
本記事では一例として、三級自動車整備士の受験資格と試験概要をご紹介します。
実務経験のみで試験に臨む場合は、1年以上の実務経験が必要とされています。この場合、学齢は中卒、高卒、大卒を問いません。
実務経験のみでの受験以外には、資格取得者、機械学科の修了者、職業訓練修了者ごとに別の受験資格が定められています。細かい内容が指定されているため、受験する前に国土交通省のホームページでご確認ください。
試験は筆記試験と、実技試験に分けられています。まず学科試験についてご紹介しましょう。
三級の学科試験は、他の階級に比べて少なめです。最も試験科目が多いのは、一級自動車整備士で、7つの試験科目が設定されています。
実技試験の内容はどの階級もほとんど変わりありません。
自動車整備士として必要な基本的な技術があれば問題ないでしょう。
参考:自動車整備士の試験内容
ちなみに、国土交通大臣が指定している自動車整備士養成施設の課程を修了すると、実技試験の免除が受けられます。施設の対象は、実務経験のない人、実務経験のある人の2種類に分けられています。
こちらの施設は全国に230施設あり、専門学校、高等学校、職業能力開発力などが該当施設となります。養成できる整備士の過程が3つにわかれているため、施設に通うことを検討している方は、各種養成施設の養成課程は必ずチェックするようにしてくださいね。
実技検定の免除期間は、養成課程修了後、約2年間です。技能検定は年に1度しかおこなわれないので、この期間を有効に使いたいですね。
一種に比べて数が少なく、全国に約53施設があり、各都道府県自動車整備振興会の自動車整備振興会技術講習所が該当施設となります。また養成課程の受講にも条件があり、少なくとも受講する課程を修了する日までに実務経験を数年積んでいる必要があります。
そのため、二種養成施設には働きながら受講している方の割合が多くなっています。
夜間や休日に講習をおこなっている施設も少なくありません。働きながらの受講を考えている方は、自分が住んでいる地域の近くに養成施設があるかどうかを確認してみてくださいね。
自動車整備士の仕事は少しでも間違えたら事故につながりかねない、お客様の車を壊しかねない非常に責任のある仕事です。そのため、自分の行動に責任を持てる人は自動車整備士の仕事に向いているといえるでしょう。
自動車を修理・点検するにあたって細かいパーツを扱ったり難しい作業をしたりということはよくあります。そのため、そういった細かい作業に苦手意識がない方は向いているでしょう。
自動車整備士の仕事はチームプレーです。すべての業務を何人かで分けて作業をするため、きちんと報告連絡相談ができる人でなければなりません。
- 著者
- ["松平 智敬", "学校法人 小倉学園 専門学校", "東京自動車大学校"]
- 出版日
自動車はエンジンのほかにもステアリング機構、変速機、走行装置などさまざまなメカニカル装置があります。また、近年ではナビゲーション、ETC、運行管理システム、自動運転、先進安全装置などの最新技術も多く開発されています。
そのため、自動車整備士が点検・修理するべき箇所も多く、高度な自動車整備技術が必要となります。これらの仕組みについて知り、高度な技術を身に付けたい方におすすめの本はこちら。
松平智敬氏著作の『自動車整備が一番わかる (しくみ図解)』という本です。こちらの本は自動車整備の入門書として図解で分かりやすく解説しています。自動車の仕組みについて簡単に知りたい方におすすめです。自動車整備士を目指している方だけでなく、自分で車の手入れをしたい方にも読んでいただきたい1冊です。
- 著者
- 古川 修
- 出版日
自動車に興味を持っている方は多いと思いますが、その詳しい分類や構造まで知っているという方は少ないのではないでしょうか。自動車が大好きという方だけでなく自動車整備士、カーデザイナー、カーディーラー営業など自動車に関わる全ての方におすすめしたい本がこちらです。
古川修氏著作の『ダイナミック図解 自動車のしくみパーフェクト事典』という本です。古川氏は東京大学工学部・同大学院卒業後、本田技術研究所にて経験を積み4輪操舵、二足歩行ロボット、自動運転車などの研究開発に携わった工学のエキスパートです。
本書では自動車パーツの実物写真を用いながら自動車のしくみやパーツの動きまで詳しく解説しています。また、1ページ、また見開きでひとつの内容が完結しているため、いつでも振り返りやすい点も魅力です。
- 著者
- デロイト トーマツ コンサルティング
- 出版日
現在の自動車産業は100年に一度の大変革期といわれており、すごいスピードで成長している業界です。この荒波を乗り切るには、既存のクルマのみにとらわれた戦略ではいけません。モビリティー、エネルギー、デジタルの3大メガトレンドに対応した新しい戦略を練る必要があります。
はたして、自動車業界が生き残るために必要な施策とはなんでしょうか。現在の自動車業界の課題や今後について詳しく解説している本がこちらです。
デロイトトーマツコンサルティングが監修した『続・モビリティー革命2030 不屈の自動車産業』という本です。この本は2020年10月に発行された本で、コロナウイルス後の自動車業界について詳しく解説しています。2030年の自動車産業はどうなっているのでしょうか。最新の情報を知りたい方はぜひご覧くださいね。
今回は自動車整備士の仕事内容や年収、なり方について詳しく解説しました。意外にも、自動車整備士資格を取得するための受験資格は厳しく設定されてはおらず、必要な年数の実務経験があれば、三級自動車整備士、特級整備士の技能検定を受けることができます。
ひとつの資格を取得し、また必要な年数の実務経験を積むことで、上級資格も狙えます。確かな技術力の証明として使える資格があれば、活躍できる場所も収入もそれに応じて変化していくはずです。
紹介した本は自動車整備士に興味のある方はもちろん、自動車が好きな方にもおすすめなのでぜひご覧ください!