電気主任技術者は「電験」と省略されることもある国家資格です。難関資格のひとつと言われており、2020年3月には熊本県内で15年ぶりに高校生が第三種の資格を取得したことで話題にもなりました。電験には一・二・三種の資格があり、どの階級も難関です。しかし資格取得後は就職可能な業界の幅は広がり、生涯にわたって活用できる資格でもあります。本記事では、そんな電気主任技術者資格の内容や、階級による資格内容の違い、就職・転職先などをわかりやすく解説しています。類似資格とどう違うのかも把握して、キャリア設計に役立つ資格取得を目指しましょう。
電気主任技術者とは、電気工事の現場監督になれる国家資格です。「電気主任技術者試験」を略して「電験」と呼ばれることもあります。
現場監督という仕事は具体的にイメージしづらいかもしれません。しかし、電気工事をおこなう際には必ず現場監督をつけなければいけないことが法律によって決められています。
また、事業によっては電気設備のあるところに電気主任技術者が常駐しなくてはならないこともあります。最近よく見られるのはメガソーラーなどの発電施設での常駐です。電気工事系の事業だけでなく、電気設備を有する施設を管理する事業などでも需要のある資格です。
電気主任技術者資格は一種・二種・三種の3つにわかれています。それぞれの違いを見ておきましょう。
電気主任技術者の資格は、保安監督に限定されることに注意しておきましょう。電験を取ってできるのはあくまでも現場監督であり、電気工事の施工ではありません。
では、実際に電気工事ができる資格は何でしょうか。答えは「電気工事士」です。電気工事士には一種と二種があり、それぞれ以下の範囲での電気工事がおこなえます。
資格の範囲を見ると分かりますが、最大電力が500キロワット「以上」になる電気工事は規定されていません。電気工事士の資格範囲外です。500キロワット以上の電気設備工事をおこないたいときには、電気主任技術者を置いて現場を監督させる必要があります。
簡単にまとめると、比較的小規模な電気工事を自分で実施したいなら電気工事士、規模の大きさにかかわらず電気工事の監督をしたいなら電気主任技術者の資格が必要です。
参考:電気主任技術者と電気工事士の違い | 電験三種講座の翔泳社アカデミー
三種の試験は、4科目から問題が出題されます。
試験には、科目合格制度があります。試験に不合格となった場合でも、合格点に達した科目は次回・次々回の受験を免除される制度です。つまり、最初の1年で得意な2科目を合格し、残り2年で苦手科目をじっくり勉強するという手法が使えます。
試験はすべてマークシート式で、問いに対して正しい答えをひとつ選ぶ択一方式です。マークシート式になじみのない方は、試験前に一度形式を確認しておくとよいでしょう。
二種以降の試験は、一次・二次に分かれておこなわれ、一次の合格者のみが二次試験を受験できます。
一次試験は三種と同様に4科目から出題されます。
ただし、一問一択ではなく、長文のなかにある複数の穴を選択肢から埋めていく方式に変わりますので、暗記だけでなく文意への理解が求められます。一次試験は科目合格制度が利用できます。
二次試験は2科目からの出題で、どちらも記述方式です。
計算式を求められる問題もあります。学校のテストでたとえると、縦書きの国語のようなものではなく、数学の証明問題に似ています。読みやすく回答を書く練習も必要です。
二次試験には、科目合格制度がありません。ただ、二次試験が不合格になった人は翌年の一次試験受験が免除される特例があります。
一種の試験形式は、二種と同じです。一次試験が4科目、二次試験が2科目で、科目合格や一次試験免除の仕組みの二種と同様です。
一種試験はエネルギー関連の資格のなかでも最難関の部類と言われています。実施状況を見てみましょう。電気技術者試験センターによると、例年受験申込者(一次試験免除者も含む)が2000人前後であるのに対し、二次試験合格者は70〜100人です。実際のデータから見ても、難関資格であることは間違いありません。
学生のうちから電験に挑戦する方はまず三種から始め、働きながら一種を目指すというパターンが多いようです。最初から一種と気負わずに、じっくりと経験を積むのも大切だといえそうです。
参考:第一種電気主任技術者試験 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
電気主任技術者の資格を取得することで、就職・転職できる業界の幅は広がります。実際にどのような業界、職場で働けるのかをご紹介します。
実際に大手求人サイトなどを確認すると、三種の資格を保有していれば未経験でも就業可能にしている企業は少なくなく、資格取得で就職先が広くなることは間違いないようです。ただ大手企業では資格保有者であることに加えて経験者であることも条件に加わっており、資格取得後すぐに大手企業に就職することは難しいと考えておくとよいでしょう。
資格取得後は、出来るだけ早く、豊富な実務経験を積みたいと考えるものですよね。実務経験がない方におすすめの業界もあわせてご紹介します。
これらの業界、職種は人材不足の傾向にあるため、未経験の求人も多く就職しやすいでしょう。資格取得後はまずこれらの業界を中心に就職活動をおこなうことがおすすめです。
電気主任技術者の年収は、三種〜一種のどの資格を取得しているかによって内容が変わります。
勤め先企業の業界によっても収入は変わり、比較的高収入が狙えるのは、電気設備の保守・管理の仕事と、再生可能エネルギー事業に関する仕事です。特に再生可能エネルギー業界は今後の発展が見込める業界であり、電気業界の今後を担う分野とも言われています。
将来性・やりがいともにある業界なので、これから電気主任技術者の資格取得を目指す方は、これらの業界への就職も視野に勉強を進めるのがおすすめです。
- 著者
- ["ユーキャン 電験三種試験研究会", "ユーキャン 電験三種試験研究会"]
- 出版日
電気主任技術者試験は、過去問と同じ問題が出ないことで有名です。だとすると過去問を勉強する意味はないのではと思うかもしれません。しかし、時間内に問題を解ききる練習や、どういった知識が重視されているのか(重要な概念を覚えている・基礎的な計算能力があるなど)という傾向を知るためには、過去問を解くことが重要です。
くまなく過去問に取り組むのではなく、特に重要な問題のみピックアップしてある参考書で学びましょう。電気主任技術者試験に合格するには、過去問から全体的な出題の傾向を知る勉強法が最適です。
- 著者
- 康平, 廣吉
- 出版日
学校で電気工事関係のことを学んだ方なら、ある程度の基礎知識がついています。一方で、あまり詳しくないけれど就職のために電験を取りたいと考えている方もいるでしょう。
言葉だけではイメージしづらい専門用語を知るには『現場で迷わない はじめての電気工事業界用語』がおすすめです。図解と対話形式でわかりやすく解説されている書籍です。
- 著者
- 藤瀧和弘
- 出版日
電験だけでなく、実際に施工ができる電気工事士資格も持ちたいと考える方は珍しくないでしょう。電気工事士は電験に比べると過去問と類似した問題が出題される傾向にあります。ある程度短期間での対策がしやすい試験です。
文章だけの参考書や過去問集だけではなかなか用語が覚えられないという方には、『ぜんぶ絵で見て覚える第2種電気工事士筆記試験すい〜っと合格』がおすすめです。図解の解説は設問傾向に合わせてあるため、勉強時間がたっぷり確保できなくても効率的な学習ができます。
電気工事の現場だけでなく、施設管理などでも必要とされる資格が電気主任技術者です。比較的挑戦しやすい三種から難関の一種までをわかりやすく解説しました。科目合格制度を活用して、長いスケジュールで取得を目指せる資格です。焦らずに取り組んでみてはいかがでしょうか。