耳馴染みのない職業かもしれませんが、デザイナーや設計技師の描いた図面を清書するトレーサーという職業があります。主に建築事務所やデザイン事務所で働いています。在宅ワークも可能なので副業にも人気の仕事です。未経験から始めることができ、関連資格を取得することで給料をあげたり、就職がしやすくなったりします。本記事では、そんなトレーサーの仕事について解説します。仕事内容やおすすめの資格、年収についても解説しています。また、記事の最後にはトレーサーになりたい人におすすめしたい本の紹介もしていますので、興味のある方はこちらもぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
トレーサーとは、設計技師やデザイナーが描いた設計図や図面の下描きを清書して完成させる仕事です。主に3つの役割を担っています。
各役割について、紹介いたします。
トレーサーに求められるのは、設計者が作成した図面をもとに、正確で分かりやすい図面になるよう仕上げる技術です。しかし、ただ清書して終わりという訳ではありません。
設計者から図面の変更や修正を依頼される場合もあります。変更箇所が1箇所であっても、右または左から見た図や上から見た図など、複数の図面がある場合は全て修正し、設計者のチェックを受ける必要があります。
設計者の作成した図面を立体的に読み取って、完成品でわかりやすさを実現させることが重要です。
作成した図面データ保管し確認する際は、すぐ閲覧できるように注意しましょう。
トレーサーは図面を作る設計者と連携し、業務に関わるさまざまな人が見る図面を完成させるポジションです。だからこそ、最新のデータがわからない、修正したものが閲覧できず手戻りしてしまうというトラブルは避けなければなりません。
また、複数の作業員が確認する場合は、データを複製して情報を共有できるようにしておきましょう。そのため、図面データの管理も重要な仕事のひとつです。
長く勤めているうちに、図面を作る技術のほか、建築や機械についての知識を身につけられます。
設計者やクライアントから信頼されるようになると、指示された図面を作る以外にもインテリアやレイアウト、デザインにまで関わり、さまざまな範囲の仕事に携わり提案や助言を求められるようになります。
精密な図面に仕上げていくことが重要なため、几帳面で細かい作業が得意な人に向いています。建築設計図や機械などの図面を描き写すため、建築学や工学の知識がある人ですと知識も活かせて働きやすいでしょう。
トレーサーは資格よりも経験を求められるお仕事です。スクールや通信講座、職業訓練校などで建築製図や機械製図の基礎と製図を描く技術を学び、トレース技能検定に合格した後就職するのが一般的です。
資格がなくても働くことはできますが、資格をもっていると知識や実力が認められやすいので就職のときに有利になります。建築事務所やデザイン事務所へと就職することとなりますが、在宅ワークもできる仕事なので、子育てや家庭との両立ができます。
一つひとつどんなスキルなのか説明していきます。
CADとは短い時間で高度な図面を作成できるコンピューターソフトです。CADを使えば「平面図」と「立体図」のどちらにも対応できるため、近年では図面作成にCADを利用することが大半です。
また、作図にはもちろんPCを使うので基本的なPCスキルはもちろんのこと、CAD独自の操作コマンドやショートカットキーを理解し、素早く作図できることが求められます。なお、CADを使用してトレースをおこなう人をCADオペレーターや、CADトレーサーと呼びます。
トレーサーというポジションには、コミュニケーションスキルが必要です。
なぜなら、設計者からの指示を資格に把握して図面を作成しなければならず、設計の修正などの細かい作業が多いため、少しのミスが後に大問題になる可能性があるからです。
円滑にお仕事を進めるためには、設計者やチームメンバーとのスムーズに連携することが重要です。
報告、連絡、相談に漏れがないよう、良好な信頼関係を構築することで、連携不足を未然に防げます。また、規模が大きい案件など、複数人で作図する場合は、チームで動く意識を持ち、お互いに相談しあったり進行具合を確認したりして、状況を全員で把握、変更があった場合でも臨機応変に進められるような環境構築が必要です。
設計者の正確に把握するために、ある程度の設計やデザインができるくらいのスキルを求められます。
指示通りに図面を作る仕事なので、高度な専門知識は求められていませんが、CADを使った作図は0コンマ何ミリという細かい単位を調整しながら、設計者と連携をとっていかなければなりません。専門知識のある設計者の指示内容を正確に把握するために、設計やデザインについてある程度把握しているとスムーズに仕事を進められるでしょう。
有効な資格として紹介しましたが、前述したようにトレーサーのお仕事は資格よりも経験が求められる職種です。
しかし、各資格取得のために勉強することで、仕事上に必要な知識を得られます。資格を取得しているということは知識の証明にもなりますので、土台ができたうえで現場で経験値を詰める人材であると判断してもらうためにも資格取得を目指すのはおすすめです。
主な就職先は、建築事務所やデザイン事務所です。
大手求人サイトに掲載されている情報を見ると分かりますが、多くの求人は未経験での採用も積極的におこなっています。ですが条件としてCADオペーレーターの利用経験や、CAD操作ができることは前提としてあるようです。ですので就職を目指すにしてもまずはCAD操作スキルを高めるため、通信講座やトレース技能検定を取得しておくとよいでしょう。
平均年収は300万円から350万円です。トレーサーは実務経験や技術レベルによって年収も異なるため、中には500万円~600万円以上稼いでいる方もいます。
また、資格評価制度のある企業であれば、資格を取得していくことで収入を伸ばせますし、自らの価値も高めながらの働き方ができます。転職してより条件の企業を目指す場合でも知識の証明や経験の証明となりえるので、自身を評価してもらうための裏付けとなるでしょう。
経験とスキルをしっかりと評価してもらえる職場に就職することで、高い収入を得ることができます。
- 著者
- 西川 誠一
- 出版日
3D-CADを使用した正しい「設計」の考え方と手順を紹介しています。考え方や手順の理解が及んでいないと、作業同士のバッティングや引継ぎがうまくいかないという原因により、設計の手戻りが起こってしまうでしょう。本書では、設計手戻りの撲滅を目的に設計対象を機能で分類・把握して自らの設計を積み上げ、再現性のあるものとする方法や、後々検証しづらいモデリングにならないよう、設計三カ条に基づいた具体的なノウハウが多数紹介されています。
設計やCADに対する考え方に触れられるため、就職したての方や、これからトレーサーを目指す方にもおすすめです。
- 著者
- 西村 仁
- 出版日
設計製図の知識や技能を最も基礎的な部分から解説しています。「図面のルール・JIS製図規格」と「図面を描くコツ」がやさしく理解できるため、まだ製図についての仕事を目指している途中であっても問題なく読み進められます。
内容はただ情報が羅列しているわけではなく、実務でよく使う規格はボリュームをとって解説し、そうでない情報は省略し、より実践的な知識を身につけられる教本です。
図面を「正しく」「明確に」「速く描く」ための基礎を固められます。
- 著者
- コンピュータ教育振興協会
- 出版日
「2次元CAD利用技術者基礎試験」や「2次元CAD利用技術者試験2級」を受験する人のための公式ガイドブックです。CADをこれから実務で使う方から、設計・製図の仕事で使っている方が主な対象となる試験です。
2級試験・基礎試験ともにサンプル問題が掲載されています。詳しく情報が詰まっているので、基本技術の学習から試験の合格までサポートできます。
トレーサーのお仕事は未経験でも始められますが、経験を積みながら資格も取得することで、よりよい条件の場所に就職しやすくなる職業です。トレーサーに活かせる資格は複数あるので、入社後に資格を取得すれば給料も上げられるでしょう。
トレーサーを目指す方のために、基礎から学べる本や、詳細まで網羅している資格のガイドブック、立体感覚を身につけるための本など勉強できる書籍を紹介しています。記事を読んで興味がわいた方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。