5分でわかるピアノ調律師!就職先や年収、必須の国家資格とは?疑問を解説!

更新:2023.11.9

ピアノ調律師とは、その名の通りピアノの音程があっているのかどうかを確認し、調節するお仕事です。ピアノ全般のメンテナンスをするので、調律ばかりが仕事内容ではありません。音質や響き方なども含めて、ピアノ調律師はメンテナンスをします。ゆえに「ピアノのお医者さん」とも言われています。楽器店に就職して働いた後はフリーとして独立する方も少なくなく、技術が優れていてコンサートの調律をおこなうようになれば年収もグッと上がります。本記事では、そんなピアノ全般のメンテナンスをするピアノ調律師の職業を解説。今回はその実態から年収までを調査してみました!ピアノ調律師に興味のある方、必見です。

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ピアノ調律師とは

ピアノのメンテナンスをおこなう職人の方を、ピアノ調律師と呼びます。ギターやベースなどと比べて内部構造が複雑であるピアノは、専門の技術で調律・修正しなくてはなりません。

ピアノはとても繊細な楽器です。置いてある環境の温度や湿度によって音色に影響が出てしまいます。また弦が緩んでくることもあるので、一定期間でのメンテナンスも必要となってきます。いわゆるピアノの専門医であるピアノ調理師がいることによって、ピアノは美しい音を奏でることができるのです。

ピアノ調律師の平均年収

ピアノ調律師は専門職です。専門的な知識と技術が必要であるため、年収は比較的高い傾向にあります。

ピアノ調律師の平均年収

ピアノ調律師の平均年収は400万円~500万円程度だといわれています。独立してある一定の顧客を得たり、コンサートの調律を請け負うようになったりすれば、年収1000万も夢ではありません。

一般的にピアノ調律師の働き方は「社員調律師」「嘱託調律師」「フリー調律師」に分類され、その働き方によって収入は大きく異なるようです。

楽器店に所属して働く場合の年収

ピアノ調律師としての多くの駆け出しは、河合やヤマハのような楽器店などに所属してピアノそのものについて学ぶことから始まります。この間は、年収はおおよそ300万円ほど。福利厚生やボーナスの支給もあり、決して高くはない年収ながらも、生活していくことは難しくありません。

楽器店ではすぐにピアノの調律に携われることはできません。最初は見習いとして入職し、社内での一定の基準を満たしたときにはじめてピアノ調律師として、顧客の持っているピアノの調律に行けるようになります。

楽器店で、ピアノができる工程を学び、ピアノの修理にともなう部品の流通を知り、ある一定の顧客を取得できるようになったら、独立を目指すピアノ調律師も多いのだとか。

ピアノの調律は1件1万~1.3万円、オーバーホールになると40万円~80万円ほどの収入となります。そのほかにも、修理を承ったり、新規ツールの紹介を提案したりすればそれもまた収入源となります。

フリーの調律として働く場合

社員調律師であれば、その仕事のほとんどがピアノのメンテナンス作業となります。しかし、フリーで働いていくには、一定の顧客に対する調律・点検の定期連絡や修理部品の管理、整調・整音がメインとなります。フリーで働く場合は調律の仕事だけだと生計を立てるのは難しいため、ピアノに関する全体的なメンテナンス技術が要されます。

それにあわせて、一定の顧客からのリピート依頼や紹介案件、コンサートでのピアニストとの調律のすり合わせなど、技術そのもの以上に、コミュニケーションや接客能力を問われます。英語やフランス語、ドイツ語など、外国語が堪能になれば、その分海外の演奏者とも一緒に仕事をすることができるので、さらに仕事の幅や収入を増やすことができるでしょう。

ピアノの調律師になるには

ピアノの調律師になるためには、調律科のある専門学校や大学で勉強をするか、楽器メーカーの調律師養成学校で勉強をします。最近はほとんど見られなくなりましたが、現役の調律師の元に弟子入りして技術を学ぶこともできるようです。

ここで「ピアノ調律科」のある専門学校「ピアノ調律・音楽学院」の募集要項を参照してみましょう。

ピアノ調律科では何を学ぶの?

全日制の調律科コースでは、平日週に5日、昼間に登校してさまざまな知識と技術を学びます。ピアノ調律科では、調律だけを学ぶわけではありません。ピアノの音が鳴る仕組みや構造、メカニックから調律・調整・整音などの技術を習得します。

2年間で調律だけでなくピアノ全体の修理も可能な人材育成を目指しています。そのため全授業時間の78%を調律、メカニック調整、整音、修理全般、ピアノ演奏と、実技の授業に力を入れています。

参照:調律科

ピアノ調律師になるには。国会資格を取得する

ピアノ調律師として活躍するには、厚生労働省が認める「ピアノ調律技能士」という国家資格を取得する必要があります。この資格は名称独占資格ですので、国家資格がなくてもピアノ調律師として活動することは可能ですが、資格がない場合にはピアノ調律師と名乗って活動することはできません。

ピアノ調律技能検定の受験資格

その受験資格も厳しく定められています。1級から3級までの受験資格を参照してみます。

  • 【1級】7年以上の実務経験、またはピアノ調律に関する各種養成機関・学校を卒業・修了後5年以上の実務経験を有する者
  • 【2級】2年以上の実務経験、またはピアノ調律に関する各種養成機関・学校を卒業・修了後1年以上の実務経験を有する者
  • 【3級】1年以上の実務経験を有する、またはピアノ調律に関する各種養成機関・学校を卒業・修了した者

以上が学科試験の受験資格となります。学科試験の合格者が実技試験へと進みます。

ピアノ調律技能検定の試験内容

学科試験、実技試験は階級によって少し内容が異なります。本記事では、1級の試験内容を見ていきましょう。

学科試験科目

  • 音楽一般
  • ピアノ概論
  • ピアノ調律
  • ピアノ整調
  • ピアノ整音
  • ピアノ修理
  • ハイブリッドピアノのメンテナンス

ピアノに関する基本的な知識だけでなく、音楽の歴史や楽曲、音名の種類など音楽の基礎も問われます。

実技試験科目

  • ピアノ調律作業
  • ピアノ整調作業
  • ピアノ修理作業

特に1級では、実技にグランドピアノを調律することが入ってきますので、その難易度は一段と高くなっています。

参照:試験科目および範囲

一般的な合格率は3~4割ほど。1級ともなると合格率は20%を切ることもあるようなので、その難易度からもまさに「ピアノマスター」といえる称号でしょう。

参照:ピアノ調律技能検定

実際のピアノ調律師の仕事を知る

ここでは、実際にピアノ調律師の仕事をのぞいてみましょう。

  1. 調律:音程を合わせる
  2. 整調:ピアノの各部分がスムーズに動くように調整をする
  3. 整音:音色や音量のバランスを整え、イメージどおりの音を出す

調律師の仕事は主に3つにわかれます。

調律の仕事内容

ピアノはまず、奏者が鍵盤を押すと鍵盤とつながったハンマーがピアノのなかにある弦をたたきます。その弦が共鳴版に伝わり、音となります。この構造をよく理解していることが仕事の第一歩です。

ピアノの内部にある弦は、およそ90キロの力で引かれています。その弦を支えているのは、ピアノの構造体でもある「木」です。木は温度や湿度の影響をもろに受けます。その時々でピアノのコンディションは大きく異なるのです。

日本の気候は高温多湿であるがために、少なくとも年2回の調律が必要といわれています。

音程を合わせるだけではなく、鍵盤の緩みやハンマーの減り、パドルの緩みなども含めてチェックをして、最善の状態に調節します。ピアノの調律は、チューニングハンマーという、特別なペンチを使用して、弦を張ったり緩めたりして調律します。鍵盤の中央にある「ラ」の音を基準に「平均音」という音階を作ります。調律はこの音を基準にしておこなわれます。

参照:日本ピアノ調律師協会HP

整調の仕事内容

整調には鍵盤の沈む深さを調整するのも含まれますが、プロのピアニストは、その沈み込む深さが0.05㎜違うだけでも違和感を覚え、整調依頼をしてくるそうです。このような場合は、鍵盤の下に薄い紙を敷いて高さを調整していきます。

整音の仕事内容

整音には、奏者が実際にピアノを弾いて出てくる音の印象やイメージを調節することです。あるピアニストは、「音が何か鋭く感じる」ということで、ピアノ調律を依頼したこともあるそうです。

奏者により、音に持っているイメージや印象が変わってくるので、「伝えたいことは何か」「どんな音が理想なのか」ということを考えながら音の調節をしていきます。この事例では、鍵盤をたたくハンマー部分のフェルトを少し柔らかくすることで納得してもらえたのだとか。

より実力のあるピアニストになるほど、ピアノの少しの違いや違和感にも敏感です。自分自身が鍵盤を弾いて奏でる音のイメージと、実際に聞こえてくる音に違いや違和感があれば、その隙間を埋めるように調律師は尽力することとなります。

これをクリアしていくことで、調律師は認められ、継続依頼や専任依頼へと繋がっていきます。

ピアノ調律師のこれから

ピアノ調律師の仕事は、ピアノがあるからこそ調律という仕事も発生します。近年の子供たちの習い事ブームには、悲しい事ですが、ピアノは決して人気の習い事ではなくなりました。ですが、私たちが日常生活を送るうえでのエンターテイメントや癒やしとして、ピアノの演奏を聴く機会は多くあり、そしてこの文化が廃れてなくなるというのは考えにくいものでもあります。

調律師の数は減少傾向にある

ピアノ調律の機会自体は少なくなってきているようですが、実は調律師そのものの人数も激減しているのも実情です。とくに国家資格と定められてからは、なかなか新たに取得する昔からの調律師が少なく、年齢とともに引退をしているケースも多いのです。

若手の育成が現在の課題でもあるピアノ調律師。若いうちは収入も少なく大変なことも多いのですが、将来的には独立し、大きな収入も得られる機会があるので、需要の拡大は難しいでしょうが、需要自体はまだまだありそうですよね。

調律用のカバン一つで仕事に向かえるその腰の軽さも相まって、地域密着にとらわれず、広い世界での仕事を請け負うならば、世界中に仕事はあります。視野を広く持つことで、ピアノ調律師としての世界も開いていけることでしょう。

ピアノの基礎基本はこれ1冊で

著者
["GrahamBarker JohnBishop", "稲村 晴光", "Bishop,John", "Barker,Graham", "泰子, 後藤", "夏彦, 元井"]
出版日

こちらの書籍は、これからピアノ調律師を目指す方におすすめの1冊です。ピアノの歴史そのものからその構造、メンテナンスなど、ピアノに関する基礎基本が載っています。ピアノの定期的なメンテナンスや、自宅でもとりあえずの対処をする方法などがわかりやすくまとめられているので、これからピアノを学ぶ人におすすめの1冊となります。

実際にピアノに関わる方も参考書籍としても人気です。内容はとても勉強になるようなものが多いでしょう。ピアノ調律を目指していない方でも、わかりやすく理解できるような内容になっています。

40社以上の主要メーカーのピアノも一覧できる

著者
["ジョン=ポール・ウィリアムズ", "元井 夏彦"]
出版日

こちらの書籍は、ピアノの発展や歴史から始まるピアノの総合ガイド書です。40社以上の主要メーカーのピアノ構造など、ピアノ調律師として保有しておいたら有利となるようなピアノの改良史や魅力を、写真や図でわかりやすく解説した総合書ともいえます。

世界に向けてピアノ調律師として活動していくことを考えているならば、一度目を通しておいても損はない書籍です。

光る鍵盤で大人も子供も楽しく学べる

著者
かしわら あきお(表紙)
出版日

こちらの書籍は、子供向けのピアノがセットになった、初めてピアノに触るお子さんへ向けた書籍です。楽譜とピアノがセットになって売っているので、簡単に始められます。次に弾く鍵盤が光って教えてくれるので、小さなお子さんでもひとりで楽しむことができます。

ピアノの需要がさがってきている要因として、家にピアノを買わなくてはいけない、ピアノ教室に通わなくてはいけない、近所迷惑になるなど、さまざまな事情があげられます。これはとりあえずの導入書として、それらの課題をクリアした1冊です。

ピアノ調律師を目指していなくても、ピアノに携わる機会の導入書としておすすめの1冊となりますよ!

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なかなか日常生活でお目にかかることのないピアノ調律師という職業。最初は苦労が多くありますが、ピアノに携わることが好きな方ならば、こんなにやりがいのある仕事はないでしょう。

一般のピアノユーザーが楽しんでピアノを弾けるお手伝いから、プロのピアニストのパートナーとして、ピアノのメンテナンスをする。それにより人々に感動を与えることにつながります。こんな素敵なお仕事、ピアノ好きであるならば目指してみたい職業のひとつですよね。

ピアノ調律師に興味のある方は、ぜひ一度紹介した書籍も手に取ってみてくださいね。

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