5分でわかるレーシングチームのメカニック!国家資格は必要?国内外の働き方、専門学校などを解説!

更新:2021.12.7

F1などのレースに欠かせない、レーシングマシンのメカニック。自動車整備の仕事と似ていますが、レーシングカーならではの知識や技術も必要です。国内で活躍することはもちろん、海外でも通用する専門的な知識・技術を有しているため活躍の幅は広いです。国内ではレーシングガレージに就職し、海外では年間契約でチーム専門のメカニックとして働きます。実力主義の厳しい世界ですが、やりがいのある職業です。本記事では、レーシングチームのメカニックになるために、何からはじめればよいのかをわかりやすく解説しています。専門学校からの就職ルート、学外での活動にも触れているので、自動車業界に関心のある方はぜひ参考にしてくださいね。

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レーシングチームのメカニックの仕事とは

レーシングカーがピットイン(レースコースを離れてピットエリアに侵入すること)すると、すぐに数十人のスタッフが集まってきて短時間でレーシングカーの整備をおこないます。このスタッフがレーシングチームのメカニック。裏方でありながらも注目される職業で、憧れる方も多いでしょう。

ではレーシングチームのメカニックは、具体的にどんな仕事をしているのでしょうか。

レース用の車を整備する仕事

レーシングマシンといえば、F1に代表されるいわゆる「フォーミュラカー」が有名です。これらのレーシングマシンは一般的な自動車と似ています。さまざまな部品に分解することができ、本格的な整備のときはパーツをばらばらにしてメンテナンスします。メカニックとはこの整備を担当する仕事です。

レーシングカーは競技に特化しているため、性能や形状、また部品のあるなしが一般的な自動車と大きく異なります。レースごとに会場を移動する必要があるため、一般的な自動車よりも頻繁に分解して持ち運びます。

レーシングチームのメカニックになるには、通常の自動車整備知識だけでなく、レーシングマシン特有の機能や特徴に対する知識、技術も求められます。

メカニック=自動車整備は日本では国家資格

メカニックという職業自体は、レーシングチームのなかだけに留まるものではありません。英語のmechanicには整備工という意味があります。とくに自動車の整備工を指すことが多いです。

日本では、自動車整備業を営むためにはその工場に自動車整備士がいなければいけないと法律で定められています。自動車を分解して整備する仕事自体は自動車整備士を持っていなくてもできます。ただ、資格持ちは知識と経験があると見なされ、できる仕事の幅が増えます。

レーシングチームも同様で、まったくの未経験よりは整備の経験や資格を持っていたほうが仕事を得やすくなります。そのため、自動車整備に携わる仕事をしたいのであればまず自動車整備士を目指すのは現実的な目標設定です。

チャンスがあれば海外進出も

自動車整備や日本のレーシングチームで経験を積んだ後、海外に出てさらに活躍の幅を広げる方もいます。海外では長期的な雇用よりもプロジェクトごと、シーズンごとの契約になることが多く、実績を残せれば次につながる一方、うまくいかないと仕事が見つからないという状況になりがちです。

日本国内での仕事を一旦辞めてからのチャレンジになるため、うまくいった場合、行かなかった場合双方の想定をしてから挑戦するとよいでしょう。そのためにも、事前に自動車整備士などの資格を取っておくと後々、役に立つことになりそうです。

自動車整備士になるには

続いては自動車整備士になるための方法を知っていきましょう。大きく2つの方法があります。

実務経験を積んで試験を受ける

無資格のまま自動車整備の仕事に就き、経験を積んで資格を得るパターンです。自動車整備士には1〜3級の3段階のほか、車種などによって異なるいくつかの種類があります。このうち3級は実務経験が1年間あれば受験資格が得られます。2級以降の受験資格を得るためには3級の資格が必要です。まずは1年働いて、3級から徐々に資格を増やしていきましょう。

参考:自動車:受験資格について - 国土交通省

自動車大学校・専門科高校などに行く

専門的な教育をする学校に進学して資格を取得するパターンです。高校であれば自動車科を卒業していると実務経験なしで3級の受験資格を得ることができます。そのほか、機械科卒業でも受験資格のために必要な実務期間が短くなる制度があります。

職業訓練校、自動車大学校の養成課程で学ぶ方法もあります。自動車大学校は専門学校のうちのひとつですが、どの級を取得するかによって養成課程が異なります。長い場合は大学並みの4年間修業になるので、学費面などの兼ね合いも考えておきましょう。

レーシングチームのメカニックになるには

最後にレースメカニックのなり方について解説します。

求人に応募する

最近はレースから撤退する企業が増えているため、新規の求人を探すことは難しいかもしれません。ただ、まったくないわけではありませんので、まずは自動車整備の仕事に就き、そこからチャンスを探す方法がおすすめです。自動車の専門課程に進学した場合は人脈や学校推薦などで選択肢が広がる可能性もあります。

フリーランスで活動する

ある程度経験を積んだメカニックであれば、思い切ってフリーランスになるのも可能性のひとつです。特に、海外へ行ってみたい方、プロジェクトごとに仕事をしたい方にはおすすめです。思い切った挑戦が可能な一方、生活の安定という意味では正社員よりも不安が大きいのがデメリットです。

レーシングチームのメカニックの働き方

レーシングチームのメカニックは、レーサーとともに各サーキットに何泊もしながら全国を回って仕事をします。

本番以外、練習中、レーサーが休憩をとっている間、レース後もメンテナンスが必要であるため、1日の稼働時間は平均して13時間〜16時間ほど。その間、整備ミスは決して許されないため、集中力と体力がなければ務まりません。

国内で就職した場合には休みも週に1度取れるかどうか。かなり厳しい働き方になることは間違いありません。

レーシングチームのメカニックの就職先

国内ので就職を考えた際、どのような企業に就職できるのでしょうか。今回は、日本モータースポーツ専門学校大阪校の就職状況を例にご紹介します。

就職のきっかけはインターン

モータースポーツ専門学校からの就職の多くは、インターンをきっかけにおこないます。協力企業でインターンをおこなうことで、実際の現場での仕事内容、就職後の働き方などを明確にイメージすることができるからです。実際、インターン先で内定を獲得する学生も少なくなく、スムーズに就職したいと考える方は、専門学校からの就職と考えてみるとよいでしょう。

参照:就職について

日本国内にあるレーシングガレージ

レーシングチームのメカニックを目指すような方の就職先は、主にレーシングガレージです。日本国内にある有名なレーシングガレージをいくつかご紹介します。

  • ASレーシング
  • JLOC
  • F
  • J’sレーシング

などです。日本にはレーシングガレージが数多くあるので、就職先を選ぶ際はきちんと研究するのがおすすめです。

また求人は常時出ているわけではなく、不定期で掲載されます。レーシングガレージの多くは零細企業ですので、待っていても求人が出ない場合も多数あります。ですので求人の掲載を待つのではなく、直接問い合わせするのが最も近道となります。

一度入ってある程度、経験を積むことができれば転職はしやすい業界です。ですのでまずはどれだけ早い段階で経験を積めるかに重点を置いて、就職活動をおこなうとよいでしょう。

大学フォーミュラへの参加がおすすめ

日本の自動車産業では、若い世代の理科離れによる、業界への興味・関心が薄れていることを問題視しています。また各大学で専門的に学べるカリキュラムも減少しており、技術者の人材不足は早急に解決しなければならない問題です。

そんな問題の解決に積極的に取り組んでいるのが「学生フォーミュラ」です。自動車技術分野での活躍を目指す学生向けに、習得した技術を発揮できる設計コンテストを開催し、あらためてものづくりの楽しさ、本質、チームで活動することの喜びを実感できる環境を作りを目指しています。

2021年の開催はオンライン、オフラインと2回にわたって開催される予定です。全国の学生が参加できるコンテストですので、タイミングが合う学生の方はぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。

参照:学生フォーミュラ

日本のレース黎明期を振り返る

著者
公男, 藤澤
出版日

日本国内でのレース黎明期だった高度成長期に、日産の大森ワークスでメカニックとして働いた著者の記録です。メカニックとしての専門的な話に触れつつ、活気あるレースの現場を追体験できる書籍です。メカニックに憧れつつも、仕事内容が具体的にはイメージできない方にもおすすめです。

日産GT-Rの仕事術

著者
水野 和敏
出版日

同じ日産でも、2000年代の経営改革以降にGT-R開発プロジェクトを担った著者の記録です。レーシングチームというよりは自動車メーカーの一般的なプロジェクトについての書籍ですが、チームとしての戦い方、よりよい車を求める考え方などはメカニックにも通じる熱意があります。

自動車のための辞書

著者
古川 修
出版日

自動車は好きでも、実際には触ったことがない方もいるでしょう。特に18歳以下であれば自分の車を持っているわけでもなく、レースに参加したことがなければなかなか自動車そのものに触れる機会は得られないかもしれません。

そんな方におすすめの書籍が『 自動車のしくみパーフェクト事典』です。図解で分かりやすく自動車の仕組みを紹介しているので、ひと通り頭に入れておけば整備の勉強の役にも立つでしょう。

自分の市場価値をアプリで診断

華やかなレースの裏方で、かつチームの勝利にはなくてはならない存在のメカニック。どういう仕事なのかやなり方について解説しました。国内チームであれ、海外であれ、仕事としての安定度はやや低めです。やりたいことや目的に応じて働き方を変えられる柔軟さを持てるようにしておくとよいでしょう。

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