人間や動物と同じく、樹木も病気になります。その樹木を診察したり、病気の分析・治療を施すのが、樹木医の仕事です。環境保護の視点からも重要な役割を担う職業ですが、業界としては後継者の減少という大きな悩みを抱えています。考え方によっては、樹木医を目指す方にとってチャンスの時といえるかもしれませんね。就職先は、園芸業者から大学教諭までさまざまです。今回は、樹木医になるための道のりや収入、樹木医の資格について解説します。動物や植物が好き、自然を守りたい強い想いがある方も、ぜひ参考書籍と合わせてチェックしてみてくださいね。
樹木医とは、一言でいえば、木のお医者さんです。木も人間や動物と同様、病気になります。病気になってしまう原因は、害虫や環境汚染の影響など。それら樹木がかかってしまった病気を判断し、治療するのがメインの仕事です。
樹木の病気は治療して終わりではなく、病気が再発しないよう予防対策の指導をおこなったりもします。資格自体は国家資格ではありません。しかし、樹木医は商標登録されているため、名乗るには財団法人日本緑化センター主催の資格試験への合格が必須です。
代表的な就職先としてあげられるのは、造園業者です。その他、地方公共団体の農林・緑化関係職に就く方もいます。樹木医が対象とするのは、天然記念物に指定されるような有名樹木をはじめ、神社の御神木・街路樹・公園の樹木・一般家庭の庭の樹木まで幅広く取り扱います。
一例として、著名な造園業者TOP10をご紹介します。
他にも全国には数多くの造園業者があります。造園業者によって専門分野が異なるため、就職・転職活動をおこなう際は企業研究をしっかりするとよいでしょう。
樹木医の主な仕事内容についてみていきましょう。
働く企業によって多少の違いはありますが、日々おこなうのはこういった業務が多くなります。
全国的に樹木医の人数は潤っているとはいえず、これからを受け継いでくれる後継者を育てることも課題となっています。業界は後継者の育成のために、専門学校や大学で積極的に講演や研修をおこなったりして、問題解消を目指しています。
参照:樹木の健康を守る“木のお医者さん”環境問題への関心が高まる中、期待されるその“将来性”
樹木医の平均年収は、420万円程度といわれています。造園会社をはじめとした就職先では、樹木医の資格を持っていることで資格手当がもらえるところもあるため、応募時に確認してみることをおすすめします。
樹木医の世界では、日給制で働く方も多いです。その理由は、雨の日は作業ができないためです。そういった給与体系や条件も含めて、就職先を検討するのもポイントでしょう。
樹木医の資格以外に、樹木医補という資格認定制度があります。樹木医補は、樹木医補養成機関として登録されている大学・学部を卒業することで認定資格を得ることができます。そして、樹木医穂としての実務経験が1年以上あれば、樹木医の資格試験を受けることができます。
樹木医補になった場合の平均年収は、260万円〜300万円ほどです。樹木医補には、樹木医の事業や活動を補佐する能力が求められます。
参照:樹木医補認定資格制度
樹木医になるには、「一般財団法人日本緑化センター」の認定を受ける必要があります。
まずは樹木医になるための樹木医試験の応募資格を確認しましょう。
どちらかの条件をクリアしていることで、樹木医試験を受けることが可能になります。
樹木医になるまでの実際の流れも確認しましょう。
樹木医の資格は、1次審査と2次審査の結果から総合的評価に基づいて決定されます。その後、登録・認定証の授与がおこなわれて初めて、樹木医として認定されたことになります。樹木医認定資格は5年ごとの登録更新が必要ですが、特に再試験などはないため、一度取得してしまえば後の心配をする必要はありません。
参照:樹木医制度
試験は年に1回行われており、合格率は19.9%と低くなっています。しっかりとした試験対策が必要となります。
樹木医補養成機関として登録されている大学・専門学校は、全国に46校あります。東京近郊の学校をいくつかご紹介しましょう。
自然環境学・環境緑化学・農学・林業学・ 生物環境学などの分野に長けている方は、樹木医として活躍できる可能性があります。他、樹木医補養成機関の一覧は、登録大学等一覧と分野別科目対応表にてご確認ください。
扱う樹木のなかには、背の高い樹木もあります。ときには、クレーンに乗って高い場所で作業することもあるため、高所恐怖症の方には向かない職業であることは知っておいた方がよいでしょう。
樹木を扱うということは、昆虫に遭遇する機会も非常に多くなります。それも1匹や2匹ではなく、大量の昆虫を目にすることもあり、虫を触れない、生理的に気持ち悪くて無理と感じる方は作業が難しいでしょう。
自然保護に興味がある方は多いかもしれませんね。しかし、自然を守りたいという心意気や、漠然とした想いだけでは現実の仕事を続けるのは難しいでしょう。常に環境保全に関する情報のアップデートをおこない、学び続ける姿勢が必要です。一生勉強していく必要があると思えるタイプの方には、向いている仕事でしょう。
- 著者
- 堀 大才
- 出版日
本書では専門用語も出てきますが、イラストとわかりやすい文章のおかげで、初心者にも優しい本となっています。街づくりから家のガーデニングまで、幅広く役立つ情報が載っているため、樹木医を目指す人はとくに身近に置いておいて損はない1冊です。
絵で分かる内容にはなっていますが、少々学問寄りであるため専門用語も豊富に出てきます。樹木学の基礎をアカデミックに学びたい方にもおすすめできる書籍です。
- 著者
- 上田 善弘
- 出版日
植物を育てる初心者・育てているけれど失敗続きという方に、特におすすめの書籍をご紹介します。
本書では、今までやってきた植物の育て方が実は間違っていたんだと気づくことも多いかもしれません。植物栽培の名人が実践している107の法則を学ぶことで、これから先、植物の栽培に失敗することはもうないでしょう。
写真と図解も載っているので、パッと見て分かりやすいのも初心者にはありがたいですね。
- 著者
- 五箇 公一
- 出版日
人生に活かせる生物学の入門書のご紹介です。
害虫やウイルスを含め、それぞれの存在が自然界のバランスを保っていることを著者が教えてくれています。また、そのバランスがいかに大事かを地球規模で考えている本なので、樹木医として勉強中の人にとっては、役立つ知識を多く得ることができるはずです。
「生物学って私たちにどう関係しているの?」といった疑問にも答えてくれる1冊です。
樹木医は「木」を扱う職業ですが、木と同じくらい、土や昆虫・カビ・気候の知識も必要となります。思っているよりも、幅広い学習が必要だと覚えておくとよいでしょう。また、樹木が生息しているのは足場のよいところばかりではないことも覚えておくとよさそうです。寒空の下で作業したり、高所での作業もともないます。
自然を守る職業は他にもいろいろありますので、自分のできそうなものから選んでみましょう。樹木医を目指している方は、参考書籍に目を通したり、進学先を探すなどしてみてくださいね。