5分でわかる害虫駆除!ペストコントロールってどんな概念?就職で必要な資格も解説!

更新:2021.12.8

害虫駆除の仕事について、どんなイメージが湧くでしょうか。シロアリを駆除するために薬を撒いたり、蜂の巣を壊したり……。害虫駆除の業界は競争が激しく、そのため多くの企業ではさまざまな駆除を手広くおこなっている現状があります。それ以上に何かやることがあるの? という疑問や、仕事としてどうやって続けていくのかあまりイメージが湧かないなという感想があるかもしれません。本記事では害虫駆除をはじめとして、関連する分野や資格について解説します。記事の最後には、害虫駆除、害獣駆除をするにあたって知っておきたい、害虫の知られざる生態を記した書籍もご紹介しています。

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害虫駆除?ペストコントロールとは

害虫駆除という言葉の意味は分かっても、実際にその現場に遭遇したことがないという方は珍しくないでしょう。具体的にどのような生き物をどうやって駆除するのかを見ていきましょう。

生活環境に悪影響を及ぼす生き物を駆除する

庭の植物についたアブラムシや、家の中に迷い込んだゴキブリ程度であれば個人でも駆除が可能です。一方、ある程度専門的な道具や知識がないと駆除が難しい害虫もいます。それらを駆除するのが害虫駆除業者です。

駆除の対象でメジャーなものは、木造建築を食い荒らしてしまうシロアリ、毒性の強いスズメバチ、植木など広範囲に広がってしまうチャドクガの幼虫などがあります。基本的には薬を散布して駆除し、必要であれば再発予防の措置を取ります。

昆虫類から哺乳類まで、業者によって扱う生き物の幅は広い

シロアリだけしか扱わないという業者もありますが、多くはさまざまな生物の駆除に携わります。ドブネズミ、ハツカネズミ、ヘビなどの駆除もよくあります。後ほど解説しますが、ハクビシンなどの家に住み着く哺乳類、敷地内に侵入するタヌキ、キツネ、シカなどの哺乳類は駆除できる業者が限られています。

ペストコントロール

有害な生物を駆除することを「ペストコントロール」と呼ぶことがあります。ペストとは黒死病とも呼ばれる細菌性感染症のことで、宿主であるネズミから感染したノミ・ダニなどが媒介して人間を感染させることが分かっています。予防のためにはネズミや給血性害虫を駆除、もしくは人間が直接接触しない状態にしておくことが大切です。

このような経緯から生まれたのがペストコントロールという概念です。ペスト以外にも使われており、類似の病原体や宿主・媒介となる生物の発生・増殖を抑え、必要な場合は駆除をおこなうことを指します。害虫駆除とペストコントロールはまったく同じ概念ではありませんが、害虫駆除が結果的にペストコントロールになっていることも珍しくありません。

害虫駆除に必要な資格とは

虫とはいえ生き物を殺すのには、何らかの資格が必要そうにも思えます。実際にはどうなのでしょうか。

仕事そのものに資格はない

結論から言ってしまうと、害虫駆除の仕事そのものに必要な資格はありません。人間の生活環境で駆除をおこなうため、資格が必要なほど強い薬剤は使えませんし、哺乳類・鳥類を除けば生き物の殺傷は法律によって制限されているわけでもありません。

国家資格:防除作業監督者

ただし、関連する資格が全くないわけではありません。国家資格としては「防除作業監督者」というものがあります。業務を独占させるための資格ではなく、「この人はきちんとした知識と経験を備えています」ということを保証するための資格です。

高校(もしくは同等程度の学校)を卒業して2年間関連業務に従事するか、5年間の業務経験があるかのどちらかが資格取得条件です。テストはなく、定められた時間の研修受講が必要です。

参考:防除作業監督者 - 資格の王道 

民間資格:ペストコントロール技術者など

関連する民間資格もあります。ペストコントロール技術者資格は1〜3級があり、3級は防除作業監督者を持っていれば取得できます。就職・転職の際に有利である可能性があるほか、事業の信頼度を高めるために雇用者から取得を要請されることもあります。また、ビルメンテナンスなど建物管理の仕事でも使える資格なのでキャリアアップにもおすすめです。

参考:ペストコントロール技術者|認証制度|公益社団法人日本ペストコントロール協会

狩猟に関する免許を取る業者も

住環境や衛生に悪影響を与える生き物には、狩猟免許がないと駆除が難しいものがあります。ハクビシン、タヌキなど屋根裏や床下に住み着く哺乳類、烏などの鳥類です。地域によってはシカやイノシシといった大型の哺乳類駆除の依頼もあります。

素手で捕獲するぶんには狩猟免許がなくても問題ありませんが、現実的ではありません。わなや猟銃を使う場合には必ず狩猟免許が必要となります。狩猟免許は講習および実技で免許が取得できますが、都道府県ごとの登録が必要です。

参考:獣害対策の「わな猟免許」はどうやって取るの? ネズミ対策は?

資格を持っている業者のほうが安心かも

害虫駆除そのものに資格は必要ないとはいえ、就職するのであれば上記の資格のうち何かを持っている業者のほうが安心かもしれません。というのは、必須ではない作業を追加することで料金を高くするような、あまり良心的でない業者も多いからです。

きちんとした資格を持っている業者であればそのような仕事の仕方をしないことが多いため、安心して働ける職場である可能性が高まります。

愛のある害虫本

著者
有吉 立 (アース製薬研究開発本部生物飼育課課長)
出版日

害虫駆除のための商品をたくさん開発しているアース製薬。研究所では実験のためにたくさんの虫を飼っています。もともとは虫が苦手だったという著者が、アース製薬で働くうちに知っていった虫たちの生態を分かりやすく解説してくれます。読み終わったころには苦手な虫が好きになっているかもしれません。

害虫にはネガティブなイメージが付き纏います。ですがよくよく調べてみれば、ゴキブリは人間を襲わないですし、クモや蚊、ハエなんかも人に直接的な危害を与えることはないのです。虫たちはすべてイラストで描かれているので、グロさや気持ち悪さを感じることなく読めます。害虫たちの意外な素顔を知れる1冊です。

有害鳥獣といえばカラス

著者
杉田昭栄
出版日

都市部でも農村でも変わらず有害な生き物として認識されるカラス。ゴミをあさったり、農作物を食べてしまったりする鳥ですが、非常に賢いことでも有名です。日本での烏研究第一人者である著者は、カラスの害対策のための研究も多くおこなってきました。研究結果をもとに、さまざまな角度からカラスを知ることができる1冊です。

カラスとの共存を呼びかける著者の深いカラス愛を感じることができます。

シロアリ博士に学ぼう

著者
松浦 健二
出版日

ただの害虫と思いがちなシロアリですが、女王を頂点とする社会性の高い生き物でもあります。しかし、アリなどと違うところは、巣にいるほとんどのシロアリは幼虫だということ。それでは成虫はどこにいるの? というシロアリの不思議な生態をイラスト付きで紹介。虫が苦手な方でも楽しく読むことができます。

あっと驚くシロアリの世界に魅了されること間違いなし。実はシロアリは種としてはゴキブリに近いという研究結果にも驚きます。


薬を散布し、殺しておしまいに思いがちな害虫駆除の仕事ですが、視野を広げてみると意外と奥が深いことが分かります。

害虫駆除の職業は、業界的に見ても競争率の高い職業です。そのため多くの企業では害虫駆除以外の事業も展開しています。一定数の需要があるので、安定性は高い職業でもあるでしょう。

手に職をつけて独立したい方もちろん、最終的に関連分野への転職を考えている方も、ぜひさまざまな情報に触れて仕事に取り組んでみてください。

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