米国証券アナリスト(CFA)とは、証券取引の現場において世界で最も「強い」とされている資格です。アメリカで働くわけではなくても、証券会社勤務でなくとも挑戦する日本人もいます。資格としての難易度は日本の証券アナリストよりも高く、初学者であれば最短での合格で2.5年はかかるとも言われています。資格取得後は銀行、証券会社、投資信託など業界を選ばず就職・転職が可能というメリットがあります。 本記事では、証券アナリストとはそもそもどんな仕事なのか、そしてCFAを取得するとどうなるのかという疑問についてわかりやすく解説します。記事の最後には参考書籍もご紹介していますので、ぜひ目を通してみてください。
アメリカの資格である米国証券アナリストとは、どのような専門性を持つのでしょうか。まずは証券アナリストについて知っていきましょう。
米国証券アナリストは、英語では「Chartered Financial Analyst」と言いCFAと略されます。金融系の資格のなかで、現代ではもっとも価値があるとされている資格です。アメリカの資格ですが、日本でも国際的な金融取引をする起業では強みとして活かすことができます。
参考:金融業界のグローバル・パスポート、CFA®の魅力|資格の学校TAC[タック]
証券アナリストは名前の通り証券(株式、国債など)の取引に関する専門家です。市場の分析や顧客の投資へのアドバイスをおこないます。証券アナリストの資格保有者は証券取引に関する基礎的な知識だけでなく、法制度や新しい技術、市場のトレンドなども把握しているものとみなされます。
証券アナリストという資格自体はアメリカにしかないものではありません。日本にもCMAと呼ばれる証券アナリスト資格があります。どちらも民間資格ではありますが、証券会社などが加入する業界団体が管理しており、質と信頼性の担保をおこなっています。
参考:証券アナリストとは(金融・資本市場のプロ)|日本証券アナリスト協会
アメリカの証券市場は資本主義経済の中心と言っても過言ではありません。つまり、CFAは実質的に世界で通用するアナリスト資格なのです。
また、証券や投資の知識が役立つのは証券会社だけではありません。自社で資産運用をおこなっている会社や、海外事業に投資する部署など、金融の専門知識が求められる場面はどんどん増えてきています。関連性のない仕事に現在携わっている人でも、CFAを持っていれば異動や転職時に選択肢を広げてくれるかもしれません。
アメリカの資格であるCFAですが、日本国内でも受験することができます。続いてはCFAのなり方について見ていきましょう。
受験時に4年制大学を卒業もしくは卒業見込みである必要があります。それ以外の制限はとくにありません。CFAは下記のようにLevel1〜3に分かれており、数字が大きくなるほど難易度が上がります。試験は全レベルにおいてオンラインで実施されます。日本では、東京か大阪の受験会場を事前に予約して受験することになります。
職業倫理、経済学、財務報告・分析、コーポレート・ファイナンス、計量分析手法、株式投資、債券、デリバティブ、オルタナテイブ投資、ポートフォリオ・マネジメントとウェルス・プラニングについて出題されます。
また、計量分析手法ではフィンテック(金融にまつわるIT技術)に関する問題が出題される可能性があります。フィンテックは2019年から出題範囲に含まれた比較的新しい分野であるため、どのようなことが取り上げられているのかは最近の参考書を確認するようにしましょう。
Level1と出題範囲は同じです。ただし配分は異なります。
Level2までの出題範囲から計量分析手法、財務報告・分析、コーポレート・ファイナンスについての問題がなくなります。範囲が狭くなる分、ポートフォリオ・マネジメントとウェルス・プラニングへの出題配分が増えます。また、記述式の問題も出題されます。Level3まで合格し、必要な要件を満たすとCFAの資格を名乗れるようになります。必要な要件は実務経験、CFA協会への正規会員登録、誓約書の提出等です。
ちなみにLevel1、1の合格者もレベル合格者であることは名乗れます。レベル合格には有効期限がないので、自分の求めるレベルまでで受験を終わらせることもできます。時間が経ってからLevel3を目指すということも可能です。
参考:CFAとは?CFAの仕事・魅力・試験概要・合格率などを徹底解説!|CFA®|資格の学校TAC[タック]
米国証券アナリストは日本ではまだ1000人程度しか資格保有者がいません。今後は金融業界もグローバル展開していくため、資格を取得しておくことで就職が有利になる可能性があります。
就職先として、以下の企業があげられます。
米国証券アナリストとして働くには、資格以上に経験が重視されます。そのため大学・専門学校卒業後の進路は絞りすぎず、アナリストアシスタントとして経験を積めるかどうか、アナリスト関連業種に就くことが可能かどうかで判断するのがよいでしょう。
- 著者
- 大野 忠士
- 出版日
日本語で書かれた唯一のLevel2のガイドブックです。同じ著者によるLevel1の参考書もありますが、そちらは版がやや古くフィンテックの問題に対応していません。フィンテック関連について日本語で読みたいのであれば、Level2を参考にしたほうがよさそうです。
正直、この本1冊では心許ない部分があります。他の書籍も並行して進めたり、講習を受けるなどしながら、自学の際の参考書として手元に置いておくのがおすすめの使い方です。
- 著者
- CFA Institute
- 出版日
日本語の参考書では、最新の情報に追いつくのがどうしても難しくなってしまいます。それでも日本語で学びたい、という場合は資格講座に通うのがおすすめ。一方、頑張って英語で勉強してみようかな? という人もいるかもしれません。日本のAmazonで英語の参考書を購入することもできます。最新版は随時発売される可能性があるので、定期的にチェックしてみてください。
- 著者
- 冨岡 英敬
- 出版日
CFAの受験者は半数近くが非英語ネイティブだともいわれています。そのため出題される英語にも配慮が行われているそうです。とはいえ、長文の英語を読みこなす訓練はしておいたほうが良いでしょう。とくに逐次訳をしながら読んでいると、単純に時間が足りなくなってしまう可能性があります。
英文をそのまま読む訓練ができる本はいくつもあります。中でも『英文「超」精読』は一文を一単位として理解していくことに重点を置いているので、単語を拾いながら読む癖のある人におすすめです。
- 著者
- 鈴木健士
- 出版日
Level3では記述問題も課されます。日本語でも論文で使える文型・ビジネスメールで使える文型などがあります。その英語版を身につけることに重点を置いたのが『ここで差がつく! 英文ライティングの技術』です。日本人が使ってしまいがちな「I think ....」などから始める構文ではなく、小論文に適切な文型を学ぶことができます。
いまだ日本ではそこまで知名度があるわけではない米国証券アナリスト資格。しかし取引の現場では資格保有者・挑戦者が徐々に増えているそうです。最終的に海外で働くことを目標にしている人はもちろん、国内でもキャリアの選択肢が広がる資格。ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。