人間科学とは、「人間とはなにか?」という、とても大きなテーマに向かって学習する学問です。昔から、人間について考える学者や学説は存在しましたが、体系化されてきたのは最近の比較的新しい学問といえるでしょう。学ぶ分野が幅広いこともあり、大学や大学院を卒業したあとの就職先も多岐にわたり、色々な場所での活躍が期待されています。どんな基準で大学を選んだらいいのか、人間科学を学んだことでどんな資格を取れるのかという疑問を抱えている方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。学んだ内容を活かせる資格についても触れながら、記事の最後にはおすすめの書籍もご紹介しています。
よく耳にする人間科学という学問ですが、どのような内容を研究するのかを説明できる方は意外と少ないのかもしれません。
人間に関わる諸事象を総合的に研究しようとする経験科学の総称。
引用:goo国語辞典
人間とは何か? という大きな課題について、人間の心と身体のメカニズムを総合的に学ぶ学問が人間科学です。学習するのは、人間そのものをいろいろな角度から分析・研究するような内容であり、範囲でいうとかなり広範囲的な学問といえます。
人間について研究するためには、生物学や医学だけではなく、心理学・社会学・教育学を中心としたほかの分野の知識も必要となります。
他の学問に比べると、体型的に学ぶようになったのは長い歴史から考えるとごく最近です。比較的、新しい学問であるというのも特徴といえるでしょう。
人間科学を学ぶ全体の人数から考えると、女性の割合が多い分野です。これは、人間科学を専攻できる女子大が多いなどの理由もひとつとなっています。共学の大学であれば、男女比にはほとんど差がありません。
先述したように、人間科学は学ぶ範囲の広い学問です。独学でも可能ではありますが、効率よく、ポイントをおさえて学ぶのであれば大学への進学は検討してみてもいいかもしれません。
人間科学を学べる大学はいくつかあります。この章では進学先を選ぶ際の基準、国公立・私立大学のおすすめ進学先をご紹介します。
人間科学は幅広い分野から総合的に研究する学問であるため、医学・生物学・社会学・心理学など、研究の対象が非常に広くなります。そのため、人間科学をうたっている学部でも、4年制大学や短大によって学ぶ内容がかなり異なります。
人間科学が扱う分野は複数に枝分かれしているので、心理学を中心に学びたいなど、ある程度の的を絞っておくと自分に合った進学先も選びやすくなるでしょう。
全国で人間科学を学べる大学はたくさんありますが、ここでは有名大学を抜粋してご紹介します。
人間科学部と名前がついていない学部であっても、学習プログラムにその要素が組み込まれている大学も多いため、学部の名称に関係なく進学先を調べてみることをおすすめします。
偏差値でいえば、上智大学の総合人間科学部が最も偏差値の高い大学となるでしょう。上智大学では「知の3本柱」として、科学、政策・運営、臨床を核として研究を進めることができます。
大きく人間科学と言っても大学によって何を中心に学ぶかは異なります。
国公立大学では、人間科学が学べる進学先は京都大学が最も偏差値が高い大学となります。京都大学では5つのコースが設けられており、選択したコースで専門的に学ぶことができます。
私立と国公立に分けてみても、学べる人間科学の学問内容は大幅に異なります。そのため進学先を検討する時は、人間科学のなかでも何を専門的に研究したいのかを決めておくと選びなるでしょう。
ここでは趣味の領域ではなく、より就職に役立つ資格をご紹介します。
人間科学部の教職課程を終えることで、中学社会・高校地理、公民、歴史の教員免許の受験資格を得ることができます。教育の現場では、人間科学をきちんと学び、その上で現場で柔軟に対応していく能力が求められています。
教員免許の取得を検討している方は、教育学、心理学、哲学などを中心に大学時代に研究することをおすすめします。
障害福祉サービス事業・児童発達支援事業などで働く際に役立ちます。しかし国家資格ではないため、最終的には公認心理士の資格取得を目指す方も多いです。
この資格は大学で人間科学および心理学を学んでいない方でも、大学院に通うことで取得が可能です。そのため就職後に大学院に通い取得する方も少なくありません。
参照:臨床心理士になるには
スクールカウンセラーや医療現場で働きたい方は、この国家資格の取得がマストです。他にも産業カウンセラーとして働いたり、司法・犯罪 家庭裁判所や少年院、少年鑑別所なども就職先のひとつです。
公認心理士の国家資格は平成29年に施行された比較的新しい国家資格です。心理職として日本初の国家資格であるためまだ取得している方は少ないですが、今後は資格取得者が増えていくと考えられています。
参照:日本心理研修センター
ソーシャルワーカーとも呼ばれる、社会福祉専門職です。介護の必要有無に関係なく、幅広い人々の生活支援などをおこなうことができるようになります。社会福祉士の仕事、資格概要について詳細を知りたい方は「5分でわかる社会福祉士」の記事も参考にしてみてくださいね。
人間科学は、社会で役立てることのできる幅が広い学問です。
マスコミ関係をはじめ、出版、情報・通信関係、人々の消費生活・食生活に関する職種に就く方が多い傾向です。ほかにも、金融関係・スポーツ関係・デザイン関係などの道を選ぶ方もいます。
大学で4年間、人間に関する幅広い知識を学んだ後、大学院に進むことを希望する方が多いのもこの学問の特徴です。特に、興味をもった専門的な分野に絞って研究・分析を続けたい方は大学院へ進むのもよいでしょう。
- 著者
- 公認心理師試験対策研究会
- 出版日
国家資格取得を目指したい方におすすめのテキスト&問題集です。本書は教科書部分と問題集に分かれています。教科書部分では赤シートを使って学習できるようになっています。ある程度、人間科学や心理学の学習をしてきた方向けのテキストです。
国家資格化してまだ間もない公認心理士の試験対策本として、ポイントがうまくまとめられている1冊なのではないでしょうか。一問一答が674問も掲載されており、繰り返し解くことで確実に合格への一途を辿ることができるでしょう。
- 著者
- ["デーヴ・グロスマン", "ローレン・W・クリステンセン", "安原 和見"]
- 出版日
いつの時代もなくならない、人と人との戦い。戦闘が絡む極限状態では、人間はどうなってしまうのか、戦争と人間の心理との関係について書かれています。
本書のなかには、涙なしには読めないと評価されるような、戦争の歴史にまつわる話も掲載されています。本の題名をみて何か感じるものがある方は、人間科学を学ぶに相応しい素質をもっているかもしれません。書かれている内容を自分なりに咀嚼しながら、じっくり時間をかけて読んでみてください。
- 著者
- 又吉 直樹
- 出版日
小説の世界でも、多くの作家が人間とは? というテーマで作品を書いていることが多くあります。こちらの書籍もそのひとつ。
大昔の文豪が書いた本や解説書を読むのが苦手という方は、こういった身近なお笑い芸人の作品から人間科学の世界に入ってみてはいかがでしょうか。本を通して、世界には自分が思っても見なかった人間がいると新たな発見につながるでしょう。
人間科学の分野に興味がある方も、単純に面白い小説を読みたいと思っている方にもおすすめできる作品です。
幅広い分野について学べる学問なだけあって、進学や就職の選択肢は広いといえるでしょう。まずは、自分が将来どんな仕事をしたいのか、人間科学のなかでも特にどんなことに興味があるのかという点から、自己分析してみるのもいいかも知れませんね。
専攻する内容によっては国家資格受験資格の取得も目指せるという魅力もあります。
人間について書かれた本は世にたくさん出回っていますので、ぜひ気になった本から手に取ってみると、学びたいことが見つかるヒントになってくれるかもしれません。