魚豊『チ。-地球の運動についてー』全巻ネタバレ!岩明均絶賛の天動説を覆す命懸けの戦い

更新:2021.4.29

「マンガ大賞」2021年の第2位となったのが魚豊原作の『チ。-地球の運動についてー』。宇宙の真理を明らかにするために命を賭した人々の情熱を描いています。 岩明均や高橋しんなど漫画家からも絶賛され、『アメトーーク!』の「マンガ大好き芸人」でも取り上げられました。『チ。-地球の運動についてー』の魅力をストーリーも交えながら紹介します。

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岩明均絶賛!『チ。-地球の運動についてー』はマンガ大賞第2位の実力派漫画!

今では誰もが知っている「地動説」。長い歴史の中では、宇宙は地球を中心に回っている「天動説」が支持されていた時代もありました。「天動説」を覆す「地動説」を唱えるため、命を懸けた人々を描いた物語が『チ。-地球の運動についてー』。原作は、前作『ひゃくえむ。』も好評だった魚豊(うおと)です。

舞台は15世紀の中世ヨーロッパ。C教に背く異端者は拷問や火あぶりなどが当たり前とされていた頃、宇宙の中心は地球であり、全ての天体はその周りを複雑に回っていると信じられていました。これが「天動説」です。

しかし、この天動説に異を唱え始める人たちが出てきました。「地球は2種の運動をして太陽は静止している。バラバラだった惑星は連鎖して動き、宇宙は一つの秩序に統合されている」と。これが「地動説」と呼ばれるものです。この宇宙の真理を証明するため、自身の命を懸けて託していく人たちを描いています

『チ。-地球の運動についてー』1巻

2021年3月に発表された「マンガ大賞2021」では、惜しくも第2位とはなりましたが、各方面から高い評価を受けました。また、『ヒストリエ』の岩明均、『きみのカケラ』の高橋しんなど先輩漫画家からも絶賛されている本作。2021年4月15日に放送された『アメトーーク!』の「マンガ大好き芸人」でも、麒麟の川島やケンドーコバヤシ、かまいたち山内らが面白い漫画として名前を挙げており、「カタカナ1文字のタイトルのあの漫画はなに?」と気になった方も多いのでは。

この記事では、『チ。-地球の運動についてー』の魅力と2021年4月現在発表されているストーリーをネタバレしながら紹介します。

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『チ。-地球の運動についてー』登場人物紹介

『チ。-地球の運動についてー』に登場する人物の中で知っておきたい重要な人物を紹介します。

ラファウ

教師のボトツキの養子。12歳で大学へ入学するほどの天才。異端者のフベルトと出会い、宇宙の真理を知ることに。

ボトツキ

ラファウの養父で教師。以前は天文を研究し異端の前科が。ノヴァクに脅され、ラファウが異端研究をしていることを密告する。

フベルト

ボトツキの元教え子。異端研究のためC教に投獄されるも嘘をつき自由の身に。ラファウに地動説が存在することを伝え自分の資料を託す。

ノヴァク

C教に背く者を排除するために派遣された異端者審問官で元傭兵。出家をせず存俗している。異端者の拷問なども任されていて容赦がない。

オクジー

民間警備組合に所属し決闘の代闘仕や立ち合いを務める。階級は下級市民。非常にいい眼を持っている。

グラス

同じ民間警備組合のオクジーの同僚。家族を疫病で亡くし自殺未遂の経験が。火星の観測に希望を見出す。

バデーニ

グラスが惑星のことを尋ねた修道士。優秀すぎるが故に懲罰を受けるほど。思想上の禁忌に触れ左遷される。地動説の研究を引き継ぐことに。

ヨレンタ

ピャスト伯の施設にある図書館で働く14歳の少女。女性ということで差別を受けるも優秀な頭脳の持ち主。バデーニたちに協力することに。

ピャスト伯

ピャスト一族のひとり。宇宙論の大家。天動説を証明することに人生を懸けきた人物。

 

天体マニアも唸らせる!『チ。-地球の運動についてー』をより楽しもう!天動説と地動説とは?

 『チ。-地球の運動についてー』の作品世界をより深く理解するために、天動説や地動説について簡単におさらいしましょう。

【天動説について】

15世紀までは「地球は宇宙の中心にあり、太陽や月やなどのほかの惑星が地球の周りを回っている」と人々は信じていました。これを「天動説」といいます。紀元前2世紀頃の天文学者ヒッパルコスがこの元になる考えを提唱。エウドクソスやアリストテレスなども「天動説」と唱えてきました。

西暦150年頃になると、プトレマイオスが「天動説」を引き継ぎ、以後その説が1400年もの間、信じられてきました。天動説が信じられていた古代ギリシャ時代にも、アリスタルコスが地球が動くことを唱えましたが、まったく認められることはありませんでした。

【地動説について】

永く天動説が信じられていましたが、16世紀以降になると、プトレマイオスの天動説よりも「地球やそのほかの惑星が太陽の周りを回っている」という方がより論理的だという考えが出てきました。「地動説」を唱えるコペルニクスです。しかし、それを証明できるほどの観測記録を示すことができませんでした。

17世紀になると望遠鏡が発明され、ガリレオがより精度の高い望遠鏡で木星の観測に成功。コペルニクスの説に説得力を与えました。以後、貴族のティコ=ブラーエの膨大な資料をもとに、弟子のケプラーが惑星運動の3法則を発見し、地動説が確立されていったのです。

 『チ。-地球の運動についてー』では、天動説から地動説について、非常に綿密に描かれていることがわかります。同時に、真理を知ろうとする学者たちの命がけの好奇心が読者にもひしひしと伝わってきます。歴史的な事実と人々の熱き想いが同居する魅力的な作品です。

著者
安野 光雅
出版日
1979-08-05

 

このほかにも天動説から地動説に至る歴史についてより理解を深めたい方には、コペルニクスの人生や研究に関する書籍をまとめたこちらの記事がおすすめです。

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16世紀の初め、それまでの宇宙観であった「天動説」に対し、地道な天体観測によって「地動説」を唱え、科学的な宇宙観へと転回させたニコラウス・コペルニクス。今回は彼の人生と研究に関する本を紹介します。

 

『チ。-地球の運動についてー』天動説が覆る⁉【第1巻をネタバレ紹介】

15世紀前半のP王国。そこではC教が力を持ち、彼らが唱える天動説が信じられていました。宇宙の中心は最も低い地点にある地球だと。

そこに暮らす教師ボトツキの養子・ラファウは、12歳にも関わらず大学に合格するほど優秀な子供でした。神学を専攻するものと期待されていましたが、本心では天文を学びたいと思っていました。

そんな折、異端者として投獄されていたフベルトと出会います。最初はフベルトに脅迫され、彼の観測を手伝うラファウでしたが、宇宙の真理である地動説の存在を知ることに。

ラファウをかばって焼かれ死ぬフベルト。これまでの研究の成果をラファウに託すのでした。しかし、養父の密告により、ラファウもまたC教に捕まってしまいます。

ラファウは、改心したふりをして大学に行くつもりでしたが、牢の中で月明かりを見ると決心を固めます。彼が出した答えは、地動説を信じること。彼は宇宙の真理を知ることで、初めて感動を知りました。毒を飲み自殺を図りますが、最期に残した言葉は、その感動は「愛」だということでした。

『チ。-地球の運動についてー』1巻
著者
魚豊
出版日

作者魚豊にとって、100メートル走に人生を懸けた男を描いた前作『ひゃくえむ。』とは全く違うテーマに挑戦した本作。登場人物が傍から見れば「どうしてそこまで?」と思うほど1つのことに熱中する姿が、本作でも作者らしく眩しく美しく描かれます。

歴史的な背景を元に、フィクションの登場人物らが狂気を感じるまでの情熱を持って地動説を主張していくさまが見所。弾圧される描写には時に心が痛くなりますが、絶望の環境に置かれた登場人物らの意志が報われる日がくるのか、続きが気になる作品となっています。

 

 

『チ。-地球の運動についてー』10年後に託された地動説!【第2巻をネタバレ紹介】

いきなり主人公が死んでしまうという結末を迎えた1巻でしたが、2巻の舞台はラファウの死から10年後。フベルトからラファウに託された研究資料のもとに、下級市民のオクジーとグラスが辿り着いていました。そこには、2つの手紙がありました。1つは最近のもの。もう1つは10年前に書かれたラファウのものだったのです。その手紙の表には「地」と書かれてきました。

ラファウが残した資料は、ある占星術師に託され、彼の死でまたオクジーとグラスに託されました。彼らにはその資料を生かす術はなく、修道士のバデーニを訪ねることに。

その途中、グラスは朽ちた橋から落ちて死にますが、オクジーは託された火星の観測記録と首飾りを持ってバデーニのもとに向かいます。バデーニもまたあまりに優秀がため、禁忌に触れようとして左遷されていたのです。

そんなバデーニは、オクジーが観測記録の続きを記録することを条件に話を聞くことにしました。そして、これまでの資料を目にすると、地動説の資料であるとすぐさま理解します。そして、世界を動かすことを決意するのでした。

『チ。-地球の運動についてー』第2巻
著者
魚豊
出版日

 

『チ。-地球の運動についてー』絶望した聡明な少女に希望は訪れるのか【第3巻をネタバレ紹介】

バデーニが地動説の資料を確認すると、発表できる完成度には達していないといいます。しかし、自分ならその仕事を引き継げるだけの能力があるとも。

翌日から、多くの記録を持つであろう上級市民に接触するため、彼らが利用する掲示板に問題を張り付けて回ることに。その日の夕方には1人の少女が回答しているところを発見します。彼女は14歳の少女・ヨレンタ。宇宙論の大家・ピャスト伯の施設で働いているものの女だという理由で、まともに研究する機会すら与えられずにいました。

掲示板で問題を見つけたヨレンタは、素性を隠し、たった半日で回答。主人のやったことと嘘をつきますが、バデーニには見抜かれていました。ヨレンタ自身に協力を仰ぎますが、ピャスト伯の資料なくしては研究から遠ざかると返答します。

そこで、ピャスト伯のもとに向かう一行。一度は断わられるも、もし金星が満ちていることが見えたら、協力すると逆提案されます。そして、オクジーの目に見える満ちた金星。こうして、バデーニは資料の閲覧許可を得ますが、ピャスト伯は星空を見上げながら息を引き取るのでした。

『チ。-地球の運動についてー』3巻
著者
魚豊
出版日

「知識」を得られるということに対して、現代の日本で育った我々にはありがたみを感じる機会は少ないでしょう。この作品を読むと、学びを得るということや文献を読むことができるということは、研究をした先人の賜物なのだと感じることでしょう。

特に、女性であることによって知への探求心を妨げられるヨレンタの葛藤は見所となっています

 

『チ。-地球の運動についてー』をまずは無料で読んでみよう!

話題の漫画『チ。-地球の運動についてー』は、ますます面白くなっていくことなし!まずは実際に読んでみてください。第1話と第2話を無料で読むことができます。

ビックコミックブロスにて配信中。

また、電子書籍版では1話ごとの購入も可能です。

コミックスは第3巻まで発売中。

 

まとめ

これからの展開がますます気になる『チ。-地球の運動についてー』。もっと面白くなること間違いなしの実力派漫画です。人々の生活や拷問などの時代背景をきちんと描き、真理を探究する学者たちの鬼気迫る心情を見事に表現。本作を読むと、漫画の表現力と創造力にあらためて驚かされます。読めば読むほどその魅力が染み出る、そんな漫画作品です!

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