『残像に口紅を』TikTokでの本紹介におすすめサイトは勝てないのか?

更新:2021.11.20

『残像に口紅を』という30年以上も前の小説が、爆発的に売れています。火付け役となったのはTikTokのレコメンド動画。「TikTok売れ」というムーブメントは、日経トレンディの2021年ヒット商品ランキング1位にも選ばれるほどに。 いったいこのレコメンドはなにがすごいのでしょうか?『残像に口紅を』のけんごさんをメインとして考察してみました。

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2021年は「TikTok売れ」で若者が経済を動かした年!

『残像に口紅を』は1989年に発表された小説ですが、2021年11月までに6回重版がかかり、計11万5千部も増刷されています。その理由は、TikTokで読書好きTikTokerのけんごさんが紹介したこと

このようにTikTokでレコメンドされた商品が売れることを「TikTok売れ」といい、日経トレンディの2021年ヒット商品ランキング1位にも選ばれました。(実際その購買活動をしている若者が、そう呼んでいるとは限りませんが。)

どちらにせよ、TikTokのメインユーザーは平均34歳というデータがありますので、若年層の消費活動が経済を動かしていることはたしか。そこまでユーザーを突き動かす、TikTokのおすすめ動画のなにが一体すごいのでしょうか。当サイトのように、従来の本おすすめサイトによる記事との違いをふまえて考えてみましょう。

著者
筒井 康隆
出版日
1995-04-18

TikTokでのレコメンドここがすごい①とにかく短い!でも興味を引く

ライターは恥ずかしながら、『残像に口紅を』の騒ぎを聞きつけて初めてけんごさんの該当の動画を拝見しました。そこでまず感じたのが、当然のことではありますがその圧倒的な短さ。TikTokがショート動画のプラットフォームであることくらいは知っていましたが、まさかくだんのヒットを生み出した動画がここまで短いとは。

時間でいえばとにかく短いおすすめですが、短い言葉でスパッと興味を引くことを言えているかどうかに勝負の分かれ目があるのだと感じました。

けんごさんは本紹介サイトでの解説のように登場人物の名前は言いませんし、あらすじすら言わないで魅力を紹介している動画もあります。それよりも、「あなたがこうだとしたらどう?」「この本を読んだらあなたもこうなる!」と、ユーザーが得られる読後感や楽しみ方をとても端的に伝えているのです。

インタビューによれば、けんごさんは撮影や編集よりも文章を考えるのに1番時間を使っているのだそう。それも納得です。

TikTokでのレコメンドここがすごい②まったく興味がない層へのリーチ

2つ目の違いは、TikTokの動画の見せ方。おすすめされている作品、どころか読書自体に興味がまったくない人にも刺すことができるプラットフォームであることです。

動画を見て本を実際に買った人のなかには、「読書に興味があるからけんごさんをフォローしよう」ではなく、「TikTok見てたら勝手に流れてきてなんとなく動画を見た」という人が少なくないでしょう。アプリがユーザーの趣向を判断し、次々にレコメンドを流すという仕組みだから起こること。

次に読む本を探している人だけでなく、「なにか面白いものないかな」「流行ってるものはなんだろう」という潜在的なユーザー層にリーチできたからこそ、反応したユーザーの数も結果的に多くなったといえます。

結局は、本当に面白いものを見極める力が大事

TikTokで誰かがおすすめしたものがここまでのヒットを掘り起こすとなると、本をおすすめするサイトとしても身の振り方を工夫していかなければいけません。いかに短く、どのように潜在的ユーザーに届けるのか。

ただ、『残像に口紅を』が作品として本当に面白い作品であるということも抜きにしては考えられないのです。けんごさんは4本目にアップした動画で紹介した本ですでに「重版」がかかったそう。それは「あのけんごさんが薦めるから面白いのだろう」ではなく、まぎれもなく面白い作品をけんごさんが見極めていたことと、その伝え方がうまいことの証明といえます。

これからもTikTokをはじめとしたショート動画のレコメンドからどんなヒットが生まれるのか、目が離せません。


ちなみに日経トレンディの2021年ヒット商品ランキングの1位は「tiktok売れ」でしたが2位は「ウマ娘 プリティーダービー」3位は「シン・エヴァンゲリオン劇場版」でした。

2位の「ウマ娘 プリティーダービー」はアプリゲームですが、こちらを原作とした漫画『ウマ娘シンデレラグレイ』も書店で売切続出の大ヒット。ゲーム原作ながら「次にくるマンガ大賞2021」コミックス部門第2位にも選ばれる名作です。ヒットの理由も納得できる漫画解説はこちらをご覧ください。

『ウマ娘シンデレラグレイ』の魅力を解説!元ネタ回収が神がかっている名作です【ネタバレ少々あり】

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3位の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」についても、語りたくて仕方がない!というライターがこちらで詳しく語ってくれています。

『シン・エヴァンゲリオン』とは結局どのような映画だったのか?

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