女医のおおたわ史絵が医師として影響を受けた、昭和・平成の懐かし名作漫画3選

更新:2021.11.23

著名人が漫画をおすすめする機会はたびたび見ることがありますが、真っ直ぐに「漫画をおすすめする」ことに挑戦するテレビ番組があります。BS日テレ『あの子は漫画を読まない。』では、カズレーザーと宇垣美里をホストとして各回ゲストの著名人がおすすめの漫画を紹介。 この記事では、2021年11月に放送された「昭和・平成の懐かし名作漫画特集」で医師のおおたわ史絵が語った漫画にスポットを当てていきます。

ブックカルテ リンク

医師の視点から見た『ブラック・ジャック』のすごいシーン

女医のおおたわ史絵がまず紹介したのは、『ブラック・ジャック』単行本1巻に収録される「人間鳥」のエピソード。

生まれつき歩くことができない少女に、ブラック・ジャックは特殊な医療技術で翼を与える手術を施します。空を飛ぶことができるようになった少女ですが、今度は世間から好奇の目に晒されることに。追いかけられたり、サーカスに売られようとしたりとつらい思いをしてしまいます。

人間の醜さを知った少女は、今度はブラック・ジャックに「人間を辞めて鳥になりたい」とお願いをします。見事手術は成功し、少女は鳥として生まれ変わることになったのです。

この物語に対しておおたわは「自殺幇助に近いのではないか」と指摘。「生きること、生きることを肯定することだけが正しいのか?」を突き付けられるエピソードだと語りました。

著者
手塚 治虫
出版日

また別に、ブラック・ジャックが最大の危機を迎えたエピソードも紹介しました。コミックス10巻に収録される「ディンゴ」のエピソードです。

オーストラリアを車で訪れた際ブラック・ジャックは、ある家で家族全員が死んでいる場面に遭遇します。その遺体はみな、赤い斑点のある状態でした。

その後、自分もその症状が出てしまい、腹痛に襲われます。自分の便を調べて寄生虫が原因であることがわかると、野外にテントを張り自ら開腹手術をおこなうのです。

おおたわも虫垂炎になった時自身で点滴であれば施した経験があるそう。ただ執刀するとなれば相当な痛みや身の危険をともなうはずで、ブラック・ジャックの医師としての「生」への決意の固さをあらためて賞賛しました。

著者
手塚 治虫
出版日

『ブラック・ジャック』についてより深く知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

『ブラック・ジャック』5分でわかる10の意外な事実!天才無免許医の謎を解く!【ネタバレあり】

『ブラック・ジャック』5分でわかる10の意外な事実!天才無免許医の謎を解く!【ネタバレあり】

1970年代半ば、「古い漫画家」と言われどん底にいた手塚治虫の起死回生の一作となった本作。医療漫画という新たなジャンルを切り開いたこの作品には、隠された意外な事実がいくつもあります。 今回は、手塚治虫が「漫画の神さま」と言われるゆえんと、『ブラック・ジャック』の10個の意外な事実をご紹介します。 本作は漫画アプリから無料で読むこともできるので、ぜひご利用ください。

おおたわ史絵もヨーヨーさばきに憧れた『スケバン刑事』

実写ドラマでおなじみという方が多いかもしれませんが、漫画『スケバン刑事』少年院にいた主人公・麻宮サキが学生刑事になるストーリーの少女漫画です。桜の紋章入りのヨーヨーを手に、警察の目が行き届かない学校にのさばる悪者を成敗していく痛快さが人気となりました。

おおたわが注目したのは極悪三姉妹との対決エピソード。三女のエミは画家志望でしたが、絵がうまい転校生が現れたせいでコンクール優勝を逃しそうになります。

そこで彼女の妨害をするため三姉妹は利き手をバイクで引いたり、彼女の母をハブで殺害したりと悪行三昧。挙げ句、転校生のこともハブで殺してしまうのです。

そこで主人公のサキは三姉妹を懲らしめるべく立ち上がります。ヨーヨーで蛇を退治、逃げようとした長女のヘリコプターにヨーヨーでぶら下がり、見事取り押さえに成功しました。

ヘリコプターからぶら下がる…という他にも、ヨーヨーを思いのままに自在にあやつる手さばきに注目だとおおたわ。漫画の絵のテイストも、ドラマとは違う味わいを感じられます。

著者
和田 慎二
出版日

遺体からメッセージを受け取る『きらきらひかる』におおたわ史絵も感動

監察医とは遺体の声に耳を傾け死因を解明する仕事です。『きらきらひかる』の主人公・ひかるは新米監察医で、とことん真実を追求する人物として描かれます。

まずおおたわが紹介したのは、謎の死を遂げた1人のヤクザとその母の物語。見つかった遺体の死因は心不全と判断されますが、その後調査で彼の家から大量の拳銃を発見。事件性が疑われるも解明できずにいました。

ひかるはヤクザの母親に会いに行くことに。母親は息子の死を悲しむよりも、「あんな子に育ててしまった」という後悔のうちにいました。

そしてヤクザが亡くなる直前に書かれたと思われる母への手紙が見つかります。そこには改心して足を洗うという旨が。しかし母は、その言葉を信じることができません。

ひかるは、手紙の文字の不自然な震えを発見。切手は唾液で貼るものであることを着想し、手紙に貼られた切手を調べるとフグの毒が検出されました。それによって他殺であることが発覚するのです。本当は改心した彼でしたが、兄貴分に殺されてしまったというのが今回の真実。

死んでからでもこのヤクザは、母にメッセージを伝えることができました。そのために重要な役割を担う、監察医の仕事に思いを馳せるおおたわでした。

著者
郷田 マモラ
出版日

また最後にもう1話、こちらのエピソードも紹介。亡くなった実母を忘れられない少年と、カメラマンを仕事にする新しい義理の母のエピソードです。

少年が新しい家庭に引き取られてから、すぐには心が開けずにいました。そこで義理の母は、カメラマンとして働く現場へ連れていくことに。

少年は彼女の働いている姿に「かっこいい」と見直し始めますが、あまりにもファインダーを覗くことに夢中な義理の母。少年は飽きてしまい、別荘の部屋に1人で帰ります。その直後、遺体となって見つかるのです。悲しむ義理の母でしたが、犯人として疑われてしまいます。

ひかるらが遺体を調べたところ、匂いから青酸ガスの中毒だと判明。それは少年の大切なぬいぐるみが暖炉で燃えたことで発生していました。義理の母による事件ではなく、なんとも悲しい事故だったのです。

なぜぬいぐるみは燃やされたのか。それは、暗室で義理の母が自分を撮った写真の束を見て愛情を感じた少年が、実の母との決別を決心したこと。実の母の形見を自分で燃やしたのでした。

胸が痛くなるような事件でしたが、法医学によって真相がすぐに明らかになれば少しでも救われる思いがあるとおおたわは言います。こちらも1998年にドラマ化されていますが、原作はまったく別物と感じられるほど設定が異なる点があり比べて見る楽しみ方もおすすめです。


以上がおおたわ史絵がおすすめする漫画3選でした。番組の見出しでは「昭和・平成の懐かし名作漫画特集」としてくくられていましたが、医師として考え方や生き方に影響を受けた作品がその時代の漫画だったというように捉えることもできるでしょうか。ドラマで親しんでいたという方も、ぜひ原作漫画を手に取ってみてください。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る