2022年7月より放送のドラマ化が期待される星崎真紀原作の漫画『魔法のリノベ』。一旦は終了していた連載も再スタートし、漫画にドラマに話題となっています。住宅リノベーションを通して描かれるそれぞれの家族の物語です。リノベーションできるのは家だけでなく人間も同じ。そんな気になる『魔法のリノベ』を紹介します。
星崎真紀原作の住宅リノベーションを描いた漫画『魔法のリノベ』。人間ドラマを描いた作品が読みたい方にぴったりの、お仕事漫画としてもおすすめの作品です。
星崎真紀は80年代「LaLa」を中心に活動し、出版社を移籍しながら今なお活躍を続けている漫画家です。2015年から女性向け漫画雑誌「JOUR」に連載された『魔法のリノベ』ですが、一旦は完結したものの、ドラマ化を受け再連載がスタートしました。
星崎真紀といえば、2006年からドラマ化された藤原紀香主演の『ひみつな奥さん』の原作者でもあります。最新作『魔法のリノベ』にて、15年振りに原作漫画がドラマされることに。
昨今、自身の住宅をリフォームやリノベーションする人が増えています。この作品が生まれた背景にも作者のリノベーション経験があるそうです。
『魔法のリノベ』によれば、「リフォームは老朽化した箇所を新しいものにする工事のこと、一方、リノベーションは間取り変更など大規模な改築を含む工事のこと」とのこと。リノベとはリノベーションのことです。
大手工務店から転職したバリバリの営業畑、真行寺小梅(しんぎょうじこうめ)が、お人好しでバツ2のシングルファーザー福山玄之介とペアを組み、さまざまなリノベーション案件を担当していく様を描いた物語。
ドラマでは真行寺小梅役に波留を迎え、ペアを組む福山玄之介を間宮祥太朗が演じいています。この2人は以前にもラブコメドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』で共演を果たし、シリアスなシーンからコメディシーンまで絶妙な掛け合いを演じていました。今回もかなり期待できるキャスティングではないでしょうか。
この記事では、『魔法のリノベ』を原作漫画からドラマに至るまで、その魅力を余すことなく紹介。漫画やドラマを楽しむ際に参考にしてください。
- 著者
- 星崎 真紀
- 出版日
神行寺小梅は、大手工務店勤務で7年間営業を担当していましたが、一身上の都合により退社。ちょうど転職先を探していたところ、山登りサークルで顔見知りの「まるふく工務店」社長、福山蔵之介から再就職の誘いを受けます。
「まるふく工務店」では、長男の福山玄之介が脱サラをしてリフォーム部の営業担当をしていましたが、なかなか成績を残せずにいました。そこで、小梅とペアを組ませて、なんとかリフォーム部をリノベーションしようとする蔵之介の思惑がありました。
バリバリの営業畑だった小梅に教えられていく玄之介。そのお人好しの性格から、何度も妻に逃げられ、バツ2のシングルファーザーです。しかも、2回目の妻の相手は次男の寅之助。つまり、実の弟に元妻を取られた玄之介でした。
複雑な事情を抱えながら、残された1人息子の進之介とともに、新たな人生に進む玄之介。小梅もまた個人的な理由で前職を辞めています。彼女にとっても人生の再出発。こんな2人が、住宅リノベーションを通して、さまざまな人たちの人生に関わっていく様を描いた物語です。
また、コミックスの巻末には「ちょい足し解説」も。それぞれのお話で登場したリノベ―ション内容をまとめたものです。例えば、第1話では、2つの和室と台所を1つにまとめ、広いフローリングのLDKに改築したリノベーションの詳細を記載。耐震性を保つために、もともとの柱や筋合いなどを残したことなどの解説もあります。非常に勉強になりますよ!
- 著者
- 星崎 真紀
- 出版日
作品タイトルにもあるように、『魔法のリノベ』はリノベ(リノベーション)がテーマの物語です。リノベーションは、住宅に関していえば、「間取り変更などの大規模な変更のある改築工事のこと」。
その家の住人の年齢や生活の変化などに対応し、住み替えではなくリノベーションを選択する人たちも多くいます。家との思い出は残しながら、和室をつなげて広いフローリングのLDKに変えたり、家の中の移動を自由にする回遊動線したりとさまざまな方法があります。
この作品を読んで、リノベーションによる改築に思わず感心してしまった読者も多いのでは。「まるふく工務店」のリフォーム部営業担当の2人は、依頼人の目線にたって、よりよりリノベーションをいくつも提案しています。なぜ彼らがその提案をしたのか。コミックス巻末の「ちょい足し解説」と合わせながら見ていくと、さらに理解度も高まります。
『魔法のリノベ』では、小梅と玄之介がリノベーションプランを提案する際に、その依頼人の家族構成や生活時間など細かいところにも配慮していることが描かれています。それは、住宅の在り方が住人と密接に関係しているからです。
リノベーションで大事なことは、依頼人がどういう性格でどう暮らしたいかを考えること。たとえば、第1巻の第4話では、ある夫婦からキッチンのリノベーションの依頼を受けます。妻の希望は、家族が「共同作業する場所」にするということ。このリノベーションがきっかけで、この夫婦の人生も大きく変わることになるのでした。
住宅リノベーションとは、まさに「ライフオーガナイズ」。リノベーションすることで、新たな家族のかたちを構築する手伝いにもなるのです。それぞれの人たちの人生に関わる仕事が住宅リノベーションなんですね。
小梅は元の会社で人間関係の構築に失敗し、玄之介は妻に2度も逃げられました。互いにプライベートで傷を負った2人ですが、「まるふく工務店」リフォーム部の再構築と自身の人生の再出発に向けて、新たな1歩を踏み出しました。
住宅リノベーションは、依頼主の人生に関わる仕事です。作中にもあるように「家のリノベーションは人生のリノベーション」。
この物語は依頼人だけなく、小梅や玄之介、彼らの周囲の人たちも自分を見つめ直し、新たな道を歩んでいきます。まさに、登場人物たちが、新しい自分へリノベーションしていくのも『魔法のリノベ』のみどころのひとつ。リノベーションできるのは、家だけでなく人間も同じだということを教えてくれる素敵な物語です。
- 著者
- 星崎 真紀
- 出版日
『魔法のリノベ』は、住宅リノベーションを題材にした物語です。作者が、実際に自宅のリノベーションをした経験をもとに本作を描いています。
リノベーションに関しては、かなり詳細にリアルな事例が登場します。どの話をとっても、非常に興味深い内容です。実際の住宅が登場し、どのようにリノベーションされていくのかリアルに再現できれば、ドラマも魅力的な作品となることでしょう。
原作漫画では、住宅リノベーションの知識だけなく人間ドラマも作品の魅力のひとつです。ドラマでは、小梅の元上司や大学時代の友人、バーの店主などオリジナルの役柄も登場します。漫画とは一味違った人間関係が期待できそうです。
また今回のドラマの主要なキャスティングは、原作漫画のキャラクターにとても近いものに。仕事に厳しく邁進していく小梅は野心的にさまざまな役柄を演じる波留のイメージと重なる部分も。人のよい玄之介も若手の中でも演技力に定評があり、幅広い役柄をこなせる間宮祥太朗にピッタリです。間宮の子役との掛け合いも楽しみなところ。波留と間宮祥太朗との掛け合いも、すでに共演経験のある2人ですので、安定した面白さになること間違いありません。
- 著者
- 星崎 真紀
- 出版日
2015年からスタートした『魔法のリノベ』の連載は、一旦は終了しました。しかし、今回のドラマ化にあたり「JOUR」5月号より集中連載が再スタートしています。また、ドラマの初回放送は2022年7月18日ですが、それに先立ち、これまでデジタル版のみだったコミックス第4巻の紙版も発売されました。
2021年10月期より、フジテレビの火曜夜10時のドラマ枠が月曜夜10時に移行。通称「月10」です。『魔法のリノベ』もこの「月10」枠での放送となります。そのひとつ前の枠「月9」と比較すると、少し大人向けのドラマ枠といったところ。
ドラマ主題歌はヨルシカの『チノカテ』。「傷を抱えながらも前を向いて生きる登場人物たちに寄り添えるアーティストなのではないか」という理由でヨルシカが抜擢されました。オープニング曲であるさとうもかの『魔法』は、彼女が「変化」をテーマに書き下ろした楽曲です。
ドラマの脚本を務めるのは『サマータイムマシン・ブルース』などで名をはせるヨーロッパ企画の上田誠、監督は『おっさんずラブ』の瑠東東一郎が担当するなど期待が高まっています。心の声の演出方法や、ミニチュアと実写の組み合わせ方など映像作品としての面白さが詰め込まれています。
住宅はもちろんのこと、それぞれの人生のリノベーション物語として大人が楽しめる作品となることでしょう。
家の数だけ家族があり、それぞれの理想的なかたちがあります。リノベーションを通して、依頼人が幸せに暮らせるようにライフオーガナイズを目指す小梅と玄之介。自分たちの過去の傷をバネに、仕事に邁進していく2人の姿はとても頼もしく清々しいものがあります。そんな『魔法のリノベ』は、今を懸命に生きる全ての人たちにおすすめの作品です。ぜひ、漫画もドラマも合わせて楽しんでください。
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