「様々な思いを抱えている人に、この本を受け取ってほしい」……そんな思いを叶えられる場所が、個人で一棚から本屋さんになれる「シェア型書店」です。その「シェア型書店の棚主」に本をおすすめしてもらう連載企画がスタート! #3は江古田の「ぼっとう&よはく」棚主である暁さんに、子どものことで悩んでいる方におすすめの本を語っていただきました。(編)
はじめまして。リレーコラムの三番手「暁の本棚」の棚主、暁(あかつき)と申します。子どもが不登校だったことからヒントになる本を探してきました。それをシェアしたくてイチオシの本を揃えて閲覧専用の棚にしました。子育て、心理、絵本などが多いです。
今回は私の人生を救ってくれた、とっておきの2冊をご紹介します。
臨床心理学の大家、河合隼雄さんの本です。1冊目はこちら。
- 著者
- 河合 隼雄
- 出版日
- 1998-05-28
この本と出会ったのは30代のとき。0歳と2歳の育児と家事と仕事で疲労困憊、仕事人間の夫とはすれ違い。そんな頃、フラフラ〜と本屋さんに入ったら平積みされていたのです。
救われましたね〜、この本に。
「こんなに頑張っているのに、なんでうまくいかないの?」と空回っていたことが「あ〜、これだったのか!」と種明かしをしてもらったようでした。
なんといっても河合隼雄さんですから、いろんな悩みに精通しているわけで。しかも55章すべて4ページ、どこから読んでもOK。深い内容が平易な語り口で書かれています。処方箋といいつつハウツー本ではなく、自分の悩みに何かしらヒントがもらえる本です。
目次を見ているだけで楽しいです。いくつか引用します。
この本に出会った頃、助けになったのは「イライラは見とおしのなさを示す」です。要約すると……
ある女性が夫の言動がイライラすると言う。聞いていくと、実は妻自身がやらなければいけない仕事をのばしのばしにしていて、そのことと夫の遅い話し方が妙にひっかかっていたのだ。イライラするときは「何かを見とおしてないからだ」と唱えて自分の内部を探検すると有益な発見ができて、問題解決につながることもある。何よりイライラを人にぶつけたり自分で苦しむことが減る。
「灯を消す方がよく見えることがある」にも、助けられました。こちらも要約すると……
河合さんが少年時代に読んで印象に残った話。「釣り船で海に出たら夕闇が迫って方角がわからなくなった。灯をかかげて方角を知ろうとするが、見当がつかない。思い切って灯を全部消したら、闇の中から浜の町の明かりがボーッと見えて帰れた」
この話が現在の仕事に示唆を与えてくれている。
不登校であちこち相談にいったがうまくいかなかった親がわれわれ専門家のところに辿り着く。
「目先の解決を焦って灯をかかげて見るのではなく、それを消して闇の中で落ち着いて目を凝らす。自分の心の深みから、本当に自分の子どもが望んでいるのはどのようなことか、子どもを愛するとはどんなことか、だんだんわかってくる」
「灯を消してしばらく闇に耐えてもらう仕事を共にするのが心理療法家の仕事」
はぁ〜……メンタルが弱っている時は耳が痛いですね。でも、時々この文章を思い出しては「これって娘が本当に望んでいることだっけ?」と引き戻してもらいました。
他にも深イイ話がたくさん載っていてご紹介したいのですが、気になる方は手にとって探してみてください。いつか皆さんがどの章を気に入られたのか聞いてみたいなぁ、と思います。
文庫本の最後に載っている谷川俊太郎さんの寄せ書きもまた良くて。お二人は深いところで心が通じ合っていたのね、と思わせる文章でした。それも読んでのお楽しみ!
もう1冊がこちら。
- 著者
- 河合 隼雄
- 出版日
こちらはさしずめ『こころの処方箋』の子育て版、といったところです。
赤ちゃんから思春期まで子供の成長過程を追ってQ&Aの形式、各章4ページで書かれています。
Q&Aといってもハウツー本ではありません。「子どもの個性も親の個性も大切にしようとするとハウツー式の答えは出てこない、ヒントを載せるからそれを読んで自分なりの方法を見出してもらえると有難い」そうです。
日本人は教育熱心な人が多いけど堅く考えすぎてかえって不幸になっているように感じられる。親がセカセカしていて、子どもに「のびのびと生きて」は、ナンセンスでしょ。
その通りですね!そして、さすがは河合先生。深い人間理解、子どもの成長過程の知識、それらがベースにあって書かれています。しかも説明するときの例えが適切でわかりやすい。全体的に「こういうふうにすればええんと違う?」と優しく応援されているように感じます。
こちらも目次を眺めているだけで参考になります。引用します。
個人的にはQ42の内容に、深く納得しました。要約します。
「感情をコントロールして知的に生きる人が素晴らしい」が極端になって感情を抑える力が強くなりすぎた。感情と知性がバラバラになって知性が前に出過ぎ、感情が動かなくなってしまった。感情は身体と関係が深い。
こころとも身体とも言えないところがやられて心身症になる。心身症はこころからアプローチしても身体からアプローチしてもなかなか治っていかない。現代的な病気で、文化の病として起こっている。
今、起立性調節障害で苦しむ人が沢山います。うちの子も不登校の始まりは起立性低血圧で、その後何年も困っています。だからこの文章に出会った時は嬉しかったです。「文化の病か!頭で考えた理屈じゃなくて、感情を大切にすればいいんだ」と気づきました。
子育て本は沢山ありますが「Q &A こころの子育て」は色褪せない名著です。子どもに関わるすべての人に読んでいただきたいです。ヒントが沢山見つかりますよ。
本記事の著者も棚を借りる「ぼっとう&よはく」は、練馬区江古田にある一棚本屋。コワーキングスペースも併設しています。
スペースにて不登校の親の会を開いたりしていたため、棚主さんには本好きというより社会課題に興味のある方が多い印象です。 棚主さんは、緩く仲良し。
「普通が苦手な方にもあたたかいスペース」をスローガンに掲げています。棚主さん募集中!!
スペース内には、店主の私物棚も有り、閲覧可能となっています。
一棚本屋営業の日:水/土/日/祝 13:00~17:00
コワーキングスペース:月/木/金 12:00~17:30
詳細はカレンダーでチェックできます。
西武池袋線 江古田駅 南口より徒歩3分/都営大江戸線 新江古田駅 A2出口より徒歩6分
東京都練馬区旭丘1丁目 65-18 旭丘ダイヤモンドビル 2F
営業最新の情報は、ぼっとう&よはく公式ホームページをご覧ください!
中学・高校生で不登校のお子さんを持つ保護者の方へ。遠慮なく経験を話したり、アイデアをシェアできる会を開催します。
先輩ママたちが運営する不登校の道案内サイト「未来地図」スタッフである著者・暁の失敗談もお話します。今様々な悩みを抱えている方にとって、ホッと一息つける場所にしたいと思います。
感染対策も整えてお待ちしております。
2022年8月20日(土)14時~16時
参加費:800円(飲み物、おやつ付き)
ご予約や最新の詳細は、暁のTwitterをご覧ください。
シェア書店からのおすそわけ
誰でも1つの本棚から本屋さんになれる「シェア型書店」という場をご存知でしょうか。店に並んだ棚の1つを個人が「借りる」ことで、そこに好きな本を並べて売ることができるという仕組み。本の新旧やジャンルを問わずそれぞれの棚主の個性が光る選書を楽しむことができるのは、訪れる人にとっても魅力です。 そこでホンシェルジュでは、その「シェア型書店の棚主」に本をおすすめしてもらう連載企画をスタート!リレー形式で、様々な思いを抱える方へ届けたい本を語っていただきます。