誰からも愛される動物園でも不動の人気のキャラクター「パンダ」。子供が生まれたりすると夕方のニュースでどんな名前がつくかなど取り上げられ、話題性抜群の動物です。今回はパンダの生態とパンダにまつわる書籍を紹介します。
私たちが日本の動物園で見ることができるパンダは、正式には「ジャイアントパンダ」という名称で、哺乳綱食肉目クマ科ジャイアントパンダ属に分類されるクマの仲間になります。
世界三大珍獣(他にオカピ、コビトカバ)の一つとして知られているジャイアントパンダは、中国の四川省・陝西省などの標高2500~3500mの山岳地帯の竹林に分布しています。
パンダは群れや家族を形成せず、基本的に単独で行動します。標高の高い寒冷な竹林に生息しているので寒さには強く暑さには弱い体質です。
動物園ではあまり動かず、俊敏なイメージがあまりないですがパンダは意外と早く走れます。時速約30キロメートルで走ることができますが、その姿を見ることができないのは、エネルギー消費が激しいからだということです。
またパンダは木登りが得意ですが、降りるのが苦手でよく木から落ちることが度々あるそう。木に登ることは「休憩」や「危険回避」の合図だが、時々「求愛行動」の合図にもなるようです。
近年は生息数が増加傾向にあるようですが数は少なく、絶滅の危険がある動物でもあります。
ちなみにパンダを種として発見したのはフランス人です。1869年、フランス人のダビット神父が、四川省の山奥で見つけたと言われています。見つかってから150年とまだ人類にとっては歴史が浅い動物です。
パンダ全身の色は白と黒の二通りにしか見えませんが、目の周り、耳、肩、両手、両足だけが黒色になっている以外、白ではなく全てクリーム色です。
敵に対する凶暴さのアピールであるという警戒色という説、白い部分は雪に紛れるためで、黒い部分は寒い時期に体温を保つためや太陽熱を吸収するためという説、目の周りの黒い部分は、太陽の眩しさを軽減するためのサングラス代わりという説などいろいろな憶測が飛び交う中で、近年パンダの胴体の白い部分は雪の多い場所でのカモフラージュに適しており、黒い部分は森の中で隠れるのに有効的であることが判明したそうです。
現在天敵といえる動物はいませんが、かつては虎のような動物が襲っていたと言われており。その名残が今にも受け継がれているようです。
パンダは竹や笹をメインに食べます。1日食べる量は20kg以上で、自身の体重の約1/4~1/5にもなる食事を時間をかけてゆっくり食べます。
しかし、食べた竹や笹のうち、消化できるのはたった20%ほどで栄養分を吸収しても、食べた量の80%はフンとなって排出されてしまいます。
パンダは元々肉食の動物です。草食動物が体長の約20倍以上もある長い腸をもつのに対し、パンダの腸は体長の約4倍ということが草食動物に当てはまらないことを示しています。そのため大量の竹を食べないと、生きていくのに必要なだけのエネルギーを得ることができないので、竹を食べ続けなければならないのです。
もともとパンダは、低い土地での生存競争を避け、中国山岳地帯の奥地を生息の場としました。そこで冬でも枯れず1年を通し豊富に得ることができる竹を主食として選んだのです。ただ、竹や笹ばかり食べているイメージが強いですが、野生のパンダは魚・昆虫なども捕食することがあります。
パンダは竹を食べるために、犬歯と臼歯を持っていて、それらの歯と強力なアゴの力で竹を擦り潰したりして、栄養分を摂取しています。また一般的に熊の仲間は物をつかめないのですが、パンダは唯一掴むことができます。その秘密は人間のような形の手の造りですが、よく見ると指が7本あるのがわかります。これによりパンダは器用に竹をつかんで食べることができるのです。
パンダは寒い地域で暮らすクマの仲間ですが、クマのように冬眠することはありません。冬眠は通常冬に食べものをとることができなくなる地域の動物たちが、厳しい冬を乗り切るための手段です。ジャイアントパンダが主食にしている竹は、冬でも枯れることなく一年を通して安定して食べ続けることができるので、冬眠の必要がないのです。
日本のパンダの所有権はすべて中国が保有しています。日本の動物園で飼育され、たとえ日本で産まれたパンダの子供であっても中国が所有権を有しています。
所有権が中国にあるので日本のパンダはレンタルしている事になり、実は毎年中国に高額なレンタル料を支払っています。上野動物園でいえば東京都が中国側に支払うレンタル料は年間約95万ドル(約1億800万円)となっており、非常に高額な金額となっています。
2017年に上野動物園でシャンシャンが誕生したのは記憶にも新しいかと思いますが、その両親、リーリー(力力、12歳)、シンシン(真真、同)は2021年2月までの10年間の期限付きで中国から賃借しています。
上野動物園に初めてパンダが来たのは日中の国交が正常化した1972年です。当時は友好の証しとして、中国側からカンカン、ランランが無償で提供されましたが、現在のシャンシャンとその両親の所有権は中国にあり有償となっています。
購入できないのかという疑問があると思いますが、ワシントン条約の絶滅危惧種に相当する動物は売買取引は出来ないため、レンタルという方法しかとることができません。
中国に払われたレンタル料はパンダの保護活動に充てられるとの事です。
パンダジャーナリスト中川美帆氏による生態や日本のパンダについてはもちろん普段知ることができない世界中のパンダについて知ることができる魅力的な内容になっています。パンダにまつわる政治、経済、文化、歴史、生態など各方面のスペシャリストに取材しています。
- 著者
- 中川 美帆
- 出版日
パンダはただの動物園のアイドル的存在じゃない!ということを知ることができます。
自費で世界30ヶ所のパンダがいる動物園を訪れるだけあって、熱量と情報量が素晴らしいです。物心ついたころからパンダが好き、パンダの世界の奥深さに魅了されてきた著者だからこそ伝えることのできるパンダの魅力とドラマをカラー写真とともに楽しんでください。
- 著者
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- 出版日
写真集とは違ったテイストのため少し専門的な書籍かもしれません。ただパンダ好き玄人の方にはおすすめの一冊です。中国のパンダ研究の貴重な論文も掲載されています。パンダ研究が抱える課題や問題からパンダが人間にもたらす効果など深くパンダについて知ることができます。
今回はパンダの生態について紹介させていただきました。世界のなかでもパンダ人気の高い日本だからこそ、パンダにまつわる書籍が非常に多いです。パンダが持つ社会的役割や新たな発見をすると動物園での観察が何倍にも面白くなるはずです。