マグロといえば刺身やお寿司など海鮮の王様として、多くの人にとって最も身近な魚といえるかもしれません。普段口にしているマグロがどのような能力を持っているのか。今回はそんなマグロの生態について紹介していきます。
マグロは、スズキ目・サバ科マグロ属の魚の相性で、大きく分けて全世界で7種類存在しています。
学名のThunnusはギリシア語で「突進」を意味する言葉に由来しています。
*タイセイヨウクロマグロと呼ばれるマグロもいるのですが、クロマグロと同じ種類という意見と亜種という意見があるためここでは一括りにさせていただいています。
マグロといえば基本的にメバチマグロやキハダマグロを指すことが多く、本マグロとはクロマグロのことを指します。
ちなみにカジキマグロと呼ばれている魚も大きくマグロの仲間に思われる方もいると思いますが、カジキに関してはサバ科ではなくカジキ科に属しており、マグロとの類似点が多いだけでまったく別の魚になります。
江戸時代の漁師さんが背中の色が真っ黒に見えたことから「真黒」と呼ばれたこ「マグロ」につながったという説があります。他にも時間が経つと身が真っ黒になることから、他にも目が黒い「目黒」からマグロとなったという説もあるようです。
太平洋、大西洋、インド洋において赤道海域から極地付近まで広く分布し、地中海にも生息しています。ただ、面白いことに別種のマグロが同じ海域に棲むことはありません。たとえば、クロマグロとミナミマグロは世界中を回遊しますが、北半球と南半球とで完全に棲み分けられています。また、キハダマグロとメバチマグロは同じ海域に生息していますが、キハダマグロは海面に近く、メバチはやや深いあたりと棲み分けることで生態系が保たれているのです。
泳ぎ続けることで生きるマグロは、その体力を維持するために、大量の食物を必要とします。マグロは、海の生態系のなかでも上位に位置しています。主に魚類(サバやイワシなど)、甲殻類、頭足類(イカ)等を捕食しています。逆にマグロの天敵はサメ類、カジキ クジラ類の肉食の魚や哺乳類になります。
マグロといえば早く泳ぐイメージがありますが、実際はそこまで早くないようです。普段は時速7km~30kmで泳ぎます。また、実測のデータがないため、最高速度のはっきりとした記録はありませんが、最高速度は時速60kmを超えると言われています。
魚も人間と同様に酸素を吸収して、二酸化炭素を排出して呼吸します。魚の多くはエラはをパタパタと動かすことにより、口からエラに水を通して酸素を吸収します。しかし、マグロにはこのエラを動かす筋肉がありません。えらを動かすのではなく、口を開けて泳ぐことで自然とエラに水流が当たり、新鮮な酸素を取り込んでいるのです。そのため生まれたその日から死ぬ時まで、眠っているときですら、一度も止まることなく泳ぎ続けると言われています。
ただ、実際にマグロが止まって死んでしまったところを見た人はいないそうで、水族館などでは夜間になると速度を落とし休息してる姿も確認されているため、泳ぐのを止めてもすぐに死んでしまうということはないそうです。
マグロといえば赤身というように、回遊魚の身は赤い色をしています。これは血液に含まれる色素タンパク質「ヘモグロビン」や、筋肉色素タンパク質の「ミオグロビン」が多いことを意味しています。赤身の魚は、前述した通り泳ぎ続けなければなりません。その筋肉を動かすためには大量の酸素が必要になり、その運搬を担っているのがヘモグロビンとミオグロビンなのです。
逆に白身の魚は、岩場に棲み付いている魚が多く、瞬発的にしか動きません。赤身の魚に比べて、酸素を必要としないため、ヘモグロビンやミオグロビンが少なくなり、その結果、身が白くなるという仕組みです。
魚の身の色の違いは、その魚の生態によって変わってくるのです。
マグロは魚のなかでも体温が高く、クロマグロでいえば30℃~40℃と人間と同じくらいの体温を保っています。魚は変温動物のため、水温とほぼ同じ温度になるのですが、クロマグロは、体温を温かく保つことができるのです。体温を高く保つのは代謝効率を上げることで筋肉の活動の低下を防ぎ、泳ぎ続けるエネルギーを得るためだといわれています。
マグロにとってはとても優れた機能でありますが、捕まえる人間にとっては厄介なものになっています。
人間が釣り上げようとすると、マグロは激しく抵抗することで、筋肉の温度は普段よりも上がってしまいます。するとマグロが持つ酵素が活性化し、急速に筋肉中のタンパク質が変性してしまいます。身に熱が加わるため食感はパサパサになり、刺身としての価値は無くなってしまうようです。
漁師さんの努力があって鮮度の高いマグロが市場に出回っているんですね。
マグロの卵を見たことがあるという人は少ないんじゃないでしょうか。実は卵の大きさは直径1mmとメダカの卵と変わらないサイズなのだそうです。一般的に見かけることが少ないのは、釣り上げたマグロの鮮度を保つために内臓と一緒に船上で処分されるてしまうからだそうです。市場などでは取り扱っているところもあるようです。
マグロの漢字のつくりの部分の「有」という文字には「外側を囲う」という意味があるそうです。 マグロは回遊魚なので、中心を開けて外側を泳ぐ姿が「有」にふさわしというということでこの字が使われていると言われています。
- 著者
- 中野 秀樹;岡 雅一
- 出版日
タイトル通りマグロの不思議を知ることのできる一冊になっています。生態だけでなく、我々の食卓に並ぶまでの内容もあるため、生き物としてのマグロ、食としてのマグロという二つの点でマグロを知ることができます。
- 著者
- ["井田 齋", "松浦 啓一"]
- 出版日
お馴染みの魚から、普段見かけない深海の魚など、魚好きはテンションが上がる一冊です。
ドラえもんとのび太のナビゲートも子供と一緒に楽しむことができます。
新版では掲載種が200種増え、約1300種の超ボリューム。非常に美しい撮り下ろし写真の図鑑ページをはじめ、魚の誕生から5億年の歴史がひと目でわかる大パノラマページ、「魚の赤ちゃん図鑑」、「深海の魚大集合!」などのお楽しみページも充実。DVDもついているので、図鑑を見ながら映像でも学ぶことができます。
日本の食卓に欠かすことのできない食材「マグロ」。日本人のマグロ消費量は世界一です。そんなマグロを食ではなく生き物としてもフォーカスすると魅力がたくさんあります。水族館などで見かけた時は生態をぜひ観察してみてください。