ユニークな姿から見るものを魅了する謎の生き物「タツノオトシゴ」。日本の干支では辰年の象徴にもなっていますよね。名前を聞けばイメージすることができたり、水族館で見ることはあってもその生態はあまり知られていません。 今回は「タツノオトシゴ」の気になる生態と関連する書籍を紹介していきます。
暖かい海域を好み、日本では北海道から沖縄までの広い海域で見ることができます。世界中に40種類ほどいると言われているタツノオトシゴは大きさ1.4cmのものから35cmのものまでさまざまな場所で生息しています。日本には7種類ほどのタツノオトシゴが生息しています。
体の表面は鎧のような固いウロコで覆われていて、体表の色や突起なども種類や個体間で変異に富むことが特徴です。
日本ではタツノオトシゴと竜が名前に入っていますが、海外では馬を連想するため英語では「シーホース」と呼ばれています。日本だけでも呼び名が各地域によって変わります。
魚は前後に伸びた姿勢をとりますが、タツノオトシゴの仲間は体をたてに直立させ、頭部が前を向く姿勢をとります。その見た目から魚ではないように思う方も多いかもしれませんが、ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属というしっかりとした魚の仲間です。そのためエラ呼吸で酸素を体内に取り入れます。また、他の魚同様に小さい胸びれ、尾びれを確認することができます。
その見た目から日本では江戸時代まで「昆虫」とされていたそうです。
海流に流されないように、背びれをつかってふわふわと泳ぐか、海藻やサンゴに尻尾を巻き付けて、海藻に擬態しながらゆらゆらと揺れるように泳ぎます。待ちのスタイルで、目の前に餌が流れてくるまでじっとしています。1秒間に35回も背びれを動かして移動することができます。
意外にも肉食性で、魚卵や小型のエビや小魚、プランクトンを長い口先を使って吸引音をを立てて、吸い込むように丸呑みします。動きは遅いのですが捕食は速く、餌生物に吻をゆっくりと接近させて瞬間的に吸い込みます。体はもちろん口も小さいですが、体よりも大きな餌を捕食することもあります。
タツノオトシゴはオスが妊娠して子どもを産む唯一の動物です。
また、魚類では珍しく生涯に一匹のオスと一匹のメスしか交配しません。
オスはお腹にに育児嚢(いくじのう)と呼ばれる袋を備えています(この育児嚢でオスかメスかどうかも見分けることができます)。春から夏にかけて、愛行動を行い、メスがオスの求愛を受け取るとダンスを踊るようにくっついて泳ぎます。そして。メスはオスの育児嚢に卵を産み、オスがその卵を体内で受精させます。
オスは受精卵が孵化するまで体内で持ち運び、20日ほどで孵化します。成長した稚魚を水中に放
出産数が非常に多く、一回の産卵で最大2000匹の子供を生みます。
しかしこれだけ卵を産んでも、生き残るのは0.5パーセント以下と言われています。
生まれた稚魚は数mmほどと小さいながらも親とほぼ同じ体型をしており、すでに海藻に尾を巻きつけたり、敵が来ると海藻に隠れたりします。
中国をはじめとするアジア諸国などでは、タツノオトシゴの内臓を取り除いた干物を漢方薬として扱っています。滋養強壮や精力増強などに効果があると言われています。またその効能から、スポーツ関連サプリメントなどにも新たな素材として注目が集まっています。
日本各地でも「安産のお守」』として干物を妊婦の方に持ち歩かせる風習が残っていたりします。
サンゴ礁の減少や環境汚染、乱獲により一部のタツノオトシゴは絶滅の危機に瀕しています。
中国などでは漁獲規制が行われていないため、漢方や装飾品などに使用するためにタツノオトシゴは広く取引されている。また、観賞用としても、主にアメリカなどに向けて販売されています。
- 著者
- 曽我部 篤
- 出版日
日本初のタツノオトシゴの専門書。42種類のタツノオトシゴの美しい生体写真から原寸大シルエットに、生態に関する最新の研究結果を添えて解説しています。知られざるタツノオトシゴの魅力が詰まった一冊になっています。
- 著者
- ローラ・M. シェーファー
- 出版日
- 2015-06-10
いきものたちの一生にかくされた驚きの数の世界が紹介されています。タツノオトシゴ以外にも、キツツキが木に穴を開ける数や、イルカが使う歯の数、カンガルーのメスが生涯で生む子どもの数など、誰かに教えたくなるような動物の生態を知ることができます!絵本なので子供も大人も楽しめる一冊です。
- 著者
- ["鈴木 香里武", "鈴木 香里武"]
- 出版日
メディアでも多く取り上げられている、岸壁幼魚採集家の鈴木 香里武(すずき かりぶ)の経験とノウハウが詰まった魅力あふれる一冊。家で楽しむもよし、近くの海に出かけるのもよし。200種類以上の魚を紹介していて、岸壁での見つけ方とすくい方のコツを教えてくれています。QRコードからアクセスして、魚たちの泳いでいる映像を堪能することもできます。ちなみに「かりぶ」という名前はお笑い怪獣明石家さんまが名付けたそう。
奇妙な形と不思議な生態を持つタツノオトシゴ。どんな生き物かを知った上で水族館などで観察してみると今まで気づかなかったところに気づけるかもしれませんね。まだまだ解明されていない生態も多いのですが、数が減っている現状は食い止めなければなりません。少しでも生態系が保たれるように、私たちも環境問題に目を向ける必要があります。