気づいたら蚊に刺され痒い思いをしたり、夜中に耳元で不快な音で飛び回り眠れなかったりと夏の嫌われ者といえばこの生き物。しかし、いつも退治することだけしか考えないためどんな虫なのか知らない人の方が多いのではないでしょうか。今回は意外な蚊の生態と蚊にまつわる書籍を紹介していきます。
世界には3000種類以上の蚊が存在すると考えられており、日本には100種類ほどが生息していると言われています。国内には100種類もいる蚊ですが、人間の血を吸うのは昼に刺すヒトスジシマカ(ヤブカ)、夜に刺すアカイエカなどの20種類と限られています。
アカイエカは人が発生する二酸化炭素に誘われるため、窓や網戸の隙間や換気口などから家に侵入してきます。一方ヒトスジシマカはアカイエカと違い、あまり行動せず人間の帰宅時や洗濯物を取り込んだ時などに待ち伏せして人にくっついて家の中に入ってきます。
夏のイメージがる蚊ですが、実は発生する時期は4月頃~11月頃までといわれています。 つまり半年以上。
蚊が最も活発に活動するのは、気温が22℃~30℃くらいのときだといわれています。15℃以上になるとメスの蚊は産卵のために血を吸いだします。しかし逆に気温が35℃以上になると、蚊は活発ではなくなるそうです。
むしろ夏以外の春や秋でも、気温が高くなる時期が特に蚊が活発になるということです。
蚊が飛べる高さは、自力で飛べるのはビルの2階あたりまでとされていますが、風に乗ったり、マンションの壁を伝ってくることで何mも上空に飛ぶことがあるようです。また、エレベーターなどで人間と一緒になって上がってくることもあります。
移動距離は種類によって異なりますが、待ち伏せ型のヒトスジシマカは一日50m~100m。飛行距離のながいアカイエカは1日数km行動することもあるようです。
蚊の成虫は頭部、胸部、腹部の3つに分かれています。頭部には複眼や触覚があり、胸部には3対の脚と1対の羽があります。オス、メスともに針のように長い口吻を持っているのが特徴です
蚊は血だけを餌にしている生き物ではなく、普段蚊が主食としているものは、花のミツや草の汁などです。
血を吸うのはメスだけで、卵巣を発達させ卵を産むために高タンパクな動物の血液が必要なのですです。意外にも蚊がもっとも好きなのは鳥類の血、そのなかでもニワトリの血を好むといわれています。
蚊の視力は、人間と比べると数百分の1程度しかないと言われています
蚊が1回に吸うことのできる血の量は、ほぼ自分の体重と同じくらいと言われており、血を吸った後は体重が約2倍になります。
吸血し終えたメスは、卵の成熟を待つために安全な場所で2~3日の間休止しています。
血を吸うのも一生に4ほどなので、同じメスの蚊が一晩に何度も血を吸うことはありません。
蚊に刺されるとかゆみを生じるのは、血を吸うときに、血を固まらないようにするための唾液を注入され、この唾液によってアレルギー反応を起こすためです。刺されたところはアレルギー反応で血管が膨れ血液の成分がにじみ出るため腫れ上がります。
蚊は少量でも水が溜まった場所があれば産卵し、繁殖していきます。1回の産卵で数十個から数百個くらいの卵を産みます。孵化スピードは早く、1日から2日で卵からかえります。その生まれた幼虫がボウフラです。
蚊が川などに産卵しないのは、ボウフラの特性にあります。ボウフラの尻尾は呼吸器になっていて、それを水面に出して呼吸しています。また水中の微生物や生物の死骸、排泄物を食べて成長します。水の流れが速いと食物をうまく摂取できないため、身体が小さいので流されてしまうのです。
そして生まれて7日から10日の間に4回の脱皮をします。なんとボウフラは自分の脱皮した皮も自分で食べてしまいます。
蚊の寿命は一般的には約一カ月と言われています。
ヒトスジシマカは卵で冬を越しますが、アカイエカはそのまま越冬をして、6ヶ月ぐらい生きる場合もあります。洞穴や、排水や川が流れる土管の水に浸からないような場所でじっとして休眠します。冬を越すのはするのはメスのみで、オスは交尾を済ませると冬が来る前に死んでしまいます。
人間をいちばんたくさん殺している生き物は、蛇でも蜂でもなく蚊です。
その数は圧倒的で年間100万人にも及ぶと言われています。
蚊が危険な理由は、病原体を運んでいるということです。
蚊が運んでくる病気は日本脳炎、黄熱病、デング熱、マラリア、フィラリア、ウエストナイルウイルス熱症、チクングニア熱、ジカ熱などがあります。
2018年1月25日付けの学術誌「Current Biology」に掲載されたこの論文では、蚊に刺されそうなときに叩くと、蚊は死にそうになった体験とその人の匂いを結びつけて覚え、将来その人を避けられるようになるという研究結果が発表されたそうです。
蚊は叩こうとした人を覚えて避ける、はじめて判明
もしも蚊に刺されやすい人は、たとえ叩いて退治することができなくても、叩き続けたほうがいいということです。いずれこのような研究結果から、新たな防虫剤や虫除けスプレーが生まれてくるかもしれません。
- 著者
- ["一盛 和世", "一盛 和世"]
- 出版日
まさか蚊について学べる入門編の本があったなんて!しかも蚊のプロフェッショナルが執筆に携わっているということで、ここでしか聞くことのできない話も。蚊の生態から蚊の歴史まで知ることのできる充実度。これを読んだ後は蚊と仲良くなれるかもしれません。
- 著者
- ["三條場 千寿", "比嘉 由紀子", "沢辺 京子"]
- 出版日
世界中を飛びや回る蚊学者と呼ばれる研究者たちの愛が詰まった一冊。蚊にまつわる雑学や珍しい蚊の図鑑もこの本だからこそ見ることができます。あれだけ小さな蚊でもしっかり分類されているということにあらためて驚かされます。
- 著者
- 有吉 立 (アース製薬研究開発本部生物飼育課課長)
- 出版日
兵庫県赤穂市にあるアース製薬の研究所では約100種の害虫が飼われていて、その虫たちの世話をし、繁殖させている“飼育員”有吉立さん。実際に育てからこそわかる生態を可愛らしいイラストとともに紹介されています。蚊意外にも普段は嫌われがちな生き物たちの新たな一面を知ることができます。
今回は蚊の生態と蚊にまつわる書籍について紹介しました。知っていることも多い反面、知らないこ生態もあったのではないでしょうか。これからも蚊とうまく付き合っていきたいですね。