日本の各地でその姿を目撃され話題になっている生物“アリゲーターガー”。ワニの名前もつ彼らはワニなのか?魚なのか?今回はアリゲーターガーの生態とアリゲーターガーにまつわる危険生物の書籍を紹介します。
アリゲーターガーはガー目ガー科の魚で、全長を2mを上回ることから世界最大級の淡水魚とされています。最大では3mの大きさの個体も確認されています。
別名、ガーパイク(gar pike)とも呼ばれています。その細長い体から槍を想像させるため、槍を意味するPikeという名前がつけられています。
最大の特徴はワニのような長い吻を持っていることです。この吻は幅が広く頑丈で、口の中に並んだ鋭い歯も備わっています。また体表もワニのように硬い鱗で覆われています。
寿命は非常に長く、野生では50~70年ほど生きると言われています。
食性は肉食で、魚以外にも水鳥や小さなカメまで何でも食べてしまいます。
獲物が近付くと、急に違う方を向いて相手を油断させたりして、その後向きを戻して襲いかかるほど知能的な一面もあります。
普段は水面近くをゆっくりと泳ぎ、獲物を見つけた時など、瞬間的にスピードを出すことができます。ただ、まっすぐ泳ぐのは得意ですが、それ以外の動きはとても苦手だそうで、特に小回りがきかないようです。
アリゲーターガーは北アメリカ南東部沿岸地帯を中心にに分布しています。ミシシッピ川、ミズーリ川などの 河川、湖沼をはじめ、流れの穏やかな場所で、アメリカだけでなく、メキシコやコスタリカに存在しています。河川においても流れの速いよりも、水深の浅い穏やかな下流域に見られることが多い魚です。
アリゲーターガーの浮き袋を持っており、毛細血管が張り巡らされているため、空気呼吸が可能となっています。そのため、 淡水と海水の入り混じった汽水域でも生活することができてしまうのです。
本来生息している環境では、水の中の酸素が低下することがありますが、このような呼吸法によって、酸欠のリスクを大幅に減らすことが出来るのです。ちなみに、ピラルクなどもこのような機能を持っています。
よってどのような場所でも対応できるため、本来の生息地から遠く離れた日本のような環境でも生息することができるのです。
世界最大級の淡水魚でありながら昔から姿を変えていない古代魚でもあります。アリゲーターガーの先祖はジュラ紀から白亜紀の恐竜と同じ時代から存在していました。
アリゲーターガーが長く生き延びてきた大きな理由は、先に挙げた呼吸法から、あらゆる水域でも生きていくことが可能なことにあります。
その姿は1億年の間変わっておらず、カブトガニなどと同様に“生きた化石”と呼ばれています。
卵の直径は4mm程度で、水草や川底の石に産み付けます。アリゲーターガーの身は白身で食べることができるのですが、卵は哺乳類に対し強い神経毒を持っている為、食べられません。なぜか魚はその卵食べることができるということで、なぜ哺乳類に対してだけの毒かは謎のようです。
過去に、実験的に投与されたマウスに対して致死的に作用させることが知られています。
アリゲーターガーは、日本にも生息しており、本来の生態系を崩す恐れがあるとして問題になっています。
東京都心でも多摩川をはじめとする河川や池、貯水池などで目撃されていて、TV番組でも取り上げられるように捕獲例も多数あがっています。
熱帯魚ではなく耐寒性のある魚なので、日本の冬でも生息することができます。
日本にいる大きな理由は、ペットで飼育していた人たちが川や湖に逃してしまったことが原因とされています。
もともと、アリゲーターガーは安く販売されていたこともあり、ペットとして飼育する人たちが増えました。しかし成長すると2mを超える大きな魚になり、成長スピードのはやさと寿命がとても長いことから飼育環境を整えられずに飼育しきれず、各地で川や池に放してしまう人たちが続出しました。
特定外来生物とは、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、または及ぼすおそれがあるものの中から指定されます 。
アリゲーターガーは2018年の4月から特定外来生物に指定されました。
現在アリゲーターガーは輸入販売が禁止となっていて、飼育するには国への届け出が必要となります。
- 著者
- ["ウラケン・ボルボックス", "五箇公一"]
- 出版日
テレビなどのメディアでなにかと悪者扱いされる外来生物たち。そんな外来生物たちが、なぜ日本にやってくることになったのか。外来生物の生態や歴史的な背景などを、わかりやすいイラストとマンガでたっぷりと紹介しています。
- 著者
- 加藤英明
- 出版日
たびたび、テレビ番組などメディアで何かと話題になっている外来生物たち。一般的には悪とされてしまうような存在ですが、彼らが日本で外来生物となるまでには、さまざまな理由があります。こちらも外来生物の来日理由と現在の状況を、マンガでたのしく紹介しています。
現在駆除の対象とされているアリゲーターガーですが、彼らも望んで日本に来たわけではありません。もともと住んでいた場所と違うところに連れてかれて、ようやく自由になれたと思えば、捕獲の対象にされるというのはなんとも悲しい話です。今後、アリゲーターガーに関わらず、他の生き物がそのような立場になることもありえます。少しでも、生き物たちが幸せに暮らせるような環境づくりをしてあげたいですね。