「地方は給料が低い」の誤解を解く。30代からの『幸せのUターン転職』で、5年後に年収が急増する理由

更新:2026.4.17

「地元に帰りたいけれど、年収ダウンが怖くて踏み出せない」――そんな30代の悩みに、地方転職のプロが鋭く切り込みます。実は、額面の年収と生活の満足度は比例しません。生活コストや共働きのメリット、そして「5年後に年収が急増する」という驚きの実態とは? 『30代から地元で暮らす 幸せのUターン転職』のメソッドから、後悔しないための「お金のリアル」を引用して紹介します。(編)

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著者
江口 勝彦
出版日

 

減収でも満足度高めなのが地方転職の特徴

年収の考え方で大事なのは、減収が生活の質の低下には直結しないという点です。私のクライアントにヒアリングしたなかでは、むしろ「年収は多少下がったが都会にいた頃より生活の質は向上した」や「仕事もプライベートも充実した」という人が多いです。

リクナビの調査によれば、首都圏と地方の収入格差は最大で2割ほど地方のほうが低いとあります。

しかしながら、「今の年収に満足しているか」を見ると、北海道や東北、中国、四国で半数以上の人が「満足」と答えています。一方、年収の比較的高い関東や東海では「不満足」と答えた割合が6割以上を占めます。つまり、年収の高さと満足度は比例しないということがいえます。また、国土交通省の統計(図表4)によると、都道府県別の経済的豊かさで東京は最下位となっています。中央世帯とは、都道府県ごとに可処分所得の上位40%~60%の世帯を指します。基礎支出は「食料費」+「(特掲)家賃+持ち家の帰属家賃」+「光熱水道費」の値です。

 

多少年収が低くても地方のほうが満足度が高くなりやすい理由としては、次の要因が考えられます。

 

・家賃が安く済む

第一に、都会より地方のほうが家賃が安く済む場合が多いことがあります。

新潟でいうと、ファミリーで住める2LDKや3LDKの家賃相場は月平均で5万円ほどです(2018年/総務省統計局「住宅・土地統計調査」より)。

また地価は新潟で最も栄えている新潟市中央区になると坪単価45万円ほどしますが、新潟市西区や東区では19万円台、長岡市でも15万円ほどと手頃です(2021年/国土交通省「地価公示」より)。

都心部を除いて移動は車が基本なのでマイカーをもつことになりますが、ほとんどの物件で駐車場が併設されています。

 

・通勤のストレスが少ない

次に、長時間の通勤や満員電車のストレスが軽減します。都会では通勤時間が1時間なら短いほうで、1時間半や2時間掛けて通っている人のほうが多いかもしれません。地方では住む場所にもよりますが、マイカーで30分くらいが一般的です。

 

・自分や、家族との時間が増える

三つめとして、通勤時間が短縮することで、自分の自由に使える時間や家族との時間が増えます。

ワークライフバランスというと、「仕事もプライベートもほどよく」あるいは「プライベートを大切にする」というニュアンスが含まれます。しかし、Uターン転職で叶えるワークライフバランスというのは、「仕事も今までと同等もしくは今まで以上にやり、プライベートも充実させる」ことであると本書では定義します。

地方で働くことは都会で働くより仕事が楽というわけではなく、仕事はどこの企業も真剣勝負です。残業もあればノルマもあります。そういうなかでも、地方は仕事に集中できる環境が整いやすく、今まで以上に力を発揮できて心身が充実するうえプライベートを楽しむ余裕もできるという意味なのです。

 

・子育ての助けがある

四つめは、子育てのヘルプラインが多いことです。実家のサポートに加えて、地方では子育て世帯を県外から呼び込み永住してもらうために、政策として子育て支援をしている自治体が増えています。

例えば富山県では「とやまっ子子育て応援券」を発行しており、3歳未満の子どもがいる家庭を対象に第一子は1万円分、第二子は2万円分、第三子以降は3万円分の応援券が支給されます。

新潟県長岡市では「子育ての駅」という支援施設を開設しています。栄養士による育児相b談や絵本の読み聞かせなど、年齢に合わせて利用できる催しがさまざま企画されています。

 

・ベストな仕事との巡り合い

五つめとして、Uターン転職によって自分が本来やりたかった仕事に出合うチャンスが広がります。

Uターンの場合は年収などの条件だけで転職先を選ぶのではなく、本人のキャリアや特性を活かせる転職先を業種の枠を超えて探すことができます。メンバーシップ型雇用でその人がいちばん力を発揮できる仕事やポストが与えられるため、充実した仕事ができる可能性が高いのです。

 

世帯年収におけるUターン転職のメリット

希望年収を設定するうえでは「自分らしく満足して暮らせる金額はいくらなのか」を把握することが大事になってきます。

都会の年収700万円での暮らしと、地方の年収700万円での暮らしは同じではありません。地方のほうが家賃や物価が低い傾向にありますから、同じ年収なら貯蓄や自由に使えるお金は都会に比べて多くなります。

それに加えて、同居もしくは近くに住む両親からのヘルプラインが期待でき、妻が正社員として働きに出ることも可能になります。夫婦がフルタイムで働けば仮に地方転職で夫の年収が下がったとしても妻の年収でカバーできます。

都会でワンオペ育児で働きたいけど働けない、できてもパートが精一杯という妻がフラストレーションを溜めながら家にいるより、地方で正社員として生き生き輝いてくれれば夫にとってもうれしいはずです。

もう一つ、年収を考えるときに大事なことは「支給額」ではなく「手取り額」を見ることです。手取り額とは、税金や社会保険料等を引いたあとに残るお金のことです。

例えば、都会暮らしで妻は専業主婦、夫だけの稼ぎで年収1000万円の場合、手取り額は約720万円になります。この720万円で家賃や子どもの私立学費や塾代などを賄っていきます。

この夫婦が地方に転職して共働きをし、夫が年収500万円、妻が年収400万円になったとします。すると、夫の手取り額が約391万円、妻が約317万円で合計708万円となり、年収1000万円のときと約12万円しか変わりません。

これは年収額が上がるほど高い税率が適用されて天引きされる税額が大きくなるためです。

都会時代と手取り額は大差ないうえに家賃は安く、子どもが公立進学なら学費も多くは掛かりません。おまけに両親のサポートが付いてくるのです。そう考えると、地方のほうが余程ゆとりのある生活ができます。

 

年収は中期スパンで急増する事例が多数

都会と地方で中小企業の給与体系を比較すると、地方のほうが全体的に低く設定されています。そのため、Uターン転職直後は100万~200万円程度の年収ダウンは想定内です。しかし5年ほど経つと給与がジャンプするように上がり、都会と同程度あるいはそれ以上の水準になる事例がかなりの割合であります。

なぜスタート年収が低くなってしまうかというと、地方の中小企業では周りと足並みをそろえて悪目立ちしないというのが、その組織で円満に生きていくための処世術として重んじられる風潮にあるからです。

新しい人材を雇うとき、その人の給料をいくらにするかは経営者の裁量ですが、長年自社で働いてくれている社員の手前、その社員より高くはできないという事情が働きます。

給与の額というのはその人物に対する会社(=経営者)の評価なので、会社への貢献度からすれば当然長年の実績のある社員のほうを評価するべきで、新たな人材を特別待遇で迎えることは軋轢を生みます。

求人票に明記された給与額を見たり、会計事務担当者から「中途採用された新人がいくらもらっている」などの話が漏れたりすれば、すぐにその人材はやっかみの対象になり、会社にもいづらくなるかもしれません。

そのような配慮もあって、ベテラン社員が650万円もらっているならUターン人材は期待値を込めても500万円あたりが妥当なラインとなります。

ただしUターン人材は都会で鍛えられているぶん能力のある人たちが多いので、そのうち仕事で成果を出し社内でも実力が認められていきます。「やっぱり都会から来た人は違うね」「社長は良い人材を見つけてきたね」となれば、経営者も公明正大に昇進や昇給ができます。ですから、Uターン転職で年収が下がることは決して悲劇ではなく、誰もが通る関門だと思っておくべきです。

その証拠に、都内の有名私立大学を出て、都内の大手不動産会社勤務で800万円以上もらっていた30歳の男性がUターン転職し、400万円ほどに大幅減収した例がありました。彼には年収よりも大事にしたいものがあったので減収はもちろん納得のうえでした。先日、彼に8年ぶりに会って近況を尋ねてみたら、転職した会社の子会社を任されて社長になっていました。

こんなふうに、力のある人は都会だろうと地方だろうと人望を集めて活躍し、要職にステップアップしていくものです。

だからこそ、転職直後の年収の額面だけで職選びをするのはもったいないと思います。

 

地方企業にとってUターン人材は喉から手が出るほど欲しい

若い世代のUターン志向が高まっている一方で、地方の中小企業でもUターン人材を採用したいというモチベーションは高くなっています。この傾向は全国的なもののようです。

リクルート社による「UIターン人材活躍のセオリー~都市型人材を地方の起爆剤に~」という2016年のレポートを見ると、それが分かります。

まず地方の中小企業では「2社に1社は欲しい人材を集められていない」という現実があります。東京一極集中が進む一方で、地方の中小企業は苦労して人材を採用しても「中途採用の3割が3年以内に離職」してしまいます。つまり、地方企業は人材不足のマーケットから、限られた少数の原石を探し出すのに必死なのです。

私自身の経験から言っても、Uターン人材を面接・採用したことのある経営者はみんな「Uターン人材は優秀な人が多い。Uターンの応募は歓迎だ」と口を揃えて言います。

Uターン人材というのは、都会で活躍できる人たちがたまたま何らかの事情ができて地元に帰って来るわけなので、本来なら地元では手に入らなかったはずの資源です。それが幸運にも地元に来てくれるというなら、喉から手が出ます。

「このチャンスを逃したくない」「是が非でもうちの戦力になってほしい」と争奪戦になるのは必至で、新しくポストをつくってでも迎え入れたいという流れになるのです。実際に面接でUターン人材と会うと、身を乗り出して「うちに来い」「いつから来られるか?」と口説き始める経営者が少なくありません。

Uターン人材が実際に転職先でどんな活躍や貢献をしているかを見ても、「業績を高めた」が6割、「高い査定を受けている」や「勤め先の期待に応えている」「周囲から一目置かれている」が4割と、いずれも地元人材より1割ほど高い値です。

また、新しいことに積極的に挑む傾向や、地元への愛があり地元の良さを知っている点も、企業から高く評価されています。

チャレンジ精神や地元の魅力・資源の発掘は、小さくまとまりがちな地方企業にとって、事業の縮小を回避し今後も生き残っていくうえで不可欠な要素です。それをUターン人材がもたらしてくれることに大いに期待しているのです。

著者
江口 勝彦
出版日

(本記事は、『30代から地元で暮らす 幸せのUターン転職』より一部を引用して掲載しています。)


他にも本書では、「妻(配偶者)の説得方法」や「表に出ない“お宝求人”の探し方」、さらには「地方特有の人間関係をスムーズに築くコツ」についても詳しく知ることができます。

「いつかは地元へ」と考えているなら、その一歩を確信に変えるために。ぜひ手に取って、あなただけの「幸せのUターン計画」を立ててみてください。(編)

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