【#33】※この岡山天音はフィクションです。/もり

更新:2026.6.30

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まどの外からきん、きん、ききんって音がする。ずっとする。

フーリンの音がうるせえ。

オレは自分の手のひらをどっちもの目にあててみる。

フーリンはオレがまだ2年だった時に、おかあさんが、どっかからのおみやげで買ってきたやつ。

それまでオレは、フーリンを生で見たことがなかった。

そのころはなんも思ってなかったけど、ひとりで家でしずかにしてるときって、フーリンの音が、めっちゃする。

ひとりで部屋にいるとき、この音を聞いてると、オレはたまになみだが出そうになる。なんでかわからない。

フーリンの音止めて、って、だれかに言ってみる。

フーリン、とってどっかにすてて、ってほんとに口に出して言ってみる。

でもどこからも声はしない。

オレは、さっきまで後ろにいた「もり」がどっかにいっちゃった気がしてふり返るけど、「もり」はいつもみたいにただだまって、かたまってそこにいるだけだった。なんだ。ねてるのかもしんない。

オレは自分の目をグーの手でこすってから、つくえの上のげんこうようしを見つめて、もっかいシャーペンをにぎりなおした。

でも書くことはむずかしい。

でもオレは書かなくちゃならない。

でもオレ、書くことを見つけられない。

からだの真ん中のおくから、小さい炎がどんどん大きくなってきて、もっとおっきくなる前に、しんこきゅうをして、目をとじた。

オレは「もり」のことを、もっかいよくかんがえてみることにする。

フーリンの音もあんまりきこえなくなってくる。

「もり」はオレが2年の時に、オレのよこにきた。

たぶん、おかあさんがフーリンをうちに持ってきたくらいのころ。

「もり」は人間じゃない。

妖怪にいそうな見た目をしてる。

かんたんに言うと、「毛」のかたまりみたいなかんじ。

さい初見たとき、オレはめちゃくちゃおっきな声を出しておどろいてしまった。

だってテレビを見ていたら、フーリンのかかってるベランダに、いつの間にか立ってたんだもん。

オレがその毛のかたまりを、じーっと見てみると、毛の全体が少しうごいてて、息してるみたいなかんじがした。

さい初はびっくりしたけど、そのままにしてたらだんだんオレもなれてきて、もっかいテレビをみはじめた。

それでおかあさんがかえってきて、おかあさんはなんにもむはんのうで、でも毛のかたまりはずっとそこにいて、だからオレが知らないだけで、おかあさんと毛はもとから知り合いなのかもしれないと思った。オレはさい初、わかんなかった。

だから毛のかたまりの方をゆびさして話してみたんだけど、おかあさんはよくわかんなそうだったから、オレはあせって話をひっこめた。

あぶねー、と思った。

それから毛は、ずっとオレについてくる。

学校でも、お風呂でも、ねるときでもベッドのよこまでついてきて、立ったままねむってる。

オレはその毛のかたまりに、「もり」ってなまえをつけた。なまえのゆらいは「森のなかにいそうだから」。

「もり」はあんまりしゃべらない。

しゃべらないで、オレからすごくはなれたところでじっとしてたり、すぐそばに立ってたりしてる。

自分から話しかけられないやつが、あそびにまぜてもらいたくて、たまにそうするみたいに。

いつもはずっとしずかなまま、ただ「もり」はオレだけに見えつづけた。

オレのうしろで時々、

「あめのひ」「るすばん」「えびちり」

そういう言葉を言ったりする。

そんなのずっと聞こえないフリしてオレは氷鬼とかしてたけど、でも「もり」はほんとは何かべつのことをしゃべりたいんじゃないか、ってさいきんオレはそう思った。

だからオレのそばにいて、自分のことをオレにおしえて、それをオレがみんなに言ってくれるのを待ってるんじゃないかって。

だからげんこうようしをおかあさんに買ってきてもらって、「もり」のおはなしをオレがぜんぶそこに書いてあげることにした。

おはなしのタイトルは、「もりのさびしさ」

「もり」はきっとさびしいから、そういうおはなしにしてあげることにした。

 

「おばあちゃん」「すぬーぴー」「かいぶつ」

「もり」はそういうことを言ってる。

オレは「もり」のことがわかんない。

でも、「もり」はずっとオレのそばにいてくれる。

オレは少しずつ、げんこうようしの上に、「もり」のことを、決めていく。

あってるかはわからないけど、だれにも見えない「もり」のことを、げんこうようしの上で、だれにでも見える「もり」にしていく。

「もり」、もしまちがいだったら、ごめん。

あってるかわからなくて、オレはシャーペンをもったまま、またフーリンの音を聞いている。

書くのと休むのと、をくりかえしていたら、だんだん「もり」とオレは、同じ、になってく。

「もり」がさびしいのか、オレがさびしいのか、わかんなくなってく。

「もり」はなんでさびしいの?

「もり」は答えてくれない。

「もり」もそれがわからないのかも。

だから、オレは「もり」になったつもりで、シャーペンでげんこうようしを、書く。

オレもさびしい時あること、「もり」のことかんがえてたら思い出してくる。

たとえばひとりでへやで、フーリンの音きいてると、さびしいよ。

だからそれとか、書いてみる。

「もり」のさびしいの、ぜんぶオレにちょうだい。

「もり」のさびしいの、いっしょにかんがえよう。

それで2人で、元気になろう。

 

「もり」あんまりしゃべってくれないから、「もり」のことわかってるか、わからないけど、でも見ることができるのは、オレしかいないから。

 

※この岡山天音はフィクションです。(32)

 

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【#29】※この岡山天音はフィクションです。/前にハマってた

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