道を歩いていると、視界の端に誰かの人影が映った気がして何度も振り返って確かめてみたけど、やっぱり誰もいなかった。
私は昔から、こうして実際には居ない誰かとすれ違う事がたまにあった。
その人影はすれ違う時、ただその気配を匂わせるだけじゃなく、いつも同じ言葉をこぼしては、私のそばを通り過ぎて行った。
「おめでとう」
人影はそう囁く。
何に対しての「おめでとう」なのか、そもそも自分に向けられた「おめでとう」なのかすらわからない。
でもその声がする度、私は街中で誰かが私を見つけてくれたのかと思って、振り向いては相手を探した。
何を探しているのか、途中から自分でもわからなくなって、その度に私は向き直した。
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
その見えない誰かはいつも忘れた頃に、私とすれ違っては、私の何かを祝福していった。
それ以外は何の取り留めもない、平坦な毎日を私は暮らしている。
※この岡山天音はフィクションです。実在する岡山天音はみゃ〜すみゃ〜すみゃみゃ〜す。
【#30】※この岡山天音はフィクションです。/眠れない夜に限っては
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【#29】※この岡山天音はフィクションです。/前にハマってた
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【#28】※この岡山天音はフィクションです。/ヘラがりを奏でる。
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