幕末が舞台の歴史小説おすすめランキングベスト5!

更新:2021.12.15

幕末といえば激動の時代。日本のあちこちで、たくさんの人々が、様々な思いを抱えていました。そして日本は長く続いた江戸時代を終え、明治時代への扉を開けるのです。そんな幕末を扱った書籍の中から、おすすめの歴史小説をベスト5でご紹介します。

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5位:それぞれの視点から見た新選組の心

新選組の話、といえば誰が主人公?と思いがちですが、この『新選組 幕末の青嵐』では各章ごとに主役となる人物が異なってきます。土方、近藤、沖田、斉藤、山南、永倉……。なんと十数名の目から見た新選組の歴史が語られるのです。

著者
木内 昇
出版日
2009-12-16

話は結成から時系列に進んでいき、主人公となっている人物のその時々の事件に関する動きや気持ち、他の隊員への思いが描かれます。事件そのものは簡潔に書かれることも多いので、ある程度知識がある方が楽しめるでしょう。しかし、文章の巧みさにより、本当にその人物の気持ちで事件を見ているような気持ちになることができます。

斉藤一がだんだんと土方歳三を認めていくまでの心の動きや、山南敬助が理想と現実の間で悩み疲れてしまうまでの葛藤など、新選組内の心の機微が読者の心にも迫ってきます。

新選組の歴史はすでに知っている人も多いでしょう。ですが、知っている人も知らない人も、最終章に向かうにつれ涙なしでは読めません。佐藤彦五郎の記憶として語られる最終章は、物悲しくもあり清々しくもあります。ちょっと変わった新選組小説を読みたい人におすすめです。
 

4位:愛嬌たっぷり、半次郎の出世術

薩摩の中村半次郎、後の桐野利秋の生涯について書かれた小説『人斬り半次郎』は、幕末編と賊将編の二部構成になっています。この幕末編は、薩摩でも唐芋侍と蔑まれていた半次郎が西郷隆盛と出会い、剣の才能を認められて出世していく青春時代、そして幕府倒壊直前までの話となります。

著者
池波 正太郎
出版日
1999-07-28

「おいどんの年ごろで満足に眠るなどということはぜいたくでごわす」(『人斬り半次郎 幕末編』より引用)

その言葉から、何事にも一生懸命、努力を惜しまない半次郎の姿が浮かび上がってきます。蔑まれてもそれをバネにし、知らないことは人に学んでいくという真摯な姿は、応援せずにはいられません。さらに愛着がわいてしまうのは、甘え上手なところ。信じた人に対しての甘えっぷりは相当なもので、それは女性に対しても同じでした。そんな人間臭い面がまた魅力的だといえるでしょう。

また歴史の主人公とは言えない人物から見た幕末を、面白く読み進めることができます。半次郎目線なので西郷隆盛の偉大さがよく分かりますし、激動の時代の中にいた普通の人々の生活も肌で感じられます。半次郎を取り巻く時代の変動に心躍る一冊です。
 

3位:広島藩は倒幕維新の立役者!

高間省三という名前を聞いたことがあるでしょうか。彼を主人公とした物語が『幕末歴史小説 二十歳の炎』です。広島藩の英雄で、実は広島藩は倒幕維新の際、とても重要な役割を果たしています。多くの小説、教科書では薩長土肥の活躍は大きく取り上げられていますが、広島藩についてはなかなか話がありません。しかし広島藩の働きがなければ、倒幕維新は実現しえなかったのです。

なぜ、広島藩は歴史上に名を残していないのでしょうか。それは明治政府が資料を封印したことや、原爆で資料が焼失してしまったことなどがあげられます。作者はそんな少ない資料を調査して、渾身の本当の幕末小説を作り上げました。

著者
穂高 健一
出版日

この本の中には、驚きの新発見がたくさんあることでしょう。たとえば、大政奉還を最初に提案したのは広島藩だったということは知っているでしょうか。ほかにも、自分の中の幕末史の常識を覆される話ばかりが登場します。

高間省三は、戊辰戦争において福島県で神機隊として活躍しました。後半はその戦いぶりが描かれます。農民兵の部隊で、大義を持って戦い続け、二十歳でその生涯を終える省三。幼馴染の許嫁、綾への想いの切なさが物語を色濃く染めていて、綾が省三を想う気持ちやその生き方にも心打たれる物語です。
 

2位:これぞいい男!べらんめぇ口調が心地いい

『幕末遊撃隊』は幕末の剣豪、伊庭八郎の物語。池波正太郎の江戸弁の語り口調に引き込まれる名作です。

主人公の伊庭八郎は、幼少期は勉学に励んでおり剣術を始めたのは10代後半のこと。その後めきめきと頭角を現し、剣豪として名を馳せるようになりました。しかし、肺結核で長く命が持たないことを知った八郎。その中で自分に何ができるのかを考えながら、潔く生きていきます。
 

著者
池波正太郎
出版日
2009-06-26

この本の魅力は、なんといっても伊庭八郎本人にあります。八郎は、とにかく格好いい。友情に厚く、女性に優しく一途、イケメン、剣の腕が立つなど、書いていくときりがないほどです。八郎を助ける料理人の鎌吉、吉原の花魁小稲にまつわる話は、八郎の人情厚い性格を大きく表現していて、そこに池波正太郎の上手い江戸弁が乗っかり、色気さえも醸し出しています。

目に浮かぶような料理の数々も作品の見どころです。当時の料理事情をこの本を通じて知ることもできます。

自分の人生の余命を知ったとき。人はどうやって生きていくことができるのでしょうか。この本は、そのヒントを見つけられる一作となっています。自分の生き方を見つめ、残り僅かの人生を歩んだ八郎から、ぜひもう一度「自分の生き方」について考えてみてはいかがでしょうか?

1位:思想家と革命家。日本を動かした二人

『世に棲む日日』は司馬遼太郎の長編小説で、倒幕側として戦った吉田松陰と高杉晋作の物語です。

「長州の人間のことを書きたいと思う」(『世に棲む日日』より引用)

そんな書き出しで始まる本書は、激動の時代を生き抜け、その後の日本に多大な影響を与えた二人の若者の生涯を描いています。

1巻では吉田松陰の話で、ゆったりとした語り口調で進んでいきます。自身の信念のもと、旅を続け、迷い、苦悶しつつも行動する松陰。松下村塾を開き周りの人々に大きな影響を与えることとなりますが、29歳に安政の大獄で処刑され、その人生を閉じました。

2巻ではその松陰の死が描かれ、以降は、思想を引き継ぐことになる高杉晋作へと主人公は移り変わります。高杉晋作が主体となると、話はテンポアップ。維新の主役となった長州藩の人々が続々登場し、松陰の思想ははっきりとした革命へと突き進んでいくのです。尊王攘夷の思想が狂気のように膨れ上がり、晋作はその過激な流れを作っていきます。
 

著者
司馬 遼太郎
出版日
2003-03-10

松陰に対して松下村塾を開いた思想家というくらいの認識しかなかった人にとっては、実はとても熱い思いを持っていた人物であることに驚くでしょう。女に疎く、行動的、楽天家で明るい。そして学問への探求心と向上心も持ち合わせています。そこに表れるのはイメージを覆す朗らかな松陰。学問を追い求めて旅を続ける松陰は、なぜ脱藩まですることになったのか、松陰の心はどのように周囲に受け継がれていくのか。思想家松陰について深く知ることができます。

「おもしろき こともなき世を おもしろく」(『世に棲む日日』より引用)

この台詞は、諸説はありますが、晋作が言ったとされている辞世の句です。その言葉の通り、晋作は世の中を面白くするために生きたのでしょう。晋作が登場してからは、その先の読めない行動力、捉えどころのない性格にぐいぐい引っ張られながら読み進めてしまいます。若くして亡くなった二人の若者。もしもう少し長く生きていたならどんな日本が作られていたのだろうか、と思わずにはいられないほど歴史に影響を与えた人物でした。どっぷりと幕末に浸ることができる長編です。
 

幕末は、幕臣側から見るか、尊王側から見るかでまた違った味わいが出てきます。どんな人にもそれぞれの幕末の風景があります。歴史が動いた瞬間をぜひこの5冊で見てください!

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