色々な意味でバレンタインシーズンに読みたいマンガ

更新:2021.12.16

今年もバレンタインの季節がやって来ました。チョコレートあげるか、貰えるか。はたまた悟りを開いて我関せずと過ごすか。そんな悲喜交交のこのシーズンに読みたいのは、チョコレートのように甘~い恋愛マンガ? あえてビターなマンガ? それとも……

ブックカルテ リンク

『クーベルチュール』

著者
末次 由紀
出版日
2009-12-11

大人気百人一首マンガ『ちはやふる』の末次由紀先生による連作短篇集。イケメン兄弟の営むチョコレート専門店を舞台にしたお話です。正にこの時期に読むのに相応しいマンガと言えるでしょう。

末次先生の作品は、それぞれのキャラクターのバックボーンや心情の描写が極めて丁寧。その上で一つ一つの表情やセリフ・モノローグに強い感情が乗せられているからこそ、抜群に面白いのです。その腕前は短編でも存分に冴え渡ります。

1巻は春味・夏味・秋味・冬味、2巻はライム・レモン味・イチゴ味・ぶどう味と、それぞれの巻ごとに四つのお話が描かれています。そこに込められているのは様々な形の暖かな愛。恋愛は勿論ですがそれだけに留まらず、一冊で四度美味しい作品です。ああ、私もこんなイケメン達が悩みを溶かしてくれるチョコレートショップに行きたい……!(笑)

なお、『ちはやふる』7巻巻末にはこちらの作品とのコラボおまけも掲載されているので、併せて楽しむとより美味しいかもしれませんよ。

『失恋ショコラティエ』

著者
水城 せとな
出版日
2009-01-09

チョコレートと言ったら、2015年に完結したこの作品も欠かせません。タイトル通り、カカオ99%のような苦い恋を描いた話の内容を考えると、果たしてバレンタインに読むのに相応しいのかと思わずにはいられませんが……そこは一先ず置いておきまして。

この作品は、他のどのマンガよりもチョコレートが緻密に描き込まれているチョコレートマンガです。作者の水城せとな先生は大のチョコレート好きで、自宅には何とチョコレート専用の冷蔵庫もあるとか。深い愛と充実した資料によって忠実に描かれたショコラ群は、見ると思わず口の中が甘くなったように感じるくらい素晴らしいのです。

2014年には松本潤さんと石原さとみさんが主演でドラマ化し、人気を博しました。そのことも手伝ってか、作中で主人公(爽太)が作ったチョコレートを名店テオブロマが再現したコラボレーション商品なども発売され、即完売となったことも。登場したお店やチョコレートに実際に触れてみたくなる作品です。

甘いだけではない恋愛や人生のビターさも存分に含んだ物語、如何ですか。

『わたしのすきなひと』

著者
CLAMP
出版日

やっぱり、バレンタインといったら甘い恋愛物語が良いですよね。でも、巻数が長いとちょっと手には取り難い……そんなあなたにはこの一冊を。

学生から社会人まで、様々な立場の女子の様々な恋愛を描いた、1話7ページ+ショートエッセイという形式の短篇集です。歳の差あり、遠距離恋愛あり、結婚直前の悩みあり。SCENE9「ゆうき」は正にバレンタインのお話なので、バレンタインに読むのにピッタリです。

今や大ベテランとなったCLAMPですが、その初期に当たる90年代ならではの瑞々しさも存分に発揮された、柔らかく暖かい作品です。

『キスしてもいいころ』

著者
菅田 うり
出版日
2014-01-10

ここ最近の中で純粋に甘~い恋愛マンガを一冊、と言われたらこれを差し出します。この作品は、4篇のお話を収録した純愛学園モノ短篇集となっています。

後輩。同級生。先輩。そして、先生。様々な関係性の中で、その想いを実らせるために頑張る、あるいは自分の中に潜んでいた想いに気付いてしまう女の子たちが、可憐に描かれます。

タイトルが示す通り各篇に必ずキスシーンが盛り込まれたこのストーリー達は、とにもかくにも甘々です。思わず口元が緩んでしまったり、枕をバンバン叩いて悶えてしまうこと必至。

恋愛マンガ好きの方は、菅田うり先生の名前を覚えておいて損はないですよ。

『田舎の結婚』

著者
唐沢千晶
出版日
2014-06-05

学園恋愛モノのテンションは今の私にはもう眩しすぎる……でも、甘くて優しい恋愛マンガが読みたい! そんな貴方には『田舎の結婚』は如何でしょうか。

この作品は、タイトル通り田舎を舞台に、四組の男女の結婚に至るストーリーを収録した短篇集となっています。当然、結婚に至るためには色々な障害や悩みもあり、田舎という環境もあって一筋縄では行かない話もあります。しかしながら、全体を通して明るい雰囲気を保っているのがこの本の魅力です。

何よりもグッと来るのは、プロポーズシーン。その甘くとろけるチョコフォンデュのようなセリフに、思わず「エンダァァァ~!」とホイットニー・ヒューストンの声が聞こえてくる錯覚に陥ります。こんな結婚したい! 家庭を築きたい! そのためにまず素敵な恋をしたい! そんな風に思わせてくれる作品です。

希望を持ち、前を向いて生きて行けるマンガをお探しの方にも。

『ラブホの上野さん』

著者
博士
出版日
2015-01-23

「バレンタインデーに彼女をどうにか上手くホテルに連れ込みたい!」
「バレンタインを一緒に過ごせるいいオトコってどうやって探せばいいの?」
そんな悶々とした欲望を抱えている方にオススメするのは、このマンガです。

ウィットとユーモアに長けた呟きにより、Twitterで7万人以上のフォロワーを持つ大人気の、某お城の形をした有名ラブホテルの従業員である上野さん(仮名)。彼のWeb上での面白かったりためになったりする言動をマンガにした作品です。心理学にも則った様々な恋愛や会話のテクニックや、覚えておいて損はない心構えなどが、面白おかしくネタを交えながら書かれています。

恋愛やセックスに関する話題だけではなく、自信を持って人と接するにはどうすれば良いか? といった誰の人生にも役立つ知識も盛り込まれているので、広くお薦めできる作品です。おまけでラブホテルで働いていて実際にあった小話の数々も収録されていますが、そこには人間社会の面白さが感じられます。

『ラブホの上野さん』については<漫画『ラブホの上野さん』のゲスくて超実用的な恋愛テクまとめ!【ドラマ化】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

スティール・ボール・ラン

著者
荒木 飛呂彦
出版日
2004-05-20

なんでバレンタインにジョジョ第七部なのよォオオオ!? このマンガソムリエ、正気かッ! そう思った方のために説明させて頂きましょう。

超人気マンガである『ジョジョの奇妙な冒険』には、スタンドと呼ばれる実像を持った超能力が登場します。各スタンドには洋楽から取った名前(クイーンやキング・クリムゾンなど)が付けられています。が、初めて例外的に邦楽から名前を取られたスタンドが登場したのが、この第七部『スティール・ボール・ラン』なのです。

その名も『チョコレート・ディスコ』! そう、Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」が由来となっています!

……チョコレートだからバレンタインとか、頭脳がマヌケか!? とお思いになるかもしれませんが、勿論それだけではありません。『ジョジョ』には各部ごとにラスボスが存在しますが、この第七部のラスボスの名前こそが「ヴァレンタイン」なのですッ! ……ああっ、鉄球投げないで下さい!

「バレンタインデーは独り身同士遊ぼう!」と約束していた友人に詳細不明の理由でドタキャンされるようなD4C(いともたやすく行われるえげつない行為)を被ったら、チョコレイト・ディスコを聴きながらチョコレート・ディスコ戦からヴァレンタイン戦までを読んでスカッとサワやかに行きましょう。ただそれしか言いません。言えません。

今年のバレンタインデーをゆっくり過ごせる人は、その時間を利用してこれらの作品に触れてみるのも良いでしょう。私と同じく「バレンタインデーも仕事だよ!」という方は、その仕事でどこかの誰かが幸せになることを想いながら労働に勤しみましょう。たとえチョコレートが貰えなかったとしても、あげる相手がいなかったとしても、もっと大切なモノはきっと既にあなたの中にあるはずです。……多分。

Happy Valentine's Day!!

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