勝海舟、千葉さな子、坂本龍馬
こんにちは、藍坊主のベーシスト・藤森真一です。今回は歴史小説を紹介したいと思います。最近、歴女という言葉があるみたいですね。歴史が好きな女子という意味らしいですがご存知でしょうか。
「そんなの当たり前のこんこんちきよ! 」なんて言われてしまいそうですが(言わないか)、日本史を嗜むことがポピュラーになっている証でしょう。彼女たちはアイドルを語り合うように戦国武将を語り合うらしいのです。その感覚に興味を持ち、パソコンを開いて「歴女レベル診断」というサイトを覗いてみました。自信満々で測定した結果は60点。うーん、歴女恐ろしや。
歴女レベルはまだまだでも歴史は好きで、約10年通い続けていたスタジオの近くにある、勝海舟の氷川邸跡へよく行っていました。曲制作に行き詰まった時には良い気分転換になりました。藍坊主のメジャーデビューアルバムに収録されている「鞄の中、心の中」という曲には、坂本龍馬の婚約者と目されている千葉さな子が登場するのですが、兄の千葉重太郎が龍馬と斬り込みに来たのは有名な話。他にもツアーで神戸に行けば海軍操練所へ、京都へ行けば伏見寺田屋へ、高知城へも行きました。
江戸時代と聞くと昔のことのようですが、江戸幕府第15代征夷大将軍・徳川慶喜を肉眼で見たことのある人がまだご存命らしいのです。去年テレビで見ました。大正2年(1913年)に亡くなられた慶喜を2016年時点で105歳のおばあちゃんが見たことがある。確かに辻褄は合いますね。
人類はすべてアダムとイヴから生まれたとか、日本人はすべて天照大神につながるとか、そんな大袈裟なことじゃなくても、長い歴史の上に自分は生きているという認識は、自分の人生を前向きにさせる作用があります。今回は数ある歴史小説の中でも、特に好きな司馬遼太郎さんの作品を3つ紹介します。登場人物の息づかいまで聞こえてきそうなドラマをお楽しみください。
全員が主人公 戦国時代に繰り広げられた国を巡る争い
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
- 1971-12-02
数ある司馬作品の中で、戦国時代を舞台にした物語を1冊、安土桃山時代から1冊、江戸時代から1冊、計3冊を紹介しようと思います。時系列にならってまずはこの作品から。国盗り物語です。全4巻とボリューミーですが舞台は乱世、現代ではありえない展開の多さに胸を弾ませながら読むことが出来ます。
物語前半の主人公、斎藤道三の出世スピードには驚くしかありません。僧侶をしていた妙覚寺を還俗(俗人に戻ること)して飛び出し、物乞い同然だった時期は束の間、京で屈指の油問屋の護衛隊長になり、魔法のような手口で次の瞬間には店ごと手に入れてしまうのです。
事を成すには発想力と瞬発力が伴わないといけないこと、大きい目標の為には小欲を捨てること。それらを道三から学びました。もちろん良いことばかりでなく、神憑った人物でも老いはするし、完璧ではないということも学びました。
その後、道三は美濃一国を手に入れますが全国統一の夢半ばで、溺愛していた息子に命を奪われてしまうのです。
その夢を引き継ぐのが義理の息子、織田信長です。道三の娘・濃姫の夫であり、物語後半の主人公であります。ドラマ化や映画化された漫画『信長協奏曲』の影響で、好きな人が増えたのではないでしょうか。道三は西田敏行、濃姫は柴咲コウ、信長は
小栗旬という配役が素晴らしかったです。他にも秀吉役は
山田孝之、家康役は濱田岳という豪華な面々ですが、実際はさらに濃いキャラクターがぶつかり合ったことでしょう。
このように全員が主人公になり得るというところが歴史小説の醍醐味。色取り取りな個性が織りなすドラマを感じられると思います。『国盗り物語』は『新史太閤記』、さらには次に紹介する『関ヶ原』へ続いていきます。
秀吉亡き後の激動の時代を描く
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
- 1974-06-24
『国盗り物語』後編の主人公である織田信長は、明智光秀の謀反により本能寺にて自害に追いやられてしまうのですが、その光秀も豊臣秀吉に山崎の戦いにて敗れてしまいます。天下人の移り変わりが目まぐるしいですが、だからこそドラマがあり熱狂的なファンが多いのでしょう。
次に紹介する作品は秀吉が死の床についてからの激動の時代を描いた小説です。
合戦を経て江戸時代という250年以上の平穏が訪れるわけですが、それはこの本のタイトルでもある関ヶ原の戦いです。勝ったのは徳川家康率いる東軍、対する西軍を率いていたのが、この作品の主人公・石田三成です。
地の利 を巧みに利用し諸国大名を味方につけた徳川家康。合戦中に西軍の諸侯はオセロゲームのように東軍に寝返り、光成の義は無惨にも打ち砕かれてしまいます。戦いに敗れても尚、打ち砕かれた義の欠片で、領民の命を守って死んでゆくその姿に感動します。戦国武将は自分の正義を突き通すことに人生を注ぐけど、中でも一番まっすぐに貫き通したのは石田光成ではないかと思うようなストーリーです。
ちなみにこの光成、歴女の愛する戦国武将ランキングでは真田幸村についで2位に君臨しています。確かに。歴女レベル60点でも気持ちは分かる気がする。
新名神高速道路が開通してからは少なくなったけど、ツアーで名神の関ヶ原インターチェンジをよく通っていました。合戦を想像していたらブオオーン!!という法螺貝の音が響くような気がしました。余談ですが「Esto」という曲の2サビ後のベースフレーズは、このブオオーン!! をイメージして演奏しています。