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藤田和日郎のおすすめ漫画ランキングベスト5!活躍を続ける巨匠

更新:2020.11.24 作成:2017.3.23

複雑なストーリーを明快なキャラクターで一気に引き込み、熱中させるベテラン漫画家。その作品はどれも素晴らしいものですが、今回は選りすぐってぜひ読んでもらいたい藤田和日郎作品ベスト5をご紹介します。

藤田和日郎はビルドゥングスロマン(成長譚)の巨匠!

1964年5月24日生まれ、北海道出身の漫画家。本名は藤田和宏です。高橋留美子に触発されて漫画家を志し、1988年、『連絡船奇譚』が小学館主催第22回新人コミック大賞に入選してデビューしました。

1989年、『うしおととら』連載開始。同作は1992年に第37回小学館漫画賞少年部門受賞、1997年に星雲賞コミック部門賞受賞。文化庁メディア芸術祭10周年記念企画では、日本のメディア芸術100選マンガ部門にも選出されました。

その荒々しい絵柄は、少年漫画の王道を行く成長物語と相まって、読む者を圧倒して虜にします。キャラの目に対して強いこだわりを持っており、それは高校時代に地元を訪れた漫画家でアニメーターの安彦良和に質問した際、目線についてのアドバイスを受けたことに由来するそうです。

主人公の成長を得意とする作風で、メインの活動は少年誌が多いですが、『からくりサーカス』終了後は一時期青年誌でも執筆していました。青年漫画では伏線をちりばめた骨太の語り口がますます冴えて、少年誌連載時よりもダークファンタジーとしての側面が目立っています。

5位:藤田和日郎のモダンホラー作品!禁忌の屋敷許すまじ。『双亡亭壊すべし』

東京は沼半井町(ぬまなからいちょう)に1軒の幽霊屋敷がありました。屋敷の名は「双亡亭」。絵本作家志望の青年、凧葉務(たこはつとむ)は双亡亭内に父子で引っ越してきた少年・立木緑朗(たちきろくろう)と知り合います。

ある晩、屋敷で爆発騒ぎが起こりました。救助された緑朗は、屋敷が父親を食べた、と半狂乱の有様です。その後、沼半井町に突然避難勧告が出されます。それは斯波総理と桐生防衛相の指示でした。2人には、双亡亭で友人を亡くした過去がありました。

避難完了後、双亡亭に対して爆撃が行われました。しかし、驚くべきことに屋敷は無傷。古ぼけた木造家屋がミサイル攻撃を受けても平然と建っているという異常事態です。テレビ中継でその様子を目撃した人々は、やがて呪詛のようにこう呟くことになります。

「〈双亡亭〉壊すべし」(『双亡亭壊すべし』より引用)

著者
藤田 和日郎
出版日
2016-07-12

本作は「週刊少年サンデー」で2018年現在絶賛連載中のモダンホラー作品です。『月光条例』以来2年ぶりの少年漫画でもあります。青年誌で発揮したダークファンタジー路線を継承して、全編に渡っておどろおどろしい雰囲気が漂っています。

壊そうとしても決して壊れず、人間を取り込む謎の屋敷・双亡亭。物語はこの双亡亭を排除しようとする人々を中心に展開されます。望むと望まざるとに関わらず、双亡亭に縁を持ってしまった人達。

父親を目の前で失った緑朗は、幼い体に復讐心を宿らせます。彼に呼応するように現れた、超常能力を持った少年・凧葉青一(せいいち)。

青一は45年前、旅客機に乗って行方不明となっていた務の遠い親戚です。緑朗と同世代にしか見えませんが、務から見ると大叔父に当たります。どうやら現世とは異なる場所にいたようですが……?

両親の離婚によって緑朗とは生き別れになっていた姉、柘植紅(つげくれない)。彼女は才能ある巫女の血筋で、現役最強と謳われる刀巫覡(かたなふげき)です。紅は、双亡亭破壊に魅入られた緑朗を救うため、事件に関わることになります。

そして凧葉務。青一の遠縁で、緑朗、紅とも接触した彼もまた渦中の人物として、物語に深く関係することに。

果たして双亡亭は、誰が、一体なんの目的で建てたものなのでしょう?消息不明だった青一、そして彼の異常な能力との繋がりは?

『双亡亭壊すべし』については<『双亡亭壊すべし』が面白い!その魅力を全巻ネタバレ考察!【最新10巻】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

4位:藤田和日郎、初の青年誌連載作品!『邪眼は月輪に飛ぶ』

昔、田舎の山奥を恐怖に陥れた怪鳥がいました。一睨みするだけで生物を殺す、死のフクロウです。人々は神罰だと恐れましたが、たった1人の老猟師が最後まで抵抗し、フクロウを無力化させました。

13年後。最新鋭空母が厳重保管していたある生き物が、東京に解放されてしまいます。その名は「ミネルヴァ」。米軍が密かに回収、管理していたあの死のフクロウでした。

ミネルヴァはたった3日で、東京を死の街に変えます。どういうわけかテレビ越しでもミネルヴァの力は有効で、マスコミが生中継した結果、さらに全国で420万人が犠牲になりました。

頼みの綱は最早、13年前にミネルヴァを止めたあの猟師だけです。

著者
藤田 和日郎
出版日
2007-04-27

本作は、藤田にとって初となる青年漫画です。『からくりサーカス』連載終了後、全5話の短期連載を予定していましたが、筆が乗って全7話のボリュームに膨れ上がりました。藤田のストーリーテラーとしての魅力が短い中に凝縮された濃厚な怪作です。

本作の特徴は死の鳥・ミネルヴァの存在に尽きます。夜目が利く、首の可動域が広いなど、フクロウが備える基本的な能力に加えて、ハヤブサの降下速度に匹敵する高速で飛行する恐るべき存在。その死の視線の前では如何なる生物も無力です。

日米両政府はミネルヴァの駆除に当たって最新鋭兵器を投入しますが、翼長150センチメートルという小さな飛翔体を捉えることは不可能。

そこで頼りになるのが、かつてミネルヴァを撃ち抜いたマタギの猟師、杣口鵜平(そまぐちうへい)です。昔ミネルヴァとの戦いで元妻の智恵子を失った鵜平は厭世的になり、世捨て人同然でした。

鵜平は米軍の横槍でミネルヴァを仕留め損なったことを恨んでいて、助力を求めてきたマイケル・リード陸軍准尉、CIAのケビンにも冷たく応対します。しかしミネルヴァを放置すれば日本だけでなく、世界規模の大厄災にもなりかねません。智恵子の養女、輪(りん)だけが頑固な鵜平を説得出来るのですが……。

人類は死の鳥を仕留めることが出来るのか。鵜平とミネルヴァの因縁はいかに。

3位:帝都ロンドンを震撼させたゴシックホラー!『黒博物館 スプリンガルド』

1837年10月11日、ホテルの女給が不審な男に襲われます。

男の目は真っ赤に染まり、口からは青い炎を吹き、女の衣服を破ると、甲高く笑って天高く飛び跳ねて消え去りました。それが後に「バネ足ジャック」として知られる怪人の最初の事件でした。ジャックは婦女子だけを狙って悪戯を繰り返しましたが、半年ほどでふっつり行方をくらまします。

3年後。再びロンドンに怪人が現れました。女ばかりを狙う殺人鬼と化したバネ足ジャック。その凶行を止めることは出来るのでしょうか……。

著者
藤田 和日郎
出版日
2007-09-21

本作は藤田の青年漫画2作目にして、初の講談社雑誌連載作品です。19世紀にイギリスで巻き起こった都市伝説「バネ足ジャック」がモチーフ。イギリスの怪人ジャックと言えば「切り裂きジャック」が有名ですが、バネ足ジャックの方が50年も早く世間を騒がせました。

都市伝説と言っても、ベースとなった実在の事件があるんです。冒頭ジャックに襲われる女給の名前はポリー・アダムズで、彼女の事件は当時新聞でも報道されました。バネ足ジャックは一連の事件の後、100年ほど語り継がれる都市伝説なったのです。

本作の登場人物で、物語の語り手となるジェイムズ・ロッケンフィールド警部は創作されたキャラですが、バネ足ジャックの正体と目される貴族であるウォルターはヘンリー・デ・ラ・ボア・ベレスフォードがモデルとなっています。ヘンリーは実際にバネ足ジャック事件の犯人として、当時のスコットランドヤード(ロンドン警視庁)にマークされていたようです。

本作でバネ足ジャックと疑われるウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド。彼はかなりの難物。酔狂な金持ちで、腕も立ちます。警視庁の熱血刑事ジェイムズにすら怯みません。ジャック事件については、何か彼なりに思うところがあるようですが……。

この物語は、事件を知るジェイムズが刑事事件の証拠を収めた「黒博物館」の学芸員に、順を追って真相を語るという構成です。知られざる真相が明らかになるにつれ、聞き手の学芸員にも熱が入り、物語の先を知りたいと熱中する我々読者の目線とリンクしていきます。クールビューティ然とした彼女がヒートアップしていくのも、キャラとして可愛いらしいです。

帝都を騒がす怪人、バネ足ジャックの正体は?彼の消えた3年間の謎、そして再び現れたその真意とは?

2位:連綿と続く操り糸の壮大な演目、ここに開幕!『からくりサーカス』

加藤鳴海は、人を笑わせないと生きられないという奇病「ゾナハ病」にかかっています。武術に打ち込んでばかりいた彼はうまく笑いを取れませんでした。鳴海がサーカスのビラ配りをしている時、彼に笑いかけてくれる少年・才賀勝と出会います。

勝は巨大企業サイガの総帥・才賀貞義の息子でした。貞義の没後、莫大な才賀の遺産を相続することになり、そのため命を狙われていました。勝の誘拐現場に立ち会った鳴海は思わず彼を助け出します。奇妙な人形の刺客による追撃は続き、2人は窮地に立たされました。それを救ったのは、謎の銀髪の美女。

「しろがね」と名乗る彼女は、勝の祖父・正二の命で彼を守ると宣言、「あるるかん」と呼ばれる機巧人形を操って戦います。こうして3人は出会い、途轍もなく長く、複雑に絡まり合った数奇な運命を辿り始めるのでした……。

著者
藤田 和日郎
出版日
2011-07-15

本作は藤田の2作目にして最長となる、ダークファンタジー作品です。勝と鳴海が事実上の主人公で、そこにしろがねも加わった3人を中心に物語は進みます。しかしこの作品、敵味方の関係が非常に複雑です。藤田和日郎特有の熱く燃える展開に紛れて、序盤から細かな伏線がちりばめられており、全編読破することでようやく全体像が見えるという超大作です。

藤田の作品といえば、少年の成長物語。主人公の勝は最初気弱で内気な少年でしたが、戦いを通して出会いと別れを経験し、逞しく成長します。一方的に守られるだけだった彼が、自身の存在理由、戦う目的を見出して敵に立ち向かう流れは、少年漫画でも屈指の展開です。

鳴海は勝に強い影響を与えた人物です。彼の強く、優しい生きざまは勝の理想になりました。彼の罹患したゾナハ病は単なるコメディリリーフ的要素かと思われましたが、その正体が後々明かされ……。

メインヒロインのしろがね。勝に対して過保護に接する謎の美女です。彼女もまたただのボディーガードなどではなく、もっと大きな陰謀に関係する重要人物。戦うヒロインとしては、『からくりサーカス』の実質的な原型『からくりの君』に登場する主人公、文渡蘭菊(あやわたりらんぎく)に通じる部分も。

徹頭徹尾、情念めいた藤田和日郎の想いが込められた一大巨編です。

本作については<漫画『からくりサーカス』キャラの名言12選!再読したい魅力ネタバレ紹介!>で詳しく紹介しています。

1位:藤田和日郎、不朽の名作!語り継がれる1匹の「妖」の物語『うしおととら』

主人公の蒼月潮は、芙玄院という寺の1人息子。ある時彼は自宅にある蔵の地下で、1本の槍に串刺しにされた妖怪と出会います。後に「とら」と名付けられるその妖怪は、500年もの間、槍によって封印されていました。

潮は封印を維持しようとしますが、とらの妖気に釣られて低級妖怪が集まってきました。幼馴染みの中村麻子、井上真由子が危機に陥ったことを悟ると、潮は助力を条件にとらを解放します。とらは早速裏切ろうとするも、潮の手に封印の槍があったため両者は協力して小妖怪の群れを退治しました。

あらゆる怪異を切り裂き、妖怪を討ち滅ぼすためだけに作られた霊槍「獣の槍」。潮は獣の槍に使い手として選ばれたのです。潮と、とら。1人と1匹は、やがて世界の行く末を左右する巨大な運命に導かれていきます。

著者
藤田 和日郎
出版日
2015-05-18

藤田の初連載作品にして、大ヒットとなった少年漫画です。幅広い世代に支持され、今なお色褪せないまさに名作。2015年にはテレビアニメ化もされたので、そちらで知ったという方も多いでしょう。

潮は言動がやや粗暴ながら正義感の塊で、献身的な少年です。人が傷つくことを良しとせず、自分の身を危険に晒してでも誰かのために戦うことを選択します。とらは恐ろしい外見と妖怪という呪わしい存在に反して、500年間封印されていたからか好奇心旺盛で、どこか憎めません。両者は反目しながらも、協力していくなかで強い絆で結ばれることになります。

そして忘れられないのが、彼らを肉体的にも精神的にも支える魅力的な登場人物達。ヒロインの麻子、真由子をはじめとして、劇中で培った絆が性別や人種、世代、時間を越えて強い力となって結実します。

物語の裏で暗躍する巨悪、「白面の者」。人間と対立する妖怪ですら恐れる、人と妖共通の敵です。その正体は世界が誕生した時、陰の気から生まれた邪悪の化身。中国や日本各地に残る伝承「金毛白面九尾の狐」をモチーフにした本編最大の悪だけあって、潮だけでなく妖怪、人間社会にまで恐ろしい攻勢を仕掛けます。

本作は獣の槍を巡る壮大なストーリーとなっていますが、登場人物の成長(主人公に限らず)を描くビルドゥングスロマンでもあります。藤田和日郎の原点であり、後の作品の様々な要素を見て取ることが出来る、まさに1位に相応しい作品といえるでしょう。

『うしおととら』については<漫画『うしおととら』の名言&名シーン徹底紹介!最終回のあの泣ける言葉も>の記事で詳しく紹介しています。本作が気になる方はぜひご覧ください。

いかがでしたか?有名タイトルは知っていても、癖のある絵柄で敬遠していた方もいたのではないでしょうか。しかし藤田和日郎作品には、言葉では語り尽くせない魅力があります。この記事で少しでも興味が湧いたなら、一読をおすすめします。きっと一生、あなたの心に残る作品になるはずです。