漫画家を夢見る、豆山。そんな彼女の漫画制作のお供は、自称・魔女のマヤさんでした。スカイプで、ただ話すだけ。でもそんな時間が、とてもかけがいのないものだったりするのです。 そんな、誰かが近くにいる安心感を描いたほのぼのギャグ漫画が、本作『マヤさんの夜ふかし』。全3巻です。今回の記事では、ゆるゆるハマるおすすめポイントをご紹介しましょう! 気になった方は、スマホアプリから無料で読むこともできるので、そちらからどうぞ!
自称・魔女のマヤさんと、東北に移り住んだ漫画家の卵・豆山。そんな彼女達の日課は、深夜のおしゃべり。くだらなくも安心できる日常、そして、実は本当に魔女である(!)マヤさんの魔法が、非日常のスパイスとなって効いたギャグ漫画です。
そんな本作でもっとも特徴的なのは、ストーリーの温冷の切り替え。寂しくも自由な深夜のひとりぼっちの雰囲気と、ネット上ではあるものの人と繋がっている安心感の絶妙な雰囲気が、読者をじんわりと癒してくれます。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
- 2016-10-20
真剣に見ているわけではないのにテレビを流していると安心できるように、本作はだらだらと流し読みしているだけで、なんだか安心できる魅力があるのです。
今回は、そんなだらだらギャグ漫画『マヤさんの夜ふかし』の魅力をご紹介!なんとな〜く読みたくなるよさを、じわじわお伝えしたいと思います。
マヤさんは、都内に住む正真正銘の魔女。そんな彼女にいつも付き合うのが豆山。彼女は東京から東北に移り住んだ、漫画家の卵です。
ひょんなことから知り合った2人は、音声通話をダラダラと流しっぱなしにする深夜のおしゃべりが日課になりました。豆山が原稿を書いている間にマヤさんがくだらないことを話すという、ゆる〜い雰囲気。
特に何があるというわけではないけれど、そのダメさが心を温める真夜中の日常なのです。
本作最大の魅力は先述でも述べたとおり、ゆる〜い空気感です。深夜ということもあり、ダウナーであまり頭を使わないような、意味のない会話を本気でするマヤさん。そして、彼女をサポートする豆山に、ついほっこりさせられるでしょう。
2人の会話ももちろんですが、ゆるいのはマヤさんの魔法もそう。そんな彼女の魔法は、使うたびに腸の善玉菌が死滅し、お腹の調子を壊してしまうという地味なリスクつき。
それゆえに、あまり魔法を使いたがらないのですが、使ったとしても大抵は文明の利器に負ける程度の魔法。魔女というスペックが、あまりにも無駄すぎるのです。
それゆえに豆山からは魔女設定とされており、本物だと信じてもらえません。
しかし、だからといって本気でどうにかしようとはせず、わかってもらえずに困っているマヤさんを見るのも、またオツ。
肩の力を入れずに読めるゆるさは、おやすみ前や疲れた時にぴったりなのです。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
- 2016-10-20
本作は、家のこたつでダラダラしているかのような安心感があります。その根底にあるのは、マヤさんと豆山が、お互いのことをとても大事に思っているからではないでしょうか。
マヤさんはコミュ障で交友関係も広くないので、必然的に豆山だけに心を開くようになっていきます。内弁慶なところが少しあるものの、彼女の大切さを理解しており、しばらく連絡がとれなかった時に不安になる様子などは、こちらまで胸が締め付けられるでしょう。
そして豆山も、マヤさんのダメダメなところに励まされたり、自分にはないエネルギーのようなものを好意的に思ったりしているようです。
彼女は女性ですが、当初の設定が男だったということもあり、時には百合感を感じさせる描写も。しかし、基本的には友達として仲良しです。
たまに本気でウザがられたもするマヤさんですが、それだけだる絡みできるというのは、豆山の前で安心している証拠。外の世界でつけている鎧を外せていることが、見てとれます。
しかも、それがベタベタした関係ではなく、お互いの距離を伺いながらも相手を大事に思っているという繊細なもの。その様子が、本作の魅力の1つでもあるのです。
深夜22時〜翌2時。それは、遺伝子に付属するタンパク質「BMAL1(ビーマルワン)」がもっとも活発になる時間帯。彼らはこう叫びます。「飢餓に備えろ!脂肪を蓄えろ!」。そう、深夜の食事は美容が気になる女子には自殺行為なのです。
今、マヤさんの横には初売りで買った電気ケトルと、その福引で手にしたカップ麺があります。しかも、その味は食べても罪悪感の少ない「塩」。あっという間にすぐに湧くF-faLケトルと、すぐに食べられるカップラーメン。
文明の利器による手軽さ。機は熟しました。しかし、彼女は魔女。歯を食いしばってこう言うのです。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
- 2016-10-20
私は屈しない!!高潔な魔女として
この世界の化学になんか負けない!!
(『マヤさんの夜ふかし』1巻より引用)
それは、負けを認めた合図でした。ちょろすぎる!!
「冷えたカラダに染み渡る塩気と温かさ」。マヤさん思わず「科学最高」、豆山「ミュートにして食べてくれませんか」。
幼い頃には考えられなかった自堕落の象徴、深夜のカップラーメン。ひとり暮らしだからメガネが曇っても気にしないし、スープまで飲んじゃいます。罪悪感は最高のスパイスなのです。
お腹いっぱいになってひと息つくと、すでに午前4時。夜明けとともに、賢者タイムと寂しさがやってきます。そんな時に、マヤさんは豆山のテンションを上げるある言葉を放つのですが……この続きは、ぜひ作品で。本作のよさを表したような、なんとも笑えるいい会話です。
こんな深夜あるあるがたくさん出てくる『マヤさんの夜ふかし』。こたつでの寝落ちや、深夜の課金加速など共感度抜群なので、ぜひ他のあるあるも作品で探してみてください。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
- 2016-10-20
仕事で疲れて帰ってきて、ひとりの部屋。切実な願望、それは「癒やしがほしい」。
マヤさんはその寂しさを、大好きな生物・にゃんこで癒そうとします。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
- 2016-10-20
しかし、彼女の住むマンションはペット禁止!そして、独身女性がペットを飼うと婚期を逃すという通説……我慢しなくてはいけない、でも寂しい!マヤさんは悩みます。
そんななか、彼女は猫を飼っている豆山と愛猫・チビの戯れを聞いて、号泣し始めるのです。
大の大人が大粒の涙と鼻水大洪水で声をあげて泣くって、どんだけ溜め込んでたんでしょう。マヤさん、かわいいですね。そして、あきれながらも、なんだかんだいって豆山が彼女の言葉にしっかり応えてあげる様子は、優しさを感じます。
「さみしい」と言ったことに対し、その気持ちに共感してくれる相手が近くにいること。そんな繋がりのありがたみは、1人を孤独に感じたことのある人なら誰しも共感できるのではないでしょうか。臆面なく泣けるマヤさんが羨ましくなってしまいます。
寂しくなった時に手元に置いておきたい優しさが、この作品にはあるのです。
真夜中の2人を繋ぐのは、回線1本。物理的な距離があるので、回線が途切れてしまえば、2人の繋がりも「すぐそこにあるもの」ではなくなってしまいます。そして毎日話しているからこそ、相手が近くにいないことが寂しいのです。
マヤさんは遠隔花見をしようと言いますが、東北に住む豆山の街では、まだ桜は咲いていません。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
- 2016-10-20
そこで1人で飲み始めたマヤさんですが、実は彼女はお酒に弱く、寂しさが増長してしまいます。そしてつい「なんでこっちにいないんだよバカーーー!!」と豆山にあたってしまうのです。「私だって……」と言い募る豆山。気まずくなる2人……。
豆山の気持ちを知ったマヤさんは寂しいのは自分だけではないと気づき、豆山に部屋の窓を開けろと言います。理解できないまま豆山が窓を開けると、なんとそこに、桜の花びらが舞い込んでくるのでした。
心もとない繋がりでなされる会話の内容は、くだらないようで実は貴重。無意識に彼女達の心の支えになっていたことに、お互いが気づくのです。
1番大事なマヤさんのアイデンティティ・魔女設定を豆山は信じていませんが、それもこれから時間をかけて理解していけばいいのです。まだまだ2人の季節は始まったばかり。宵桜を見ながら、彼女達は遠くにいながらも友情を深めるのでした。
ちなみに、このストーリーは1巻の最後の話なのですが、このほっこりシーンの後に、キャラデザ裏話が明かされます。そこでは、なんと巨乳バージョンの豆山の姿が!タートルネックセーターの彼女は、それだけで全然印象が変わります。
そして、まな板マヤさんの姿はひもじい。巨乳というよさがあって、本当によかったです。ダメ人間の彼女に、ひたすら残念感が出てしまうところでした。そんな、本編では絶対に見られない2人を、あとがきでご覧ください。
ある日のマヤさんはバイトなしの休日に、2度寝のまどろみをお布団の中で享受していました。素晴らしきオフトゥン……。
そんな彼女の至福の時間を、邪魔する輩が現れます。それはお隣さん。引っ越しのドタバタ音で、彼女は目を覚ましてしまいました。
しかも4月の引っ越しシーズンにやってきた隣人は、初めての一人暮らし☆に浮かれているようで、金曜ということもあり、友達を招いて女子会をしているようなのです。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
- 2017-03-18
薄い壁ゆえに、よく響く高い声……憎きキラキラ族……。しかも、それが夕方から、豆山と話す夜中まで続いているのです。
さすがに壁ドンでもして被害を訴えたら、と豆山がアドバイスするのですが、そこはチキンなマヤさん。
やっぱ、そうなりますよね。
しかも、聞きたくないのに会話がすべて聞こえるらしく、「ひとり暮らしはこれが初めて」「ライ○はしてるけどツイッ○ーはしてない」「入学式で気になる男子を見つけた」などの個人情報を、マヤさんは無意識に収集してしまいます。
そんな彼女に豆山が引いていると、むこうから不慮の壁ドン。それにビクッと怯えるマヤさん。
「向こうに響いたらどうすんのー」という、まったく気にして無いだろお前……と思わせる発言が聞こえてきます。こんなか弱いマヤさんを困らせやがって!ぼっちでコミュ障の彼女の、唯一の居場所なんだぞ!
しかし、さすがにこれにはマヤさんも腹を立てます。「管理会社に言う…」と悲壮な面持ちで決意するのです。
集合住宅の恐怖を味わわせてやる!!
(『マヤさんの夜ふかし』2巻より引用)
と、まぁそこから朝チュンが始まるまでが早かった。
一晩経って思ったんだけど人に言いつけるのって……
なんか…こう…違うって言うか…大のオトナがって言うか…
(『マヤさんの夜ふかし』2巻より引用)
コミュ障の彼女は、電話が大の苦手。豆山との通話が精一杯なので、管理会社への連絡はハードルが高すぎたのでした。
ちなみに、これは2巻の1話目なのですが、2話目もこの話が続き、しばらくしてからもまだ悩まされています。頑張って電話しよ!マヤさん!
本巻ではこの他に、豆山の愛猫・チビ目線でのエピソードも収録。そこで、ぽろっと明かされる豆山の不穏な情報は、3巻での何かしらの伏線になりそう。大丈夫か心配になる展開です……。
本巻では、なんとマヤさんと豆山、2人で旅行に行っちゃいます!オンラインゲームをするという次元的な旅もありますが、リアルで行くのです。
仙台駅から東北新幹線に乗って、約1時間。そこから新花巻駅で下車して在来線に揺られること、さらに1時間。そこは民話の町・遠野です。彼女達は、そこにカッパを捕まえにやってきたのでした。
1日目は、普通の観光。ご飯を食べ、お土産を見て、お風呂に入ります。近くで豆山と一緒に過ごせる時間が嬉しいマヤさん。
こんなカンジでさ
ずっと仲良くしてけたらいいなぁって思ったんだ(中略)
これからもふたりで夜ふかしを満喫しよーな
(出典:『マヤさんの夜ふかし』3巻より引用)
布団に入って暗くなってからのボソボソトークは、旅の定番ですね。しかし、この言葉に、なぜか豆山は考えるような表情で「そうですね」としか返さないのでした。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
2日目。豆山は楽しそうにカッパ探しをするマヤさんの横で、何やら考えを巡らせています。そんな彼女の前に、1人の酔っ払いおじさんが登場。
豆山とおじさんでマヤさんを眺めながら、豆山はぽろっと、彼女に言えないことがあるのだ、と彼に打ち明けるのです。そこでほろ酔いのおじさんが、いいアドバイスをしてくれます。
その後の最終回は、旅から2週間後のマヤさんと豆山の様子。それぞれの土地に戻りますが、マヤさんは豆山に言われたことから、また不安定になってしまって……。
最終巻ということもあり、何やら彼女達の会話、展開が濃密なものになり、ちょっと百合っぽくなってます。しかし、その内容にはほっこりすること間違いなしです。
そして重要なのが、豆山がデレるということ。いつもはマヤさんの聞き役一辺倒ですが、最終回は雄弁。
そんな貴重なデレに、マヤさんが変態っぽくなってしまいますが、そこがまたいいのです。豆山のことが大好きで、よっぽど嬉しかったんだろうな、と想像できます。
2人はこれからもこんな調子で仲良しなんだろうな、と思えるほっこりな終わり方でした。
ちなみに2巻で思わせぶりに豆山の通院エピソードが明かされましたが、病気だったのかなど、伏線の回収は無いよう。拾いきれなかったのかもしれませんが、そこもまた想像が膨らむポイントです。いつか、作者・保谷伸がその内容を明かしてくれるという希望もとっておきましょう。
- 著者
- 保谷伸
- 出版日
笑えて、共感できて、最後にほっこりするギャグ漫画『マヤさんの夜ふかし』。欲望に抗えずに夜食を食べている時、眠る前に一息つきたい時に、ゆるゆると読むのがおすすめ。3巻で完結ということもあり、サクッと読める内容です。
お伝えしきれなかったスローなエピソードのよさは、ぜひ本編でチェックしてみてください。じわーっと癒されること間違いなしですよ!完結済みなので、最終回まで一気に読めるという点でもおすすめです!
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