古屋兎丸おすすめ漫画ベスト5!『帝一の國』原作者の独特な世界観に浸る!

更新:2021.11.24

映画化された『帝一の國』をはじめ、話題作の多い古屋兎丸ですが、特筆すべきはその圧倒的な画力でしょう。劇画のようなタッチの絵から鉛筆画まで、美麗な絵を楽しむだけでも一見の価値ありですよ。そんな古屋兎丸のおすすめ漫画を5つご紹介します。

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高い画力と斬新な内容で話題を生み出す漫画家・古屋兎丸

古屋兎丸(ふるやうさまる)は、東京出身の漫画家です。美大で油絵を選考し、卒業後にはアーティストを目指していたそうです。しかし、時世もあり、油絵で生計を立てるのは難しいと断念し漫画家へ転身。

1994年にデビューすると、『ライチ☆光クラブ』や『帝一の國』など数々のヒット作を生み出しました。

独特の世界観で、エログロナンセンスや、ブラックユーモアのある作風が特長で、彼の描き出すドロドロとした描写は秀逸ですよ。

デジタルと手書きを併用し、劇画タッチな絵やエンピツ画など多彩な画風と緻密な描きこみを駆使し、読む人を古屋兎丸の世界へと誘います。まるで目の前に広がっているかのような肉厚で臨場感ある構成は必見です。

漫画以外にも、脚本や絵コンテ、CDジャケットのイラストなども手掛け、マルチに活躍しています。

5位:オリジナル視点で描き出す『人間失格』

『人間失格』といえば言わずと知れた太宰治の代表作です。そんな太宰治の名著を、古屋兎丸がコミカライズした本作は、作中の時代背景を現代にアップデートして描かれています。

古屋兎丸という漫画家が、「人間失格」という名前の日記をサイト上で見つける、というところから物語がスタートします。そのサイトでは、大庭葉蔵という人物が自分の半生を綴った日記を公開しており、6歳・17歳・25歳の3枚の写真が添付されていました。興味を持った古屋兎丸が、その日記サイトの話を読み進めていき……。

著者
["古屋 兎丸", "太宰 治"]
出版日
2009-06-09

嫌われたくないとの一心で、建前ばかりを本心のように伝えることは誰にでもあることだと思います。

おもしろい人、と思われたら嫌われない、人当たりの良い人と思われたら嫌われないと、ひたすら道化を演じ続ける大庭葉蔵。才能も人気もあった葉蔵が、なぜ酒や女、薬におぼれ、堕落してゆく羽目になったのか、を美しい絵と構図で描き出しています。ビジュアル化されることで、原作よりもさらに葉蔵の心の動きや破滅してゆく様子が如実に表現されているのではないでしょうか。

原作の主人公は大庭葉蔵でしたが、本作の主人公はあくまで古屋兎丸という漫画家です。なので、最終章では原作と違ったオリジナルの展開がまっています。古屋兎丸が読んでいる日記サイトに日記を書いた人物が居るはずです。そんなわけで古屋は、日記サイト「人間失格」の作者である大庭葉蔵を探しにいってしまうんですね。そこで古屋は何を見つけたのか……?衝撃のラストに目が離せませんよ。

ひと言でいえば、読後の爽快感は皆無です。それどころか、全編に渡って陰鬱な雰囲気が漂っています(褒めています)ので、気分が落ち込んでいる時にはおすすめしません。でも、やっぱりぜひ読んでみてほしい作品です。

4位:あの頃はまだ、今とは違っていた『ぼくらの☆ひかりクラブ』

古屋兎丸の代表作である『ライチ☆光クラブ』の前日譚として描かれているのが、『ぼくらの☆ひかりクラブ』です。

螢光町という工場町を舞台に、その片隅にある秘密基地「光クラブ」とそこに関わる少年たちの物語です。本編とも言うべき『ライチ☆光クラブ』を未読でも楽しめますが、先に『ライチ光☆クラブ』を読んでみると、一層、本作のおもしろさを実感できるはずです。
 

著者
古屋兎丸
出版日
2011-11-29

古屋兎丸の代表作である『ライチ☆光クラブ』は、実に退廃的で耽美、凄惨で哀しい物語です。

螢光町という工場町の片隅にある少年達の秘密基地「光クラブ」には、帝王として君臨する「ゼラ」を筆頭に9人の少年達が集い、ある崇高なる目的のために活動しています。

少年期のみずみずしさを守ることを至上とし、大人になることを拒絶した少年達の歪んだナルシズム、大人の女性を汚らわしいものとし、美少女崇拝を意識に掲げる少年達の葛藤や対立、思春期特有の屈折した感情が白と黒とのモノクロームなコントラストで印象的に描き出しています。『ライチ☆光クラブ』の物語はやがて、少年達の結束に崩壊の時が訪れることになってゆくのです。

『ぼくらの☆ひかりクラブ』では、そんな『ライチ☆光クラブ』の数年前、「光クラブ」にはまだ帝王ゼラはおらず、少年・タミヤを主人公にして「光クラブ」の発足から崩壊への序章を描いています。目を反らしたくなるような描写もありますが、楽しかったはずの秘密基地が、やがておぞましく耽美な世界へ変わっていく様子に、きっとくぎづけになるはずです。

いつからか変貌してしまう「光クラブ」を舞台に、やがて衝撃的なラストへと繋がっていくまでの「はじまりの物語」をぜひ堪能してください。

3位:高校教師が計画する完全犯罪『女子高生に殺されたい』

センセーショナルなタイトルで話題を集めた『女子高生に殺されたい』は、古屋兎丸の画業20周年記念作品として注目されました。

「女子高生」に「殺されたい」と願う主人公・東山春人の願望と妄想を軸に、どうやったら「殺されることができるか」を綿密に練っていくという斬新なストーリーです。被害者が完全犯罪を企むって、通常では考えられませんよね。そんな東山の異質な気持ち悪さ、執念を存分に堪能できる1冊です。

著者
古屋 兎丸
出版日
2015-02-09

東山のひたすら気持ち悪い(褒めています)願望のために淡々と計画を実行していく様子が、高い画力とポートレイトのようなコマ割りで強調されて、次から次へとページを捲ってしまいます。

「自分が殺されることを考えると性的興奮を感じる」東山が理想とする殺され方が非常にめんどくさいです。

「一発で死ぬのはだめ」「何回も繰り返され、自分の想像を上回る苦痛がいい」とか「できれば文科系の細い女の子」とか、「自分のために罪を償わせないために完全犯罪がいい」とか、めんどくさい。そんなの実行できるわけない! と思いきや、実行できちゃう理由があったんです。

東山は無事本懐を遂げることができるのか?と気になって、最後まで目が離せません。

淡々としながら戦慄するようなラストが待っていますよ。気持ち悪さに耐性がある人は、ぜひ読んでみてください。

『女子高生に殺されたい』については<『女子高生に殺されたい』全巻ネタバレ!危うい世界観を、どう読む?【無料】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

2位:絵を使って人を助ける『幻覚ピカソ』

王道の学園ものに、「死んだ人間が現れる」、「絵の中に入っちゃう」というファンタジーな内容を盛り込んだ『幻覚ピカソ』は、古屋にとって初となる少年漫画です。そのためか、エログロは控えめな印象ですね。

事故に巻き込まれて死んでしまったはずのピカソこと、主人公の葉村ヒカリ。本当は死んでいるため、体は腐敗を始めています。しかし、「人助け」をすれば腐敗も止まり、生き続けることができるため、仕方なく、得意の絵を使って「人助け」をしていくという展開で物語がはじまります。

著者
古屋 兎丸
出版日
2009-02-04

人助けをしないと、自分が腐って死んでしまう……! というのにも関わらず「だって僕他人がどうなっても別にかまわないしっ」などとのたまいます。……ひどいですね。ひどいです。

人間の深層心理を絵として描きだすことができるようになったヒカリが、その絵の中へダイブすることで人間の心の奥底の悩み苦しみを解決して「人助け」をしていきます。人助けをし続ける先に、ヒカリは何を思うのか……。「絵が友達」だったヒカリが、人助けを通じて友人を増やしていったり、ヒカリ自身も成長したりと、個性豊かなキャラクターがたくさん登場して物語を彩ったりと読み応え満点です。

コミカルでわかりやすい学園生活の描写、ファンタジー要素、描きあげた絵から深層心理を探る謎解き……と盛りだくさんの内容ですが、設定に破綻がなく無理もない。これで面白くならないはずがありません! さらに最終章へ向かうストーリー展開にいたっては、ハラハラする要素も加わりページを捲る手が止まりません。

圧倒的な画力で描かれるアートのような絵の世界は、ずっとみていたくなるほど素晴らしいです。スッキリとまとまりよく完結する物語は、爽やかな読後を約束してくれるはずですよ。

1位:真面目に愚直に一直線に、時々不正も行います『帝一の國』

映画化にもなり話題を集めた『帝一の國』は、日本一の超名門・海帝高校での「生徒会長選挙」をめぐる、男達のアツい物語です。

「総理大臣になり自分の国をつくる」という壮大な目的のためにまい進する主人公・赤場帝一と、彼を取り巻く個性豊かな(豊かすぎる?)登場人物たちとが繰り広げる学園コメディ漫画です。総理大臣になっても自分の国がつくれるかどうかはともかく、そのために海帝高校の生徒会長を目指す帝一の、戦いの行方はいかに?

著者
古屋 兎丸
出版日
2011-03-04

目的は「選挙」に勝つことのみ! それ以外は何もいらないという主人公・赤場帝一の、清々しいほどの目的意識、見習いたいものです。

生徒会長選挙に勝つためなら手段を選ばず、高校生のくせに買収、選挙妨害や姑息なまでの勢力の取り込み工作など、「選挙」という一見地味にも思える設定に彩りを加え、ワンイシューの物語でありながら、全く飽きさせず、逆に何倍にも魅力的にみせる演出が随所にほどこされています。さすがです、古屋兎丸。

さらに、帝一と恋人の美美子、そしてライバルの1人、大鷹との三角関係や、ライバルたちとのアツき戦いといった青春特有の青臭さもプラスされているため、物語に緩急とコミカルな要素がうまれ、グイグイとひきこまれていきます。大真面目なはずなのに、どこか笑いを誘うのは、物語全体に流れるアツさのせいではないでしょうか。ツボにハマると爆笑してしまうんですよね。

名門高校の「生徒会長選挙」を軸に非常にシンプルかつ、青春の暑苦しさもうまく表現した展開で最後までスイスイと読み進めることができますよ。肩肘張らず、でも一風変わった作品を読みたいという人に、特におすすめです。

『帝一の國』については<思惑渦巻く学園漫画『帝一の國』がアツい!【最終巻ネタバレ注意】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

「鬼才」と呼ばれる古屋兎丸の特長は、何といってもそのズバ抜けた画力ですよね。高い画力が前提で、そこに肉付けされるストーリーがまた面白いから、スイスイ読めてしまう作品ばかりです。ご紹介した中から、お気に入りの1冊が見つかるとうれしいです。

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