原ゆたかの「かいけつゾロリ」シリーズは、児童館や小学校の図書室には必ず置かれているくらい、小学生に人気の作品です。ギャグやイラストも満載でスピード感にあふれ、子どもたちを夢中にさせます。絵本を卒業するお子さんの児童書入門としてもおすすめです! 2020年春からテレビアニメの新シリーズが放送されることが決定しました。『かいけつゾロリ』のテレビアニメの放送は約13年振り!この機会にお子さんとご覧になってはいかがでしょうか?
2020年春に「かいけつゾロリ」のテレビアニメの新シリーズが放送されることがは発表されました。「かいけつゾロリ」のテレビアニメが放送されるのは、約13年振り。
読者の皆さんの中にも、子供のころ見ていた方も多いのではないでしょうか。
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「かいけつゾロリ」シリーズの前に描かれていた「ほうれんそうマン」にはなんとゾロリも登場します。そんな「ほうれんそうマン」について紹介した<「ほうれんそうマン」シリーズと「ゾロリ」の関係は?魅力とあらすじも紹介!>の記事もおすすめです。
2017年にはシリーズ60作目を超えた「かいけつゾロリ」。記念すべき第1作目がこの「ドラゴンたいじ」です。
きつねのゾロリは立派な男になると天国のママに誓い、いたずら修行の旅に出ています。ゾロリには双子のイノシシ、イシシとノシシがいつもお供で付いてくるのですが、彼らはこの1作目で出会うのです。イシシとノシシはゾロリのことをいたずらの先生として尊敬し、「ゾロリせんせ」と呼んでいます。
このお話では、ゾロリが猫のエルザ姫の花婿に立候補をして黒ひょうのアーサーと勝負。相手の武器をグニャグニャにして使い物にできなくしたり、ドラゴンに姫をさらわせてゾロリが助けたりする計画を立てるのです。でも実はドラゴンは張り子でできていて、中にはイシシとノシシが入っています。
ゾロリたちが念入りに作ったドラゴンの仕掛けが大きな図で楽しく説明されていて、そんな機能まであるの!?と誰もが笑ってしまうでしょう。はじめて読むゾロリにピッタリの楽しい作品で、子どもたちは一気にゾロリの虜になるに違いありません。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 1987-11-01
この本が出版される3年前の1984年に、原ゆたかがイラストを担当した『へんしーんほうれんそうマン』で、ゾロリは悪役として登場しています。最初は主役に倒される脇役の悪いキツネでした。『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』は、ゾロリが主役を務めることになった最初の物語です。
何巻も続く「かいけつゾロリ」シリーズでは、ゾロリは天国のママと約束した、立派な男になることを目指して旅に出ています。立派な男になるためのいたずら修行、という視点がユニークです。ゾロリの子分として忠実で、いつも仲良くゾロリに連れ添う双子のイノシシ、イシシ・ノシシとの友情もシリーズを通して続きます。
ゾロリが仕掛けるいたずらは、誰かを傷つけるものではありません。機転が利いたアイデアたっぷりで、その仕組みが詳しく図解で説明されているので、より面白さを感じることができるでしょう。本の扉や裏表紙にも愉快な情報が描かれていて、初めから終わりまで何度も読みたくなりますよ!
『かいけつゾロリの大かいぞく』のお話で海賊船を手に入れたゾロリは、イシシとノシシにその船を幽霊船へ改造させます。彼らが自信満々で造り上げた幽霊船は、ゾロリ渾身のいたずら装置が満載です。3人は早速誰かを驚かそうと企んでいました。
するとそこに「ドラゴンたいじ」で戦った黒ヒョウのアーサーと猫のエルザ姫が、新婚旅行で通りかかります。お姫様とお城の両方を手に入れたアーサーに、仕返しをしたいゾロリが黙って見過ごすわけがありません。2人を幽霊船の乗客第一号に選び、恐ろしい新婚旅行のプレゼントを計画するのです。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 1989-10-01
強い男になることを目的に旅に出ているゾロリが、「素敵なお嫁さんと結婚して立派な男になる」と目標を変えることになったきっかけのお話です。エルザ姫を守るために犠牲をいとわずに頑張るアーサーの姿から、ゾロリたちは「愛は男を強くする」と悟ります。そして「早くお嫁さんをもらって強い男にならなきゃな」と思うのです。
アーサーからお城を騙し取るため、ゾロリたちは幽霊船のあちこちに罠を仕掛けます。「ようかいがっこう」のお話に出てきたゾンビたちや、全身からトゲトゲのウニを発射させるウニ坊主、ラーメンに化けた幽霊電気クラゲ、頭のお皿が電気のこぎりの河童に、アーサーを次々と襲わせるのです。でも、イシシやノシシ、ゾロリ自身のドジで逃げられてしまいます。
物語の初めにドーンと描かれている幽霊船の図面は必見です。お話がますます楽しくなりますよ!
子どもたちが大好きなチョコレート。もちろんゾロリも大好きです。このお話はブルル製菓の「ブルルチョコを食べてチョコレート城を当てよう」というポスターをゾロリたちが見たことから始まります。
ブルルチョコは、ミルク・ホワイト・ビターのチョコレートの順に、それぞれの層が1枚に合わさっている板チョコです。しかし、ずるいブルル社長は「当たり」の文字をその中央のホワイトチョコレートに書いていました。チョコを食べる人はパリポリかじってしまい、当たりに気づかないだろうという魂胆です。
ブルル社長が賞品にしたチョコレート城は、実はブルル製菓の工場なので彼は絶対に手渡したくないのです。ブルルチョコをたくさん売りたいがために、ブルル社長が考えたキャンペーンでした。
チョコレートが大好きなゾロリですが、その食べ方はとても変わっています。何日もかけて楽しむために、上下にコーティングされた部分のチョコレートをペロペロなめて、最後に中央の部分を楽しむのだそうです。その変な食べ方が功を奏し、ゾロリとイシシ、ノシシはブルルチョコで当たりを出しました!
あの手この手でチョコレート城を渡さないように阻止するブルル社長の作戦と、ドタバタ騒ぎのうちに何だか上手くいってしまうゾロリたちのチームワークが愉快です。さて、ゾロリたちは念願のチョコレート城を手に入れることができたのでしょうか?
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 1990-02-01
「かいけつゾロリ」シリーズで、ブルル社長と部下のコブルくんはこれ以降の作品で何度も登場します。ずるいブルル社長の悪知恵は、愉快で憎めないものばかり。会社を有名にするために、賞品が当たると宣伝をしますがそれはなかなか当たらないように仕組まれているのです。
北の寒い海のほとりに建つチョコレート城を目指し、ゾロリたちの旅がスタートします。ずるいブルル社長は、「優しいブルル社長からの特別サービス」と看板を出して、ゾロリたちに雪山でも温かい靴を提供しました。なんとそれは履くとスケートの刃が出てくる靴で、ツルツル滑ったノシシは、ゾロリたちと別れ谷へ落ちてしまうのです。
ゾロリとイシシがやっと辿りついたチョコレート城の前には、ロボットの「しろだるマン」が配置されています。ブルル社長は、しろだるマンの鼻からつららロケットを発射させたり、冷凍光線を浴びせかけたりして、ブルルチョコの当たりの秘密を葬ろうとするのですが……。なんと谷に落ちたノシシが巨大な雪玉となってゴロゴロと転がり、ブルル社長たちを押しつぶしたのです。
再会を喜ぶゾロリたちへ、ずるいブルル社長は「チョコレート城はあげるけれど、土地はあげない。城だけ持って行け」と言います。そこでゾロリのアイデアが光り、うまくお城を手に入れることができるのですが……。最後まで愉快な結末には、子どもたちも大満足でしょう。
「かいけつゾロリ」シリーズではほとんどのお話が1冊で完結しますが、他のお話の登場人物やストーリーが時々出てきては上手くリンクされています。どれから読んでも楽しいですが、全部読むともっと楽しめるのがシリーズの魅力です。
ブルル製菓のブルル社長が、またしてもずるいキャンペーンを始めます。今度はブルルアイスを食べるとスポーツカーが当たる、というものです。もちろんゾロリたちはこれに夢中になります。
スポーツカーを懸けた戦いは、ブルル社長の提案でチビ四駆を改造して行われます。ゾロリチーム、ブルルチームはともに体が小さくなる薬を飲み、チビ四駆を実際に運転してレースを行うのです。果たしてレースの行方は!?
最後は、ブルル社長はまた出てくるだろうな、と予感をさせるエンディングです。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 1997-07-01
「チョコレートじょう」に続き、ブルル製菓のブルル社長と対決です。今度のゾロリは暑い夏の旅を快適にするために、速くてすてきなスポーツカーを手に入れたいと願っています。そこへ、冬季五輪ピック公式スポンサーを狙うブルル社長が、ブルルアイスを食べるとスポーツカーが当たるキャンペーンを始めるのです。
ずるいブルル社長のアイデアですから、当たりはなかなか出ないように工夫されています。なんと、アイスの棒を2時間根気よくしゃぶり続けると「あたり」の文字が浮かび上がるようになっているのです。「アイスの味はもとより、木の味までなくなってしまうほどこのバーをチュウチュウするいやしんぼうは……」案の定、ゾロリとイシシ、ノシシでした。
会社の名前を有名にして公式スポンサーになりたいブルル社長に、今回はゾロリたちも一本やられます。ブルル社長が賞品に出していたスポーツカーは、三輪車にボードを張り付けただけのもので、アイスクリーム1年分は爪楊枝ひとなめを計算したというたった3個だけでした。
残念な賞品ではありましたが、ゾロリたちは落ち込みません。おれさまが欲しいものはお嫁さんとお城、車の3つに増えた、と言うゾロリ。「何でも増えると得した気になるから、ふしぎだよな」と笑うのです。またしても読み終わりは爽快な気分になります。
地獄の閻魔様が「1年前から地獄に来るはずだったゾロリがまだ生きている」、と悪魔を叱っています。本作で、ゾロリたちは冒頭から悪魔に命を狙われる羽目になるのです。悪魔がゾロリたちを地獄へ連れて行こうと、様々な手段でゾロリたちを殺そうとするのですが、悪運が強くなかなか死にません。
最後にはしびれを切らした閻魔様が登場し、好きな死に方にしてやろうと言ってきます。当然それを必死に拒むゾロリですが、寝ぼけたイシシが「巨大タコ焼きに踏みつぶされたい」と言ってしまうのです。「ズドン!」と落ちてくるタコ焼きと、ゾロリたちの予想外の死に方は可笑しくてお腹がよじれます。
地獄に連れていかれたゾロリたちですが、うまい具合に天国行きのエスカレーターに乗ることができました。ゾロリは天国のママに会えるでしょうか?
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 2002-07-01
表紙カバーの裏側、そでの部分からして愉快です。原ゆたかが「ゾロリの魅力を語っていただくため教育熱心なお母さま方に集まっていただきました」と登場します。でも、お母さんたちは「下品なマンガみたいなやつでしょ。」「読んでないけどけばけばしくていやねー。」「なーんのやくにもたちそうにないわよ。」と口々に文句を言うのです。
学校にも置かれている児童書なのに、お菓子の下品な食べ方やオナラが頻繁に出てくるし、マンガのようなイラストにギャグもてんこ盛りなのですから、まさに親からみたらその通りな感じもします。しかし、ゾロリの面白さは読んだ子どもたちにしかわかりません。ゾロリがきっかけとなって、読書の楽しみが広がっていけばいいのです。
今回のお話も笑いがたっぷり。地獄には予想どおりにたくさんの鬼がいて、亡者はそこで試練を受けるのですが、なんと亡者たちは「オニクロ」製のユニフォームを着て「正しい亡者の姿」となります。ゾロリのお話には、その時に流行った製品や言葉をもじって上手く使っている場面が多く登場する点も、子どもたちを虜にする面白さの1つです。
さて、「オニクロ」製の服に着替えるゾロリたちは、ユニフォームを後ろ前に着て天使の姿へ変身します。そしてまんまと天国へ追い出されるのです。
天国ではゾロリのママがママさんバレーで毎日を楽しんでいる様子。ゾロリは念願だったママに再会し甘えようとするのですが、目的を叶える前なのだからまだ天国に来てはいけないと叱られてしまいます。「自分の運命は自分で切り開くのだ」と、厳しく叱るゾロリママの言葉は、偉人の名言のように子どもたちの胸にも届くでしょう。
今まで他のゾロリの物語で、たびたび登場していたゾロリママの出番が多く、大好きなママと再会できたゾロリに子どもたちも嬉しくなるでしょう。そして、お母さんの誰もが思う子どもへの気持ちを、ゾロリママが代弁しているかのように思え、その気持ちが心に染みます。
この物語の最後はゾロリが生き返るために地獄へ戻り、次のお話『かいけつゾロリのじごくりょこう』へと続くのです。
前作『かいけつゾロリのてんごくとじごく』で天国のママに再会したゾロリですが、やり残したことをするためにもう一度生き返りたいと、再び地獄の閻魔様を訪ねます。閻魔様は7つの地獄をクリアできれば生き返ることができると言うのですが、二千年でただ一人「パンダてつろう」だけが生き返ったことがあるらしく……。そのパンダてつろうの顔は、現実に見かけたことがあるようなあの人!
生き返るために、ゾロリたちは3人で力とアイデアを合わせ、血の池地獄や針山地獄などの7つの地獄をクリアしていきます。閻魔様や鬼たちも騙される機転が利いた手段はとてもユニークで、「その手があったか!」と感心するほどです。
怖い地獄からゾロリはどうやって生き返るのでしょう?再びあの巨大タコ焼きも出てきます。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 2002-12-01
ゾロリとイシシ、ノシシのうち、1人でも欠けてはいけない地獄めぐり。3人は困難にも諦めず、協力し合って課題をクリアしていきます。ダジャレや愉快な方法が続いてついつい笑ってしまうのですが、3人の連携と厚い信頼は見事です。何でも前向きに考えて課題をクリアしていく頼もしいゾロリに、ますますファンが増えるでしょう。
ゾロリたちの活躍に面白くない閻魔様は、最後の「あり地獄」を「なんでもあり地獄」に変えて、生き返りを阻止します。ゾロリたちに最大のピンチが訪れますが、そこに天国のママが助けに入るのです。ゾロリが地獄へ来たことは閻魔様の間違いで、閻魔帳に書かれた名前は本当は「ソロリ」で、閻魔様が食べていたゴマせんべいのゴマがついて「ゾロリ」になったからだ、と説明しました。
生き返ることになったゾロリをママがギュッと抱きしめます。そして「夢に向かって一生懸命に生きるのよ。失敗しても構わないの。悔いのない人生を送って。」と言うのです。幸せそうなゾロリやイシシ、ノシシの顔に、読者もママに包まれているかのように温かい気持ちになるでしょう。
物語は台風の海から避難したゾロリとイシシ、ノシシが神秘の島に上陸し、恐竜家族に再会するところから始まります。恐竜ママはたまごを生んだばかりで幸せそうです。新鮮な芋やフルーツと恐竜家族の笑い声、優しい海風に吹かれて夢心地になったゾロリたち……。
ところが台風が島を直撃し、大切なたまごが荒れ狂う海に流されてしまうのです。崖から落ちてしまった恐竜パパの代わりに、ゾロリは必ずたまごを助けると恐竜ママに約束します。
ゾロリたちに訪れる大ピンチは、荒波、巨大タコ、クジラ、グラグラ揺れる吊り橋、お腹を空かせたゴリラの家族……と次々に続きます。ゾロリたちの愉快な道中はもちろん、あちこちに盛り込まれたたまごのピンチに大笑いし、たまごを守ろうとするゾロリの優しい心にジーンとくる物語です。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 2006-12-01
このお話では、恐竜のママにたまごを無事に連れて帰ると約束したゾロリたちが、その約束を守ろうといつになく真剣です。自分たちの身を犠牲にして危険な山道を下る姿にはハラハラしますが、イナバウアーの姿勢でたまごを守ったり、巨大タコの頭をクッションにしたり、大きなオナラでたまごをそっと着地させたりと、愉快な奇跡もたびたび起きて笑わされます。
最後にたまごはお腹を空かせたゴリラの母親と子どもたちに狙われます。このゴリラたちは仕事を探すために村を離れたお父さんゴリラを待つため、火山の噴火で荒れ果てた土地に住み続けている気の毒な家族でした。お腹を空かせている子どもたちに恐竜のたまごを食べさせたい母ゴリラと、たまごを待っている恐竜のママの気持ちを考え、ゾロリはどちらも喜ぶ良いアイデアをひらめかせます。
ところが、なんとたまごは割れてしまい……。「パパやママがあれほど楽しみにしていたたまごから生まれる感動の瞬間を、見せてあげられなかったかと思うと、おれさま、残念で。残念で。」というゾロリ。たまごを連れて帰るという約束を守ろうとしていただけではなく、恐竜家族の気持ちも考えていただなんて優しいですね。
この物語ではイタズラはあまり出てきませんが、ダジャレやギャグはいつものとおり満載です。何よりも、どちらの家族も幸せにした優しいゾロリの一面を見ることができます。
バイトまでして手に入れた切符で、超特急「ぴっかり号」に乗り込むゾロリとイシシ、ノシシには、何やら計画がありそうです。「あれを手に入れるためにこの列車に乗る」とはいったい……?
南国の海へ向けて走るぴっかり号の乗客は様々です。大金もちのカバリス・キルトン夫人とそのガードマンたち、ゾロリのライバルである大泥棒グラモやタイガーも乗っています。さらにはあのブルル社長とコブルまでが車内販売員に変装して乗っていたのです。
みんなが狙うものが何なのか、なかなか知ることができずにドキドキする、ゾロリにしては珍しい探偵小説のような展開がとても新鮮です。みんなの目的地「重井沢駅」に到着すると……。思いもがけないお宝がさらに大騒動を巻き起こします。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 2009-07-01
見るからに怪しい乗客たちが狙っていたもの、それはなんと、1日限定3個の駅弁でした!停車時間1分の重井沢駅で、時間と数との戦いに誰もが真剣になっていたのです。
狙いは駅弁だった、と分かったところから、いつものハチャメチャぶりへと一気に物語は変わります。重井沢駅に置いて行かれてしまったノシシを思い、後で3人で食べようと言うゾロリは手に入れたお弁当を網棚に乗せました。しかし、そのお弁当が盗まれてしまうのです!
そこからは、まるで超特急に乗っているかのようなスピード感あふれるドタバタ騒ぎの連続。お弁当泥棒を捕まえようと、特急の屋根の上を走り、電車はブレーキが効かなくなり、ヘリコプターは落ち、鉄橋は壊されてしまいます。
ついにはお弁当は海へ落ちてしまい食べることができないのですが、浜辺で夕日を見ながら3人で食べる250円の焼きそばは、世界で一番おいしいというゾロリたち。あれほどお弁当に執着していたのに、3人食事を楽しんでいる姿にほのぼのします。
ところで、お弁当を盗んだ犯人は意外な人たちです。なんと「まもるぜ!きょうりゅうのたまご」のお話に関係していて、最後まで楽しく読ませてくれるでしょう。
またもやブルル社長が登場します。夏休みに開催する「親子ショー」の目玉に、ロボット相撲を5日間テレビ中継させ、会社を有名にしようという魂胆です。きっとゾロリたちが賞品のお菓子の城を狙ってくるだろう、とブルル社長に最初から行動を読まれてしまうゾロリ、今回はうまくいくのでしょうか?
いよいよ「ブルの海」と「ゾロの山」が対決です。立派に改造されたゾロリのロボットが登場しますが、なんと初日の相撲は「紙相撲」でした。翌日は「指相撲」、ゾロリたちの作戦は失敗です。毎日違う相撲の取り組みは、さらに腕相撲、尻相撲と続きます。ブルルチームもゾロリチームも、翌日の戦いに向けて毎日ロボット力士を改良するのですが、それぞれの技の説明がなんとも愉快で、隅から隅までじっくりと読みたくなるのです。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 2012-07-12
ゾロリがブルル社長と契約した書面には、裏側に「ブルルチームが優勝した時には、ゾロリはブルル食品の宣伝部長として一生ただ働きをする」と書かれていました。これまでゾロリがブルル社長とイベントで戦うたびに、ブルル食品のお菓子の売れ行きがよくなることに気づいた社長の作戦です。
このロボット相撲で負けてしまったら、ゾロリの旅も終わり。一生ブルル社長の元で働く羽目になる不安や、イシシとノシシが心配で寂しがる様はどこへやら、「大丈夫、勝てばいいのさ」と言うゾロリは頼もしく、かっこいいのです。
最後にはゾロリ山が相手を飛ばして賞品のお城を壊してしまうのですが、それに怒ったのが観客。5日間の連続試合を楽しみにしていたのに、と観客たちに責められたゾロリとブルルは協力し「回転ケーキメカ」へ力士たちを改造します。これにはお客さんも大喜び、読者もその大きなカラー図解を隅から隅まで読める楽しさに大喜びでしょう。
またしても、ゾロリのおかげでブルル食品の売り上げは伸びたようです。ゾロリは残念ながら、お城もお嫁さんも手に入れることができませんでした。ですが、ブルルに負けていたらイシシやノシシと別れ離れになっていたから結果としては良かったと、3人は仲良く旅を続けるのです。
トレジャー・ハンターのゾロンド・ロンよりも先にお宝を手に入れようと、ゾロリとイシシ・ノシシがガパパ村にやってきます。目指すお宝の山はどこかにあるのか、道を聞きに寄った小学校で3人が見たのは、伝染病に苦しんでいる大勢の子どもたちの姿でした。
子どもたちを救う薬の原料を探すために、ゾロリと同じ山へ行こうとするウサギの先生アリウスに、ゾロリがお供をしましょう、と名乗り出ます。ゾロリの目的は、お宝を手に入れ、可愛いアリウスとゾロリ城を手に入れようというものでした……。そんな下心を知らない村の人にとって、ゾロリは英雄です。そうしてゾロリたちのお宝さがしと、子どもたちの病気を治す薬を作るための旅が始まります。
- 著者
- 原ゆたか
- 出版日
- 2010-07-09
2012年にアニメ映画化され、「かいけつゾロリ」シリーズでは初の単独上映としてヒットした同名作品の原作です。前編・後編の2冊にお話が分かれていますが、ハラハラドキドキ、あっという間に2冊を読み終えてしまうでしょう。
このお話では、トレジャー・ハンターのゾロンド・ロンが大活躍します。もしかしたらゾロンド・ロンこそ行方不明になっていたゾロリのパパなのではないか、と思わせる個所が登場し、読み手をドキドキさせてくれるのです。本当にパパかどうかは、ここではまだ秘密です。
ゾロリたちは地下の大蜘蛛に襲われたり、イシシまで病気になってしまったりと数々のピンチを迎えますが、悪運の強さで乗り切り、薬の原料を村に持ち帰ることができました。しかし、ようやく薬を作って子どもたちに飲ませると、子どもたちは顔をしかめて薬を吐き出してしまうのです。原因は「苦すぎる」ことでした。
効果はあるのに苦くて子どもたちが飲めない薬を何とかしようと、ゾロリには良いアイデアが浮かびます。ゾロリのアイデアとは……?前編はここでおしまいです。後編には、お察しのとおりあのブルル社長が登場します。苦い薬をお菓子で甘くコーティングする作戦と大団円が、物語のつづきに待っています。
「かいけつゾロリ」のお話は、楽しいイラストが漫画のように読みやすく冗談や笑いがたっぷりのストーリーだけが魅力ではありません。何事にも諦めず、アイデア満載で前向きに解決していこうとするゾロリは、実は読んでいる子どもたちに勇気を与える存在で、云わばヒーローの1人なのです。ゾロリたちにとっては残念な結果になるエンディングでも、ガッカリして落ち込むことなく明るい姿を見せてくれます。そんな「かいけつゾロリ」シリーズは、本のカバーや見返し、本体の裏表紙にまでびっしりと愉快なイラストが満載です。表紙カバーをめくって見るのを忘れないでくださいね!