『鋼の錬金術師』は少年漫画の邪道だった?登場人物から魅力をネタバレ紹介!

更新:2021.11.6

2017年12月に実写映画が公開される『鋼の錬金術師』。累計5000万部を超えたこの人気作が「邪道」から始まったものだと知っていましたか?今回は知るほどに新しい発見がある本作の魅力を登場人物から考察します!

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漫画『鋼の錬金術師』は「ジャンプの逆」から始まった?

累計5000万部を突破し、2期の地上波アニメ化、2度のアニメ映画化などを経て2017年12月には実写映画化もされる荒川弘の代表作『鋼の錬金術師』。ここまでの大ヒットでありながら作者自身は少年漫画の邪道から始まった作品だと言います。

著者
荒川 弘
出版日

少年漫画の王道「週刊少年ジャンプ」の有名な三大原則が「友情、努力、勝利」。少年たちをハラハラさせつつも、彼らが夢が持てるような作品こそが王道なのです。
 

しかし荒川弘はその三大原則と『鋼の錬金術師』を比較し、「逆」だと語ります。最初に頭に浮かんだ物語のイメージに子供が少ないことから主人公は友達が少ないだろう(笑)、ということは「友情」は無理。努力は最初から100%でスタートするので、過程がないから書けない。じゃぁいっそのこと勝利も無くしてしまおうということから物語が膨らみ始めたんだそうです。

荒川弘いわくストーリーは「ぐだぐだ」。確かに敵に勝ってスカッとするストーリーではなく、主人公や相手が逃げたり、悩んだりと分かりやすい展開はありません。

しかしだからこそ本作は大人の心にも響く大ヒットとなったのではないでしょうか。荒川弘は生死、戦争、欲望などのキーワードから「人間の罪」を描いたと語ります。9年もの連載期間中、彼女はずっと「生きるとは何か」ということを考え続けたそうです。

今回はそんな「邪道」で深い、大ヒット少年漫画の魅力、そして登場人物を考察していきます!

ちなみにこの記事は、雑誌「ユリイカ」の「2008年6月号 特集=マンガ批評の新展開」、「2010年12月号 特集=荒川弘『鋼の錬金術師』完結記念特集」のインタビューの内容も含んでいます。

書ききれなかった内容も「ユリイカ」本誌にまだまだ盛りだくさんなので、さらに「ハガレン」の世界を知りたい方はぜひそちらもご購入してみてください。

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著者
荒川 弘
出版日
2008-05-26
著者
["荒川 弘", "三宅 乱丈", "藤田 和日郎", "小泉 義之", "佐藤 亜紀"]
出版日
2010-11-27

漫画『鋼の錬金術師』考察1:バブル以降の社会の原理<等価交換>

主人公のエドワード(エド)とアルフォンス(アル)が「罪」を犯したところからすべてが始まる本作。この後も彼らは様々な相手と戦いながら、悩み、生きます。 

出典:『鋼の錬金術師』1巻

錬金術という、一見魔法のような力を使えるようになったふたりですが、実はこれには重要な「等価交換」という原則があります。無から有を生み出しているようにみえる錬金術は同じだけの質量、価値があるものとの交換をしているだけなのです。

なのでその場に何かを錬成するためには、それに見合うものが自動的に「扉の向こう側」へ「持って行かれ」ます。この法則は残酷なまでに分かりやすく、過不足がありません。

荒川弘は等価交換はバブル以降の社会の原理だと語ります。市場での価値が正しく、時には無情に評価されるようになった現代。そこに読者が容易に想像できる恐ろしさがあるのではないでしょうか。

そしてこの等価交換でアルの体を取り戻そうと、エドたちは代価にするための「賢者の石」を探す旅に出るのです。

登場人物1:むき出しで生きる主人公【エド】

登場人物1:むき出しで生きる主人公【エド】
出典:『鋼の錬金術師』1巻

母親を生き返らせたい。

そんな子供の無邪気な願いから禁忌である人体錬成をしてしまったエドとアル。「等価交換」の法則に従い、母親の代わりにアルは存在すべてを「向こう側」に持っていかれてしまいます。

しかし錬成で出来上がった母親はバケモノのような見た目で、まったく違うものでした。自分の手と足を代価にして、エドは何とかアルの魂だけを取り戻します。

父親が不在がちで、幼くして母も亡くし、五体も満足でなくなってしまったふたりは旅の途中でも様々なものを奪われていきます。その度に迷いながらもアルの体を戻すための「賢者の石を探し続けるのです。

そして最終的にエドは自分の「アイデンティティー」とも呼べるものを手放し、アルのための等価交換に挑みます。それは今まで彼の全てを支えてきたともいえるもの。目から鱗が落ちるような衝撃の結末です。


エドの魅力を紹介した<漫画『鋼の錬金術師』エドワードの魅力を徹底紹介!最終回ではどうなる?>の記事もおすすめです。あわせてご覧ください。

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漫画『鋼の錬金術師』考察2:1話から最終回まで続く、主人公たちの「罪」<生命の操作>

本作で濃厚に漂うのが「命」に関わる重い雰囲気。そもそも物語の始まりが死者を錬成する、という禁忌から始まっています。

いたずらに母を生き返らせようとした訳ではなく、子供ならではの純粋な願い、悲痛な気持ちからそれを行ったことは明白ですが、エドとアルは重い罪を背負うことになりました。

著者
荒川 弘
出版日
2002-05-22

この物語の始まりによって、ところどころにギャグが挟み込まれるので重すぎないのですが、作品全体に終始、言葉に表し難い、簡単には触れられないものを扱っている緊張感があります。

この物語の設定、テーマは荒川弘が農家の出身だったことと関係があると、彼女自身が分析しています。

荒川が実家にいた頃はクローン牛の研究が盛ん担っていた頃だそうで、彼女の地域はその最先端を行っていたところだったそう。

そもそも酪農家が「自分たちの都合で牛たちを産ませて、自分たちの都合で殺して肉にしてしまう」「生かして殺す商売」だと語る彼女。そのことから普通の人よりはクローン牛を目の前にしても生命を操作することに禁忌感はなかったと言います。

しかし、クローン牛の生後1週間前後での死亡率がなぜか高いことなどから、なにかしら自然に反しているのだろうという違和感も感じていたそうです。

荒川は「そういう技術のすごさと怖さを物語で表してみたくて、ああいう設定を思いついたのかもしれません」と振り返ります。

エドとアルが命のことを考え続けるのはふたりの生い立ちや禁忌を犯したことにもありますが、序盤でのある出会いがきっかけでもあります。それはニーナという少女とタッカーという錬金術師との出会いでした。

ちなみに「ハガレン」でも随一のトラウマエピソードとして話題にあがるこの話ですが、荒川は打ち切り覚悟で臨んだようです。それ以前にエドの足の断面に骨が見える塗り方をしたものを編集長がこのままあげるか悩んだということもあり、そのようないわゆる「えげつない」表現については完成させる前に踏みとどまっていたそう。

幸い?担当編集にも必要な話だ、という言葉をもらって今この話が私たちの目の前にあるのですが、当時の荒川本人も、編集部も英断だったのではないでしょうか。一読者としてはとても考えさせられる、意味のあるエピソードを読ませてもらったと感じます。

登場人物2:「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」【ニーナ、タッカー】

登場人物2:「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」【ニーナ、タッカー】
出典:『鋼の錬金術師』1巻

序盤に登場するニーナという少女ですが、最終回でアルは彼女についてこう言います。

「その子をずっと忘れる事ができません」(『鋼の錬金術師』1巻より引用)

彼女との出会いは5話でのことです。ふたりが出会ったのは合成獣(キメラ)の権威として有名な錬金術師・タッカー。彼はかつて人語を理解するキメラの合成に成功したものの、それ以降結果が出ず国家錬金術師としての資格がなくなりそうになっていたところでした。

タッカーはその時研究に熱心になりすぎたせいで妻に出て行かれ、今はニーナという娘とふたり暮らしだと語ります。

彼の家に勉強に来たエドとアルですが、大きな家で遊び相手もおらずに寂しそうにしているニーナを見て一緒に遊んであげます。ふたりをお兄ちゃんと呼び、愛犬のアレキサンダーとともにみんなで遊ぶ彼女は本当に楽しそうです。

しかしそんな平和な光景の影では、タッカーが資格剥奪の恐れに追い込まれていました。

そして翌日、エドとアルが家に行くとそこには何とか期限までにキメラの合成に成功したと安堵しているタッカーがいました。人間の話す言葉を真似て、確かに話ができるキメラは、ふたりを見てこう言います。

「えど わーど えどわーど
お にい ちゃ」(『鋼の錬金術師』1巻より引用)

……エドはタッカーに妻が出ていったのはいつかと聞きます。それはタッカーが初めて人語を理解するキメラの合成に成功したのと同じ2年前。そのキメラはひと言「死にたい」と言って餌を食べずに死んでいったそうです……。

「ニーナとアレキサンダーどこに行った?」と睨むエドに、タッカーはこう返します。

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」(『鋼の錬金術師』1巻より引用)

そして悪びれもせず、母親を生き返らせようと禁忌を犯したふたりと自分は何ら変わりないと言うのです。

時には神のようだ、時には悪魔のようだと表現される錬金術師ですが、エドとアルはそんな力を持っていても目の前の女の子の助け方すら分からないことに苛立ちます。それでもふたりはまた旅を続けるのです。

漫画『鋼の錬金術師』考察3:身近で、人間であらざる敵<欲望>

「ハガレン」の適役では、キリスト教の聖書などで語られる人間の「7つの大罪」を模したホムンクルスたちが現れます。それは「傲慢」、「色欲」、「強欲」、「嫉妬」、「怠惰」、「暴食」、「憤怒」。

彼らは「お父様」の感情から生み出されたホムンクルス(人造人間)たち。人間ならざるものによって生み出された「偽物の人間」ですが、彼らは人間の悪の部分を体現した存在なので私たちにとても身近です。

著者
荒川 弘
出版日
2002-09-21

荒川弘は人間は善悪はっきりと表現できるものではなく、両方が混ざり合った存在ではないかと語ります。そしてこの作品で力の使い方を間違えるとどうなるかを描くことで「人間の罪を提示したかった」そうです。

そしてホムンクルスは人間の罪を提示する存在なので、彼らと私たち人間の境目はますます曖昧になっていきます。それぞれの生き様を持つ彼らに感情移入する読者も多かったのではないでしょうか。

このホムンクルスたちに対する認識も、荒川の実家での経験がもとになっているようです。そもそも彼女はペットと家畜の差は何だろう、と考えることが多かったよう。

牛でも馬でも食用とペット用がいて、「中身は同じなのになんで?」と不思議だったと言います。

彼女が語るように、そこには本質的な差も、明確な縁引きもなく、私たちのあいまいな感覚に委ねられています。

荒川は「私はあくまでも自分がこう思っているということを出すだけで、人間の定義とかそういう線引きはみんながそれぞれ自分の経験や情報を元にすればいいと思うんです」と言います。

確かに「ハガレン」では登場人物も、設定上も、ホムンクルスと人間の明確な差は語られていません。彼らも迷い、その時々の感情に左右されて判断しているように見えることもあります。

間違った方向に進み続けるお父様、自己中心的ながらもそれぞれ芯の通った生き様を貫くホムンクルスたちには、人とは何なのか、どうあるべきなのかを考えさせられます。

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登場人物3:神になりたかったフラスコの中の小人【お父様】

登場人物3:神になりたかったフラスコの中の小人【お父様】
出典:『鋼の錬金術師』14巻

500年ほど前、奴隷でまだ名前がなかったエドの父親・ホーエンハイム。奴隷たちを使って実験していたある錬金術師はホーエンハイムの血を使って偶然に生まれたのが「フラスコの中の小人(ホムンクルス)」でした。

それは生まれながらにして全知の存在ではあったものの、フラスコの中に閉じ込められていることを不満に思っていました。そして不老不死を目論むクセルクセス国王との接触を機に肉体を得ることを画策し、ホーエンハイムを除く錬成陣の中のクセルクセス全国民の命を代価として賢者の石を生成。

さらにその半分を代価としてホーエンハイムにそっくりな「容れ物」を錬成してその中に入ります。

自由な体を手に入れた彼は「完全な存在」になることを望むようになります。そして「扉の向こう側」の情報こそが神だとしてその力を手に入れようとするのです。

そのためにそれぞれの「扉」を見て生きて帰ってきたことのある錬金術師たち5人分の「扉」を干渉・反発させることで生み出されるエネルギーによって、それらとは比べ物にならない情報量を持った「惑星の扉」を開き、その中にいる神を賢者の石の力によって自分に繋ぎとめようとします。

当初はクセルクセス国民によってつくった賢者の石の半分をホーエンハイムに渡し、「血を分けた家族」と読んでいた彼ですが、自分の感情を切り離してホムンクルスたちをつくり、お父様を呼ばれ始めた頃から変わり始めてしまいます。

神になりたいと思ったフラスコの小人はどんな最後を迎えるのでしょうか。

登場人物4:人間の業を体現する【ホムンクルス】

登場人物4:人間の業を体現する【ホムンクルス】
出典:『鋼の錬金術師』12巻

と、ここまでかなり真面目な話が続いて疲れた読者の方も多いかもしれませんが、ここからは少し休憩。人気のホムンクルスたちについての荒川の設定作りについての裏話をお話しします。

言葉を選ばずに言ってしまえば、ホムンクルスたち、彼らの設定への気持ちが軽い(笑)わざとそう語っている部分もあるのかもしれませんが、それが読んでいて面白いのです。

それぞれの「ユリイカ」紙面からうかがえる彼女は冷静で合理的な面と、大ざっぱに感覚で(経験からくる理由のあるものだと思われますが)ガガガッと進める面があります。もしかすると、ホムンクルスは彼女のラフな面でディテールがつくりこまれた人物たちなのかもしれません。

はじめから7人まとめて設定してたというホムンクルスは、固定的な設定は無かったよう。全員シルエットでわかるようにしようとしていただけで、造形は決まっておらず、途中で「別に人型じゃなくてもいいんじゃない?」と思ってセリムやブラッドレイが固まっていったそうです。

そして能力も話に即して考えていったというのだからすごい。それが成せるのは荒川がホムンクルスたちとの追いかけっこを彼女自身も楽しみながらしていたことも要因のひとつのようです。

本作では敵側にバレないようにエドたち、大佐たちが伝達や暗号でやりとりしており、それがとてもかっこいいのですが、荒川も作り手ながらハラハラしながら展開を進めていたそう。

「ホムンクルスがどこで見ているかわからないので、どうやったらバレずに伝えられるのかなと色々考えながら『バレませんように』とびくびくしながら描き進めて、あー、ホムンクルスにバレなかった、良かったみたいな」と語っています。

彼女のこの言葉だけで作品を楽しんで描いている様子が目に浮かぶようです。作者だから当然なのですが、物語を一番初めに、そして最も臨場感を持って見られるというのがうらやましく感じてしまいます。

また、それぞれのホムンクルスたちへの気持ちも読んでいて面白いもの。グラトニーについては「いちばん純粋だったかもしれないですね。食べたいという欲望だけで悪気はない」と評します。

アルたちと成り行き上共に行動することになった時は「確かに協力でもないし、仲間でもない、でも敵??みたいに二人が連れ立っているのは描いていて楽しかったですね」と語り、エドとアルの兄弟感にも繋がるドライだけど信頼や利害で繋がった強い関係が好きだということをうかがえました。

そんな風に俯瞰で見られるキャラもいれば、かなり感情的になってしまった人物もいるらしく、それがエンヴィー。

「エンヴィーは、本当はけちょんけちょんに消し炭にしてやろうかと思っていたんです。 だけど1巻から積み重ねてきたほかのキャラクターたちが止めに入って。 私としては大佐と同じように、よくも殺したな!っていう気持ちがヒューズの死からずっとあったので、23巻のあたりでは完全にマスタングにシンクロしていたんです」というほど。その言葉からは、あの時のマスタングの怒りのシーンがフラッシュバックし、どうりで彼の怒りに迫力があったはずだと納得しました。

しかし最も意外だったのがブラッドレイ。「大統領はラスボスみたいでしたね。もうこいつラスボスでもいいや、と思いながら描いてました」というノリでのラスボス決定だったようで、拍子抜けして少し笑ってしまいます。

漫画『鋼の錬金術師』考察4:欲望と欲望がぶつかりあうもの<戦争>

人間の欲望と欲望が衝突し、暴走して引き起こされる戦争。本作でも人間の命が原料である「賢者の石」を生成するために、お父様によって様々な戦争が引き起こされました。その最大のものが「イシュヴァール殲滅戦」です。

著者
荒川 弘
出版日
2003-01-22

お父様が命じて、ホムンクルスのひとりである「嫉妬」の化身であるエンヴィーが軍将校に変身してイシュヴァール人の少女を射殺したことが引き金でした。

当初は普通の内乱鎮圧と同じように対処されましたが、イシュヴァラ教の武僧の強さや秘密裏に行われていた隣国からのイシュヴァール地方への援助によって長引き、アメストリス国は錬金術師たちを投入し、鎮圧ではなく殲滅戦へと発展したのです。

荒川弘はこのイシュヴァール戦編を描くにあたって戦争体験者にインタビューをしたそう。その中で印象に残っているのが「生き死にというのは、生き残るべくしてどうこうというのではなく運です」という言葉だと言います。

人から始まったものなのに、いつしか人の手の届かないところまで暴走してしまう戦争を通し、登場人物たちも迷い、悩みます。

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登場人物5:当初は死ぬ予定だった!?【スカー】

登場人物5:当初は死ぬ予定だった!?【スカー】
出典:『鋼の錬金術師』7巻

兄や同胞を殺された恨みから錬金術師だけを狙って殺し続ける、イシュヴァール人の傷の男・通称スカー。彼は復讐を決めた時に自分の名は捨てたらしく、作品には本名は一度も出て来ません。荒川弘いわく設定として本名はあるものの秘密だそうです。

スカーは復讐をしながら新たに復讐の芽を育ててしまった人物。実は彼はエドたちの幼馴染であるウィンリィの両親を殺してしまったのです。

イシュヴァール殲滅戦の最中に現地の人たちを治療していたウィンリィの両親。しかし治療されていたスカーは自分の腕が兄の腕になっており、外の景色が惨状になっているショックから我を忘れ、アメストリス人であるウィンリィの両親に敵兵士の面影を重ねてしまうのです。

彼の腕は命を落としそうな兄が錬丹術を引き継いでほしいという思いから彼に移植したもので、ウィンリィの両親はただ治療をしていただけ。悲しい勘違いから悲劇が起こったのでした。

物語の途中でウィンリィとスカーが出会ってしまった時、そんな事情を知ってしまった彼女からスカーは銃口を向けられます。その時にかつて師匠に言われた言葉を思い出すのです。

「世の理不尽な出来事を許してはいかん
人として憤らねばならん

だが堪えねばならぬ」(『鋼の錬金術師』7巻より引用)

しかし「殺す」ということができなかったウィンリィと、彼女を止めたエドによって難を逃れます。

その後ウィンリィと再会した時、ウィンリィは負傷したスカーの手当てをします。黙々と包帯を巻く彼女を見て、スカーは「許すのか」と尋ね、こう返されるのです。

「勘違いしないで
理不尽を許してはいないのよ」(『鋼の錬金術師』18巻より引用)

その時スカーは初めて師匠が言った言葉の意味を理解します。

実は当初スカーは途中で亡くなる設定だったそうです。しかし設定的にイシュヴァール人が少なってきているので物語世界で文化や宗教が絶えてしまうことを懸念したことと、彼個人として、まだ「生きてやることがある」と思ったことから最後まで生き残ることになったのだとか。

師匠の言葉を理解して今までの自分の行動の意味が分かった彼は最後にどんな道を歩んでいくのでしょうか?

『鋼の錬金術師』を漫画原作で読もう!

著者
荒川 弘
出版日
2003-06-21


独特の雰囲気、一度背景を知ると忘れることができない登場人物と様々な魅力があり、荒川弘が「人間」と向き合った力作『鋼の錬金術師』。何度読み返してもその度に発見のある作品です。

やはりこの良さは原作でしか味わえないもの。ぜひその面白さを本編でお楽しみください!


『鋼の錬金術師』の知られざる裏話を集めた<漫画『鋼の錬金術師』の知られざる13の裏話!登場人物たちの隠れた設定も!>の記事もおすすめです。

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