常に改善や新しい取り組みを求められる現代のビジネスパーソンにとって、自分の主張を表現できるプレゼンテーションスキルは必須です。テーマや構成の決め方、資料作成のコツなど、言いたいことを確実に伝えるためのおすすめ本をご紹介します。
プレゼンテーションを広辞苑で調べると、「会議などで、計画・企画・意見などを提示・発表すること」とあります。今は大学の授業などでもパワーポイントを使ってプレゼンテーション(以下、プレゼン)することはありますし、何らかの主張を伝える際に行う発表、という認識でいいでしょう。
一般企業でプレゼンというと、多くは会議で新企画を提案するなどの場面です。企画を通すためには、聴く人の同意を得ることが求められます。そのために要点をわかりやすくまとめ、効率的に伝えることができるのが、プレゼンです。
しかし、同じ企画のプレゼンを行っても、通る人と通らない人がいます。その違いはどこから生まれるのでしょうか。プレゼンの出来を大きく左右するものはズバリ、「事前準備」です。準備がしっかりとできているかどうかで、聴く人の印象は大きく変わります。
プレゼン準備に必要なフローは、大きく分けると「テーマや構成を考える」、「資料をつくる」、「話し方を工夫する」です。では、「テーマや構成を考える」コツから順に、整理していきましょう。
プレゼンでは、「何を伝えるのか」を明確にしておく必要があります。そもそもの目的は企画を通したり意見を伝えたりすることですから、「何を伝えるのか」をきっちりと定めておかないとプレゼンをする意味がありません。
その際、「相手にどう感じてほしいのか」ということも意識しておくと、より効果的なプレゼンとなります。たとえばテーマが「新商品の提案」であれば、「○○という商品の魅力を伝える」ということだけでなく、「○○という新商品について好印象を持ち、ぜひ売ってみたいと思わせる」ことが大切です。
そして、一度のプレゼンでは、できる限り一つのテーマのみを扱うようにします。テーマがいくつもあると、伝えたいことが複雑になったり、曖昧になったりするため、なるべくシンプルにしましょう。テーマ名は「新商品のご提案」などではなく、具体的なタイトルにするのがコツです。
構成についても、複雑にならないよう「できる限りシンプルに」を心がけます。そのためには、余分なトピックは除き、聴きやすい構成を考えることです。聴きやすい構成には、PREP法など、決まった型がいくつかありますので、参考にするといいでしょう。
◎PREP法
Point(要点):私は○○という商品をご提案します。
Reason(理由):なぜなら、●●という魅力があるからです。
Example(例):たとえば、△△をする際に○○が役立つと考えられます。
Point(再び要点):だから私は○○をおすすめします。
次に「資料」についてです。資料は相手を納得させるためにとても重要なツールですが、思いがあふれるあまり、情報をたくさん詰め込んだ資料をつくってしまう人がいます。しかしそれでは、要点が伝わらないばかりか、聴き手は資料を読むだけでお腹いっぱいで、肝心の話を聞いてもらえない、ということにもなりかねません。
資料をつくるときのポイントは、聴き手の立場に立つことです。聴き手はこちらが話すことについて、どの程度の前知識があるのか、どんなものに関心があるのか、などを念頭に置き、わかりやすく見やすい資料にしましょう。「売上25%アップ」「500名中450名が高評価」など、具体的な数字を入れることも、聴き手の理解を助けます。
プレゼン資料はあくまで発表のサポートツールですから、「本当に伝えたいこと」以外は最小限の文字数に抑えます。そして必要があれば、グラフや表をいれましょう。資料にはページごとに小見出しをつけることが多くなりますが、これもテーマの時と同様、わかりやすさとインパクトを重視します。
プレゼンの資料はPCソフトを使うことが多いですよね。ここでは、資料作成のための代表的なソフトをご紹介します。
◎PowerPoint(パワーポイント)
パワーポイントは、マイクロソフト社のプレゼンテーションソフトです。バージョン1がリリースされた1987年から、世界中に広まり、スライド作成ならパワーポイントが必須と言えるほど普及しています。
パワーポイントでスライドをつくるメリットは、多くの企業や個人が利用しているためPC同士の互換性が高い、図形の種類が多い、多機能、などがあります。スライド作成の際には、基本フォーマットをベースに、さまざまな機能を使いながら安心してつくることができます。
◎Keynote(キーノート)
キーノートは、アップル社のプレゼンテーションソフトです。iPhoneなどを開発しているアップル社らしく、その特徴は「スタイリッシュさ」。「直感的」とも評されるデザインは、説明なしでも操作できるように設計されています。
Mac専用のソフトのため、すべてのPCに適するわけではありませんが、見た目のカッコよさや操作性の高さ、価格の安さなどから、利用者を増やしています。パワーポイントとの一番の違いは、アニメーションの美しさ。画像の挿入がとても簡単だったり、3Dの表現ができたりすることで、聴衆に感動を与えるようなアーティスティックなスライド作成ができます。
「言いたいこと」によって、どのプレゼンソフトが適しているかは異なります。どれが正解ということはないので、そのプレゼンの目的に合わせて、表現方法を変えていきましょう。
ここからは、プレゼンの前に読んでおきたい本をご紹介。プレゼンの各場面で必要なこと、話し方のコツなど、本番をイメージしたときに読んでおきたい5冊です。
プレゼン資料をつくる何より大切なコツは、見やすいこと、わかりやすいことです。本書はアートディレクターである著者が、デザイナーの立場から、見て楽しい、わかりやすいデザインとは何かを教えてくれる1冊となっています。
- 著者
- 筒井 美希
- 出版日
- 2015-07-31
デザインは、デザイナーだけがするものではありません。プレゼンのスライドをつくる際には、「文字の大きさ、フォント、色をどうするか」「アニメーションをどうつけると魅力的に見えるか」など、少なからずデザインを意識するでしょう。デザインはもはや、ビジネスパーソンにもなくてはならない能力なのです。
デザイナーレベルの専門的な知識は必要ありませんが、簡単な知識や工夫の仕方を学んでおくだけで、ビジネス現場で一歩先んじることができるかもしれません。
本書ではサブタイトルでもある「目で見て楽しむ」を実現するため、図を多用し、読者が感覚的に理解できるようにつくられています。文章量は多くないものの、工夫された絵や図で、抽象的な概念を“体感”できます。
アマゾンのベストセラーランキングで「プレゼンテーション」部門の1位を獲得していることが示すとおり、魅力的なプレゼンをつくる参考書として多くの人に読まれている必読書です。
ビジネスのまさに基本である「話す」「書く」「聞く」能力。プレゼンテーションは、これらの力をフル活用する機会だと言ってもいいでしょう。相手が聴きやすい「話し方」、理解しやすい「書き方」、要望を引き出す「聞き方」は、どのように身につけるものなのでしょうか。
- 著者
- 池上 彰
- 出版日
- 2007-04-19
「週刊子どもニュース」などで活躍し、難しい世界情勢なども万人にわかりやすく解説してくれることで有名なフリージャーナリスト・池上彰氏の著書です。
本の中に、「伝えるために必要なのは、まず自分がしっかり理解すること」という記述があります。自分がわからないことは人に伝えられません。プレゼンのテーマを決めるときにも、自分がよく理解しているものを選ぶべきです。また資料作成の際にも、自分のよく知っている分野の事例を加えるなどで、その場で急に質問されても対応できるようになりるでしょう。
プレゼンに苦手意識を持っている人には落語を聞いてみるのも一つの方法だとも書かれています。落語家は同じ話を何度も演じます。何度聞いても同じところで笑ってしまう、というのは、内容よりも「話し方」にコツがある証拠。その意味で落語は「話し方」の参考になること間違いなしなのです。
伝えたいことを究極的に要約していくと、「箇条書き」になります。一行で言いたいことがすべて伝われば、こんなに素晴らしいことはありませんよね。プレゼン資料にも、文章よりは箇条書きのようなシンプルさが必要です。本書はそんな「箇条書き」のスキルを磨ける内容になっています。
- 著者
- 杉野 幹人
- 出版日
- 2016-06-17
魅力的なプレゼンができる人には、「一文が短い」という特徴があります。回りくどい表現はなく、まるで箇条書きのように、端的な言葉で人を納得させていくのです。特にエグゼクティブクラスの人たちは、無駄な説明に時間を使いたくないと考えているため、箇条書きのようなシンプルで直球の表現を好みます。
本書で学べる「超・箇条書き」とは、「短く、魅力的に伝え、人を動かす箇条書き」のことです。誰にでもできそうな箇条書きという手法を突きつめ、価値のあるものにする方法が書かれています。
構造化、物語化、メッセージ化という3ステップに沿って解説されており、ひとつひとつが実践的で、ビジネス現場にすぐに応用できるものばかり。相手に行動を起こさせるためのテクニックも、箇条書きで身につけられます。
スティーブ・ジョブズは、経営者としてはもちろん、プレゼンテーションのスピーカーとしても世界最高峰のスキルを持っていました。なぜ、ジョブズのスピーチは人の心を打つのか。これまでジョブズが発してきた名文句や美しい演出などを交えながら、その魅力に迫った1冊です。
- 著者
- カーマイン・ガロ
- 出版日
- 2010-07-15
プレゼンやメディア対応、コミュニケーションスキルなどのコーチである著者も、ジョブズのスピーチを絶賛しています。なぜならジョブズは、人をひきつけるポイントをしっかり押さえているからです。たとえば、一文が短いこと、数字を使うこと、要点を3つに絞ることなどを実践していました。
そしてジョブズの大きな特徴は、最後に「もうひとつ」を発表することだと言います。講演の最終盤、聴衆がもう終わりか、と思った瞬間に「もうひとつ」を繰り出すのです。アップルのCEOに返り咲くと発表したのも、この「もうひとつ」でした。これによって、聴衆に期待を持たせ、最後まで飽きのこないスピーチがつくられていきます。
このレベルにいたるまでには相当な練習が必要ですが、超一流のスピーカーが何を意識しているか知るだけでも参考になるはずです。ちなみに、ジョブズが使っていたプレゼンソフトはもちろん「キーノート」でした。
プレゼンに必要なのは、情報を伝えることではなく、聴き手の心をつかむことだ、とよく言われます。では心をつかむためには具体的に何をすべきなのか、わからないことも多いのではないでしょうか。本書では、「目線」に焦点を当てたプレゼンの秘訣を公開しています。
- 著者
- 西脇 資哲
- 出版日
- 2015-06-19
著者の西脇氏は、大手企業から小学校まで、数々の現場で講演を成功させてきた、いわばプレゼンのプロ。企業のトップだろうと小学生だろうと、どんな相手でも言いたいことを伝えきるコツは、「目線」にあると言います。
ここで言う目線とは、自分ではなく相手の目線のことです。聴き手の目線をリードし、意のままに動かせたら、プレゼンは成功といえるでしょう。視覚からの情報は人間の脳が最優先で理解しようとします。だからこそ、プレゼンは聴かせるよりも、見させることが大切なのです。
自分が話しているときに聴き手の視線がどこにあるのか、意識的に確認している人はあまりいないかもしれません。相手をくぎ付けにするポイントを学ぶことで、成果につながるプレゼンができるはずです。相手が大人数でも1対1でも使えるテクニック、学ぶ価値ありでしょう。