爆発的人気を誇るバスケットマンのバイブル『SLAM DUNK』(スラムダンク)。連載終了から20年以上経ってもその人気は衰えず、いまもなお愛され続けている漫画です。心に残る名言の数々があり、ファンのなかにはオリジナルの続編を語る方たちもいるほど。ここでは「スラムダンク」が残した名言や作者について紹介し、物語の「続き」も考察していきます。
1990年から1996年まで「週刊少年ジャンプ」にて連載された、井上雄彦原作のスポーツ漫画『SLAM DUNK』(スラムダンク)。当時、業界ではタブー視されていたバスケットボール漫画をあえて世に送り出し、大成功を収めた作品です。
単行本は全31巻、1993年にはアニメ化もされ、バスケットマンのバイブルとして、そして子供に見せたい漫画として人々に語り継がれています。
- 著者
- 井上 雄彦
- 出版日
本作の魅力は多々ありますが、まず挙げられるのが登場人物たちでしょう。彼らは決してスーパースターやイケメンだけではありません。現実の世界で誰にでも欠点があるように、本作に登場するキャラクターにも、そういった人間味があるのです。
はじめてのことを、いきなり人並み以上にこなせる人はほとんどいません。練習を積み重ねて、それでもできなくて悩んだり、時には怒ったり苛立ったりして、少しずつ成長していきます。そんなキャラクターたちを見事に描いた「スラムダンク」を読んで、思わず共感を覚えた読者も多いのではないでしょうか。
作中で展開される大会や試合でも、簡単に勝つことはなく、苦戦して敗北したり、激闘のすえに勝利したりします。また、常識はずれのファンタジックな技などは一切登場せず、非常に現実的に進んでいくのです。
バスケットボールというスポーツが純粋に描かれています。作中に登場する名言も深く、心に染みるものとして現代でも多くの方の心に残っているのではないでしょうか。
氏名:井上雄彦(本名:成合 雄彦)
生年月日:1967年1月12日
出身地:鹿児島県
デビュー:1988年『楓パープル』(本名名義)
井上雄彦原作の漫画は「スラムダンク」以外にも多々ありますが、なかでも有名なのは『バガボンド』と『リアル』でしょう。
『バガボンド』は、吉川英治の小説『宮本武蔵』を漫画化した作品で、1998年から2017年9月現在も「週刊モーニング」にて連載中です。『リアル』も1999年から「週刊ヤングジャンプ」にて不定期連載をしています。
『バガボンド』では宮本武蔵と佐々木小次郎の物語を描いていますが、ただの剣豪物語ではなく、人生の深さを綴った作品なのです。井上雄彦の画力の高さは知られていますが、この作品でも繊細で動きのある圧巻の描写がなされています。また、歴史を描いているというより、人の強さや生死、弱さや邪念など、人生そのものともいえる大きなテーマを描いているのです。
『リアル』は、車椅子バスケを描いた作品で、1年に1巻というペースで単行本が刊行されています。タイトルとおり、その描写もリアルに描かれており、シリアスな展開もありますが実際にありうることだけに、ずしりと胸に入り込んでくるのです。
事故によって健常者からいきなり障がいを負ってしまった人物が、1度はどん底に落ちるも這いあがり、自分の進むべき道を目指していきます。その泥臭さが美しく、現実を見ながら成長していく姿に心打たれるのです。
「スラムダンク」が爆発的な人気を収めると、井上はバスケットボールへの恩返しとして「スラムダンク奨学金」を設立しました。これはプロのバスケットボール選手を目指す若者の、アメリカ留学を支援するもので、2008年から行われ2017年には第10回を迎えています。
彼は漫画を描くにあたり、現場に赴いて自分の目で見て感じたものを反映させているので、取材なども勢力的におこなっています。連載中の作品が休載する理由も、こういう事情があるからなのです。「リアル」にこだわっているからこそ、愛される作品となるのでしょうね。
井上雄彦のおすすめ作品を紹介した<井上雄彦のおすすめ漫画ランキングベスト5!「スラムダンク」は不朽の名作!>の記事もおすすめです。あわせてご覧ください。
山王戦で全力を出し切って勝利をおさめた、湘北高校バスケットボール部のメンバー。主人公の桜木花道は怪我の治療とリハビリに専念し、主将の赤木剛憲をはじめとする3年生は、引退して受験に向けて勉学に励んでいます。
部員たちは目標だった山王戦での勝利に満足しつつ、次の試合に向けて練習を重ねる……というところで本作はラストを迎えています。
トーナメントでは山王戦以降の試合もあるにも関わらず、物語では描かれていないのです。作者の井上雄彦にとってはこの山王戦が1番面白い試合であって、それより面白くない試合は描きたくないとの理由で、これが最後の試合となり連載が終了しました。
最終巻の31巻では、試合から「10日後」の物語が描かれています。また2011年には、井上雄彦が廃校の黒板を利用して「スラムダンク-あれから十日後」を描き、それは後に出版されました。
この続編では、3年生の引退により空きがでたスタメンの座を狙ってトレーニングに励む部員たちの姿や、他校の選手たちのその後など、それぞれのエピソードが少しずつ描かれています。
怪我をした桜木は、自称「リハビリ王」となって治療に励んでいました。そんなある日、海辺で晴子からの手紙を読んでいた彼の背後から看護師が話しかけ、「日本人初のNBA選手が出た」と桜木に告げます。
それに対し「次にアメリカに行くのは俺だ」と宣言した桜木に、看護師の女性はぽつりと言いました。
「ほとんどの人が 日本人にはムリって思ってたらしいわ だけど」
「ムリだっていうのは チャレンジしてない奴よね」(『スラムダンク あれから10日後-』から引用)
このような続きが描かれた「スラムダンク」ですが、その後の物語を少しだけ考察してみましょう。
黒板漫画で、晴子から桜木にあてた手紙には、「新キャプテン・宮城リョータによる練習メニューがあまりにも厳しいため、3年生の三井とはよく喧嘩をし、険悪な状態になっている」とあります。
その後の宮城は、数年間バスケを続けると思われますが、井上雄彦が以前に発表した読み切り作品『ピアス』が、宮城と彩子の物語だとすると、2人が過去に出会っていたことにお互い気づく時がきたら、彼らは結ばれるかもしれませんね。
冬の選抜でチームに残った三井は、大会を終え、念願の大学へのバスケ推薦を勝ち取っていることでしょう。類い稀なバスケのセンスを持つ彼にも、過去に1度遠ざかってしまったバスケ人生を取り戻すかのように、プロとして活躍してほしいですね。
流川は、インターハイの後に「全日本ジュニア」のメンバーに選ばれ、その後1度は諦めたアメリカ留学に向かったはずです。元々アメリカへの留学を希望していましたし、現地でも日本同様に活躍して、多くの女性ファンを獲得しているのでしょう。日本にはあまり頻繁に帰ってくるタイプには思えませんが、かつての湘北高校の仲間たちは、日本からエールを送っているはずです。
元主将の赤木は、大学卒業後もプロ入りはせず、教師となって湘北高校に戻っているのではないでしょうか。湘北は彼がバスケと出会った原点の場所です。これまで桜木の成長を間近でみていた彼は、バスケ部の顧問として新たなプレイヤーを育てる側にまわり、部員たちを優しく(?)鍛えている光景が目に浮かびます。
桜木に関しては、見違えるほど大人になっていることでしょう。怪我を克服した後もバスケに携わり続け、その傍らには晴子の姿が……。恋人というわけではありませんが、バスケを通じていい関係を保っているのかもしれません。
それぞれに目標や希望があるように、彼らは自分の進むべき道を歩んでいるに違いありません。バスケをしていても、していなくても、そこにある「仲間」という繋がりは、決してなくなることはないでしょう。
ここで、読んだら誰もが感動の涙を流すであろう、「山王戦」を振り返ってみましょう。湘北高校の目標は、日本のトップに君臨する山王工業高校との一戦でした。数々の強豪校をもろともしない山王工業は、インターハイを3連覇している絶対王者。湘北バスケ部の目標は、まさに絶対王者の山王工業に勝つことでした。
山王のメンバーには、監督から絶大な信頼を得ているキャプテンの深津一成、高校バスケ界最強センターの河田雅史、体格のいい河田美紀男、エースに君臨する沢北栄治など、ものすごい面々が揃っていて、彼らが湘北の前に立ちはだかります。
山王戦ではまず、「いつもの湘北とは違う」というところを相手に見せ付けるため、桜木と宮城が先制攻撃をあびせます。しかしさすが王者山王、湘北はすぐに同点に追いつかれてしまいました。赤木と流川は相手選手にマークされているため、三井が3連続3ポイントシュート(以下3P)を決めます。
するとすぐに河田がジャンプシュートを決めて湘北との実力の差を見せつけると、追って流川と沢北のエース同士の対決となり、流川が沢北を抜いてダンクシュートを決めました。
その後再び山王のミスをついて流川が攻めます。沢北が追いつくもののファウルとなり、交代に。
これを受けて安西先生は、同じエースの流川をベンチに戻して、その後の前半戦は互いにエース抜きで進みました。しかし後半戦では沢北に3Pを決められて逆転を許し、徐々に差を広げられ、15点差にまでなってしまいます。
その後も湘北は点を返せないまま、ついには24点もの大差に……。ここで安西先生は一旦桜木を呼び戻し、追い上げの切り札として、「オフェンスリバウンド(攻撃側が取るリバウンド)」を決めるよう指示し、再びコートに送り出します。
「ヤマオーは俺が倒す!!」(『SLAM DUNK』(スラムダンク)27巻から引用)
観客に向かってそう宣言をした桜木は、メンバーに発破をかけて追いあげ開始。ここから三井が3Pを取り、外せば桜木がオフェンスリバウンドを取り、再び三井が3Pを決めてをくり返し、なんとか10点差まで追いあげてきました。
焦った山王は桜木のオフェンスリバウンドを阻止するため、河田美紀男にマークさせ、本気モードに突入します。その後山王の攻撃により、点差は再び19点まで開いてしまいました。
すると今度は流川が追いあげて得点に繋げ、着実に点差を縮めていきます。
残り1分で5点差。宮城と流川が仕掛けて三井にパスを出し、山王の防御をかわしながらの、見事な4点プレーを決め、ついに1点差に縮まります。
残り40秒。沢北のダンクシュートを桜木が阻止し、ボールを拾って流川が仕掛けるも、河田にブロックされてしまいます。残り20秒。ルーズボール(こぼれ球)を桜木が拾い、流川にパスをして逆転に成功!
しかし、深津から沢北にパスが渡り、ジャンプシュートを決められ、ギリギリのところで再びリードを許してしまいます。
残り8秒。流川の目に「左手は添えるだけ」と、落ち着いてシュートの準備をする桜木の姿が飛び込んできました。彼の機転による速攻パス。そして桜木によるシュートが決まり、湘北は78対77で悲願の勝利を飾りました。
この瞬間、これまでいがみ合ってきた桜木と流川のハイタッチに、涙を流した読者は多いはず。何度見ても胸にじーんと染みるシーンですね。これまで桜木にだけは絶対にパスを出さなかった流川が、彼にパスを出したこと、試合終了後に真っ直ぐ流川の元に向かう桜木、そして2人が交わすハイタッチは、まさに感動ものです。
この試合は、ファンのなかでも心に残る、最高の試合だと語り継がれています。このシーンはアニメには無いので、ぜひ原作でお楽しみください。
「スラムダンク」は名言、名シーンを多数残しているので、原作を読んだことがない方でも1度は耳にしているかもしれません。忘れられない名シーンを背景に、心に残る名言をほんの一部だけご紹介します。
【三井の名言】
三井は、翔北高校バスケ部顧問の安西先生の元でバスケがしたくて入学し、バスケ部に所属しましたが、当時初心者だった赤木との練習中に膝を痛めてしまいます。入院を余儀なくされた三井でしたが、リハビリ中にも練習を重ね、膝の痛みが消えたところで試合に出場しました。
しかし、激しい動きにはついていけず、再び膝を痛めてしまいます。そして自分のいない試合で活躍する赤木の姿や、安西先生の姿に疎外感のようなものを覚え、バスケから去ってしまったのです。
過去の未練を引きずったまま道を外れ、バスケ部を崩壊させようとして事件と混乱を招いていました。その現場に現れた安西先生を見た三井は、自分の感情が抑えきれなくなり、本心を語ります。
「安西先生…!!バスケがしたいです……」(『SLAM DUNK』(スラムダンク)8巻から引用)
三井にとってはバスケも安西先生も、本当に大切な存在ということがよく分かるシーンです。ここから彼は、再び湘北バスケ部に復帰するのでした。
【安西先生の名言】
中学生3年生の時、県大会の決勝戦で、勝利が厳しい状況でもチームを盛りあげていた三井。しかし、どうしても追いつかず、彼の頭には「諦め」という言葉がよぎります。ボールを追って来賓席にぶつかった三井に、ボールを手渡したのが安西先生でした。
「最後まで…希望を捨てちゃいかん あきらめたらそこで試合終了だよ」(『SLAM DUNK』(スラムダンク)8巻から引用)
三井は「大丈夫だ」とか、「自分がいれば何とかなる」とチームを盛り立てていましたが、実際はその絶望的な状況に勝負を諦めかけていたのです。しかし、この言葉をもらって再び試合に挑み、見事優勝を果たしたのでした。最後まで決して諦めない気持ちを教えてくれる最高の名言ですね。
ちなみに安西先生は27巻の山王戦で、桜木にもこのセリフを言っています。
【ゴリ(赤木)の名言】
赤木はインターハイ出場権を巡る海南大付属との試合で、相手選手からリバウンドを取った際、着地に失敗して足を捻挫してしまいました。立つのもやっとの状況下で、「キャプテンの自分がここで抜けるわけにはいかないと」周りが止めるのも聞かず、テーピングだけ施して出場しようとします。
「骨が折れてもいい…歩けなくなってもいい…!!やっと掴んだチャンスなんだ…!!」(『SLAM DUNK』(スラムダンク)13巻から引用)
今まで手が届かなかった、インターハイ出場の切符を掴むまで目前。せっかく手に入れた最後のチャンスを逃すわけにはいかなかったのですね。バスケに対する、赤木の心情が表れたシーンです。
本作には、作者の井上雄彦が巧妙に仕込んだユーモアが隠されているのをご存知でしょうか?何気なく見過ごしてしまっている方もいると思います。ここでは、ちょっとした豆知識として、いくつか紹介していきます。
1:鎌倉高校前駅は人気スポット
元々「スラムダンク」の舞台となっているのは「湘南」ですが、江ノ電の「鎌倉高校前駅」の踏み切りが、オープニングや陵南との練習試合に向かう途中の描写などに登場しています。本作は海外からも人気の作品で、この踏み切りにも多くの観光客が足を運んでいます。
2:神奈川の県大会の対戦表にあのコンビの名前が?
8巻に書かれている、神奈川の県大会の対戦表をよくみると、「南原」という文字の下に「内村第二」「浜田中央」の下には「松元」という文字が。
どちらもお笑い芸人のコンビを連想させます。
3:「スラムダンク」と『リアル』に同じ人物?
翔陽高校のバスケ部3年生に永野満というスタメンがいるのですが、実は『リアル』にも、同じ名前の「ナガノミツル」が存在しています。髪型は少し違うものの顔や体型が似ているので、この辺りも井上の遊び心が伺えますね。
4:海南大付属高校の、牧の肌の黒さの理由
海南高校のキャプテン牧が周りの人物に比べて肌が黒いのは、サーフィンが原因のようです。原作には出ていませんでしたが、黒板漫画『スラムダンク あれから10日後-』では彼がサーフィンをしている姿が描かれています。その腕前も上級者並なので、間違いなくサーフィン焼けでしょうね。
2021年1月7日に井上雄彦が自身のTwitterで、『スラムダンク』が映画化されることを発表しました。
GIFと共に映画化を知らせるツイートをしています。
実写映画化されるのかアニメ映画なのかなどまだ詳しいことは明かされていませんので、続報が待たれます。
2019年には30周年を迎え、世界中にファンを持つ本作。すでに日本のみならず世界中のファンから映画化を喜ぶ声が届いています。
この機会に漫画を読み返してみるのはいかがでしょうか。
バスケットマンの永遠のバイブル、「スラムダンク」の魅力が伝わったでしょうか?まだまだ、伝えきれない名シーンや名言がたくさんあるので、ぜひその感動を原作で味わってみてくださいね。
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