【第8回】非モテ女はクソみたいな好意を否定できない

【第8回】非モテ女はクソみたいな好意を否定できない

更新:2017.11.1 作成:2017.11.1

男性から、何件か誘いのメッセージがくる。モテているのか都合の良い女なのかは分からないけど……私はこのメッセージを無視することが、いつもできない。他人の好意を無視できないのだ。

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アーティスト
チョーヒカル
1993年東京生まれ。ボディペイントアーティスト。体や物にリアルなペイントをする作品で注目され、日本国内だけでなく海外でも話題に。多数のメディア出演に加え、SamsungやAmnesty International、資生堂など企業とのコラボレーション、国内外での個展など多岐にわたって活動。ペイントの他にも衣服のデザイン、イラスト、立体、映像作品などの制作もおこなう。著書に『SUPER FLASH GIRLS 超閃光ガールズ』がある。
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私は、好意の芽を摘むことができない

私は、好意の芽を摘むことができない

深夜にLINEが来る。「ブーッ」とベッドごと振動するスマホを手にとって通知を見ると、あいつだ。18歳の頃付き合って、手を繋ぐ以上進展することなく別れた人。何年も経って、なぜか急に落とし前をつけようとするかのごとく連絡をしてくる。

スタンプひとつで返すと、今度は別の人からメッセージ。これはたまにいく飲み屋で仲良くなった男の人。普段は知らない人と話すことなんてしないのに、酔った勢いと、腕の筋がかっこいいという理由だけで連絡先を交換してしまい、最近よく飲みのお誘いが来る。

溜まっていく不自然に長いメッセージを見つめながら、ため息が出る。なんだかモテているようで嬉しい反面、疲れる。好意を向けられたり、人に何かを期待されているというのは、疲れるものなのだと実感しつつ、短文で返信した。私はそれらを無視することがいつもできない。

そんな話を美しい友人にしたのだが、鼻で笑われてしまった。

「自分で助長しておいて、それで困るとか言うのダサいよ? 」 「てかそれ、モテてるとでも思ってるの? ただヤれそうって思われてるだけだからね? 」 ウッ……グフッ……はい、もう、本当にすいませんでした。

いやね、ほんと、正直ちょっと自分モテちゃってるのかなとか思ってました。これがモテるってことなのかな大変だナ〜とか思ったりしました。はい。ほんと、もう土下座します。全てその通りです。いつだって好意の芽を摘むことができないんです。

そもそも生まれてこのかた、モテたことがない。中学時代をBLと演劇に捧げ、標準体重ギリギリで、お世辞にも可愛くはなかったと自負している。ある日ふと、鏡に映った自分の姿を見て「いやこれ、容姿では無理だな、何か他の部分で特出しなければ」と危機感を覚えるくらいには可愛くなかった。

高校生になってスカートを短く巻くようになってから少し色気付いたのだが、好きな人にはことごとく振られ、「平安時代だったらモテてたかもな」「お前の顔はどのパーツも特徴がない」「死んでもお前とはセックスしたくない」など、数々の至言を頂いた。

結果、見事に自尊心ぐちゃぐちゃオバケが誕生した。 そんなこともあって、昔から告白を断れた試しがない。本当に生理的に無理だ、という場合をのぞいて、殆どOKしてしまう。生理的に無理ではないだけで、1ミリも好きではない。

だけど毎回、「これを逃したら私は一生愛されないのではないか?」「私なんかが断るのはおこがましくない?」 という理由なき不安が勢いよく背中を蹴りつけてくるので、イエスを出してしまう。当然うまくいくはずもない。

数日後には、いや、早い時にはOKを出した瞬間から後悔する。 だけどもう大人だから、2週間で別れるとか恥ずかしい……と妙な見栄を出して2ヶ月頑張り、「私にはもったいない」みたいなしゃらくさい理由で別れる。そう、別れる時ですら誰にも嫌われたくないというクソっぷりなのだ。

美しい庭と、雑草だらけの庭で育った植物

LINEだって、そもそも好意をどこで見極めればいいのだろう。連絡が来るからといって気があるわけではないだろうし、ただ無視するのは失礼じゃないのか? どこからが好意で、どこからが助長なのか? 美しい人たちは、見極めが早い。

彼女たちの庭にはもう、数え切れないほどどんどん新しいラブの芽が生えてくる。良い芽を大きく育てるためには雑草を刈らなければならない。無駄に養分を奪うからだ。

 なので、彼女たちは生えた醜い芽たちをブチッ、ブチッ、と即座に引き抜いていく。そして暫くすると、庭には美しい木々だけがのびのびと育ち、甘く大きな実をつけるというわけだ。 

それに引き換え、私の庭はもう雑草だらけである。

何も生えてこないカラッカラの状態ばかり経験しているが故に、大したことのない、まだ好意ですら無いような好意を全て「でもどういう風に育つかわからないし? 」「何も生えてないよりはマシだし? 」とジャージャー水をやり、好き放題に伸びさせ、しなしなの酸っぱい実がなったあたりで「あ、やっぱりいらない…」とぶち抜くのだ。最悪である。

ここまで育てた植物はもうそれなりにしっかり根を張っているもんだから、抜くのも相当しんどい。本当にいいところがない。ルーズルーズのシチュエーションである。

とりあえず本当に好意に醜くしがみついてしまう。私も、余裕を持って良い人を待ち、その人だけに集中していい関係をつく……いや〜〜無理だよ〜〜無理だって〜〜無理〜〜だってそんないつ好かれるかわからないやんか〜〜。一個見送ってそのあと誰にも好かれなかったら〜〜!? だって若いっていう唯一の魅力も年々失っていくのに〜〜??? 何もないよりはクソでも誰かいた方が良くない?? よくない???よくないのかな!???

美しい女に愛の説教を食らった帰り道、全ての(と言っても3つくらいしかないんだけど)LINEを未読スルーしてみた。私なんかが申し訳ありません、という気持ちになりつつ、精神ストレスが大幅に軽減するのを感じる。

好かれるのは嬉しい。好かれたい。誰かに好かれることで、ほんの少し自分のことを認めてあげられるなんてこともある。でも結局好きじゃない人に好かれても仕方ないのだ。振る立場が優位というわけでもない。私を振った数々の人は、私の時間を節約してくれただけ。

なんて、そこまでは思えないのだけど。好意にしがみつき、何も断らないと、自分の価値が下がっていくような気がする。何より、大切な人が現れた時に注げる余力もなくなってしまう。正直今はまだ完全にはしっくりこないけれど、とりあえずそう自分に言い聞かせることにした。さようなら私の偽モテ期、いつか好きな人にだけモテる日が来ますように。

人生はきっとどうにかなる 前向きに生きていくための2冊

著者
ジェーン・スー
出版日
2016-04-12

誕生日に、あんたはこれを読みなさい、と知人に頂いた一冊。言いづらい、だけどみんなが確かに感じている諸問題(ブス・ババア・カワイイについてなど)を、コンプレックスにまみれながら、皮肉に、辛辣に、それでも尚、前向きに論じていく。人生はどうにかなる。笑ってうなずいて勇気をもらえる一冊。

著者
浅生 鴨
出版日
2017-09-29

自分がアンドロイドだと気付いたサラリーマン。レモンが無くなってしまった世界。27話のちょっと不可思議な短編集です。全編に猫が出てくるのですが、なんとお話にほとんど関わらない。そこがなんとも猫らしい。小さな予感や感情の芽をうまく選んでいるから、突飛なのに、いつのまにか信じてのめり込んでいってしまう一冊。