漫画『殺し屋1』のあらすじや魅力をネタバレ考察!刺激が強すぎる面白さ!

更新:2023.3.10

いじめられっ子だった泣き虫の青年が、とあるヤクザ組織を壊滅させるまでを描いた漫画『殺し屋1』。ハードなバイオレンス描写が特徴で、「読者に痛みを与える漫画」などとも呼ばれています。多大なグロテスクシーンを含みますので、観覧の際はご注意ください。この記事では作品の魅力と見どころをご紹介しております。

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漫画『殺し屋1』の魅力をネタバレ紹介!

究極のサディストと究極のマゾヒストの生きざまを、怒涛のバイオレンス描写で描いた漫画『殺し屋1』は、新宿・歌舞伎町を拠点に活動するヤクザ一家を泣き虫の青年が壊滅させていく物語です。

著者
山本 英夫
出版日
2015-02-27

2001年には『クローズZERO』や『悪の教典』などで知られる三池崇史を監督に、浅野忠信大森南朋寺島進などの豪華出演者によって映画化されました。本来映画の「R-18」という制限は性的なテーマやシーンを扱った作品に設けられるものですが、映画『殺し屋1』はバイオレンス映画として初めて年齢制限を設けられた作品です。

この記事では本作の主人公たちの魅力と作品のみどころをご紹介していきます。ネタバレやグロテスクなシーンなどの紹介を含みますので、ご注意ください。


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漫画『殺し屋1』あらすじをネタバレ紹介!

歌舞伎町のど真ん中にある「歌舞伎町サンライズマンション」。ヤクザの巣窟で別名「ヤクザマンション」とも呼ばれるそこに、裏社会のはぐれ者である4人の男たちが「掃除」のために忍びこみます。目的の部屋に来た彼らが目にしたのは「安生組」組長の惨殺死体でした。

安生殺害は「1(イチ)」と呼ばれる殺人鬼によって行われましたが、その正体は4人組のリーダーであるジジイしか知りません。「もしもお前らが裏切ったら、1がお前らを殺す手はずだ」と釘を刺され、いったいどんなバケモノなのかと想像する男たち。その正体があどけなさの残る青年だとは知る由もありませんでした。

一方組長の失踪を知った安生組は、若頭の垣原雅雄(かきはらまさお)を中心に捜索にあたります。争った形成の無い室内を見て別の組による拉致だという者や、現金を持っての逃走を疑う者がいる中、構成員の1人がベッドの下に「1」に見える血痕を見つけたのでした。


作者である山本英夫は、人の内面や本質の部分を表現することに長けています。彼の作品をまとめた以下の記事もご覧ください。

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魅力1:主人公・イチがSすぎる!

本名を城石一(しろいしはじめ)という1は、町工場で働く22歳の青年。普段は地方に住んでおり、ジジイから殺しの依頼を受けた時だけ新宿に滞在します。

気弱で内気な1は、いつも背の高い体を縮めてオドオドしており、職場でもミスや欠勤(ジジイに呼び出されているため)が多く叱られっぱなしです。彼を疎ましがる同僚からも頻繁に突っかかられますが、不自然な笑顔を向けるためますます気味悪がられます。 

出典:『殺し屋1』1巻

学生の頃から長きにわたっていじめられ、その反動で高校時代に同級生を撲殺したのが、彼にとって初めての殺人でした。その後は一時期医療少年院で生活していた経験があります。 いじめられるのが当たり前だった彼の記憶には、自分へのいじめに関するものしかなく、誰が自分に何をしたかをはっきりと覚えています。ジジイはそこに漬け込んだのです。

ジジイは暗殺のターゲットを1の記憶にあるいじめっ子と重ね合わせることで、粛清対象として1に刷り込みます。いざターゲットと対面し、目の前の相手が過去に自分をいじめた相手の面影とぴったり重なると、錯乱状態となって瞬殺してしまうのです。ちなみに、1本人は殺人をよいことだとは思っていません。

武器は空手と、長距離をロードバイクで走ることによって得た強靭な脚力と、金属製の特殊な靴です。側部のピンを抜くと踵部分から鋭利な刃が突き出します。寸分の狂いもない技で切られた相手は切られたことすら気づかず、徐々に体の切断面からズレていく様子は身震いもの。

特に真横から切り上げた敵の顔面が天井にビタッと張り付くシーンと、輪切りにされた体が床を埋めているシーンはトラウマものですので、どんなグロテスクシーンでも大丈夫だという方以外は観覧を避けてください。

そして、もう一つのインパクトとなるのが大泣きする彼の顔。

出典:『殺し屋1』1巻

人間を「いじめっ子」と「いじめられっ子」に二分している彼は、いつからか、他人がいたぶられている姿に性的興奮を覚える生粋のサディストとなっていました。暗殺の仕事を終えた後は死骸の前で自慰行為をするのが日課です。

ピンクサロンで出会った風俗嬢セーラが情夫から日常的に暴力を振るわれ、片目が開かなくなるほどの怪我を見せた時は言葉が出なくなるほど興奮し、自分がいじめてあげたいという欲望を抱きました。

また、学生時代の稚拙な精神のまま大人になってしまった彼は、暗殺の際「やっつけてやる!」や「ボクが殺してあげたよ!」といった幼い言葉を使います。そんな稚拙な言動と返り血で真っ赤になった姿は実にアンバランスで、より不気味さを際立たせます。

しかし、ちぐはぐな1も物語を追うごとに成長していきます。いじめを過去のものだと認識し、ジジイによる刷り込みも効かなくなってしまった彼は、ついに人殺しなんかしたくないと言い出してしまうのです。

スランプに陥ってしまった1は、残されている大きな任務「垣原暗殺」にどう対処するのでしょうか?2人といない変態的なインパクトを持つ主人公に注目です。

 

魅力2:もうひとりの主人公・垣原がMすぎる!

顔面の傷跡と大量のピアス、左右頬まで大きく裂けた口が特徴の安生組の垣原雅雄は、通称「ピアスのマー坊」と恐れられる若頭です。飄々としていて掴み所のない彼は、所属している「三光連合」のヤクザたちからも恐れられています。

銃やドス(短刀)の他に細長い針のようなものを常に所持しており、戦闘、拷問、ケジメの際にも使用します。組員の中で最も組長を慕っており、失踪の際には「新宿中何人殺してでも必ず見つけ出す」との決意を露わにしました。

ただ、彼の忠誠心は厳密に言えば組長の安生に向けられているものではなかったのです。 

出典:『殺し屋1』1巻

垣原が愛していたのは、安生が自身に与える「痛みと暴力」でした。彼は正真正銘のマゾヒストだったのです。裏社会でのし上がって来れた理由の一つもこの性癖。今までに受けて来た拷問を物ともせず、痛みの全てを快感に変えて自身の欲求を満たすことで乗り越えてきたのです。

また、垣原は作中で「希望を持たない男」だと言われています。人間は大切なものや希望を守ろうとする時に弱さをさらすことがあります。しかし、彼は一切の希望を持ち合わせていないために無敵の男といえるのです。

「痛みは感じるものじゃなく、考えるもの」「美しさあってこその暴力」など、信念を宿した多くの名台詞を残し、1の存在を知った時も「素晴らしい‼」といたく感動しました。1が自分を殺しにくる瞬間を今か今かと待ち望む彼はまるで恋する乙女のよう……。

首から上だけでなく身体中にピアス穴を開け、スーツの下では亀甲縛りを欠かさない垣原。要所要所に見える彼の変態性は非常に印象的です。

出典:『殺し屋1』1巻

痛みと暴力が大好物の垣原にとって、拷問は趣味のようなもの。そのため、作中のトラウマシーンのほとんどは彼が生んでいるといっても過言ではありません。

自身がマゾヒストであるだけに、人間がどれだけの痛みに耐えられ、どこまでやったら死ぬかを把握しているのです。拷問によって死の一歩手前まで追い詰められた相手の激痛に歪んだ表情からは、思わず目を背けたくなります。

ジジイの策略によって安生殺害の濡れ衣を着せられた、船鬼一家の幹部・鈴木を拉致した際には、煮えた油を全身に浴びせかけるという鬼の所業を見せました。結局ジジイの嘘に踊らされただけで、鈴木は無実だったと判明しても「俺の趣味に付き合ってくれてありがとう」という旨の言葉をかける始末です。

これらの行動も一因となり、垣原は連合を追われます。安生組から垣原組に改め新しく事務所を開きましたが、三光連合という後ろ盾を失ってしまっては四面楚歌です。さっそくよその組の構成員が彼に喧嘩を吹っかけにきましたが、垣原はその喧嘩でとんでもないことをしでかすのです。

まず相手の足を銃で撃ち、動けなくなったところを手すりまで担ぎ上げます。これ以上身を乗り出したらはるか下にある中庭に落下するという状況でズボンを脱がすと、肛門に銃口をねじ込みます。そしてマンション中に響き渡る大声で宣戦布告をすると、構成員の体内に向かって何発も銃を打ち込み、中庭に蹴り落としたのでした。

現場は騒然。野次馬たちは笑う垣原を見て、彼がイカれていることを再確認します。その後残った組員たちをどんどん他所の組みに奪われ、片手で数えられる程度の人数になってしまった垣原組。無敵の男は、いったいどんな結末を迎えるのでしょうか。

魅力3:加速する物語が最終回で頂点に達する!

物語は後半に差し掛かるに連れ、転がるように加速していきます。

ジジイに呼び出された1は再び新宿を訪れ、垣原組の人間を殺害。彼が去った後、死体を見た垣原組の構成員たちは震え上がりますが、垣原だけは「1がだんだん自分に近づいてきている」という事実にどうしようもなく興奮するのでした。

しかし、垣原もただ黙って殺されるのを待っているわけではありません。1を殺すため、自分たちを陥れた黒幕であるジジイを血眼で探します。新宿一の情報通である高級キャバ嬢の協力を得てジジイの仲間を捉えると、お得意の拷問で居場所を吐かせました。

着実にジジイへと近づいていく垣原は、彼の最後の仲間を拷問にかけ、居場所を吐かせようとしましたが、そこへ予想だにしない人物が訪れます。

1が来たのです。

著者
山本 英夫
出版日
2015-06-30

ついに本作の主人公、1と垣原が対面します。作品のテーマを背負っているこの2人の出会いこそ、クライマックスであり物語のピークといえるでしょう。 

垣原は、ドアを切り裂いて出て来た1が泣きじゃくっているのを見て驚愕しました。さらには、「ひどいよ滝原くん」と涙に濡れた目で自分を見つめる1に困惑します。ジジイは、過去に1をいじめたグループの親玉だともいえる少年・滝原の記憶と垣原が重なるように1を洗脳していたのでした。

自分が求めていたのはこんな情けない男ではない。こんな泣き虫が自分の求める暴力をふるえるわけがない。そう思って垣原は絶望します。

しかし、「絶対にお前をやっつける」という意思のみなぎった1の目を見て、垣原は1という殺し屋の性質に気付くのでした。 

「待っていた…… オマエみたいな変態を……」(『殺し屋1』5巻から引用) 

これまでは腹の底の見えないミステリアスなキャラクターでもあった垣原が、泣きわめく1を前に腰を抜かし、驚きに満ちた表情で固まる様子はとても新鮮です。そこで彼が語るのは、「暴力が持つ愛と美しさ」に関する持論です。これは不思議な説得力を持つ名言となっていますので、ぜひ本編を読んで確認してみてください。

また、忘れないでいただきたいのがジジイの存在です。安生を暗殺した時からすべての人間を手のひらで転がし、自分の思い通りの展開へと導いてきた彼はいったい何者で、何のためにこんな大騒動を起こしたのか。どんな残酷なシーンよりもゾッとさせてくれるのは、ジジイの正体かもしれません。

そして、その後に来るまさかの展開を予想できる人はきっといないでしょう。1と垣原の魅力を爆発させたラストまでのやり取りは必見です。グロくて怖い、けど読み進めてしまう。そんな漫画作品『殺し屋1』を最後まで楽しんでください。  

混沌を極めた裏社会が舞台であり、バイオレンス展開も盛りだくさんと読む人を選びそうな本作。しかし、合間合間に挟まれるギャグやキャラクターたちの人間味がコメディ感を与え、『殺し屋1』にしかない世界観と魅力を生んでいます。機会があったらぜひ読んでみてください。

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