長野で農家の嫁をやりつつ、息子を育てつつ、俳優をしている山本裕子(やまゆう)のなまぬるい子育て連載第2回。毎週水曜更新です。第1回で子育てに関するお悩み・ご相談・愚痴などを募集したところ……。
子育て中の皆様ならびにそうでない皆様、アンドおとっつあんおっかさん、おつかれさまです、やまゆうです。
さて、このコーナーでは子育てに関するお悩み、ご相談などを募集しておりますが、さっそくメールがきましたよ。
ええ~~募集したばっかで、そんなすぐ相談が来るか~~?とな。
来たともさ。
うちの母・ますみ(67)から。
___________
セイ(仮名)がギャングになっています。どうしたら
___________
意味わからんでしょ。まずざっと、状況説明を。
わたし、長野のトマト農家で3才男子をなまぬるい感じで育てる傍ら、俳優をしてるのですが、舞台でこの11月に東京、12月に地方3都市6か所のツアーに出かけててですね、その約2か月、三重にあるわたしの実家にお子を放り投げて預かってもらっているのです。
夫、秋のトマト最盛期で、とてもじゃないがひとりでお子の面倒見れないのでね。
それにしても、ギャングて。日常生活でなかなか出ない単語。穏やかじゃないね。実家にはこれまでもちょくちょく預かってもらってはいるものの、さすがに今回は長丁場、両親と離れたことによるストレスか?
滅多に送ってこない母からのメール、しかも文の途中で送信しているじゃないか!
もしもーし!どないしたー!!
完全な余談ですけど、母のスマホにLINEかけても、たいていマナーモードなってたりカバンの底にしまってたりで、絶対に!出ないので、結局いつも
「LINEに出てよ」
と、家の固定電話に電話します。どやさ。
ともかく電話。そしたら
『ジジババの言うことを全然聞かない』
『なんでも自分の思うがまま、やりたい放題だ』
その様がまるでギャングのようだと。なるほどね。
具体的には、
などなど。
「ほんとに最近毎日ギャングなんやに~」
おうよ、その言葉のチョイスわたしは嫌いじゃないが、意味とり辛えな。
ていうか、なんやいな~~いたって通常営業やんか~~。そのひと今、絶賛イヤイヤ期ですもん~~。まさにイヤイヤ期の典型的行動パターンすわ。
ただね、これ、いま話聞いてるだけだから、あはは~また全裸かい~つって笑ってられますけどね、自分が自宅で見てるとほんと、いろいろムリっすよ。
なにひとつ、予定が進まないんだもの。
お子の相手と最低限の家事だけで、他は全くなんにも!できないんだもの。
ああ、スーパー行ってたかだかおかず1個買うのに、どれだけの手間がかかるやら。
「じぶんでカゴもつゥ!」
「あーあんぱんまんのジュースかうのォ!」
「ころっけじぶんでとりたいィィ!」
しかもさ、またよく目につくところに、うまいことガチャガチャ置いてやがんだ。お子、ガチャガチャ前から動きゃしねえよ。
「これはね、お店のかざりなんだよ」
「お金いれると、あの丸いやつが爆発しちゃうんだよ」
「あぶないねえ!爆発したら痛いねえ~いやだねえ~」
「よし!いまのうちだ、逃げろ~~~!」
と勢いだけで煙に巻き、お子をかかえて撤収。
「お、おう・・・」
つって運ばれるときもあれば、
「まだ!まだ見てるの!いやいやいや~見ーるーのーォォ!」
と大暴れ、びちびち新鮮なお魚状態のお子を横抱きに『イトーにゆくならハトヤ』で退場も多数。
このね、イヤイヤへの有効策として、
などがあるのですけど、それに関してわたし、常々思ってることがあります。それは。
すべての母は、女優である。
1.気を逸らせる
「わわッ!なんだあれ、見て見て!あれって・・・もしかして~ェ!(とくに何もないんだけど無理矢理)」
2.持ちあげる
「ええッ、自分でパンツはけたのォ?!うわあ、すーごーいーじゃ~~ん!!じゃあ次はズボンだ!赤いクルマがついててかぁっこいい~~!いいなあ~母ちゃんもはきたいなあ~~!」
3.いったん放置
「じゃあ、いいよ、かあちゃん先帰るね~~ばいば~~い、おうちでアンパンマンのおいしいジュース飲ォーもうっと!!(すばやく近くの低木に隠れて子を観察)」
こんなおっきいおっきい芝居、いまどき舞台でもやらねえわ。でも母たちは、ただひとりの観客をノせるために、日夜演じ続けるのであった。そう、あたしはマヤ・・・!
もちろん、ひとさまに見られたら恥ずかしいのよ?演技って、そもそも恥ずかしいものじゃない?でも、やるのよ。やらなきゃパンツはいてくんないんだもの。
そしてその観客はいつもノってくれるとは限らない。全然見てなかったりするし。すぐ飽きやがるし。もう次のネタさがせってか。
世の女優たちよ、ほんとにおつかれさまです。せめてお子の見てない舞台裏で甘いものでも食べて、関係者(夫とか)に愚痴のひとつも聞いてもらおうぜ。おい、やってらんねーってんだまったく。
_____________
さて、うちの母ますみには、巷で言われているこの言葉を教えてあげました。
『魔の2才・悪魔の3才・天使の4才』
自我が芽生えてきて、とにかく言われたことに何でもイヤイヤ言う、2才。
知識や思考力がアップし、達者に生意気なことを言ってきやがる、3才。
これまでできなかった思考回路を手に入れ、意思疎通がぐっと楽になる、4才。
だから、4才まで、とりあえず 生 温 く 様 子 見 の方向で。
「そうなんや、3才は悪魔なんや。なるほどな~。それやったら、しゃあないわな」
ますみ、なんか納得した模様。あともう数週間、すいませんががんばってください。後ほどカニ送ります。
_____________
はい今回は、お子のイヤイヤ期に直面している世の母ちゃんたちを、ただただ讃えて終了。第一次反抗期、解決策なんてあるもんかい。ちっちゃくてかわいいことだけが、せめてもの癒やしですよ。
あ、でも、動画撮っておくことだけは、ぜひ。
先日、お子のイヤイヤをあしらいながら、わたしが能面で静かにブチ切れつつごはん作ってるところを夫がスマホで撮っていて、当然わたしはそれにもマジ切れしてましたが、お子と離れてる今それ観ると、お子のイヤイヤがね、ものっすごい、かわいい。浅いんだもの。本能だけでイヤイヤ言ってんだもの。10年後とか20年後とかに観たら、きっと、泣くぐらいかわいいだろう。
まあ、とはいえ当分は、いまそこにあるイヤイヤに本気でブチ切れるのですけども。
ではまた次回。
ご相談お待ちしております(まずもって解決はできませんが)。
______________
編集部から、おたより募集!
お悩み、ご相談、愚痴などの送り先はこちらまで。解決はできないかもしれませんが、心は軽くなるかもしれません。
次回:12月20日水曜更新予定
やまゆうのなまぬる子育て
劇団・青年団所属の俳優山本裕子さんがお気に入りの本をご紹介。