畜産大学を中心に、牛や豚など動物の「繁殖」を扱った『酪農みるく』。繁殖に異常な興味を持つ主人公の女の子みるくと、酪農家の娘さくらのデコボココンビが恋人として成長していく姿が見どころです。
小さなころから牛の繁殖に興味があり「精子」や「交尾」のような単語ばかりを発する主人公のみるくと、彼女に出会ってから数日でプロポーズをされた酪農家の娘さくら。
彼女たちが通う畜産大学を舞台に、物語が展開されていきます。
動物の「繁殖」が物語の軸となっているため、牛や豚などが可愛らしく描かれているのも魅力的なのですが、やはり気になるのは惜しげもなく発せられる下的なワード。
この記事では、百合×繁殖という珍しいテーマの本作の魅力を紹介していきます。
- 著者
- さんり ようこ
- 出版日
- 2015-02-09
幼いころ、テレビで牛の出産の様子を見てから、「牛」と「繁殖」に興味があるみるく。念願だった畜産大に入学しました。
入学式で酪農家の娘のさくらに出会い、稼業の手伝いで鍛えられた彼女の力強さに惹かれ、なんと結婚を申し込みます。
はれて畜産科公認の百合カップルとなった2人ですが、みるくの興味は繁殖のことばかりです。
小学生に間違われるほど身長の低いみるくは、その人懐っこさゆえに多くの人と交流を深めていきます。その姿にさくらは嫉妬心を募らせるのですが、そんなさくらに想いを寄せる男性が現れることで、2人の関係にヒビが入りはじめるのです。
みるくはさくらの実家の農作業を手伝うことで将来への気持ちを確かなものにし、さくらはみるくと男性との間で揺れながら、自らの想いを確認していきます。
- 著者
- さんり ようこ
- 出版日
- 2015-02-09
念願だった畜産大学に入学したみるく。 酪農家の娘であるさくらと親しくなりました。その他にも個性的な同級生に囲まれながら、動物や繁殖への知識を深めていきます。
ミニブタをペットとして飼いたいから、という理由で同居をはじめる思い切った行動もとりました。
本作のテーマは「繁殖」。動物たちだけではなく、登場するキャラクター同士の恋愛模様にも注目したいところです。
さくらとみるくの2人だけでなく、彼女たちへ想いを寄せる男子生徒の存在が気になります。
- 著者
- さんり ようこ
- 出版日
- 2015-10-09
ペットのミニブタ・トンの繁殖相手を探すことにした、みるくとさくら。いい相手が見つかり一件落着に思えましたが、2人の間には波乱が生じます。
トンの繁殖相手である小次郎を飼育している研究室の先輩・猿山が、さくらにアタックを始めるのです。
一般的に見れば、彼女は背も高く、胸も大きくて美人。高いテンションで詰め寄られたさくらも、しだいに猿山を意識するようになりました。
それを知った同級生の鷹巣は、自分もみるくとの仲を深めようと考えます。しかし彼女のさくらへの想いを知り、2人を応援することに決めました。
その後2年生に進級したみるくたちは、より繁殖への知識を深めていきます。
これまではさくらからみるくへの想いばかりが取り上げられていましたが、みるくのさくらに対する想いもはっきりと分かりました。小学生のような見た目をしていますが、ただの思い付きではなく、しっかりと将来のことまえ考えていた彼女の姿に、ある種の感動すら覚えます。
子どもの頃から身長が伸びず、まるで小学生のような見た目のまま18歳となったみるく。自分よりはるかに背が高く力も強い酪農家のさくらを尊敬し、出会って数日で結婚を申し込みます。
動物の繁殖に興味があるならば、同様に人間の繁殖にも興味がありそうなのですが、みるくは母親から性教育をストップされていたため、人間は繁殖行為をせず、子どもはコウノトリが連れてくると信じていました……。
そんな彼女からすれば、同性のさくらに告白することも、自然なことだったのかもしれません。
一方のさくらは、出会ってすぐ、しかも同級生の目の前で堂々とプロポーズをしてきたみるくに対し、勢いで「はい」と返事をしてしまいますが、満更でもない様子。むしろどんどんみるくを好きになっていくのです。
みるくは、友だちとしてもさくらのことが好きですが、何かあったときに自分の好きな「牛」に対抗できるパワーがあるところに惹かれたようで、どうやらプロポーズ自体に深い意味はないみたい。単純に「この先ずっと一緒に好きなことをやれる人」として告白をしたのではないでしょうか。
性に関する知識がないため、交際をしたとしても性行為をすることの想像自体できないのです。
しかしさくらは違います。牛の繁殖については詳しくないものの、一般的な性教育は受けてきました。そのため日を追うごとに、みるくへの性的な想像が大きく膨らんでしまいます。
一緒にペットを飼うために同居をはじめることも、さくらにとっては一大事。たびたび鼻血を噴出し、みるくが自宅に友人を誘うたびに嫉妬心を募らせ、どんどんこじらせていくのです。
無邪気・無自覚にさくらを誘うみるくと、そのひとつひとつに興奮が止まらないさくらのギャップが見どころのひとつになっています。
「繁殖」にだけ異様に興味を示すみるく。畜産大だけあって動物も多く、話題にも事欠きません。
そのため彼女の周りで飛び交うセリフは、なかなかエロティックなものばかり。もちろん、動物の繁殖について必要な知識なので学術的な意味ではありますが、子どもような見た目のみるくが「射精」や「精子」と大声で話したり、女性が「陰茎」について語ったりするなど、読んでいるこちらが思わず照れてしまうような場面も多くあります。
畜産大という特殊な環境だからか、みるくという存在がいるからかわかりませんが、男女関係なく放送禁止用語が頻繁にくり広げられているのは、ある意味壮観。たださくらは一般的な恥じらいを持っていて、みるくをはじめ同級生のオープンな発言に、赤面してしまうのです。
「たぶん来年の春生まれるよ 生殖器から」(『酪農みるく』2巻より引用)
学祭で、近所の幼稚園から遊びに来ていた園児たちに、羊の赤ちゃんが生まれる場所を具体的に教える場面です。
みるく自身が幼い頃に見た牛の出産に影響を受けているので、それを園児たちにわかってもらおうとしたのかもしれませんが、やはり一瞬ドキッとしてしまいますよね。
あいまには学術的な意味ではなく、単純に下ネタの発言も多数挟まれていて、対象物が変わるだけで受け取り方がこうも違うのかという面白さも感じられるでしょう。テンポよく交わされる下発言に、どんどんページをめくってしまいますよ。
同級生の鷹巣や猿山など、みるくやさくらに好意を抱く男性が現れるので、もしかして2人は男性と結ばれるのかと思われましたが、最終的には元の鞘に収まることとなりました。
みるくは一時期、さくらと猿山が2人でいるところを見て、彼女の気持ちは猿山に向いているのではないかと悩みます。それでも自分はさくらのことが好きだという気持ちを再確認して、彼女が自分のそばにいる限りは向き合い続けることを決めるのです。
そんなみるくの真っすぐな想いを知ったさくらは、もう迷わないことを心に決め、家族にみるくとの関係を打ち明けることにしました。
お互いの想いを確かめ合った2人は、今までどおり学校の近くで一緒に暮らします。
2年生になり実習も増えたみるくは、研究に取り組む大切さを知ります。そして、将来さくらの実家を手伝うためにいま学ぶことが、自分の願いを叶えることだと気づくのです。
「! それが「繁殖を極める」ってことかも!」(『酪農みるく』2巻より引用)
彼女の意思は、入学したころから何ひとつ変わっていません。繁殖について知り、繁殖を極めることだけに集中していたのです。そこで偶然的にも知り合ったさくらは、みるくにとっては運命といえるのかも知れませんね。
さくらの家族へカミングアウトを済ませた2人は、このまま真っすぐ自分たちの信じる道を突き進むのだろうと思わせる、前向きな最終回になっています。
少し大人になったみるくを応援したくなること間違いなしですね。
- 著者
- さんり ようこ
- 出版日
- 2015-10-09
失恋した鷹巣や猿山の今後の幸せも願わずにはいられません。さくらの精神的な成長も見どころですよ。
本作の作者・さんりようこの『B型H系』について紹介した<『B型H系』が面白い!セフレ100人を目指す美少女?結末までネタバレ紹介>もおすすめです。