こんにちは、松原汐織です。 正月太りって気の弛みから来ると思います(自分への戒めも込めて)。 気を引き締めてダラダラしないようにするには来年の目標を決めてしまえばよいのではなかろうかと。 読むと2018年の目標が見つかる3冊を紹介します。
- 著者
- 宮本 輝
- 出版日
好きなタイプの話になり、「字が美しい人」と言った男性がいた。同性でも字が美しい人に出会うと惚れ惚れする。
ボールペンなら未だしも筆ペンではまったくうまく書けない私は字に対してコンプレックスがある。受付で名前を記帳するのが毎回とても恥ずかしい。美しい字で手紙が書けたらどんなに素敵だろうと何度思ったことか。筆まめな人に心底憧れてしまう。
手紙と言うと思い出す小説がある。往復書簡でのみ構成されている、宮本輝著『錦繍』。
夫が起こした事件のせいで愛し合っていたのに離婚した2人が、偶然にも10年ぶりに蔵王のゴンドラで再会。再会に驚きながらも、変わり果てた姿や事件の真相を知りたいと思った元妻が手紙を元夫に宛てて書いたところから話は始まる。別れの原因を作った人間も別れを受け入れざるを得なかった人間もともに孤独を生きてきた10年もの歳月。空白の年月を埋めるように2人は手紙を送り合う。現在のお互いの相手や子供、親などの第三者も影響し、だんだんとお互いが前を向いて生きていく。
「よりを戻したい」という話は一切出てこない。ただ、一度愛し合ったもの同士のお互いを想う気持ち。好きだとか惚れたとかそういうのではない、人間の性(さが)と業とが描かれた大人のラブストーリー。何度読んでも同じ所で泣いてしまう大好きな一冊。
あ、でも男性陣に一つ質問なのですが、愛しているなら何で浮気するんですか? ここだけがこの作品の中で唯一解せない点なので教えていただきたい!(笑)
- 著者
- 高橋 こうじ
- 出版日
- 2014-11-20
美しい言葉に触れると、優しい気持ちになる。
心温まるハートフルストーリーを読んだ訳ではないのに、心の中がジーンと温まり自然と微笑みを浮かべてしまう本に出会った。高橋こうじ著『日本の大和言葉を美しく話す―こころが通じる和の表現―』。
以前にも『日本の七十二候を楽しむ』や『日本の言葉の由来を愛おしむ』と二度取り上げた「日本の〜」シリーズ。今回のテーマは大和言葉。
むかーしむかし国語の授業で出てきたような気がするが、大和言葉とは古くからある日本固有の言葉である。
日本語の単語は大和言葉の他にも、中国語から取り入れた漢語や中国以外から来た外来語の3種類に別れる。その違いは「はじめに」だと、大和言葉は「はじめる」。漢語は「開始」。外来語は「スタート」となるそう。
「これから開始します」や「これからスタート」よりも「これからはじめます」が柔らかく聞こえる。本文中にはたくさんの大和言葉が紹介してあり、サブタイトルにもあるように心が通じやすくなるような言葉が連なっている。
たとえば、「絶対無理」ではなく、「荷が勝つ」。「妥協する」ではなく、「折り合う」。言い方一つで聞こえ方は全然違う。ついついハッキリと物を言いがちなので、来年こそは物腰柔らかに生きたい。
- 著者
- 阿川 佐和子
- 出版日
「あー喋りすぎた」と友人と会った帰り道、度々反省する。盛り上げなきゃと要らぬサービス精神が沸いてくるとついつい喋りすぎてしまう。「聞き上手になりたい」という願いは生まれてこの方ずっと抱いているのに、一向に改善されず。来年こそは!という願いを込めて、一冊の本を手に取った。
阿川佐和子著『聞く力』。長年のインタビュアーとしての経験を通して著者が培った心をひらく35のヒントが書いてある。作家の遠藤周作さんや城山三郎さん。スポーツ界からは貴乃花関や松井秀喜選手(お二方共現役時に対談)。はたまた、臨床心理学者の河合隼雄さんなど錚々たる顔ぶれの方々とのエピソードが紹介されていて興味深い。
ふむふむと頷きなからページを捲っていたら、耳が痛い箇所に出会った。
自分の意見を伝えようとか、自分がどうにかしてあげようとか、そういう欲を捨てて、ただひたすら「聞く」ことなのです。
あーそういう欲の塊だ、私は。ついつい口を挟んでしまう。
ただ聞くこと。それが相手の心を開く鍵なのです。
わかっちゃいるけど、難しい。でも、側に居てほしい人というのはそういう人の様な気がする。阿川さんが目指しているような“名相づち打ち”に私もなりたい。
一朝一夕では出来ない、出来っこない。しかし、心の中に置いておけばいつしか出来るようになるはずだ。私の周りの聞き上手な友人達、私の成長をお楽しみに!(笑)
筆まめ、美しい言葉遣い、聞き上手。この3つが出来るようになれば、どれだけ人として魅力が増すのだろうか。正月太りなんてしている場合じゃない!
2018年、なりたい自分になるために。意識して少しずつ努力しようと思います。
Photographer : Keiichi Kitayama