入社したときはやる気にあふれていたのに、最近、仕事に行きたくない……。他のことへのやる気は出るのに、仕事への気持ちだけが入らない状態を「無気力症候群(アパシーシンドローム)」といいます。この記事では克服するための6つの方法と、3冊の本をご紹介します。
まず一つ目は、休養することです。無気力症候群に陥りやすいのは、普段から周りの期待応えようと頑張る真面目な人や、小さいことまで気にしてしまう完璧主義の人です。こういう人は、知らず知らずのうちに神経をとがらせ、体に負担をかけてしまっているかもしれません。
頑張るのはいいのですが、自分の限界を考えずに突っ走ってしまえば、いつかエネルギー切れを起こして「燃え尽き症候群(バーンアウト)」にもなりかねません。無気力になるのは、あなたの体がSOSを出している証拠なのです。
そんなときは、しっかりと体を休めて、体力を回復させましょう。深夜残業続きの体では、肉体的にも精神的にも限界を超えるのは無理もありません。「周りの人は大丈夫そうなのに」と考えることではないのです。大切なのは、自分の体のシグナルを自分でしっかりと感じることです。
有給休暇が取れる人なら、数日連続で取得することをおすすめします。取れない人でも、土日は休日出勤をしないと決めたり、定時で帰る日を決めたりして、休養できる時間を確保しましょう。また、次の項でも説明しますが、「休む=寝る」ではありません。寝て過ごしてしまうと、逆効果になり、うつ病につながる可能性があるので注意です。
2つ目は生活リズムを見直すこと。休養と並ぶ大事な要素でもあります。休養するときには「休む=寝る」にならないように気をつけなければなりません。それは、人間の精神は、生活リズムを整えることで落ち着きを取り戻していくからです。
「生活リズムの不規則」と「精神の不安定」はかかわりあっているケースが多いのです。逆に言えば、「規則的な生活」と「安定した精神状態」も相関しているので、どちらかを改善すればもう一方も改善に向かうでしょう。あなたは今、生活リズムが乱れていませんか?この機会に見直してみてください。
生活リズムと精神状態であれば、多くの場合、圧倒的に手が付けやすいのは生活リズムの改善です。慢性的な寝不足、不規則でバランスの取れていない食事、お酒の飲みすぎなど、自分の行動を振り返って、改善できるところからしていきましょう。散歩などの適度な運動も効果的です。
生活リズムの改善は、1日や2日でできるものではありません。すぐに無気力を解消したい人にとっては難しいものかもしれませんが、もっとも効果が出るのも事実です。続けていくためには、まずは3日、1週間という短い期間で意識してみてもいいかもしれません。
休養期間と合わせて、思い切って生活リズムを改善していくのも良いでしょう。寝て過ごすのではなく、ゆっくりと読書をしたり、運動をしたり、ボーっとしたりしながら、規則正しいリズムを体に覚えさせるのです。
3つ目は、感情を刺激するものに触れることです。無気力は、気力が失われた状態なので、「うれしい」「たのしい」「悲しい」といった感情も起こりにくくなっています。また、無気力症候群(アパシーシンドローム)の場合、本業だけに関心や意欲がなくなり、趣味などにはいつも通りの関心を示す傾向があります。
そこで、映画を見たり友人と遊びに行ったり、いつもと違う刺激に触れることをおすすめします。ただこれは、休養のステップをクリアしてから行うのが良いでしょう。体を休めないまま、「仕事終わりに映画に行こう」「飲みに行こう」となると、体への負荷は逆に増えてしまいます。
十分に休んだうえで、外への刺激を求めるのが良いでしょう。最初は休むこと自体が大切ですが、いつまでも部屋に1人でいても精神力は回復しません。体力が回復してきたら、徐々に行動を起こしていきましょう。
友人と遊びに行く場合は、ネガティブな話は避けるのが得策です。もし友人がそういった話を振ってきたときは、応じないように意識しておきます。そういう時だからこそ、なるべくポジティブな話をしてくれて、プラスのオーラを持った友人を選ぶようにしてみると良いかもしれませんね。
4つ目は、目標を小さくすること。期待値を少しだけ下げていくのです。完璧主義の人には少しつらいかもしれません。ですがこれは言い換えれば、「小さな変化・小さな成功に価値を与えること」です。小さなことに喜べるようになれば、達成感や自己肯定感は高まり、より高い次元に成長していけるのです。
大きな目標があるから、高みを目指して頑張れるのだという人もいると思いますが、理想と現実にギャップがあればあるほど、心は折れやすくなります。今あなたが無気力状態なのであれば、まずはスモールステップで目標を達成していく方が効率的でもあります。
目標を小さくするのは、逃げではありません。自分の主体性を取り戻し、できることを再認識する機会です。究極は「今日まで生きてこられただけで自分はすばらしい」と考えられるようになること。小さな幸せに感謝できるようになれば、さまざまなことへの意欲も自然と沸き上がってくるはずです。
精神力を取り戻し、小さな変化に価値を見いだせる心を身につけていれば、復活後も再び無気力に陥る可能性は低くなります。その状態になってから、大きな目標を追っていっても遅くはないのではないでしょうか。
5つ目はアファメーションです。アファメーションという言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、どんなやり方で、どんな効果をもたらすものか知っているでしょうか。アファメーションは、簡単に言えば自分に肯定的な言葉を宣言することです。
イチロー選手や本田圭佑選手が卒業文集に書いた将来の夢のように、あなたも「私は○○である」「私は○○をする」という表現で言葉にします。仕事に置き換えるなら、「私は仕事でたくさんの人を笑顔にする」「私は優秀な営業マンだ」といった感じです。
もちろん仕事以外のことにもアファメーションは効果があります。「私は夢に近づいています」「私は大切な人に愛されていて幸せです」など、人生や恋愛にも効果があるといわれています。
ポイントは、すべて肯定文にすること、わかりやすい言葉で断言すること、主語は必ず自分にすることなどです。たとえ今は事実でないとしても、アファメーションによって自己暗示をかけることで自然に言葉通りの結果が得られることが多いのです。仕事でうまくいかないことが無気力の原因と考えられるなら、アファメーションを試してみる価値はあります。
注意すべきは言葉にしたときに自分のなかに浮かぶ「そんなことできるわけないよ」という否定的な感情。これが強いとアファメーションは効果を発揮できなくなるので、ポジティブな言葉を選ぶときには、自分が心から信じられる言葉を選びましょう。
無気力症候群(アパシーシンドローム)の人は基本的には、本業(仕事)以外のことには意欲を持っています。そのため、何事にも気力がわかず、周囲に助けを求めたい「うつ病」の人とは違い、治療が必要なものだと思っていないケースが多々あります。本人が日常生活にはさほど困っていないため、放っておいてしまうことが多いのです。
また、仮に治療を受けて投薬したとしても、うつ病ほど薬が効かないといわれています。しかし、無気力が続くと、だんだんと仕事以外のことに対する気力も失い、うつ病につながるリスクもあります。
そうならないためには、無気力症候群の症状だと感じたときに、カウンセリングを受けることをおすすめします。そもそも無気力症候群は、主体性がなく周りに言われるがまま進んできた人に多い症状。そこでカウンセリングを通して、アイデンティティを確立したり自分のやりたいことを見つけたりと、精神的な自立を促していきます。
カウンセリングを通して、自分が本当にやりたいことや目標を見つけられることもあります。無気力で悩んでいる人や、このままでいいのか迷っている人は、一度カウンセリングを受けてみてください。道が開けるかもしれません。
さて、ここからは無気力症候群を克服するための本を紹介します。無気力症候群に症状の近いうつ病についての本も含めています。
うつ病のつらさは、経験した人にしかわからない部分があります。長く暗いトンネルの中をただ歩いている感覚の中、「ここから抜け出せる日は来るのだろうか……」と考えふさぎ込む。本書はそんな経験をした著者が贈る、「うつ病脱出コミック」です。
- 著者
- 田中 圭一
- 出版日
- 2017-01-19
内容も、最初に著者の経験が語られます。田中圭一氏は、サラリーマンとマンガ家、二足のわらじを履いて頑張っていました。ところが、気づいたときから未来への不安や恐怖に襲われるようになり、何をしても何を見ても感情の湧かない日々を送ります。医師の診断は当然「うつ」。それも「一生もの」と伝えられました。
その原因となっていたのは、「自己嫌悪」だったといいます。知らず知らずのうちに、「自分は今の仕事に向いていないかも」という気持ちにフタをして、無理やり頑張ってしまったのです。
そこからどのように「うつ抜け」したのか。マンガとして描かれているのでとても読みやすく、理解もしやすいはずです。田中氏以外にも、芥川賞・直木賞にノミネートされた経験のある作家・宮内悠介氏や思想家・内田樹氏など、著名人のうつヌケについても記載されています。うつ病が疑われる無気力の方は、読んでみることで気持ちが楽になるかもしれません。
本文中にも解説したアファメーション。これは自己啓発プログラムとしてアメリカで開発されてきました。著者はアメリカで能力開発の権威とされる“伝説のコーチ”、ルー・タイス氏。「人生を変える!伝説のコーチの言葉と5つの法則」と銘打ち、アファメーションの技術を使えるようになる本になっています。
- 著者
- ルー・タイス
- 出版日
- 2011-12-14
アファメーションはよく自己啓発セミナーなどで活用されることから、うさんくさいイメージを持っている方もいると思います。しかし、著者によれば、アファメーションは成功者ならあたりまえに使っている技術なのです。人生は言葉の使い方次第で変わってしまう、それほどの力を、言葉は持っているといいます。
この本の監修を務めた機能脳科学者、苫米地英人氏は、ルー・タイス氏のつくりあげたプログラムが脳機能的に正しく、心理学的な裏付けもあるものであることをまえがきで明かしています。自己イメージを高めたい人にはおすすめの1冊です。
「仕事はうかつに始めるな」というキャッチ―なタイトルもさることながら、帯には「現代人の集中力は金魚以下!?」というさらに衝撃的なフレーズが目に入ります。これは何なのかと読んでいくと、現代人の集中力がもつのは8秒以下といわれていて、これが金魚よりも短いのだそうです。
- 著者
- 石川善樹
- 出版日
- 2017-02-25
また、平均的なビジネスパーソンは1時間に30回メールチェックしているとも。2分に1回というものすごいペースですが、パソコン上でメール画面を常にタブで開いていると、無意識的に何度もチェックしてしまっている人も多そうです。これでは集中力がそがれ、生産性も上がりません。
著者によれば、脳は私たちが思っている以上に飽きやすいもので、だらだらとやっているものはすぐに「つまらない」認定をされてしまいます。そしてつまらない認定された状態が続くと体調までおかしくなってくるのだとか。つまり、仕事をだらだらとこなしてしまうと、効率的でないだけでなく、体調を崩すようになってしまうということです。
そうならないためには、自分が集中できる環境をつくり出すこと。時間管理などとも通じる、集中力マネジメントは、これからのビジネスパーソンには必須の能力となるでしょう。