漫画『とりかえ・ばや』を全巻ネタバレ紹介! 男女入れ替えものを描いた平安時代の古典「とりかへばや物語」をモチーフに、美しい姉弟が性別を入れ替えて宮廷に出仕していくさまを描いた『とりかえ・ばや』。覇権争いや愛憎劇に巻き込まれ、最後までハラハラドキドキの展開から目が離せません! この記事ではあらすじ、登場人物など、本作の見どころを、たっぷりご紹介します。
本作は、平安時代後期に成立した男女逆転モノの先駆けともいわれる「とりかへばや物語」を元に描かれた漫画です。
男らしい姉の「沙羅双樹の君(さらそうじゅのきみ)」と、女らしい弟の「睡蓮の若君(すいれんのわかぎみ)」が、お互いの性別を入れ替えて宮廷で生活していきます。
作者はさいとうちほ。読みごたえのあるストーリーはもちろん、彼女の描く美男美女の貴族たちや豪華絢爛な平安装束は、一見の価値ありです。特に各巻の表紙のいたイラストは、ため息の出る美しさでしょう。
この記事では、そんな本作の見どころをいくつかのテーマに沿ってお伝えしていきます。最新12巻のネタバレも含んでいるので、未読の方はご注意ください。
- 著者
- さいとう ちほ
- 出版日
- 2013-03-08
時は平安、権大納言の藤原丸光には2人の妻がいました。東の方と西の方にいた彼女たちは、それぞれほぼ同時刻に出産をします。
生まれた子たちは「沙羅双樹の姫君」、「睡蓮の若君」と呼ばれるようになり、双子のように瓜二つでした。
しかし性格は真反対。沙羅双樹は男の子と一緒に弓や木登りをして遊ぶことを好み、睡蓮は女の子と一緒に雛遊びや貝合わせを楽しみます。容姿がそっくりなため、いつしか周囲の者たちは、沙羅双樹のことを若君だと思い、睡蓮のことを姫君だと勘違いするようになりました。
やがて成長した2人の姿は、どちらもそれは美しいもの。その噂は宮廷にまで伝わり、沙羅双樹を男だと思っている帝は彼女に宮仕えさせるよう命じます。
権大納言の藤原丸光はその命令に逆らえず、2人の性別を偽って入れ替えることに。沙羅双樹を元服させて若君として都に送り出し、一方の睡蓮を女として成人させました。
2人は性別を偽って宮廷生活を送ることになりますが、帝の妃である梅壺は秘密をかぎつけられてしまいました。そして、宮廷の覇権争いと愛憎劇に巻き込まれていくのです……。
- 著者
- さいとう ちほ
- 出版日
- 2013-06-10
原作の「とりかへばや物語」は、平安時代後期に成立したといわれる古典です。
男の子のように活発で弓や馬が得意な姫君と、内気な性格で雛遊びが好きな若君。当時にしてはかなり斬新な設定でした。男は男らしく、女は女らしくあるべきだという、社会的に求められる役割と個々の性質が異なることから、悲劇が生まれていくのです。
タイトルの「とりかえばや」というのは、「とりかえたいなあ」という意味の古語。姉弟がさまざまな問題に直面し、本来の自分を隠して生きる姿を見るたびに、2人が逆だったらいいのいと思わずにはいられません。
しかし、原作の「とりかえばや物語」でも本作でも、2人はそれぞれ出仕した宮廷で大切な人に出会います。そして性別の問題を超え、自分らしく生きる道を選んでいくのです。
性別を入れ替えて出仕した沙羅双樹と睡蓮の2人。それぞれ「藤原月光」「涼子」と名乗りますが、何度もその秘密を暴かれそうになります。
最初に姉弟のことを疑ってきたのは、帝の妃である梅壺でした。身辺調査をする過程で、実は「藤原月光」が女なのではないかと疑うようになるのです。
あれこれと画策をし、狩りの行事では肩を弓矢で狙って怪我をさせたり、皆の前で衣を脱がせようとしたりと強引な手段を用います。梅壺の仕掛けた罠を持ち前の機転の良さで難を逃れる沙羅双樹。
しかし梅壺は次なる策として、自分の妹でもある四の姫と「藤原月光」の結婚を勧めるのでした。
- 著者
- さいとう ちほ
- 出版日
- 2013-12-10
また、帝の従兄弟でイケメンプレイボーイの石蕗(つわぶき)も、姉弟の秘密に迫ってきます。初めて2人に出会ったときに、あまりに美しく女房たちの視線を集めている「藤原月光」に嫉妬をするのですが、まずは親友になろうと誘います。
年齢も近く、男友達として仲を深めていく2人。そして石蕗は、男であるはずの月光に恋心を抱いている自分に気が付き、戸惑うのです。自分は同性愛者では無いと思いつつ、想いを止められない彼は沙羅双樹である月光に迫っていき……。
秘密がバレそうになるたびになんとか回避する2人ですが、とにかくハラハラドキドキの連続で、目が離せません。
次々と襲いくる困難に、性別を偽って生きることの難しさを痛感し、出家をしようと都を出た姉弟。しかしやはり大切な人たちと離れることはできないと、宮廷に戻りました。
そして、お互いの立場を戻すことを決意するのです。本来の性別どおり、沙羅双樹は女東宮の尚侍として働き、睡蓮は右大将として帝に仕えることになりました。
しかしここでも梅壺が、「2人は入れ替わっていた」「帝に対する冒とくだ」と帝に申し出るのです。そしてその証拠として、睡蓮がかつて帝をかばって付けた右肩の傷が、今は沙羅双樹にあるはずだと吹き込みました。
ついに帝からも疑われてしまった2人。特に帝のことを慕っていた沙羅双樹は、悲しみと罪悪感から再び出家をしようと悩みはじめるのですが……。
- 著者
- さいとうちほ
- 出版日
- 2017-08-10
そして、これまで何度も姉弟の秘密を暴こうと画策してきた梅壺。彼女自身も、世継ぎを産めず、期待に応えることができない重圧を抱えていました。そして夫である帝と沙羅双樹が互いに想いあっていることを知り、さらに激しく嫉妬の炎を燃え上がらせていきます。
帝の命を狙う者たちも再び動きだし、宮廷には不協和音が。物語はクライマックスに向かっていきます。
12巻では、2人が入れ替わっていたことが帝にバレてしまいそうな事態に陥りました。最終回の13巻では、とうとうバレてしまうのでしょうか…?これより以下、ネタバレも含みますので、未読の方はご注意ください。
帝の命を狙う幻覚が、右大臣宅に放火。この騒動に、沙羅双樹も巻き込まれてしまいます。しかし、瞬時に右大将である睡蓮になりすまし、帝や女御たちを避難させました。
火の手から逃れることができ、一件落着と思いきや、変装した沙羅双樹と睡蓮が鉢合わせてしまい……。2人はその姿を帝に見られてしまうのです。ついに入れ替わりがバレてしまった2人は今後、どうなるのでしょうか?
- 著者
- さいとう ちほ
- 出版日
- 2018-02-09
平安時代を舞台に、宮廷の生活がきらびやかに描かれている本作。美貌の持ち主である沙羅双樹と睡蓮が性別を入れ替えるところから物語が進んでいきます。複雑に絡み合う恋愛の様子も描かれ、少女漫画の要素をたっぷり含んだ物語です。
絵の美しさや物語の面白さだけでなく、性別関係なく「自分らしく生きること」が大切なのだと感じさせてくれるでしょう。完結の13巻まで、じっくりと物語に浸ってみてください。
『とりかえ・ばや』の作者であるさいとうちほのおすすめ作品を紹介した<さいとうちほのおすすめ漫画ランキングベスト5!歴史もの少女マンガ >の記事もおすすめです。
先の読むことのできない展開と、美しい登場人物たちが魅力の『とりかえ・ばや』。ぜひ実際に手に取って、その世界観に触れてみてください。