『20世紀少年』が名作たる5つの理由をネタバレ考察!登場人物、伏線以外も

更新:2021.6.14

『20世紀少年』は、得体の知れない恐怖を秘めた作風で、読者の心を掴みました。2008年から2009年にかけて公開された映画作品も印象的でした。今回は謎の多い本作について、ネタバレしながら魅力を紹介していきましょう。

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『20世紀少年』が名作と言われる理由をネタバレ!

本作の舞台は、2000年前後の日本。「ともだち」と呼ばれる奇妙な人物が綴る世界滅亡のシナリオを、主人公の遠藤健児や彼の幼馴染たちが食い止めようとするさまを描いたSFサスペンスです。

2008年から2009年にかけて、映画3部作が公開。そこから一躍注目を浴びる作品となりました。

作者は『YAWARA!』や『MASTERキートン』などの代表作を持つ浦沢直樹。コミックスの売り上げが累計1億部を突破している大物漫画家です。1970年代のロックを好み、特にボブ・ディランの大ファンだそうで、『20世紀少年』にもその影響が色濃く反映されています。

そんな本作の魅力は、底知れぬ恐ろしさを描いた点でしょう。個性的なキャラクターや伏線の張り方によって、「得体の知れなさ」を醸し出している作品です。

さて、この記事では『20世紀少年』と続編である『21世紀少年』の面白さをネタバレしながらご紹介していきます。浦沢直樹の創る世界観をお楽しみください。

 

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著者
浦沢 直樹
出版日

漫画『20世紀少年』『21世紀少年』あらすじ

『20世紀少年』のあらすじ


時は1970年代。とある小学校に通う少年少女たちは、秘密基地を作り、世界の滅亡を空想していました。悪に立ち向かうのは、正義のヒーローとなった自分たち。地球を救う救世主になるという子どもらしいストーリーをスケッチブックに描き、「よげんの書」と名付けて土の中に埋めます。

しかし、時は流れ、皆が大人になると、空想の世界とはおさらば。当時の記憶も薄れていきます。
 

そして、20世紀が終わる目前の1997年、世界各地に異変が起こりはじめました。「よげんの書」に綴られていたとおりに、世界が破壊されていったのです。

周囲の人物の失踪や幼馴染の死をきっかけに、その事実に気付いた主人公のケンヂ。一連の出来事の黒幕である「ともだち」と呼ばれる人物を突き止めるべく、かつての仲間を集って立ち上がります。
 

著者
浦沢 直樹
出版日
2000-05-01

 

『21世紀少年』あらすじ


「ともだち」の死によって、世界滅亡の危機は過ぎ去ったかに思えましたが、まだ悪夢は終わっていませんでした。「反陽子爆弾」が残されており、死してなお「ともだち」は世界の滅亡を望んでいたのです。

己が一連の出来事の引き金となったことに責任を感じていたケンヂは、過去へと遡り、清算をしにいきます。過去に隠された「ともだち」の秘密とはいったい何なのでしょうか。真実へと迫ります。

『21世紀少年』とタイトルが変わったものの、実質的には『20世紀少年』の続巻。本編の補足をするような内容になっています。
 

 

『20世紀少年』に描かれた伏線一覧!

 

本作の趣旨は、「誰が」「なぜ」地球滅亡の危機を引き起こしたのかということ。その主犯格である「ともだち」の正体を突き止めるのが目的となります。

では、作中に登場する「ともだち」に繋がる伏線を、いくつか紹介していきましょう。

 

著者
浦沢 直樹
出版日
2001-04-01

 

伏線1:カツマタの噂

ケンヂとは別のクラスに所属する同級生。作中での出番はほとんどなく、たまに話題に挙がる人物です。

理科の実験が大好きで、授業でフナの解剖をする前日に死んでしまったことから、夜な夜な理科室に化けて出るという噂がありました。その真相を確かめるために、ケンヂら一行は真夜中の理科室に忍び込みます。

しかし、理科室の中に入ったのはドンキーという少年のみ。彼はそこで恐ろしいものを見たといいます。このドンキーの見たものが「ともだち」の正体に繋がる重大な秘密となるのです。

また、もうひとつ重要なのは、カツマタにまつわることをほとんどの人物が覚えていないということです。死んだという話も真実かわからず、誰も詳しいことを覚えていません。いったいどんな人物なのでしょうか……。

伏線2:お面の人物の謎

「ともだち」は組織のシンボルマークが描かれたマスクで頭と顔を覆っていますが、本作にはこのほかにもお面をつけた人物が登場します。

ケンヂの小学校時代、「忍者ハットリくん」のお面で顔を隠している少年がいました。その人物こそ「ともだち」であることが判明しています。

また、「ナショナルキッド」のお面をつけた少年もおり、こちらも「ともだち」に深く関わる人物。しかも、このお面をつけた人物は2人いて……?

伏線3:のっぺらぼうは何者? 

地球の滅亡は、ケンヂたちの幼少期の出来事がきっかけです。そのため、作中ではしばしば過去が描かれ、そのなかで顔が輪郭しかわからない「のっぺらぼう」が登場します。のっぺらぼうの正体も「ともだち」に繋がる鍵となります。

伏線4:1年のズレ 

小学校時代、秘密基地で遊ぶケンヂたちを羨望の眼差しでみていたフクベエとサダキヨという少年がいました。2人は秘密基地に忍び込む形で出会い、友達となります。

これはサダキヨの回想では1970年の出来事になっていますが、後に「ともだち」の組織が開発した過去を体験できる装置「VA」では、1969年の出来事となっているのです。この1年のズレはなぜ生じたのでしょうか。

本作の物語では、数々の伏線を徐々に回収しながら、同時に新たな伏線が張られていきます。このほかにも数多くの謎が登場し、終始先が気になるようになっているのです。

 

未回収、矛盾する伏線たち

 

数多くの伏線が散りばめられている本作。しかしいくつかは未回収のまま物語が終わりました。

ここでは、残された謎を紹介していきます。

 

著者
浦沢 直樹
出版日
2002-08-30

 

未回収、矛盾1:「超能力」とはなんだったのか

本作には、謎の力である「超能力」が存在します。扱えるのは、ケンヂの姪であるカンナ、同級生のフクベエ、そして「ともだち」組織の幹部である万丈目胤舟(まんじょうめいんしゅう)の3人です。

フクベエと万丈目の超能力はいわゆるイカサマで、本当の能力ではないことがわかっています。一方、カンナだけはどうやら本物の超能力を操っているようで、スプーン曲げができたり、2択の的中率がありえないほど高かったり、銃弾が当たらなかったりと不思議な力を秘めています。 

しかし、このような現実離れした能力として描かれながらも、作中ではその謎が明らかにされていません。さらにいえば、作中で大した活躍をみせるわけでもありません。

では、何のために超能力を登場させたのか……未だにわからないままです。
 

未回収、矛盾2:5人目は誰?

理科室にまつわるカツマタの噂を確かめようと、真夜中に学校に集合したケンヂたち。5人が集まったそうなのですが、実際に描かれているのは4人だけなのです。もうひとりその場にいたのは一体誰なのか、わからないまま物語が終わりました。

 

未回収、矛盾3:なぜのっぺらぼうなのか?

先述したのっぺらぼうは、「ともだち」の正体に繋がる重要な人物です。彼が誰なのかは後に明かされますが、なぜのっぺらぼうとして描かれたのかは説明がありませんでした。

 

未回収、矛盾4:回想とVAの齟齬

とある出来事について。登場人物は、VA(過去を体験できる装置)内では相手と対等に話をしていましたが、回想のシーンでは一方的にまくしたてられていました。ここに齟齬が生じている理由はわからないままです。

VAに何かしらの異常が起こったのか、回想自体が間違っていたのか……。

 

未回収、矛盾5:なぜ顔が一緒!?

重大なネタバレとなるので明言は避けますが、本作にはまったく同じ顔をした2人の人物が登場します。双子説、整形説などさまざまな憶測がファンの間でなされましたが、最後まで理由は明らかにされませんでした。

このほかにも、本作には未回収の伏線や矛盾が生じているものが少なからず見受けられます。しかし、これこそ浦沢直樹の魅力といえるのではないでしょうか。

彼は完璧な結末を求めていたわけではなく、そこに至るまでの過程に重きをおいています。読者たちにあれこれ考察する余地を残してくれているのです。

 

『20世紀少年』の登場人物たちの謎

 

『20世紀少年』の魅力は、謎や伏線だけではありません。人間味のある登場人物が多数登場するのです。「地球滅亡」というとなんと大それたことか……と思いがちですが、結局は人間が引き起こす、人間らしい事件でした。

では主要人物について、映画でのキャスティングもあわせてご紹介していきます。

 

著者
浦沢 直樹
出版日
2003-12-25

 

ケンヂ/遠藤健児(えんどうけんじ)

映画:唐沢寿明、田辺修斗(中学生時代)、西山潤(小学生時代) 

本作の主人公です。際立った才能はないもののクラスの中心となる盛り上げ役で、非常に明るい少年でした。ロックを愛しており、大学時代にはバンドを組んで活動していたものの、軌道に乗らず解散。以後は実家のコンビニを母親とともに経営しています。

幼いころ姉のキリコに迷惑をかけていたことから、その償いとして、彼女が何も語らずに預けていった姪のカンナとともに暮らし、愛情を注いで育てました。

2000年12月31日に起きた世界滅亡の危機を食い止める際、爆発に巻き込まれ消息不明に。生死さえわからない状態となります。

地球の滅亡を救うヒーローの立ち位置ですが、非常に情けなく、頼りがいのない人物として描かれています。それゆえに読者の共感を呼ぶのではないでしょうか。

カンナ/遠藤カンナ(えんどうかんな)

映画:平愛梨、畠山彩奈(幼少期)

ケンヂの姪。自分を懸命に育ててくれた彼を心の底から慕っています。頭がよく、運動神経も抜群、さらに超能力まで使えることから「神の子」と呼ばれるようになります。

実は、ケンヂの姉のキリコと「ともだち」の間にできた子供で、それゆえ「ともだち」組織から狙われるのです。しかし、「ともだち」を止められる存在でもあるため、味方からは「最後の希望」と呼ばれています。

外見の可愛さや性格から人気が高いキャラクターです。

オッチョ/落合長治(おちあいちょうじ)

映画:豊川悦司、澤畠流星(小学生時代)

ケンヂの親友で、秘密基地でともに「よげんの書」を作ったメンバー。「ともだち」のシンボルマークを考案した人物です。

幼いころから優秀で、一流大学を卒業し、一流企業へと就職。結婚をして立派な父親になるかと思いきや、仕事を優先しすぎるあまり家族とはうまくいきませんでした。

真の強さを求め、海外で出会った修行僧に教えを乞い俗世を捨てます。その後は世界各国で裏社会の汚れ仕事などをして生活をするようになりました。

ケンヂからの要請で日本に戻り、「ともだち」と戦うことになります。目に見える力や強さがあり、非常に頼もしい人物。「オッチョさえいれば……」と思わせるほど有能で、彼が登場するシーンはいつでも盛り上がります。

ユキジ / 瀬戸口ユキジ(せとぐちゆきじ) 

映画:常盤貴子、松元環季(小学生時代)

ケンヂの同級生でグループの中の紅一点。しかし、非常に男勝りな性格をしています。実家が柔道場を経営しており、彼女自身もかなりの腕前。数々の伝説を作り上げました。

そんな性格ながらもグループ内のマドンナ的存在で、好意を寄せていた者も数名いたほど。ユキジ自身は幼少期からずっとケンヂに好意を寄せていたものの、最後まで想いを告げることはできずに終わります。

ケンヂが失踪した後愛情を持ってカンナを育てあげ、彼女のもうひとりの母と呼べる存在となります。

ともだち

正体不明の絶対的カリスマ性を持つ人物。組織のシンボルマークがケンヂたちが考えたものであることから、当時秘密基地に出入りしていたメンバーであることがわかっています。

さまざまな自作自演で人々の心を掴み、「世界大統領」までに上り詰めます。
 

『20世紀少年』でケンヂが歌う「ボブレノン」には浦沢直樹のロックへの魂が込められていた!

『20世紀少年』には、「ロック」の要素も散りばめられています。俗にいう「歌は世界を救う」的な展開もあり、作者・浦沢直樹のロックへの愛が表れているといえるでしょう。

作中にはさまざまな歌が登場しますが、もっとも記憶に残るのはケンヂが歌う「ボブレノン」ではないでしょうか。「グーダララ スーダララ」のフレーズが印象的です。

この曲は映画にも登場し、唐沢寿明が実際に歌っています。原作とは少々異なりましたが、それでも本作を代表とする名曲であることは間違いありません。 

 

著者
浦沢 直樹
出版日
2005-02-28

「ボブレノン」は「ともだち」組織への対抗を遠回しに伝えている歌で、同様の思想を持っている人間を無意識のうちに引き込む力があります。このことから、歌は人の心に響くものなのだとわかるでしょう。

さらに、そんな「ボブレノン」には、浦沢のロックへの想いも込められているのです。人の心に響く歌は数あれど、それだけで現実の世界を変えるのはとても難しいこと。しかし、浦沢は、ロックには世界を変えようと行動できるような青臭い魂が詰まっていることを、作中で強く訴えかけています。

歌詞については、彼自身も日本語として成り立っていないことを自覚しています。しかし、詞と音楽を組み合わせることで、ひとつの意味を与えているのです。

本作は、そんな目に見えない「意味」を探し求めることも一つのテーマといえるでしょう。

 

『20世紀少年』は得体の知れない怖さを味わえる漫画

 

本作の目的は、誰が「ともだち」なのかを突き止めることです。ミステリーやサスペンスでいうところの「犯人」を探すことにあたり、根拠のある動機や証拠が必要になります。

しかし、作中で記されている動機・証拠は納得できないものも多く、それゆえに賛否両論があるのです。

ただ、ミステリーの面白さは犯人を見つけることだけなのでしょうか。それには否と答えるべきでしょう。本作はある種のホラーと捉え、犯人を探す過程の恐怖や違和感こそが魅力なのです。
 

注目するべきは、「得体の知れなさ」。人間の根底にあるさまざまな感情を引き出し、先を読みたいという気持ちを抱かせるのが本作の凄いところなのでしょう。

 

著者
浦沢 直樹
出版日
2006-11-30

 

そんな本作は、浦沢のとあるインスピレーションから生まれました。彼が湯船につかっていた際、なぜか国連総長が「彼らがいなければ、21世紀を迎えることはなかった」と演説しているシーンが思い浮かんだそうです。そこから『20世紀少年』というタイトルを思いつき、執筆に繋がりました。

浦沢自身も作品を描きながら、結末よりも過程を楽しむ物語になることを予感しており、事実そんな構成になっています。

つまり、『20世紀少年』は、「ともだち」が誰なのかという答えよりも、それを突き止める過程で感じる得体の知れない感情を楽しむ作品なのではないでしょうか。

 

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